<月刊>スタッフ推薦盤 2016 December

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2016.12.28

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KEI KAYAHARA / 萱原恵衣 / Passage / パサージュ

デビュー作でもかなり完成度が高いヴォーカル。いきなりWalts For Debbyで心を掴まれます!2曲目以降も彼女のしなやかな声にあったスタンダードナンバーが聞ける一枚。この秋、冬シーズンにはぴったりの曲・アレンジで楽しめます。(新宿ジャズ館 堀)
YUMI ITO / Intertwined

何か良いボーカルものないかなぁ…と探していたところ見つけました!このシーズンにぴったりの暖かく、緩やかなサウンドが特徴のアルバムです。ポーランド人と日本人のミックスの彼女、スムースなボーカルで、スキャットも魅力。アルト、ピアノ、ベースというトリオがバックというのも彼女のしなやかな声をさらに惹きたてています。1. Cheek To Cheek、3. The Nearness Of Youが特にオススメ。期待の若手ヴォーカリストです。(新宿ジャズ館 堀) 
ETHAN IVERSON / イーザン・アイヴァーソン / The Purity Of The Turf

BAD PLUSでのロック、クラシック、電子音楽など多ジャンルへの強すぎる視線でも分かるように、とにかく好きなようにしかやらないイーサンですが、それも指先まで容易にオーガナイズできる確固たるマインドあってのもの。本作はそんなイーサンの鬼才っぷりと、NASHEET WAITSの怪物ドラミング(MARK TURNER / DHARMA DAYS並みのガン攻めバッキング)と、それらをスインギー且つ小粋な立ち回りで繋ぐRON CARTERらの、ひっくり返るような会話が聴ける傑作です。特にM9:ANDREW HILLのSTRANGE SERENADEの強烈なやり取りは、BAD PLUSの変幻自在の曲者ドラマーDAVE KINGとのハマり方とは全く違うので、BAD PLUSのマインドは一旦忘れつつ、是非聴いて頂きたいところです。(新宿ジャズ館 有馬)
PIT DAHM / Omicron

オランダ、ベルギーなどベネルクス周辺で活動するルクセンブルク出身のドラマーPIT DAHMの初リーダー作。ERNST REIJSEGERやMATS EILERTSEN作品でもお馴染みの実力派オランダ人ピアニストHARMEN FRAANJEを迎えての注目のカルテット作品。Gideon Van Gelder、BEN VAN GELDER、JORIS ROELOFら渡米組みのオランダ勢に通ずる内省性やミニマル要素を含みつつ、ブルックリンサウンドを眺望するサウンドを展開。NY通には新鮮に聴こえる作風です(特に後半)。基本的にヨーロッパで活動する中堅のHARMEN FRAANJEが、若手の標榜するトレンドに加わって面白いものが出来上がる、というパターンが今後も出てくる気がします。2014に話題になったREINIER BAAS作品しかり。オランダを中心とした若手世代の動きには引き続き要注目です。(新宿ジャズ館 有馬)
AZIZA / アジーザ / Aziza

Dave Hollandの新グループ"AZIZA"のデビュー作。前作『PRISM』でも見せたようなEric Harlandの叩く硬質なビートに、Chris PotterとLionel Louekeという個性派の二人を加えたメンバー編成。かなり動的なフロントと、それをしっかりと支えて煽っていくバックの二人という構成は、Chris Potterのグループ"Underground"とは一味違った面白みがあります。Lionelの前作『Gaia』からの選曲もあり。こういうチャラい音楽をやる時の、Eric Harlandのカッチリしすぎちゃう感じと、Lionelのいつだって自由奔放な感じが混ざっていて面白いです。
(新宿ジャズ館 花木)
CHARLIE HADEN / チャーリー・ヘイデン / Time/ Life Songs For The Whales And Other Beings

チャーリー・ヘイデン、まさかの新作がインパルスよりリリース。彼の死から2年経った今、リべレーション・ミュージック・オーケストラの新作が聴けることにまず喜ばずにはいられない。2011年ライブ録音と、スティーヴ・スワロウがベースを務める最新スタジオ録音を収録。多くは語らずとも凄みのあるヘイデンのベースは素晴らしい。美しいだけではなく、どこか毒が混ざっているカーラ・ブレイのアレンジは健在。環境問題をテーマにした本作も、物凄いインパクトを持って人々の心に訴えかけうる内容となっている。喪失感のあるメロディ、気迫みなぎるホーン・アレンジ、捻じれるローレン・スティルマン、語りかけるクリス・チーク、雄叫びをあげるトニー・マラビー、呟き呻き疾走するヘイデン。(JAZZ TOKYO 溝邊)
GIULIA VALLE / ジューリア・ヴァレ / Live In San Francisco
スペインのベーシスト、ジュリア・ヴァジェ(ジューリア・ヴァレ)率いるピアノトリオのライブ盤。同じ女性ベーシストで世に出た時期も近いせいか、あのエスペランサ・スポルディングと並べて語られることが多いようだ。ちょっと気の毒である。ヴァジェのベースは卓越した技術を放ちながらも一音入魂タイプで、ズシンズシンと腹に響く。こういう骨太なベーシストは今時珍しい気がする。待ってましたと言いたい。若手注目株マルコ・メスキーダ(p)、ヴァジェ作品の常連デヴィッド・シルグ(ds)との情熱的なインタープレイも素晴らしい。また彼女の書く曲も、独特の和声とダイナミックな展開によって聴く者の耳をまったく飽きさせない。そしてなんといっても、ジャケがかっこよすぎる。(JAZZ TOKYO 溝邊)

YOTAM SILBERSTEIN / ヨタム・シルヴァースタイン / Village

今年8~9月来日公演も話題となったイスラエル出身ギタリスト、ヨタム・シルヴァースタインの新作は、アーロン・ゴールドバーグ、ルーベン・ロジャース、グレゴリー・ハッチンソンの豪華カルテットによるコンテンポラリー作品。オリジナル中心ですが、注目はアルゼンチン音楽界の重要人物カルロス・アギーレの名曲M2。前作のブラジル音楽作品『Brasil』のスタイルを現代ジャズギターに昇華させたような好演です。最近では、アーロン・ゴールドバーグやアナット・コーエンなどもラテン/ブラジルの名曲をよく演奏し、また来月リリースされるカートの新譜でもブラジル若手ミュージシャンの参加が注目されている事などからも、2017年はこの「現代ジャズ+ラテン・ブラジル」の波がくるのではないでしょうか。(新宿ジャズ館 中島)