Karizma aka Kaytronik 「Thee Album」リリース インタビュー

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2016.03.11

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ディスクユニオン限定特典つきで好評発売中、KARIZMAことKAYTRONIKのアルバム「Thee Album」。今回USのボルティモアより彼のインタビューが届いた。
アルバムや楽曲に込められたメッセージ、そして2015年に地元で起きた白人警官による暴行死亡事件や人生においてどのように振る舞うべきかなど、深いところまで語られている。
「Thee Album」と合わせて読んでみて欲しい。




ボルティモアを代表するクルー:ザ・ベースメント・ボーイズの一員として90年代初頭のハウス・シーンに旋風を巻き起こし、その後ソロでもプロデューサー/DJとしてクラブ・シーンで活躍するカリズマ。特にそのプロデュース・ワークは、単なるハウス・ミュージックに囚われず、ヒップホップやディスコ、ジャズ、ファンク、ソウルetcを飲み込んだ恐ろしいほどのブラックネスを孕んだサウンドを生み出し、ムーディーマンやセオ・パリッシュ、そしてJ・ディラにも匹敵する"黒さ"を持った数少ない本物の「ブラック・マシーン・ミュージック」の担い手として、その名の通りカリスマ的な人気を誇る。そんな彼が持つ数多ある名義のうちのひとつ、ケイトロニックとして、遂に初となるフル・アルバム、「ジ・アルバム」をR2 Recordsよりリリース!!! 今回は本作への思いを聞いてみた。

Interview & Text:Kumiko Yajima




1. 「ジ・アルバム」はKaytronik(ケイトロニック)名義で初となるフル・アルバムですが、どのような思い入れがあったのですか?


うーん、Kaytronikがね、「アルバムだそうよ」って言うもんだから。ww
過去にリミックスやKarizmaでのアルバムも出させて頂いたし、Kaytronik名義の作品は今までにいくつか出したけど、Kaytronikという名義でのパーソナリティーをフル・アルバムでは、まだ出していなかったから、出す時が来たかな。って、思ってね。

2. アルバムのタイトル「ジ・アルバム」ははどこからきたのですか?


実は、このKaytronikっていう名義も僕の大好きなプロデューサー、Mantronixの名前からの発想でつけさせてもらったんだけど、Mantronixが初めて出したアルバムが、「The Album」だったから、それをちょっと噛ませて頂いて、「Thee Album」にしたんだ。Mantronikは本当に大好きで、彼が出した作品は全部買って聴いたし、今のアーチストとしての自分に沢山インスピレーションをくれた人なんだ。







3. アルバムにはゴスペルがあったり、アンビエントの曲があったりとバライエティーのある仕上がりになっていますが、意図的ですか?

そうですね。Karizma名義ではできない曲をKaytronik名義で表現してみたよ。
僕のファンはきっと、過去のKarizma作品から、Karizma名義だったらこういう曲がでるだろう。といった、ある程度の期待があるはずだろうから、変に驚かしたくないと思ってね。それで、別の名義で自分の中の違うパーソナリティーを表現させてもらっている。それをすることで、一つのジャンルにとらわれることなく、冒険できるからね。

4. 他のアーチストとプロジェクトに携わることとかあるんですか?

僕の中に宿ってくる音楽やそのフィーリングって僕にしかわからないこともあると思うし、他のアーチストもそうだと思う。アルバムを制作する上で自分の中に宿ってきた音やフィーリングを他の人にも聞こえるように形作る過程がすごく好きで、自分の中に入り込むっていうのかな。だから、他の人のプロジェクトにサポートさせてもらうという形で曲を提供することはあるけど、他のアーチストとアルバムのプロジェクトに携さわらせて頂いたことはないです。どちらかというと自分がまだ自分の音に対してこだわりがあるというか、わがままでいるのかもしれない。

5. アルバムの最初の曲、「It’s Your Life」は、最近、他界されたEarth Winds & FireのMauriceさんの曲、「Fantasy」をサンプルされたようですが?

そうですね。EWFのFantasyをサンプルした理由ですが、どちらかというとポジティブなメッセージを含む曲を共有したいと思っていて、EWFのメッセージを含んだ曲をサンプルし作った曲をアルバムの最初に持ってくることで、良いカルマをいただけると思ったんです。

今回、Mauriceさんが他界され、とても残念ですが、Thee Albumリリースパーティー(ツアー)でIt’s Your Lifeをプレイすることで、Mauriceさんにもご冥福を祈らさせていただければとも思います。

6. 去年、Karizmaさんのホームタウンであるメリーダンド州ボルティモアで白人警官が黒人男性を逮捕する際に頚椎損傷させて死亡させた事件が2015年4月12日(死亡は19日)にありました。その直後、ボルティモアでは暴動が起こりましたね。その問題に触れている曲がこのアルバムではハウスのジャンルで表現されていて、ヒップホップでは逆に穏やかでスピリチュアルな曲になっていますが、どういう思い入れがあったのですか?

そうだね、アルバムを最初から最後まで聴いてくれる人にしてみればさ、「おい、この問題はありえないから、激怒すべきだ!いいや、少し感情を落ち着かせて様子をみよう。いいや、どうにかしようぜ!」っていうみたいに、みんなを振り回しちゃったかもしれないけど。ww

実際に、こういう人種差別があることをみんなにも認識してもらいたいという気持ちがあったんだ。
このアルバムでは「Holy」と「State We In」で表現させて頂いた。でも、問題に対して激怒し続ければ問題が解決されるっていうわけじゃないと思うし、問題の原因となる要因を癒して解決すれば、問題もなくなるんじゃないか。と思う。怒りばかりを表現した曲を出してもいいことはないと思うしね。だから、意図的に「Holy」の次の曲は「Forever Grateful (For Walter & Andre)」をもってきた。世の中にはこういう問題があって、僕たちもちゃんと認識し前向きに向きあう必要がある。でも、人生大変なことがあっても、まだ、普通に空気を吸ったりお水も飲めるし、最低限生活できる環境はあるわけで、世の中が終わるわけじゃない。でも、人生の幸せと不幸って紙一重だと思っていて、感謝する気持ちを忘れた時に悲劇がやってきてしまったりするもんなんじゃないかな。だから、理不尽な問題があっても感謝することを忘れないで欲しいと思うんだ。



Kaytronik - State We In-HD from r2records on Vimeo.



7. ミュージシャンであることがあなたにとって有利な立場だと思いますか?

そうだね、ある程度、ミュージシャン・アーチストとして作品を出すことができたら、社会問題や人生観に関して意見を共有しても良いんじゃないかと思う。ミュージシャンとして幸福を讃えることも大切だと思うけど、問題に関して、意見を主張できることは素晴らしい事だと思う。

8. アルバムの中に「Holy」という曲がありますが、牧師のスピーチが入っていますね。これはどこからサンプルされたんですか?

アメリカのイスラム教指導者のルイス・ファラカン師がマイク・ウオレスというイスラエル擁護のジャーナリストからインタビューされた時の動画からサンプルしたんだ。

ある日、Facebookにその動画が投稿されていて、観たら、今僕たちの身に起きている事と全く同じなんじゃないか?と思った。過去に誰もこのインタビューの音源を使った作品はでていないし、僕のスタイルで仕上げたんだ。



僕もキリスト教徒として子供の頃から教会へ通っているけど、残念な事に教会でも同じ事があるんだ。神聖を求める人自身の行動が神聖でなかったり。他人を否定する事は簡単さ。でも、他人を否定するまえに自分の問題と向き合うべきだ。と思う。世の中には完璧な人間はいないだろう?だから、「Holy」はその事を語っているんだ。

だって、そうだろう?僕たち一人一人も、現状、「Time」マガジン*で報道されるような問題を抱えていると思うよ。(*:約200ヶ国で2300万人が愛読する週刊ニュース誌)

例えばさ、Facebookに女優さんの化粧前の写真を掲載して、みんな馬鹿にしたりするけど、同じ人間なんだぜ。芸能人だからとかの理由で他人の事を笑ったりするのはクールじゃない。それよりもさ、自分の頭の中で自分のリアリティーショーを作って、自分の問題に向き合ったほうが時間が効率的に使えるよね? と思ったりするよ。

世の中、成功するためには、良い家を買って、奥さんをもらって、車を保有して、金を稼いだほうがいい。って、言うけど、成功にはそんなの関係ないと思う。

それよりも、「あなたは幸せですか? 幸せな人生を送っていますか? 今やっている事を楽しんでいますか?」 そういう質問のほうが大切なんじゃないかな。と思う。

だって、俺たちみんないつかは死ぬんだぜ。死んだら、物質的なものはなーんにも持って帰る事ができない。だから、人生において何をしたいか、自分を知る事は大切だと思うよ。

9. KarizmaとしてDJプレイする時はどういう事を意識していますか?

よくさ、「あのイベントはHotだった!」っていうのを聞くけど、僕は自分がDJできる時は、そういう評価じゃなくて、「あのDJ、あれをこうかけて、やばかったぜ。」ってちゃんと何かの印象として、DJとして記憶に残れるプレイをしたいと思っている。

Kaytronik名義のアルバムも出す事ができたし、これで、僕も自分がKarizmaとしてDJするときに、自分の気持ちを幅広く表現できるとおもっている。意見や不平を言ったりね。Karizma名義だけだったら、それはできない。自分の中でのこだわりかな。


10. 最後に読者の皆様に一言。

このインタビューを読んでくれてありがとう。「Thee Album」は新たなサウンドを表現した作品となっています。Disk Unionさんでご購入していただくと、ボーナストラック3曲ついてきます。他のお店で探しても見つからない。Disk Unionだけだよ。ぜひ、Disk Unionさんでお買い求めいただきたい。よろしく!







Thee Albumについて
ムーディーマンやセオ・パリッシュ、そしてJ・ディラにも匹敵するブラックネス…デトロイト並に"黒い"サウンドを奏でるボルチモア・シーンの英雄カリズマが、ケイトロニック名義で初となるフル・アルバムをリリース!

Disk Union2/24先行発売開始。ディスクユニオン限定特典として、未発表音源3楽曲収録のCD-R付き。
詳細はこちら[http://diskunion.net/clubt/ct/list/0/80713336]まで






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