現代最高峰のドラマー、アントニオ・サンチェスの2017年最新作が発売

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2017.10.23

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現代最高峰のドラマー、アントニオ・サンチェス
果敢な挑戦が結実した最新作が遂に発売!!



現代最高峰のドラマー、アントニオ・サンチェスの果敢な挑戦が結実した、最新作。
チック・コリア、ゲイリー・バートンら、数々の巨匠が、サンチェスを起用してきた他、パット・メセニー・グループのレギュラー・ドラマーを10 年以上にわたってつとめていることは、まぎれもないセンスの証明。一方、2014 年には映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の音楽を、ドラム一台で、しかも映像を見ながらの即興で、一分の狂いも見せない完成度で創り上げていったことで、世界中から注目を集めたのも記憶に新しいところでしょう。

そして、本作は、そんなサンチェスにとって、後者の才能を最大限に発揮した作品になりました。
サンチェスいわく、かつてない<< 実験的なプロジェクト>> であり、バードマン同様、全てを自らが手がけた壮大なソロ・プロジェクト。NY にスタジオ付きの自宅を持ったサンチェスは、慌ただしいツアーの合間から戻っては、延々と断続的にドラムと向き合い、本能的に思い浮かんだものを即興でレコーディングしていったとのこと。しかし、それは、『バードマン』の成功を自らの作品に結び付けるという理由のみではなかったようです。

時は、2016 年11 月の大統領選挙に向かって世の中が激動しはじめた時期。
メキシコに生まれたアントニオ・サンチェスにとって、祖国を意識する時であり、またグリーン・カードを所持しつつも、アメリカ合衆国での居住をめぐる問題/ 市民権も根底から考えることも意味したとのこと。結果としては、11月、選挙権も持って投票出来たとのことですが、フラストレーションや、怒りの感情は自ら驚くべきレベルに達していたとのこと。そうした感情を以て創造的な行為に向かうことは一種のカタルシスであり、一種の瞑想的な行為でもあり、儀式でもあった、とのことです。

最終的には、それらドラム・ソロにエレクトロなモチーフや、ヴォイスを重ね合わせて多重録音。
作品の原点自体が危機的な社会情勢を反映しているだけに、作品の通底には不穏な空気感があり、カオス、破滅、焦燥感といったものも予感させる展開ながら、物語性にも富むところは、メセニー・グループのドラマーならではともいえる展開。
また自らの出自であるメキシコを象徴させるように自らの祖父である、名優イグナシオ・ロペス・タルソのパフォーマンスも冒頭に据え、マリアッチ・ミュージックを取り入れているところも興味深くあります。

サンチェス曰く、ベック、ハイエイタス・カイヨーテ、ビョーク、リトル・ドラゴン、ボノボ・・・といったアーティストにもインスパイアされ、自ら、今までにない地平にも到達できた、とのこと。アンビエント、テクノ、またヒップホップ、ミニマル・ミュージック・・・といった様々な要素が絡み合う、サンチェスならではの、マイルストーン的作品です。

■Antonio Sanchez(ds, keys, electronics, voice)