2010.09.17
ブラジリアン・ヒップホップを代表するカリスマ・アーティスト、マルセロD2の新作は、サンバの最も濃い部分を体現した歌手、ベゼーハ・ダ・シルヴァ曲集。プロデュースはマリア・ヒタの名作「SAMBA MEU」をプロデュースし、ソロ・サンビスタとしても名高いレアンドロ・サプカイ。
●MARCELO D2 / CANTA BEZERRA DA SILVA
(EMI CD 1,950円) 入荷/発売中
サンバとヒップホップを融合させた先駆者であり第一人者、マルセロD2の新作は、彼の師匠であり友人でもあった偉大なサンバ歌手ベゼーハ・ダ・シルヴァ曲集。2005年に惜しくも亡くなってしまった下町サンバの重鎮ベゼーハだが、サンバの最も大切なエッセンスである粋に溢れた「マランドロ」として数多くのサンビスタから今なお尊敬を集める存在である。そんなベゼーハ曲集を作ることはサンバとヒップホップ、両者の持つ本質に目をつけ融合を図ってきたD2にとっては自然なことだったであろう。近年のルーツ・サンバ回帰傾向に呼応し、現代版マランドロの面目躍如といった作品を作り上げたことは、サンバを深く愛するファンにとって、これ以上ない最高の組合せである。
特筆は本作を手掛けた、レアンドロ・サプカイの参加だ。サンバの演奏家でありプロデューサーもつとめるレアンドロ。古くからのサンバに対する造詣の深さは突出したものを持っており、マリア・ヒタの大ヒットサンバ・アルバム「SAMBA MEU」をプロデュースしたことでも一躍注目を浴びた。2009年にはインペリオ・セハーノの伝説的サンバ歌手、ホベルト・ヒベイロ曲集をリーダー作としてリリースするなど、サンバ・ファンにとって今一番「旬」な存在だ。生半可では表現することのできない「ベゼーハのサンバ」という最高の素材を扱うことの許される数少ない人材を登用したことが本作の奇跡を生み出したといえよう。D2が一貫して試みてきた融合=ヒップホップのゲットー臭とサンバ本来の伝統が持つ深みが自然と結びついた感動的な作品となっている。
ホベルタ・サー&トリオ・マデイラ・ブラジルによるホッキ・フェレイラ曲集というサンバ×ショーロ×バイーアの邂逅にも感動的なものがあったが、それと並ぶくらい、いやそれ以上にD2×サプカイ×ベゼーハという組み合わせは凄い。間違いなく2010年トップクラスの注目度を誇る台風級ブラジル話題作!
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