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2007/08/20
寺島靖国の赤道直下 2007.AUG


例によって新譜コーナーでジャケットの塩梅のいいのから手に取り曲目などを眺めているとそばを店員さんが通りかかったので胸の中の熱いものが沸き起こるような、グルーブとスィングで体が揺れるような、さらには一度聴いたら2~3ヶ月は忘れないようないい曲の入ったCDはありませんかねと訊いたら、「そういうのはなかなかないですね」という返事であった。ということは、そうではないCDが新譜売場に溢れているということなのだろう。なぜ、私の希望するようなCDが出てこないのか。いろいろ難しく音楽の構成を考えるよりとても簡単なことではないか。上記の三大要素を満たすCDが出てくれば、CDはどんどん売れてゆくだろうに。そんな分かり切ったことが出来ない今の海外のミュージシャンはなにかどこか考え違いをしているのだ。50~60年代のジャズには胸が熱くなるものが多かった。たとえば(1)の私の一番好きな曲、トーツ・シールマンスの「Blue And Yellow」など、ドーンといこうと思えばいくらでもいけるんだけどそこを抑えて、抑えの美を発揮して、しかし時々tpやtsをギラつかせる。でもそのギラつきが穏やかで全面開放ではないく点描的でそこで私は胸を熱くするのである。静かなギラつきの美学というのを私はここで知ったのであった。(2)の「Melancholy Serenade」にはまいった。50~60年代にジャッキー・グリースンが書いたこの曲を演奏したピアニストが何人いたか。こういう曲、そして演奏に出会うから私は新譜を次々求めるのをやめられないのだ。ピアノはやはり静かに沈み込む方角の人で、しかし時折、ギラリをそれと見せないようにやる人。そういえば「テンプテイション」などという曲の選択はそれだけでギラリ、ではないか。(3)はもう相当歳の人のようである。BILL HEID。いやだからこそ、ピアノの行間からじわじわと中年の色気がぬめりを帯びた軟体動物のように染み出してくる。若い人にはなかなかこうしたピアノの色気は出しにくい。14才の少年になどとても無理。私思うに女以上に色気がジャズ・ピアノにいちばん大事なのだ。曲はすべてオリジナルで、そこで買い手は全面的に躊躇するが、大丈夫。きちんと旋律を意識しており、「こういう曲」というのが分かる曲だから安心安全だ。お推めは自ら歌う「Wondering Blues」。ジャズは過去も現在も未来もブルースが基本とわかってくる。

(1)JAZZ QUINTET 60' / JAZZ QUINTET 60'(澤野商会 / MCD15124 / \2,500-税込)
(2)CLIFF MONEAR / IT'S ABPUT TIME (CLIFF MONEARE / 000001 / \2,195-税込)
(3)BILL HEID / AIR MOBILE (DOODIN RECORDS / 066449502224 / \2,090-税込)

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