【インタビュー】中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン) 新作発売記念!! ★★★ディスクユニオン・オリジナル・インタビュー★★★

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2012.11.29

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中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)
ディスクユニオン・オリジナル・インタビュー

ソロ作品としては1年半ぶりのリリースとなる「 銀河のほとり、路上の花 」が11/28発売。恒例のセット販売同様に、ご好評のオリジナルインタビューが今回も到着致しました!ソウル・フラワー・レコードの記念すべき通算100作目となる今作に関して、ここでしか知ることの出来ないお話も多数!
<インタビュー:南(diskunion渋谷中古センター)森崎(diskunion営業部)


―前作『街道筋の着地しないブルース』から、ソロ作品としては1年半でのリリースですが、
思いの他、早いペースかなと思います。


中川敬(以下:中川):アコースティックの録音をしていくと言うことが日常化してる。こんなもん聴きたないわ言われたら、もう出すのやめるけどね(笑)。
1作目が、ガチっとしたコンセプトがあったわけでは全くなかったから。ソウル・フラワー・ユニオン(以下、SFU)の他のメンバーが他の活動をしてる中で、俺は何をやろうかなと思って、もう一個別にバンドを作るとか。まあハッキリ言って、めんどくさい(笑)ずっとバンドやってきてるから。新しいことと言ったらもう最後の切り札が、自分のアコースティックの作品。だから"中川敬"って言う新しいバンドを作ったような感じはあるよ。

―なるほど。

中川:ニューエスト・モデルの初期の頃、SFUの初期の頃にあった様な独特な昂揚感みたいなんはある。今回それを確認した。これは意外と楽しいかもな、って。しんどいけど(笑)。

―笑。リリース時期としてはとりあえず今年中に出すって言うのは決めてたんですか?

中川:去年12月に『キセキの渚』を出して、正月明けからレコーディングを始めてる。確か、1月5日か6日あたり。最初は9月か12月のツアーには間に合わしたいって思っていて。そこに(京都)磔磔(たくたく)から11月の磔磔3DAYSの誘いがあって、リクオと2人で3DAYSやるってことが決まったから、名古屋と東京も入れてそこをリリースの時期にしようかなって。

―今回もさきほどおっしゃった様に、コンセプトは持たずに録りたい曲だけを録るって言うのが逆にコンセプトと言うか。


中川:そうする事によって”日常”と言うか、ライブとかやってる"中川敬"以外の部分、て言うものが音楽の中に入ってこないかなって自分なりの狙いみたいなものが勝手にあった。2011年、2012年の”中川敬”っていうものがちゃんと入ってないとあかんなって言う事だけはあった。

―日常と言う言葉が出ましたが、ライナーにもある通り今作は官邸前の抗議行動等やデモの光景なんかを想起する楽曲が多いと感じましたが?

中川:去年は本当に東北に行く事がすごく多くて、今年に入ってからはずっとデモと抗議行動ばっかり行ってて。ソウル・フラワーと、このCDの活動以外は、俺の”日常”って言うのが、ほぼそこに集中されてた。だからこれはもうちょっと外せない。俺の場合は金曜日はほぼ関電本店前に行くことにしてて、それ以外にも関西中のローカルデモには行ける限り行くようにしてて、特にそこで、普段、異議申し立てをする習慣とかがない様な、ママさんパパさん、おっちゃんおばちゃん、おじいちゃんおばあちゃん、子供達とかそう言う人達が、勇気を振り絞って声を上げてる感じを見るのが好き。変な言い方やけど(笑)。グッとくるもんがある。黙ってても変わってくんであれば黙っとくけど、そう言う事ではない。まさに"沈黙は服従なり"。

-震災から1年半が経ち、現在の状況等は今回制作する上で意識されたりはしましたか?


中川:いや”入って来る”って言う感じ。そう言う事を必ず唄いこまなあかん、唄いこむべきや、みたいな、"べき”は俺の中になくて”入りこんで来る”って言うこと。今の日本に住んでて表現者が、原発爆発して原発の事を表現しない、あるいはあれだけ大きな災害があって、その事をノータッチでおれるって言う事の方がちょっとよく分からない。

-今回のアルバムで、前作と違う点を敢えてあげるとすれば、前作は制作中の新曲が震災や原発事故の影響等もあって歌詞などを一部変更したのに対して、今作は完全に震災後の作品と言う形になってますよね?

中川:実際、デモと抗議、去年から数十回、たぶん50回近く行ってて、それが無かったら、たぶん新曲だらけになってると思う。物理的に。でも、これも今の"中川敬"の日常を切り取るって言う意味では、こう言う配分になる。


-もう一点、前作との違う点をあげるとするならば、前作は中川さんが全て楽器はご自分でやられていて、ゲストはお囃子とコーラスぐらいでしたが、今回はゲストが参加されています。


中川:ちょっと変化をつけたくなった。自分の欲求。これもコンセプトとして色んな楽器が2ndから入って来た方がいいって言う事が先にあったわけじゃない。違うものが聴きたくなってくるねん(笑)。だからちょっと仲間に手伝ってもらってる。
一番最初はパーカッションで、毎週金曜日関電本店前のデモの主催のうちの1人で、ドラムデモで関西で活躍するnuhoって言う人間がいて、彼と毎週話すようになって。「ちょっと手伝ってくれへん?」みたいな話になってプライベート・スタジオ「魂花神社」で叩いてもらった。そこが始まり。8月にモノノケ・サミットで大熊(亘)くんが関西来てて「ちょっと吹きに来てや」とか(笑)。この行きあたりばったり感の中で、良いアルバムを作るっていうのが、ある意味、コンセプト。一番最後の段階になって一個だけ全体のバランスを見て考えたのが太田(恵資)さんのフィドル。10月頭だったら空いてる日が一日だけある、と。
「よかったら来てくれへん?」「行くよ、行くよ、自腹でも行くよ~」って、夕方くらいから来て、すぐ始発で帰って行った。その間、半分くらい話してたんちゃうかな?バカ話して、ずっと二人で笑ってた。「もう一曲ほな弾いてもらえる?」「ほないこかー」とか言いながら4曲弾いてもらって。朝帰って行った、早朝。ほんまありがたい。太田恵資。素晴らしい男です。

-今作は曲順も含めて客観性はすごくありますよね?


中川:そんなに深く考えてるわけじゃない。ライブでも、ニューアルバムでも、"初めて聴いた人"って言う事、"初めてそれで(SFUを)知る人"って言う事は、頭の中には常にある。一見さんを大事にすると言うか。常連よりも一見さんと言うか。

インタビューPart2はこちら