<月刊>スタッフ推薦盤 2017 Apr.

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2017.04.28

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ALESSANDRO GALATI アレッサンドロ・ガラティ
Wheeler variation / ホイーラー・ヴァリエーション

ALESSANDRO GALATI / アレッサンドロ・ガラティ / Wheeler variation / ホイーラー・ヴァリエーション

伊ジャズ界屈指の録音タッグ、音響技師ステファノ・アメリオ & アレッサンドロ・ガラティ(p)が、実力派ジャズシンガー、シモーナ・セヴェリーニをフィーチャーした2017年作品が登場です。
本作は、主に英国で活躍したカナダ出身のトランペッター、ケニー・ホイーラー(1930-2014)に捧ぐ変奏曲集。
暗く、不穏でありながら生命力に満ちた世界観が構築され、まるで架空の映像芸術を彩るサウンドトラックのようです。
ガラティの詩的な音色、シモーナの霊性を帯びた歌声、そしてそれを美しく再現するアメリオの手腕が素晴らしく、個人的にはM5、8、9が異界に迷い込んだかのようで、つい作業の手を止めて聴き入ってしまいました。(JazzTOKYO 丸山)
■Alessandro Galati – piano, compositions, arrangements / Simona Severini – vocals / Stan Sulzmann – tenor saxophone / Stefano Cantini – soprano saxophone / Ares Tavolazzi – bass / Enzo Zirilli – drums


JARRY SINGLA ジャリー・シングラ
Mumbai Project(2CD)

JARRY SINGLA / ジャリー・シングラ / Mumbai Project(2CD)

インドのジャズ。世界一難しい打楽器といわれる"タブラ"演奏などにおける、複雑な拍子感を自然に身に付けた人々の手で、難解なリズムと現代ジャズのハーモニーを織り交ぜた独特なジャズです。
本作では、インドの弦楽器として有名な明るい音色のシタールではなく、深く内省的な音色のサロード(フレットがなく、グリッサンドを多用する奏法が特徴)が用いられています。
金太郎飴のごときインド感、ぜひご賞味下さい。(JazzTOKYO 丸山)
■Jarry Singla(p, indian harmonium), Sanjeev Chimmalgi(vo), Pratik Shrivastav(sarod), Vinayak Netke(tabla), Ramesh Shotham(south-indian and western percussion), Christian Ramond(b).


TRIPLE TREAT
With Just My Dreams But Not Alone

TRIPLE TREAT / With Just My Dreams But Not Alone

表情豊かなピアノとご機嫌なギターと力強い低音を響かせるベース。たったこれだけの楽器でこんなにも豊かな音楽が生まれるのかと、1曲目から驚きました(こんな音楽が生まれるカタルーニャ地方ってどんなところなんだろう!)。
スペイン北東部の地中海岸にあり、独自の歴史・伝統・週刊・言語を持ち、カタルーニャ人としての確固たる民族意識を持っていて独立運動が盛んになっているカタルーニャ地方。
「何だかとてつもなく遠い国の話」って感じですけれど、ここ日本ではシルビア・ペレス・クルースやトティ・ソレールらを中心としたカタルーニャ音楽がじわりじわりと盛り上がりを見せています。ここでオススメする本作品も、カタルーニャで活動する女性ベーシストQUERALT CAMPSが、ピアニストのBERNAT FONT(ラグタイムからクラシカル・スイング系を得意とする人です)とギタリストのDAVE MITCHELL(この方はブルースやビバップ系を得意とするようです)と組んだグループのアルバム。
詳細はよく分からないグループですが(すみません)良いものは良いのです。是非。(JazzTOKYO 中村)

             


TONY MALABY トニー・マラビー
New Artifacts
TONY MALABY / トニー・マラビー / New Artifacts

フリー系レーベルCLEANFEEDからのリリース、ヴィオラとチェロとのリズムレス変則トリオ、という編成から、ある程度作品の方向性は予想できたものの、演奏内容ではその予想を軽々と上回る突飛さ。そう、「突拍子もない」という褒め言葉がこれほど似合うサックス奏者が現代にいるでしょうか。
ALBERT AYLERやARTHUR DOYLEを思わせる天然的狂気、"MUSIC IMPROVISATION COMPANY"におけるEVAN PARKERのような調整を限りなく排した緊張感あるインタープレイ、さらにはBRANFORD MARSALISのような生真面目でクリアな音色までを自在に使い分け、あるいは同時に繰り出します。
しかしながらフレーズは一貫して突拍子もなく、展開は予測不能としか言いようがありません。それに応えるように、持てるテクニック、奏法をフル活用するMAT MANERI、DANIEL LEVINのプレイも聴きごたえあるものになっています。
DEREK BAILEY諸作、ICTUSレーベル"COMPANY"など好きな方は100%必聴でお願いいたします。(JazzTOKYO 山田)

MATEUSZ GAWEDA
Overnight Tales

MATEUSZ GAWEDA / Overnight Tales

ポーランドの俊英によるピアノトリオ。まずジャケットが実にジャズらしくて惹かれます。
煙草をふかしながら物思いに耽るモノクロームの写真。60年代前半のブルー・ノートにありそうな一枚です。
盤をプレイヤーに乗せる。ポーランド産ということで、何となく幽玄で耽美な、といえば聞こえはいいが、陰鬱で単調な作品だろうな、という予想は嬉しいかたちで裏切られることになりました。
スウィング、耽美性、変則性、アヴァンギャルドが違和感なく混在しています。テンポもいきなり変わったりしますがちぐはぐな印象はまったく無く、非常に高度な演奏技術と洗練されたアレンジによる賜物であることがわかります。
よくよく調べてみると、リーダーのグウェダ氏は先進的なラージアンサンブルや現代音楽にもチャレンジしており、今作で遺憾なく発揮されている作曲力とアレンジ力は、多岐に渡る前衛的なプロジェクトから得たものであるように思われます。
これでまだ20代半ばの1990年生まれ。今後の活躍にも期待せざるを得ません。(JazzTOKYO 山田)

FRANCOIS COUTURIER フランソワ・クテュリエ
Nuit Blanche

FRANCOIS COUTURIER / フランソワ・クテュリエ / Nuit Blanche

ロシアの映画監督タルコフスキーの名をとって結成されたフランス人、ドイツ人混合カルテット【Tarkovsky Quartet】の3作目
リーダーでピアニストであるフランソワ・クチュリエにとって「タルコフスキーの静かさと遅さ」は”ECMの美学”に通じる部分があるとのこと。
その発言の通り、テンポが遅く叙情的な曲が多いのが特徴です。ピアノとヴィオロンチェロの旋律がどこかノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。
苦にならない静かさと心地よい遅さはECMの「沈黙の次に美しい音」というコンセプトをまさに表現している作品だと思います。(JazzTOKYO 和田)

KALEVI LOUHIVUORI カレヴィ・ロウヒヴオリ
Almost American Standards

KALEVI LOUHIVUORI(JORMA KALEVI LOUHIVUORI) / カレヴィ・ロウヒヴオリ(ヨルマ・カレヴィ・ロウヒヴオリ) / Almost American Standards

2000年代にFive Corners Quintetの影でJoona Toivanen(p)、Alexi Tuomarila(p)やOlavi Louhivuori(ds)ら実力派が現れ、フィンランド新世代の波が徐々に見えるようになりました。
2009年にOlaviが早熟の弟を連れてSun Trioを結成し、フィンランド新世代の方向性を決定的に印象付けることに成功しました。それが本作の天才トランぺッター、Kalevi Louhivuoriです。
Sun Trioではファンタスティックな世界観と流動的なインプロヴィゼーションで、ノルウェーやデンマークらの北欧シーンとは異なる独自性を確立していましたが、本作は打って変わってストレートな2ホーンクインテットの「ド」バップ。
とにかく巧い。ドバドバと出るアイデアで歌う歌う。全編キレキレなテクニックのショーケースのようです。
全曲オリジナルの本作は歴史的なジャズスタンダードを外からみて表現するというより、マイルスやデスモンド楽曲のインスパイアされた部分から見渡すという面白いアプローチで表現されています。(新宿ジャズ館 有馬)

THOMAS DE POURQUERY
Sons Of Love

THOMAS DE POURQUERY / Sons Of Love

2014年作では現代的アレンジの効いたサン・ラ曲集『Play Sun Ra』をリリースし、2016年に参加した『Red Star Orchestra / Broadways』では、屈強な面持からは意外なハイトーンヴォイスでアヴァントなスタンダードの解釈を聴かせるなど、一癖も二癖もありそうなフランスのサックス奏者/ヴォーカリストTHOMAS DE POURQUERY。
本作は『Play Sun Ra』に参加していたメンバーによるセクステットで、NYダウンダウン系のようなサウンドの2、重厚なアンサンブルな811、ジャズロック10など多彩な楽曲が続き、コンポーザーとしての実力の高さも感じ取れる作品となっている。
とりあえず、本作唯一のカバー曲サン・ラ3から美しいヴォーカルで始まるスペーシーな4辺りを聴いていただければ、70年代のスピリチュアル・ジャズやユーロのジャスロックが好きな方にハマっていただけるのでは。(新宿ジャズ館 中島)
GUINGA ギンガ
CANCAO DA IMPERMANENCIA

GUINGA / ギンガ / CANCAO DA IMPERMANENCIA

エスペランサ・スポルディングほかジャズ・ミュージシャンにも敬愛されるブラジルを代表するシンガソングライター、ギンガ。通算17枚目となる2017年NEW RELEASEは、なんと未発表曲集!
ミュージシャンの間ではシェアされていたものの録音されていなかった楽曲など、ギタリストでありながら稀代の作曲家でもあるギンガの未発表曲を13曲(1曲のみギンガとチアゴ・アムーヂの共作)も楽しめるという衝撃的な内容である。
レーベルはドイツの正統派アコースティック・ギター・レーベル「アコースティック・ミュージック・レコーズ」。ギンガのキャリア至上唯一欠けていた完全ギターソロ作品として好評を博した同レーベルの2014年作品『ROENDOPINHO』のスタイルを踏襲し、シンプルなギター独奏とささやかなスキャットのみで録音されたとのこと。(営業部ラテン・ブラジル担当 江利川)

PHILIPPE BADEN POWELL フィリップ・バーデン・パウエル
NOTES OVER POETRY / ノーツ・オーヴァー・ポエトリー
PHILIPPE BADEN POWELL / フィリップ・バーデン・パウエル / NOTES OVER POETRY / ノーツ・オーヴァー・ポエトリー

現代ブラジリアン・ジャズ最高峰の実力者!あのバーデン・パウエルの息子でパリを拠点にインターナショナルな活動をみせるピアニスト、フィリップ・バーデン・パウエルの最新作が登場!
サンバやボサノヴァ、MPBといった自身のルーツとジャズを結びつけることで自らの音楽を拡張する注目作品。ライナーノーツは柳樂光隆氏 (Jazz The New Chapter)(営業部ラテン・ブラジル担当 江利川)
RUPA
DISCO JAZZ(LP)
RUPA / DISCO JAZZ(LP)

オリジナルLPは高額で取引されるRupa Biswasの1982年リリース作『DISCO JAZZ』が遂にアナログリイシュー!
印象的なサロードの音色は誰かとクレジットを見ると、インド伝統音楽の巨匠Aashish Khanがサロードとプロデュースを担当していることに驚きです。インド音楽の要素を巧みに盛り込んだエキゾチックなディスコ・サウンドは辺境グルーヴ好きはもちろん、ディスコ/レア・グルーヴファンなど多方面におすすめできる一枚です!(営業部SOUL/BLUES担当 秋田)



ONENESS OF JUJU ワンネス・オブ・ジュジュ
SPACE JUNGLE LUV(LP)

ONENESS OF JUJU / ワンネス・オブ・ジュジュ / SPACE JUNGLE LUV(LP)

レア・グルーヴ好きにはお馴染みONENESS OF JUJUの1976年リリース作『SPACE JUNGLE LUV』がアナログ再発です!
1975年の『African Rhythms』よりもサウンドはさらに洗練され、コズミックでファンキー、メロウでソウルフル、モーダルでいてスピリチュアルな独自性溢れる傑作を是非アナログ盤で!(営業部SOUL/BLUES担当 秋田)


TOSHIRO MAYUZUMI 黛敏郎
Toshiro Mayuzumi NIKKATSU Jazz Selection / 黛敏郎 日活ジャズセレクション
TOSHIRO MAYUZUMI / 黛敏郎 / Toshiro Mayuzumi NIKKATSU Jazz Selection / 黛敏郎 日活ジャズセレクション

1960年代近辺の邦画の劇伴、しかもジャズ音楽限定。何という激レア! と叫びたくなるほどの映画サントラ集です。
ジャンルを超越した世界的音楽家、黛敏郎の1960年代の日活映画でのお仕事を集めた作品ですが、ジャズテイストが超濃厚! しかも現在あらためて聴いても、まったく古臭さを感じさせない。思わず唸ってしまいます。ここに収録されている劇伴は、当時日活のヌーベルバーグ一派として若者に支持されていた今村昌平、川島雄三、中平康、蔵原惟繕といった新進気鋭な監督達の作品のものばかり。
スタイリッシュな映像、台詞・・・とくればやはり音楽もかっこよくなくちゃ、というのがクリエイターの心意気!
当時流行のジャズ音楽がいきいきと作品に反映されています。ビートルズ旋風上陸前のティーンエイジャーの心を騒がした音楽がよくわかる、重大な風俗資料としてもじゅうぶんに楽しめる名盤。(営業部ジャズ担当 赤田)

COSSI ANATZ コシ・アナ
Jazz Afro Occitan

COSSI ANATZ / コシ・アナ / Jazz Afro Occitan

オリジナルをリリースしたレーベルDisques Vendémiaireはフランス人による最初のフリージャズアルバムと言われる「Free Jazz」を創り上げたフランソワ・テュスクや彼が参加がした伝説のグループ、インターコミュナル・フリー・ダンス・ミュージック・オーケストラ諸作のリリース、「美は路上にあり」というスローガンのもと活動をしたアトリエ・ポピュレールに関するレコードや管楽器を背負い道を歩いているジャケットが印象的な路上ビッグバンドFanfare Bolcheviqueなど、路上と音楽、庶民と音楽がキーワードとして挙げられるリリースをした伝説的レーベル(リリース数も現在確認出来ているので50タイトル以下という非常に少リリースで終わってしまいました。)
そのレーベルからリリースされたアルバム「Jazz Afro-Occitan」ですが、タイトルに"Afro"とあるようにモロッコ人パーカッショニスト・Lahcen Hilaliが参加し、どこかアラビア的な音階がヨーロッパ・モーダル・ジャズと見事に融合した大傑作です。
前記の伝説的グループ、インターコミュナル・フリー・ダンス・ミュージック・オーケストラやアーチー・シェップとも共演歴のあるトランペット奏者ミシェル・マーリを中心に、フランソワ・テュスク、ミシェル・マーリとも共演するクロード・マーリがパーカッション・オーボエ、1952年生まれのベテランサックス奏者、ジャン・マーク・パドヴァーニも参加する名実ともに優れたミュージシャンがイマジネーション溢れんばかりに演奏を繰り広げたフレンチ・ジャズのうまみが存分に出たファン必聴・必須の1枚。(営業部ジャズ担当 三橋)