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世界初録音の復元版「ヴィオラ協奏曲」を含むフバイの「ヴィオラ作品全集」。大ヴァイオリニストであったフバイは時折ヴィオラを好んで演奏していた記録が残っています。1975年生まれのバールショニ(Va)の深くて柔らかい音色と確かなテクニックも聴き所です。 まぼろしの「ヴィオラ協奏曲」を復元! フバイのヴィオラ作品全集、世界初録音 ゲルゲイ・ヴァイダ( 指) エルケル室内管弦楽団 マールタ・グヤーシュ(P) ペーテル・バールショニ(Va) 録音:2010 年2 月フンガロトン・スタジオ( セッション) 【ヴィオラにも精通していたヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニスト、フバイ】 ヴィオラは、音楽作品で昔からずっとあまり重要な役割を演じてこなかった地味な存在でしたが、フバイはこの楽器のより深みのある音色を好み、19 世紀のヴァイオリニストのなかでも例外的に関心を寄せていたひとりでした。 フバイのヴィオラへの興味は、幼少期に培われたハンガリー音楽や、おそらくは1870 年代中頃のベルリン音楽大学時代、ヨアヒムに師事していた数 年間、時折ヨアヒムに代わり師を務めたエドゥアルト・ラポルディ( ヨアヒム四重奏団のヴィオラ奏者) に根ざしています。 フバイがパリに出ておおきな名声を獲得したのち、ブリュッセル音楽院のヴァイオリン科教授に任命された際には、同僚とともにカルテットを結成し、ヴィ オラのジャン=バティスト・コリンズとは第1 ヴァイオリンとヴィオラのパートを交代で弾いたりもしていました。 また、リストの要請でブダペストに戻り後進の育成にあたると、ブラム・エルデリング、グスターヴ・セレーミ、ヤーノシュ・テメシュヴァーリ、ティヴァダル・ オルサーグ、エデン・パールトシュ、エゴン・コルンシュタイン、デーネシュ・コロムザイ、ナーンドル・ジョルト、そして若きゾルターン・セーケイ( バルトー クの第2 ヴァイオリン協奏曲被献呈者& 世界初演者) や、ティボル・シェルイ( バルトークのヴィオラ協奏曲補筆完成者) など、いくつものすぐれたヴィ オラ奏者として活躍する名前を輩出しています。 【復元された「ヴィオラ協奏曲」の世界初録音】 アルバムには、ヴィオラのためのオリジナル作品のほかに、自作ヴァイオリン曲からの編曲作なども含まれていますが、なかでも“完全な形” での初 録音となる「ヴィオラ協奏曲」は一番の聴きもの。 1884 年にブリュッセル音楽院の校長フランソワ・ジュヴェールに委嘱された「ヴィオラ協奏曲」は、その年の9 月までに全曲を書き上げたものの、 1885 年1 月に第1 楽章のオーケストレーションが完了した時点でなぜか中断されています。 1890 年に、フバイは「演奏会用小品」というタイトルで、あらたにオーケストラの演奏部分や大規模なカデンツァを挿入するなど、現在の第1 楽章に 何箇所かいくつか改訂を施しており、この1 楽章版はピアノ伴奏つきで、1891 年にハイナウアーによって出版されています。なお、「演奏会用小品」は ヴィオラのほかにチェロでも演奏され、フバイの友人で室内楽のパートナーであったポッパーが改訂をおこなっています。 いっぽうで、フバイはその後も、ちょっとした改訂を重ね、1929 年にはチェリスト、アルノルド・フォルデシのために部分的に再編曲しています。 このたびの録音では、ヴィオラとピアノ版の自筆譜をもとにフバイの様式にあわせて、後半2 楽章にラヨシュ・フサールがオーケストレーションを施し ています。ちなみに、第1 楽章は上記1884 年版で聴くことができますが、演奏者たちは1890 年頃に追加されたカデンツァや管弦楽の移行部を、コー ダの前に入れて演奏したりしていて、こちらのオーケストレーションは1929 年版から再構成されています。 ヴィルトゥオーゾ、フバイ自らが何度も手を入れていることから思い入れの強さが窺い知れる「ヴィオラ協奏曲」。初めてオリジナルの姿に迫る注目の内 容といえるでしょう。 |
PETER BARSONY / ペーテル・バールショニ