<連載> ★山本隆のJAZZ IN THE WORLD★ 2015 Jan.

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2015.01.07

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 ■KRZYSZTOF KOMEDA / Ballet Etudes - The Music Komeda

KRZYSZTOF KOMEDA / クシシュトフ・コメダ / Ballet Etudes - The Music Komeda(LP)
KRZYSZTOF KOMEDA クシシュトフ・コメダ

二日酔いで頭が重い、カラダがだるい。そんな反主体的な態度を一変させる出来事があった。いつものように海外からのメールを朝一番でチェックしていた。ドイツのBeJazz!から何やらメールが来ているぞ。開いた途端に驚いた。コメダのメトロノーム盤のジャケがそこにあった。「ねぇNさんこれ見て」と隣席のN氏に声をかけた。「うぁ、これは」とN氏絶句する。「そうかそうか、ついにコレを復刻するのか」としばし時間を忘れて放心状態、気を取り戻してようやくこれを書き始めた。色々レア盤とされるレコードがある中で「最後の砦」的な様相を呈する。世界中のコレクターが所有したいと望んでいるが、新年初詣の大吉おみくじ「望み、叶う」は、まず叶わない。ボクがこのレコードの存在を知ったのは数年前、あるジャズ雑誌でのアンケート「私の好きな一枚」にて廃盤専門店の方が、ジャケ入りで載せていた。「何、これ知らないぜ」と驚愕。その後池上本門寺あたりでお百度参りを重ねた(かなり大袈裟)結果、ある日ヨーロッパからの荷物の中にこれが混じっていたのだった。2年ほど前にも、ドイツへ買付に行った際に偶然、入手に成功したのだった。ユニオン買付精鋭チーム全員の実績をかき集めても、5枚(5回)しか扱っていないのだ。メトロノームというとスウェーデンのレーベルという認識だが、これはデンマークのメトロノームである。録音は1963年。レコードは世界限定500枚。これに関しては、ドイツ国内の需要はもとより、ポーランド、デンマーク、スウェーデン、フランス、アメリカなどのディーラーの争奪戦も考えられる。うちとしても最大限確保はしたいと考えている。発売は2月22日。内容は直接確かめてみては如何だろうか。(山本隆)



 ■ダスコ・ゴイコヴィッチ / サンバ・ド・マー

DUSKO GOYKOVICH / ダスコ・ゴイコヴィッチ / SAMBA DO MAR / サンバ・ド・マー

2003年10月25日(土)に、当時やっていた吉祥寺メグでの新譜試聴会でコレを紹介している。因みにちょうどその頃売れていたのが、女の子のジャケが可愛いJURAJ STANIKの『SHAKEN NOT STIRRED』 (MAXHANTER)、オランダの隠れた逸材でその後何度も復刻されたROBERT ROOKの『NTRODUCING』、パリのレコード店で見つけて仕入したらドカンと売れたERIC MOULINの『LILI』などだ。「あぁ、なるほどあの頃だったのね」となんとなく当時を思い出す人もいるに違いない、でももう11年も前なんだよね。懐かしい。ボクは、7曲目の「Quo Vadis Samba」が収録されているということに最初感動した。この曲は、1979年の作品『Trumpets and Rhythm Unit』(RTB)の1曲目に収録されているダスコのオリジナル曲で、ダスコの持つ哀愁の美学と軽いノリが融合して心地のよいヴォッサの名曲として君臨するものだ。昔店頭でこれをかけていたら「誰ですか、コレ」と若いお客さんに注目された思い出がある。オリジナル盤だったから2万円ほどした(後に再発盤が出た)けど、満足な買い物だったに違いない。ここでは、ギターのフェレンツ・シュネートベルガーなどと一丸となって、更なる心地よいサウンドを作り上げている。絶対のオススメだ。因みにこの曲はジャンニ・バッソもお気に入りで80年代から演奏している。2007年に発売されたGianni Basso & Irio De Paulaの『Ricardo Bossa Nova』(デジャヴー)の3曲目でも演奏している。バッソはその2年後に他界するのだが、最後まで粋なフレーズを吹いたイタリアジャズ界の巨人で、その貫録を見せつけてくれた。(山本隆)



 ■BJARNE ROSTVOLD / Tricrotism

BJARNE ROSTVOLD / ビヨルネ・ロストヴォルド / Tricrotism(CD)

レア盤がまたドイツの復刻優秀レーベルから出る。このレコードを初めて扱ったのは、1998年頃だった。今から17年前、ボクらはヨーロッパのレア盤をまだまだ見ることが少なかった。全然知らない世界だった。これは結構まとまったコレクションの中に含まれていて、ジャケのデザインとかメンバーとか匂いとかに敏感に反応し、小躍りもしてみた。当時は、『JazzQuintet 60』のフォンタナ盤もメトロノーム盤も知らなかった。サヒブ・シハブのOktavもDebut盤もホンモノを見たことがなかった。あまっさえ、ベント・イェーディックなんて知る由もなかった。「まだまだ知らないレコードはいっぱいあるなぁ」と世界戦略への野望を抱いてみたのだった。『馬車』や『ジャズクィンテット』を見るのは、そんな戦略の賜物であった。それで、このレコード。ビャルネ・ロストヴォルド(ds)、ニルス・ヘニング・オルステッド・ペデルセン(b)、アラン・ポチンスキー(tp)という3名のトリオだ。この3人は60年代、デンマークでの多くのレコードに参加しており、重要な位置を占めていた。とりわけペデルセンのベースには、引き込まれざるおえない。彼のベースを聴いているだけで快感だ。ここでの「Well you needn’t」なんかでそんな雰囲気が味わえる。さりげないビャルネのドラム。ポチンスキーの当時の絶好調なトランペットが楽しめるだろう。(山本隆)



 ■JOE COHN / S'posin'

JOE COHN / ジョー・コーン / S'posin'

MUSIC BIRDの番組「ジャズ・イン・ザ・ワールド・アゲイン」という番組をやっている。2009年からだから、やがて5年になる。毎週金曜日21:00-22:00に放送している。「アゲイン」というのは、そのかなり前に「ジャズ・イン・ザ・ワールド」という番組をやっていたことがあり、再度始める際タイトルを考えるのがめんどうで、「アゲイン」とした。収録は半蔵門のFM東京のスタジオでやっている。初めてそのスタジオを訪れたのは1995年で、岩浪洋三、中山康樹、寺島靖国3氏がホストを務める番組へのゲスト出演だった。その後、寺島さんの「ブルー・アンド・センチメンタル」という番組が始まって最初から3回目まで、ゲストで呼ばれた。しばらくしてボクらで番組をやらないかとオファーがあり沼田順氏と「ジャズ・イン・ザ・ワールド」を始めた。男ふたりでは華がないというので、3か月単位で女性に来てもらって華を添えた。ニューヨークでヴォーカルを勉強していたナトちゃん、ヴォーカリストの澄淳子さん、ピアニストの安井さち子さん、山中千尋さん(数回のみ)に出演してもらった。その番組も5年くらいやった。先日収録に出かけた際に、「ヤマモトさん長い間お疲れ様でした」と番組の打ち切りを宣告された。3月いっぱいで終了する。あと8回分、8時間分の内容でボクの番組は終了する。好きなジャズをばんばんかけるつもり。約20年通った半蔵門にもこれで行くこともなくなる。今日の一枚は、これ。2013年12月にご紹介したノエル・ジュークスのタイトルは『Chasin’ The Pres』というものだった。今回その彼が参加している作品が出るので、また紹介したい。アル・コーンの息子である、ジョー・コーン(ギター)がリーダーのもので、テナー&ベース&ギターのトリオという編成だ。アル・コーンといえば、ズート・シムズと双頭コンボを組んでいた割には、ズートほどには評価が高くないような気がするけど、どうなんだろう。じっくり腰を落ち着けて、例えば『コーン・オン・ザ・サキソフォーン』(Dawn)とか聴くといいんだけどね。あと『Earthy』(Prestige 7102)におけるアル・コーンは絶品なので是非押さえておきたい。でノエル・ジュークスのスタイルは基本レスター・ヤング系のテナーで、この小さな編成で、俄然その魅力を発揮している。例えば、3曲目の「All Too Soon」、「飽きっぽい」という意味の曲で大抵はスローで演奏、歌われることが多い。エラとかサラとかステイシー・ケントとか多く歌われている。因みにボクはジェリ・サザーンのヴァージョンが好きだけど。そんな愛されている佳曲、素晴らしい演奏でうっとりするではないか。あっ、それから2曲目の「The Gentle Rain」は勿論ルイス・ボンファの曲で、いいアプローチ。6曲目「How Am I To Know」は、存在を知らなかったけどいい曲。この編成にあっている。8曲目「粋な噂をたてられて」、好きな曲だから何があっても驚かないと思っていたが、その粋さ加減に、軽妙洒脱という四文字熟語をこれ聴いて久しぶりに思い出してしまった。昔のコンコードとかパブロ辺りのジャズ路線一筋みたいなものを感じましたね。(山本隆)




 ■V.A.(BE! JAZZ) / Modern At The German Jazz Festival 1966

V.A.(BE! JAZZ) / Modern At The German Jazz Festival 1966(2LP)


知らなかった。この再発盤、てっきりオリジナル盤が存在しているものとばかり思っていた。何度も何度もドイツのコレクター宅へ出向き、多くのレコードを購入してきたのに、それでも一度も目にしたことがなかったのだから、それはそれはレアなレコードなんだろうな、と今の今まで思っていた。しかし違ったんだよね。スウェーデンのトロンボーン奏者エイエ・テリンに『At The German Jazz Festival 1964』(Metronome→Dragon)があるが、それと同じフェスティヴァルの66年音源、今まで発表されていないものの集大成がこれなのだという。ジャケットもSabaとかMPSの雰囲気を真似て今回創作(制作)したのだという。どうりで今まで見たことがないわけだ。で、タイトルで「Modern」ときっぱり宣言しているように、それぞれの曲はどれもがモダンだ。今先ほどドイツから送られてきた音源を聴いて納得した。「もう少しで出来上がるから待っていてね」ととても興奮した筆致で、そのレコード会社の担当者は知らせてきている。ボクも自ずとコーフン状態になって、その入荷を待ちたいと思ってきたぞ。(山本隆)




 ■アル・ヘイグ / チェルシー・ブリッジ


AL HAIG / アル・ヘイグ / CHELSEA BRIDGE / チェルシー・ブリッジ

2月4日発売予定

2002年のCD発売以来13年ぶりに日本国内で発売される。いいニュースだなぁ。前回の発売時、ボクは店舗の人間では既になく、オフィス勤務。対面販売でこの作品の素晴らしさを力説して販売したいと思ったが叶わない。ではではと通販で売ってみようということになり、通常は5枚くらいしか仕入しないところに100枚投入してみた。どうしてもこの隠れたピアノトリオの傑作をお手元に届けたいという気持ちが伝わったのか、見事すべて販売しきったのだった。あれから十数年、別段、名盤殿堂入りを果たした、とか、「アレはいいね」とジャズファンの間で話題にのぼると、いう話も聞かない。今もって「隠れたピアノトリオ」としてひっそりと身を潜めているのだ。またこれを機会に太陽のあたる場所へと引っ越しをさせたいと思う。そもそもボクはアル・ヘイグが好きで、最初に意識したのは、どの盤だったろうか。おそらくスタン・ゲッツのルースト盤が最初で、次に当時国内東宝から出ていたジョージ・ウォリントンとのカップリング盤『A Day In Paris』というヴォーグ音源だったと思う。そのうちにスポットライト盤『Invitation』に夢中になって行ってゆくわけだ。「ホリーランド」~「インヴィテーション」あたりが最高で今もって燦然と輝く名盤だと思っている。そしてある時この『チェルシー・ブリッジ』を知った。おそらく1980年から1985年の間だったハズ。地味なジャケで期待もしなかった、というか最初は、同じEastWindから出ていたロニー・マシューズの『トリップ・トゥ・ジ・オリエント』のジャケに似ていて(本当はぜんぜん似てないんだけど、ピアノ弾いているシルエットが少しね、、、)、間違えて聴いたのだった。そうそう、EastWindとかいうジャズ喫茶が代田橋だったか東松原だったかにあった(1970年代後半)ような気がするのだが、調べても何も出てこない。まぁ、いいけど。この『チェルシー・ブリッジ』は1975年のNY録音だ。その『Invitation』が74年だから翌年の録音。一発でノックアウトされたのは、3曲目の「ハウ・インセンシティブ」だったが、次第に2曲目の「マオコ」に夢中になる。いい曲だ。ウェイン・ショーターの曲らしいが彼がどの作品で演奏したのか知らない。この曲を聴く為に所持していて、思い出しては引っ張り出してトレイに沈めている。ベースのジャミール・ナッサーは、ジョージ・ジョーナーのことだ。(山本 隆)