夕刊をながめていたらクラシックの有名なオーボエ奏者がこしゃくなことを言っている。日本人の聴衆は総じて保守的でよく知っている曲を気持ちよく演奏してくれればいい。対して欧州の聴衆は癒しより刺激を求める。常に新しいものを提供していかなければ満足してもらえない。新たな表現との出会いも音楽を文化として育て根付かせるきっかけになる。このオーボエ奏者の言うことはジャズに当てはめても同じ。我々日本人は保守的でジャズを癒しとして聴く人が多い。たまには刺激もいいが私など大抵、癒しで聴く。音楽とはそういうものだろう。それはそれでいいじゃないか。保守的な日本人の温和でやさしい特性がそういう聴かせ方をさせるのだ。昔、バイキングで外へ攻めていって女をかっさらっってきた野蛮人とは違うのだ。それかあらぬか、最近の欧米ピアノ・トリオ。新たな表現とやらの美名のもと、わけの分からぬ、曲の態をなさない、一人よがりが多く出始めた。よくない。大変よくない。ピアノ・トリオは80%の保守的癒し系のファンで成り立っている。そういう人たちが買わなくなってしまったらどうするのだ。新しいものがいいのではない。新しくていいものがいいのだ。ピアノ・トリオは今、取捨選択がとても大事になった。今月の、保守的癒し系。そういう特質にゴツンと鋭いグルーブ感を加えた秀作を3枚推薦しよう。ニュージーランド盤の(1)。女性ピアニスト。メロディアス、グルーブ感ばっちり。間のとり方最高。音色豊かにして大胆なタッチ。久しぶりの力演に出会ってホクホク状態なり。ジャズ・ファンは体裁の見せ方に違和感を憶える人もいるだろう(2)の寺村容子盤。音楽内容は外見と違って、いや外見がこれだけに一層仰天するはず。曲よし、リズムよし、やさしいグルーブ感よしの三拍子そろった傑作。寺村容子のピアノには心があってそれが最高なのだ。淡い心。(3)。ジャズは古いものが新しい。それがよく分かるピアノ・トリオ。こうした保守的なトリオで心が弾んでくる。それが刺激というものだ。
(1)CHARMAINE FORD / LIVE AT SANDWICHES (FORD MOTION RECORDS / FMR9003 / \2,195-税込)
(2)十五夜 / うさぎの大冒険 (月見レコード / TKM071 / \2,500-税込)
(3)JULIEN-FRANCOIS ZBINDEN TRIO / IT'S THE TALK OF THE TOWN (TCB / 27992 / \2,930-税込) |