<月刊>スタッフ推薦盤 2015 Aug.

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2015.08.28

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TWIN DANGER / ツウィン・デンジャー / Twin Danger(CD)

バンド・サウンド。一人一人のミュージシャンが独立しセッションをする形がジャズの主流だった歴史は今も続いているのだが、レギュラーを持つグループもマイルス・デイビスやキース・ジャレットのころから続いている。そしてそのバンドという形態はメンバーの固定化により密な演奏を、そして独自の世界観を提示してくれるものだ。「TWIN DANGER」。本作がメジャーデビューとなったバンドである。ヴォーカルを担当するのはシンガーソングライターヴァネッサ・ブレイ。ポール・ブレイの娘と聞くだけで注目せざるをえないことも事実であるが、その歌唱、スタイルは現在の大海のように広い音楽シーンでも注目に値するものを持っている。アコースティックな演奏でシネジャズのような曲やスウイングする4ビートもある。またひとつジャズの解釈の幅が広まったような2015年重要作品が登場したのだ。(JazzTOKYO 金子)

MISHA MENGELBERG / ミシャ・メンゲルベルク / ICP Live at The Vortex(CD+DVD)

CDを聴くと、いつもの楽しいICPだなあと思う。しかし、問題はドキュメンタリーDVD『MISHA enzovoort』の方だ。2013年、オランダ・アヴァンギャルド・ジャズの最高峰ICPオーケストラはロンドンで数日間演奏したが、それは彼らにとって特別なものであった。なぜなら、ICPの主軸ミシャ・メンゲルベルクがピアノを弾く最後のライブであったからだ。身体が衰え、徐々に認知症に侵されながらも、常にチャーミングに振る舞うミシャ。メンバーの誰もが彼を敬愛するが故に、オーケストラと彼の未来について迷い続けていたのだ。そんなICPの"今"を率直に描いた映像のハイライトは、ミシャが独特なやり方で自身の名曲を奏でる美しい場面だ。今年6月に80歳の誕生日を迎えたミシャ。これを観ずして祝えません。PAL方式、英語字幕付き。(JazzTOKYO 溝邊)

AHMAD JAMAL / アーマッド・ジャマル / Live In Marciac August 5th 2014 (CD+DVD)

毎年のように新たな録音を届けてくれるアーマッド・ジャマル。昨年のユセフ・ラティーフをゲストに迎えたオリンピアでのライブ盤も非常に良い内容でした。まさに阿吽の呼吸と言える素晴らしい演奏でしたが、本作フランスでのライブも負けず劣らずの好内容。独特のエレガントな香りを纏いながら深淵な世界に引きずり込まれていく感じ、ミニマルにも似たトランス感覚。トリオ+パーカッションという布陣だからこそ展開できるジャマル流スピリチュアル全開の新作です。なおライブDVD(PAL仕様)にはCD未収録の一曲が収録されているのも嬉しい。(JazzTOKYO 宮西)

PETROS KLAMPANIS / ペトロス・クランパニス / Minor Dispute

ギリシャ人ベーシスト、ペトロス・クランパニスの新作はまたもやストリングスと組んだ作品。巧みなアレンジによってストリングスが単なる背景となることなくアンサンブルと複雑に絡み合う。ギラッド・ヘクセルマン(g)、ジャン・ミッシェル・ピルク(pf)といった若手からベテランまでの各メンバーによる白熱するソロも要注目。ギラッドの名曲「March of the Sad Ones」もストリングスを迎えて生まれ替わりました。近年加熱するインディー・クラシック勢へのジャズからの回答というべきか、両者のミクスチャーというべきかはわかりませんが、「ジャズとストリングス」の常識を覆してくれること間違いなし!(新宿ジャズ館 花木)

LIBERTY ELLMAN / リバティ・エルマン / Radiate

サイドではHenry Threadgill Zooidなどで活躍が見られましたが、自身リーダーとしてはなんと約9年ぶりの新作です。馴染みのあるSteve Lehman(as)、Stephan Crump(b)、Jose Davila(tuba,tb)に加え、Jonathan Finlayson(tp)とDamion Reid(ds)が参加した、まさにPI RECORDINGSオールスターといえる強力メンバーが結集。M-baseとシカゴ・フリーをミックスしたようなサウンドがベースとなっていますが、決してアヴァンギャルド過ぎず、繰り返し聴いているとインプロの掛合いのカッコよさがジワジワきます。後半M-7,8お薦めです。(新宿ジャズ館 中島)

DARIUS JONES / ダリウス・ジョーンズ / Le Bebe De Brigitte(Lost in Translation)

90年代後半からWilliam Parker、David S. WareらNYフリーシーンを切り取り始めたブルックリン発のレーベルAUM FIDELITY。同レーベルから単独名義では5作目となるアルティスト、DARIUS JONESの新作です。
Tim BerneやRob BrownなどのNYフリーアルティストの流れを汲んだサックス。そして前衛ポエティストEmillie Lesbrosと2フロントでの並走が異様な艶めかしさを放ちます。
2012年にTIM BERNE’S SNAKEOILの1stがリリースされた同時期、DARIUS JONESは3rdをリリースしていましたが、奇しくもこの両アルバムでMatt MitchellとChes Smithという今後鉄板となるコンビをいち早く起用していました。Tim Berne言語の最新継承者が今作でもそのセンスを炸裂させている訳です。
全体としても初期の頃に比べるとアプローチも先鋭化していて、ゾクゾクさせられる良作インプロに仕上がってます。(新宿ジャズ館 有馬)

ODED TZUR / オデッド・ツール / Like A Great River

「イスラエル出身、ニューヨークを拠点に活動」と、昨今のイスラエル・ジャズ・シーンのテンプレートのような紹介のされ方ですが、Oded Tzurからは何か異質なものを感じてなりません。アヴィシャイ・コーエン、オメル・アヴィタル、エリ・デジブリ……これまでのイスラエル出身ミュージシャンはコンポジションやアレンジから強烈なエキゾチックな香りを感じる作品が多かったと思いますが、今作"Like a Great River"を一聴しての印象は『メロウ』。変拍子もインパクトあるリフもない、流れるようなソフトなバラードアルバム。しかしながら、ソロをしっかり聴いてみると、不思議なくらいジャズ的ではないエキゾシズムを感じるのです。「よくあるイスラエル・ジャズ」とは一線を画した、静かなる傑作だと思います。アヴィシャイのトリオや自身のトリオでのプレイとはガラッと変わった耽美なプレイを見せるシャイ・マエストロの客演にもご注目ください。(横浜関内店 山田)

十中八九 / 十中八九

不破大輔プロデュース!!! と聞いて細胞が反応した方は間違いなくそっちの人でしょう。〝神出鬼没系総合エンターテイメントバンド〟と銘打たれたバンド、その名も〝十中八九〟
ここまで聞くと渋さ系かな?と想像しますが、当たらずとも遠からず(笑)、商店街の八百屋のおっさんや印刷屋さんまで巻き込んで演劇・ダンスに、ジャズ・ロック・ファンク・歌謡曲・・・などの音楽がごった煮になったジャズケストラ・エンターテイメント。
渋さのお祭り感を持ちつつも、より庶民的に、よりジャズ的にアプローチされたいわき市からの素敵なお届け物。(営業部 池尻)