DJ daddykayのKeep On Spinnin' VOL.19『MAYSA / LOVE IS A BATTLEFIELD』

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2017.05.22

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MAYSA (R&B) / メイザ / LOVE IS A BATTLEFIELD

身体のデカい女性ソウル歌手は安心感、安定感がありますよねー。
ジョセリン・ブラウン、ケリー・プライス、ジル・スコット、チャカ・カーン、シェリル・リン等然り、今回ご紹介する主役、メイザ・リークも御多分に漏れず抜群の安定感でニュー・アルバムを届けてくれました。

メリーランド州ボルチモア出身の彼女は地元の大学を卒業後、スティーヴィー・ワンダーのバックヴォーカル・グループ、ワンダーラヴの一員となり、後にはスティーヴィーの『ジャングル・フィーヴァー』というサントラ・アルバムの中の一曲、「These Three Words」でバック・ヴォーカルとしてクレジットされてます。 ここではそれほど存在感を見出す事は出来ないかなぁ。1991年のリリースです。

時をほぼ同じくしてインコグニートに加入したのも広く知られている彼女のキャリア。そして、アルバム・タイトル『Maysa』でソロ・デビューしたのが1995年。

ジャジーなコンテンポラリーR&Bを歌うのがメイザのスタイル。5枚目以降はずっとシャナキー(レコード・レーベル)からリリースを重ねていて、2006年、シャナキー移籍第一弾が『Sweet Classic Soul』というタイトルのカヴァー・アルバム。

そこから立て続けに2枚カヴァー・アルバムを発表しており、リメイクが得意なアーティストというイメージがあるのも否めないところ。 でも、それぞれがみんなメイザ色に染まっていてクオリティはすごく高く、選曲もバラエティに富んでいるんでいつも食傷気味にならず楽しく聴けるんですよねぇ。 日本の某アイドル・グループ曲をカヴァーした「Dangerous Summer Nights」なんかも意外な一曲。

通算13枚目の今回のニュー・アルバム『Love Is A Battlefield』も長年のホームグラウンド、シャナキーからのリリースで、全10曲と少々小ぶりながら内容の濃いフル・カヴァー・アルバムとなっております。それでは曲を聴いていきましょう。

トップを飾るのは'92年、マーヴィン・ゲイの娘、ノナ・ゲイのデビュー・アルバムからのシングル・カット曲をカヴァーしたTK-1「The Things We Do For Love」bpm75です。
オリジナル曲のMVでは滝のような、水に打たれて歌うノナ嬢が印象的でしたが、ここでは水滴のようなSEを塗してくるあたり、シャナキー移籍からの長い付き合い、プロデューサーのクリス"ビッグ・ドッグ"デイヴィスのニクい技。

TK-2「Can We Talk」bpm87は'93年、ベビーフェイス作、テヴィン・キャンベルのビッグ・ヒット曲を見事に彼女色に染めてます。 ウィスパーズもカヴァーしてますが、個人的にはメイザに軍配が上がるかなぁ。

TK-3「Love Is A Battlefield」bpm80のオリジナルは'83に白人女性シンガー、パット・ベネターが放った疾走感のあるロック・チューン。 bpm180オーバーの曲が、ほとんどビートを廃したトラックにギターが乗る、しっとりとしたミッド・バラードに生まれ変わってます。

TK-4「Because It's Really Love」bpm67は'86年、ルーサー・ヴァンドロスのリメイク。 オール生音で挑んだこの曲、後半だんだん感情が高ぶっていくところはグッと胸を締め付けられます。

TK-5「Inside Out」bpm111はスレイヴの「Watching You」にインスパイアされたと言われている'82年、オデッセイの、チャート2位まで昇り詰めたダンス・クラッシックスを調理。 ここでも決して奇をてらわないクリス・デイヴィスのサウンド捌きは見事です。

TK-6「Inseparable」bpm62のオリジナルは'75年のナタリー・コール。ネタとしても知られてるナンバーで、ロイド・バンクスのアヴァーントをフィーチャーした「Karma」やデスティニーズ・チャイルド「If」なんかが思い浮かびます。 後半のブレイクで飛び出すカール・コックス(UK出身のテクノDJとは同名異人)のサックスが最高です。 夜景の美しいバーで酒を飲みながら聴きたいですね。 アルバムのハイライトの一曲。

TK-7「As Long As You Love Me」bpm70は何と'12年のジャスティン・ビーバー曲をカヴァー。しかし違和感は全く無し。なんて多彩なんでしょう。

TK-8「Footsteps In The Dark」bpm80の元曲は、これはもうあれこれ説明するのが野暮になる、'77年アイズレー・ブラザーズの大名曲。ネタ使用頻度も非常に高いナンバー。

ここでバック・ヴォーカルとしてクレジットされてるのがオール・4・ワンのジェイミー・ジョーンズ。ロナルド・アイズレーばりのファルセットを披露してます。

TK-9「Am I Dreaming」bpm62は'80年アトランティック・スター曲を忠実にカヴァー。サム・ディーズ作の、これはもう曲が最高。よっぽどじゃあ無い限り、悪くなりようが無い曲です。白眉の一曲。

TK-10「Mr. Dream Merchant」bpm75は'75年のニュー・バースのテイクもありますがオリジナルは'67年のジェリー・バトラー。 ノスタルジックなバラードもメイザが歌うとこのアルバムの中にスーッと溶け込んでじゃってます。

TK-2、TK-5のような超有名曲ももちろんいいんですが、筆者的なハイライトはTK-6、TK-9、TK-10といったところでしょうか。

御年50歳のメイザが生まれた頃の曲からほんの5年前の曲まで本当に幅広く、難なくこなすメイザ。 カヴァー曲も含めて次回作が今から楽しみでなりません。

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