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カラヤン唯一の「フーガの技法」
melo classicが飛び切りの音源を発掘した。第二次世界大戦末期に録音されたカラヤン指揮のバッハのフーガの技法である。これは芸術の点のみならず歴史的にも極めて意義が高い。第一に、カラヤンの指揮したバッハのフーガの技法の録音はこれが初めてである。カラヤンについての情報において権威ある www.karajan.orgで検索しても、カラヤンがフーガの技法を演奏した記録はこの録音を含めて見当たらない。第二にリンツの大ドイツ放送国営ブルックナー管弦楽団の演奏録音であること。このオーケストラは第二次世界大戦末期、ブルックナーを熱愛するヒトラーの意向でリンツに1943年に創設され、ゲオルク・ルートヴィヒ・ヨッフム(オイゲンの弟)に指導され、多数の一級指揮者を客演に迎えた。
しかし戦局悪化のため1945年3月で活動が停止、解散。政治色が濃かったがゆえにごく短命の幻のオーケストラになった。このオーケストラを頻繁に指揮したのがカラヤンだった。実はカラヤンがこのオーケストラを指揮してフーガの技法を録音したことは団員だったゲルハルト・ボッセの証言が残されていたのだが、前述のように存在が確認されていなかった。幻の録音がついに日の目を見たのである。しかも偶然にもフルトヴェングラーの有名な「ウラニアのエロイカ」の僅か5日前の録音だ。
演奏自体もたいへん素晴らしい。響きは厚いものの、流麗でバランスの取れた美的感覚は、後の帝王カラヤンを十分思い起こさせるものだ。録音状態はいかにも第二次世界大戦中のドイツ国営放送の磁気テープ録音といった水準で、やや歪っぽいが弦楽オーケストラであればさほど気にならない程度だろう。なお未完のフーガは未完のまま演奏している。 (資料提供:東武ランドシステム)
【収録内容】
J.S.バッハ:
フーガの技法 BWV1080 (弦楽合奏による縮小演奏)
【演奏者】
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
大ドイツ放送国営ブルックナー管弦楽団
【録音】
1944年12月14日 リンツ
国営放送協会による放送用スタジオ録音
モノラル
収録時間=45'19
HERBERT VON KARAJAN / ヘルベルト・フォン・カラヤン
オーストリア出身の指揮者 (1908-1989)