<月刊>スタッフ推薦盤 2016 Jan.

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2016.01.31

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LARRY YOUNG / ラリー・ヤング / In Paris -The ORTF Recordings(2CD)
LARRY YOUNG / IN PARIS THE ORTF RECORDINGS

当時、このオルガン奏者には皆「?」となっただろうと想像してしまう。今聴いてもその斬新さがうかがえるということは、この60年代中期の音源はまさに当時の「革命」であったはずだ。しかも今回の未発表音源は「INTO'SOMETHIN'」「UNITY」というラリー・ヤングのブルーノート2大タイトルに挟まれた時期であるということも重要だ。モード奏法、コルトレーンからの影響、などなどと形容されることが多いラリー・ヤングであるが、本作では自身のオリジナリティが爆発し、さらにそれを汲んだウッディ・ショウとの相性がたまらない。この時期のラリー・ヤングは要注意なのだ。また音質も未発表とは思えない良いものとなっている。最高の2枚組ライブ盤だ。(JazzTOKYO 金子)


DIDA PELLED / Modern Love Songs
DIDA PELLED / MODERN LOVE SONGS

すーっと視線を逸らした女性の横顔。まずこのジャケットにやられました。イスラエル出身の若手女性ギタリスト/シンガー、ディーダ・ペレッドの4年ぶりの新作です。オールド・カントリーとブルースのテイストを散りばめたオリジナル楽曲を収録、歌声もギターも前に出過ぎることもなく歌の世界を素直に表現しているところに、非常に好感を持ちました。そして音が素晴らしい!グラミー賞最優秀アルバム技術賞ノミネート(しかも常連!)エンジニアHelik Hadar氏(「HERBIE HANCOCK / RIVER」のエンジニア)が手掛けていて、生の楽器と歌と息遣いが音楽を作っている!と実感できるくらい恐ろしいほど生々しい音なのです。ヴォーカル好き、オーディオ好きに胸を張ってお薦めします!ちょっとした呼吸やや指先でギターの弦を弾く音がくっきりと閉じ込められたいつもより音質のいいアルバムを聴きながら、つくづく私はこういう声が好きなんだなぁ・・・と思ったのでした。(JazzTOKYO中村)


WILLEM BREUKER / ウィレム・ブロイカー / ANGOULEME 18 MAI 1980(2CD)
WILLEM BREUKER / ANGOULEME 18 MAI 1980

楽しいぜ!! オランダフリージャズ界を牽引してきたリード奏者、ウィレム・ブロイカー。彼の死後5年という歳月が経った今、ファンには感涙ものの2枚組ライブ音源がFOU RECORDSよりリリース。ブロイカーが36年もの間創造母体としてきた「コレクティーフ」は、ジャンルの壁など軽~く飛び越え演劇でもなんでもやってしまう超絶パフォーマンスおっさん集団だ。本作は1980年のライブということで比較的初期に当たり、それゆえ演奏はかなり荒削りといえるだろう。とはいえブロイカーが書くスコアの緻密さには舌を巻かずにいられないし、ユーモアのセンスもいつも通り振り切っており、お客さんにも大ウケだ。現にCDケースを開くと、演奏するメンバーを尻目にブイブイ掃除機をかけるBoy Raaymakers(tp)の姿が…。「これでいいのだ」なんて叫びたくなっちゃいますね。サーカスや大道芸の音楽が好きな人には文句なしにオススメできる1枚。(JazzTOKYO 溝邊)


HOWARD RILEY / ハワード・ライリー / DISCUSSIONS
HOWARD RILEY / DISCUSSIONS

99枚しかオリジナルLPが存在しないといわれる幻の名盤『HOWARD RILEY / DISCUSSIONS』がオリジナル同様の白ジャケットで復刻!英国フリージャズ界を代表する名ベーシストBARRY GUY、COLOSSEUM/TEMPESTなどのジャズロック系ドラマーとして著名なJON HISEMANと、BILL EVANSの楽曲やスタンダードを英国らしい緊張感漂うタッチで聴かせるピアノトリオ傑作です。さらに、別編成トリオによる1960年録音の未発表音源2曲入り!(新宿ジャズ館 中島)


V.A.(OSCAR WITH LOVE) / Oscar With Love(DELUXE EDITION)
V.A.(OSCAR WITH LOVE) / Oscar With Love(STANDARD EDITION)
V.A.(OSCAR WITH LOVE) / Oscar With Love(DELUXE EDITION)

チック・コリア、ケニー・バロン、ビル・チャーラップ、ミシェル・ルグラン、リニー・ロスネスなど名前を挙げるだけでもクラクラしそうなピアニストが大集合したオスカー・ピーターソンのトリビュート盤。“オスカー・ピーターソンの未発表曲”というインパクトもさることながら、これだけ豪華なピアニストが同一のピアノ、同一の環境で録音をするということがこれまであっただろうか?それぞれのピアニストの生々しいタッチ、ピアノの鳴らし方が存分に楽しめる博覧会的な一枚になっている(三枚組みだけど)。ピアノファンはもちろん、プレイヤーが聴けば三倍くらい楽しめるのでは。(新宿ジャズ館 花木)


CHES SMITH / チェス・スミス / THE BELL
CHES SMITH / THE BELL

2000年以降、アヴァン・ロックバンドXIUXIUに在籍しつつ、John Zornらのダウンタウンシーンの脈絡で活躍するドラマー(ヴィブラフォニスト)Ches Smith。Tim Berne作品を経由し、まさかのECMデビューを果たしました。
個人的には2010年Skirlからリリースされた連名作『finally out of my Hands』の、言い知れぬ柔軟な存在感にやられ、気になる存在でした。
そんな天性のインプロセンスでECMを眺める本作は、2014年のWINTER JAZZ FESから始まったCraig Taborn、Mat Maneriとのトリオ作品。Tim Berneメソッドの影響も垣間見せながら、繊細さに耐えうるダイナミックな描写は見事。そもそも表現者として素晴らしい彼の今後が楽しみです。

 



DAVID BOWIE / デヴィッド・ボウイ / ★ BLACK STAR (CD)
DAVID BOWIE / BLACK STAR


このアルバムが世に出て二日後、彼は亡くなり、翌日、訃報がSNSで報じられると瞬く間にCDもLPも店頭から無くなった。今はその稀有な"スター"の死の衝撃もほとぼりが冷め、当店も在庫ありの状態に戻っている。彼の死がもし無かったら、果たしてここまで売れただろうか?だからこそ、あの日買った方にも、まだ未聴の方にも何度も繰り返し聴いて欲しい作品になればと願っている。"遺作"としてだけでなく、デヴィッド・ボウイという男が晩年作った、新たな"名盤"として。
前置きが長くなったが、今作はNew Chapter界隈をはじめジャズ業界各所でリリース前から話題になっていた。昨年『Fast Future』(こちらもまた傑作です)をリリースしたドニー・マッキャスリンのバンドメンバー4人にギターのベン・モンダーを加えた5人が、全面的にバックバンドを務めたボウイの新作が出る、と。しかしサウンド面では、エレクトロ色が強く良い意味で無機的だった『Fast Future』とは似て非なるものになっている。打ち込みと勘違いしてしまいそうなほどタイトなマーク・ジュリアナのドラムが前面に出、マッキャスリンのサックスはフリーキーに暴れまくり、裏ではジェイソン・リンドナーが職人技とさえ言える巧みなシンセ・バッキングを効かせる。ジュリアナのドラムとボウイの淡々とした歌いっぷりは不気味なほど「非人間的」であり、その裏で「超人間的」なソロを取り続けるマッキャスリン、卓越したサウンド・メイキング・センスでそれらをまとめあげる「人間的」なリンドナーという、非常に各メンバーの役割がハッキリとした、バンド感のあるポップなアルバムになっていると思う。無機的でクールな印象も一聴して感じられるが、それだけではない、「バンドが音楽を作る」というドキュメントとして非常に興味深く、なぜ彼がマッキャスリンを中心とした若手ジャズマンをメンバーに選んだのか、という問いの回答がしっかりと詰まった、力作であると断言出来る。フォーマットはロックでも、サウンド・プロダクション出来には随所にジャズを感じることが出来るだろう。私のように普段ロックを一切聴かない方にも推薦できる一枚だ。(新宿本館 山田)



PHAROAH SANDERS / ファラオ・サンダース / Love In Us All / ラヴ・イン・アス・オール
PHAROAH SANDERS / Love In Us All

ついに出ました。IMPULSE期のファラオの作品の中でも極上に美しい一曲『Love Is Everywhere』を収録した74年リリースの本作。
この時期は人気作の多いファラオですが、この作品に関してはCDでのリイシューは幾度かあったものの、アナログは2005年くらいに某レコードショップから一度だけの再発しかされておらず、それから早10年。ようやくの再臨。
私自身も05年時の再発で入手し、これまで愛聴してきてましたがこれはもう一枚ゲットするチャンス、と言う事でありがたや。
一聴して引き込まれるイントロのメロディから、スピリチュアルかつフリーキーな5分40秒間。そしてそこから始まる永遠を紡ぐかのような優しい調べへの誘い。
マイフェイバリット・アーティストの一人であるファラオの楽曲の中で、だれかに一曲だけ届けたい、とすれば迷わずこの曲を選びます。
(営業部 池尻)