これほど音楽がジャケットに具現化された作品も珍しい。冷気が背すじを行ったり来たりするキヨシ・キタガワの(1)。一瞬、ある種拒否されたような気分になる。日本で出来たジャズではない。アメリカにいて初めて可能な音楽だ。「パリのアメリカ人」ではないけれど「ニューヨークの日本人」のジャズ。山中千尋にも少しそんなところがある。前作では「タイム・トゥ・ゴー」が私のベストだったが今回は(6)の「イノセント・ミステイク」。例によってブライアンのドラムがビシバシ弾けてこの人のタイムは現在世界最高だ。ブライアン無くしてこの作品なし。もう一曲(3)「CIAO,CIAO」。平安時代にジャズがあったらこんな曲想が大受けしたはず。日本美を表していてさすが「ニューヨークの日本人」だ。全体3回目くらいから体に馴染んでくる。いったん馴染んだらそう簡単には離れられないそういうタイプのジャズ。日本人に生まれて良かった。ほとんど日本人にしかよさの分からないジャズ。それが(2)のシャフラノフ・トリオ。逐一わかり易く、ビギナーによし、そして、マニアにもよし。ジャズの険しい山を一山、二山越え、晩年はこういうジャズを微笑みつつ聴き過す。そういう達意のジャズ・ファンになりたい。ジャズ・ファンには個性を突出させたピアニストを好む人とそうではない人がいる。私は後者だ。それは演奏上の個性より曲の持つ美をしっかり表してくれるからだ。シャフラノフにしろ、(3)のボブ・ハミルトンにしろ、曲でファンを裏切らない。作曲された主題旋律よりさらに美しく表現しようとしたボブ・ハミルトンの「ラブ・レターズ」は私のここのところの連続聴取曲になっている。ビーズ・ワックス盤フランクリン~クローバー~シールズの『サマー・セレナーデ』、同じくビーズ・ワックス盤ロジャー・ハリス・トリオ『ライヴ・フロム・シカゴ』、XENOPHONEレコード、ロブ・ハント・トリオ『クローズ・ユア・アイズ』、『コン・アルマ』なども楽しくぽつりぽつりと聴いている。
(1)KIYOSHI KITAGAWA / I'M STILL HERE (ALTELIER SAWANO / AS071 / \2,500-税込)
(2)VLADIMIR SHAFRANOV / EASY TO LOVE (ALTELIER SAWANO / AS070 / \2,500-税込)
(3)BOB HAMILTON / WIXWAX (CAPRI RECORDS / 740832 / \2,090-税込) |