【連載】★山本隆のJAZZ IN THE WORLD★ 2014 Dec.

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2014.12.17

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 ■12/26(Fri) モニカ・ゼタールンド / チキン・フェザーズ

MONICA ZETTERLUND / モニカ・ゼタールンド / Chicken Feathers / チキン・フェザーズ


昨年の12月5日だった。モニカの映画のサントラ『MONICA Z』について書いたのは。あれからもう一年で、映画も無事公開された。初日から盛況で土日などは立ち見の回もあるようだ。今年の8月以降映画会社の宣伝の頑張りもあり、多くのモニカに関する露出がなされた。モニカに関する細かいことが、普通に暮らす人々へも伝えられた。「モニカって何?誰?」と思っていたような人も映画館へ足を運び、最後には涙を流してサントラのCDを買って帰るという人が多いとのことだ。先日ブルーノート東京で2夜連続で行われたエッダ・マグナソンのライブは全てが超満員だった。終了後のサインにも長蛇の列をなしていた。売店でもやはり、サントラのCDがバンバン売れていたが、嬉しいことにモニカ特集をしたJAZZPERSPECTIVE VOL8もそれなりに売れていた。ということでこんなにモニカのことが話題になったのは、1974年にモニカの『ワルツ・フォー・デビイ』のレコードが発売されてから、初めてのことなのではないか、と思う。そういい機運が高まった最中に、再発が待たれていた『チキン・フェザーズ』が復刻されたのだった。これは快挙である。若い世代の人からも絶大な支持を得ている72年の作品。何年か前に、ストックホルムの<グレン・ミラー・カフェ>でたまたまライブレコーディングが行われていて、それがSRだった。思わずその時の責任者の方を呼んでもらい、『チキン・フェザーズ』の復刻の重要性を説明したのだが、あいにく技術屋さんだったので、その後のコンタクトも途切れたのだが、ユニバーサルさんの尽力で実現したのは、悦ばしい。ボクは、B面3みたいな曲がいちばん好きだ。(山本隆)


 ■12/25(Thu) JULIE KELLY / Happy To Be

JULIE KELLY / ジュリー・ケリー / Happy To Be

そろそろ今年の仕事納めということで2014年を振り返ってみると一番の出来事は、やっぱり「手術入院」だ。28年ぶりに入院した。骨折の手術とはいえ大変で、いまだに指が動かない。ちょっとだけ不摂生な生き方を改めてみようかなと考えた。海外には4回行った。4月のミュンヘン(買付)、6月のストックホルム&バーゼル(買付)、10月第1週エディンバラ(買付)、10月第4週バルセロナ(個人旅行)だ。ひと月の間に、12,000キロを2往復するのは、結構疲れたけど。最近感じるのは、気候の変化。6月のストックホルムは数年ぶりとかの寒さで、ダウンジャケットを買ったし、10月のエディンバラは真冬。10月終わりのバルセロナは、なんと真夏で、Tシャツ一枚で過ごせた。グローバル・ウォーミングによる気候の変動が実感できた一年でもあった。写真とかポスターとかのジャズ的メモラビア関連グッズとの出会いもできた。世界には、こんなものまで集めている人がいるのかと驚いた。マイルス・ディヴィスのサングラスもあったなぁ。ジョン・コルトレーンのストックホルムで演奏した時のポスターとか、世界に二つしかないパーカーのスカルプチャー(彫刻作品、ジュリー・マクドナルド作)とかは圧巻だった。来年にかけてもそんなアーティスト関連グッズを徐々に日本に持ち込んでくるつもりだ。それで今日は、カルフォルニアの明るい陽光を纏ったようなさわやかなサウンドと歌声が魅力のジュリー・ケリーの一枚。軽い気持ちで聴きたいヴォーカルだ。その中に「I Wish I Could Go Traveling Again」が収録されている。「また旅行に行けたらいいのにな」という曲で、旅のエピソードなどうたいあげる。ステイシー・ケントが2007年の作品で採用しているが、このジュリー・ケリーの歌声も旅情を盛り立ててくれる。(山本隆)


■早朝のハウプトバーンホフ(ミュンヘン中央駅)

■エディンバラの建築物は何故か黒ずんでいる


■先日も日本の科学者が受賞したノーベル賞の授賞式が行われるストックホルムのコンサートホール
 
 ■一日2名しか宿泊できない、かわいらしいホテル(民宿?)に4泊した。バーゼル郊外。

 
 ■ガウディの傑作、お菓子の家



 ■12/24(Wed)CHRISTIAN SCHWINDT / For Friends And Relatives 

CHRISTIAN SCHWINDT / クリスチャン・シュウィンツ / For Friends And Relatives
10月初旬、スコットランドのエディンバラに行っていた、レコードの買付だ。10月初めというのに既に真冬の寒さで閉口した。日本の最北端が北緯45度らしいから、それより10度も北に位置しているからだろう。訪問したコレクター宅では諸処レコードを聴かせてもらった。何枚かのうち「これ誰だろう、いいなぁ」というものがあった。それが、クリスチャン・シュインツだった。聴きこんでいない自分を恥じた。でもエディンバラで、さりげなくこのフィンランド・ジャズ界屈指のレア盤が流れてくるとは思わなかったのだ。コレクター氏も「どうだ、いいだろう。知っているかいコレ」という得意げな笑みを浮かべていた。「ちょっと前にCD化されましたから、一応は」と答えておいた。「友人と親戚連中の為に」とかいうタイトルが面白い。因みに、ジャケだけど、リーダーのクリスチャンは右端の人で、真ん中に威厳アリアリで立っているのは、オットー・ドナーで、彼のプレイがやはりすごいと思った。深みが増していくオリジナル曲がいい。特にここでの3とか4とかがオススメだ。3はもちろん「My One And Only Love」をモチーフにしたものだが、壮大な曲への変貌している。こんなにも心に響いてくる曲が詰まった「レア盤」というのも珍しいかも。真の名盤でレア音源のLP復刻として歓迎したい。(山本隆)


 ■12/22(Mon)DANIEL KARLSSON / Fusion for Fish(CD)  
 

DANIEL KARLSSON / ダニエル・カールソン / Fusion for Fish(CD)

エスビヨン・スヴェンソンなどを輩出した「スウェーデンのアート・ブレイキー」ことフレデリック・ノーレンのバンドで腕を磨き、「オッドジョブ」を結成。ヴィクトリア・トルストイなど多くのセッションに参加、スウェーデンの中心的存在のピアニストとなっている。この作品、プログレッシヴ・ジャズとも言うべきやんちゃな旋律とビートで、新境地を開拓した。土曜日JAZZPERSPECTIVEの発売記念イヴェントの前にこのCDをかけていた。普段行ったことがないような場所で、つまりライブハウス的な場所でジャズのCDをかけたことは一度もない。そんなスタジオ風な場所で威力を発揮したのがこれだった。やんちゃなピアノトリオはこんな場所にもピッタリとフィットするのだな、と感心した。
ピッタリとフィットすると言えば、クリプシュのヘッドホーンだ。先日からKlipsch STATUSを使っている。何年も使っていたSONYのヘッドホーンの耳あて部分の柔らかい黒いモノが剥がれてきて、顔につけたまま外出などすると積極的に恥ずかしい。そんな恥ずかしい思いを何度もして、早く新しいものに替えなくちゃと思っていた矢先このクリプシュに出会ったのだ。最近人気があるらしい、なんて言ったら、半径2メートルのジャズweb担当より、「ボクは昔からクリプシュ一筋ですよ、最近評判いいとかではなく、昔から評判いいんですよ」とたしなめられた。ネットで調べてみると確かに古い様式のスピーカーとか雰囲気あって良さそうだ。歴史ある会社なのね、知らなかった。でこのヘッドホーンは、「ファッション性と高音質を両立させた」というキャッチコピーを持つ。そうだろうなぁ。ボクが、初めてこれを頭上に載せて新着の音源のチェックをした日、2名より「ヘッドホーン替えたの?いいじゃない」と声をかけられた。だろうなぁ、目立つんだろうなぁ。無機質な感じでどこか宇宙的なデザインでもある。昔のSABAとかMPSのジャケットなんかに出てきそうでもある。外出中に頭上に載せたい。人に見せたくなる。電車の中とか。ボクは電車の中は抵抗あるので飛行機の中かなぁ。たっぷり12時間のフライト、これを頭上に載せてヨーロッパまで過ごしてみたい。ハード・バップもフリー・ジャズもヴォーカル・ジャズもピッタリと耳にフィットして、聴こえてくる。スタイリッシュで高音質なものを捜している人には、いい感じなのではないだろうか。新宿ジャズ館、JazzTOKYOで試聴ができます。公式サイト http://www.klipsch.jp/


耳にあててみた。ピッタリとフィットする

スタイリッシュなデザインのクリプシュ ヘッドホーン


 ■12/18(Thu)JONAS KULLHAMMAR / Gentlemen


JONAS KULLHAMMAR / ヨナス・カルハマー / Gentlemen(CD)


ヨナス・カルハマーの新作は、驚くべきことにストレート・アヘッドなジャズだ。彼の歴史の中でも初めての試みとなる。店頭なんかで流れていると「あっこれいいなぁ」と衝動買いしてしまう内容だ。それで彼に興味を持ち、旧作品なども聴いてみようかな、と手を出そうとするとかなりのスタイルの違いに途惑ってしまう、という話も聞えてくる。これは、スウェーデンの映画『ジェントルマン』のサントラでヨナスが音楽監督を務めたものだから、いつもと様子が違うというわけだ。数年前にヨナスの自宅の地下にあるレコード室を見せてもらったことがあるけど、ブルーノートなど50年代、60年代のハード・バップ的レコードもコレクションされていて、リアルジャズも聴いているんだな、と発見したことがある。そんなわけでここでのヨナスはセクシーな音色で、普段やろうとしないストレート・アヘッドなジャズに果敢に挑んでおり好感が持てる。曲により本当にうっとりしてしまう演奏もある。是非とも鑑賞をオススメする。(山本隆)


 ■12/17(WED) JAZZ PESPECTIVE Vol.9


JAZZ PERSPECTIVE / VOL.9 / ジャズ・パースペクティヴ
JAZZPERSPECTIVE VOL9が発売となる。年2回の発行ではあるけど、毎回疲労困憊な気持ち、いつまで経っても「慣れる」とか「少しはベテランになったかな」という気持ちがない。いつまでたっても初心者だ。今回などは、校了直前に左手薬指を骨折してしまうという体たらく。人生終わったかとも思った。顛末はこうだ。11月の休日午後4時、素面で(ここが重要で20人中19人が飲んでたの?と言うから)、お台場で買い物しての帰り。品川シーサイド駅から自宅へと歩いていた。進行方向からやってくる自転車2台としゃがみこんでいる子供。邪魔だなと思いボクは少し道をよけた。しかし下を見ていなかった。そこは丁度マンホールがあったのだ。その日は、オールデンの革靴を履いていて、これ結構滑るんですよ。で案の定、時速100キロで地面にぶつかりましたから。不幸中の幸いで、左手だけでよかった。右手も両膝もぶつけた。最後の校正作業は、右手だけでページをめくる。右手だけでキーボードを打つ。右手を酷使するからすぐに疲れる。まあさんざんだったけど、こうして書店、レコード店に並べることができてなにより。今回はスイス特集です。表紙はハンガリーのチェメール・ボグラルカです。内容は書店、レコード店で確認してみてください。12/20(土)発売イヴェントをやります。スライドを使ったトークは、誌面では味わえないものもあります。是非ご来場ください。(山本隆)

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