新宿ラテン館のNEWS記事転載!【特集:ボーダレス化するジャズと世界の新世代アーティストたち】

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2017.02.20

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特集:ボーダレス化するジャズと世界の新世代アーティストたち


今、世界の音楽シーンの極北で「JAZZ」をキーワードにした新たなる潮流が生まれつつある。
それは国籍、人種、あらゆるジャンルの枠を飛び超えたボーダレスな音楽現象。
正直に言って東京のレコードショップで働くいちスタッフが追いきれるほどの情報量ではないが、
当社唯一のワールド・ミュージック専門店として目を逸らすことのできない魅力的なテーマである。
故にこれは現在進行形で更新、補完され続ける全く新しい形のCD/LP特集なのだ。



※今回セレクトから外れているブラジルのシーンについては後日たっぷりと特集予定!





◆ポルトガル◆


BRUNO PERNADAS
HOW CAN WE BE JOYFUL IN A WORLD FULL OF KNOWLEDGE

2014年にリリースされた本作はブルーノにとってのデビュー・アルバムにあたる作品。2008年から2013年の5年間をかけて彼のホームスタジオでプリ・レコーディングされていた音源をひとつのアルバムにあらためてまとめたものである。DIYらしく未完成な部分も多々あるものの、ジャズやフォーク、サイケデリック・ロック、ヒップホップ、スペース・エイジ・ポップといった音楽が溶け合ったシネマティックな世界観はすでに完成の域に達している。Joao Correia, Afonso Cabral, Francisca Cortesao, Margarida Campeloといったポルトガルの一流ミュージシャン達も参加。


BRUNO PERNADAS
THOSE WHO THROW OBJECTS AT THE CROCODILES WILL BE ASKED TO RETRIEVE THEM

2016年に同時リリースされたうちの一枚『THOSE WHO THROW OBJECTS AT THE CROCODILES WILL BE ASKED TO RETRIEVE THEM』。同時リリースされた『WORST SUMMER EVER』に比べ、よりインディーロックやヒップホップ、アフロビート、いわゆるモンド・ミュージックなどからの影響が強く感じられる内容。レコードをトレースする際のノイズをSEに使用するなどノスタルジックな側面もGOOD。


BRUNO PERNADAS
WORST SUMMER EVER

2016年に同時リリースされたうちの一枚『WORST SUMMER EVER』。プリプロ的な要素の強かった前作からガラリと変わり、以下のメンバー達とのレコーディングを全面にフィーチャア。ヒップホップ以降のサウンド・メイキングと、ポストロック以降の硬質なテクスチャーに影響された現代ジャズとなっている。


SARA SERPA & ANDRE MATOS
ALL THE DREAMS

ポルトガルの女性シンガー、サラ・セルパがギタリストのアンドレ・マトスとのデュオでリリースする2016年新作。ヴォイスを楽器のように操るその様はティレリーやカミラ・メザといったジャズ・フィールドでとりわけ話題となった作品に連なるもの。近年のクワイエット・ミュージック・ファンに推薦の一枚だ。


MARIO LAGINHA NOVO TRIO
TERRA SECA

ジャズ・ピアニストとしての数十カ国に渡る演奏歴と、数々のオーケストラやビッグバンドに委嘱作品を提供する作曲家としてのキャリアを20年以上に渡って展開する、まさに同国を代表する音楽家のひとり。女性歌手マリア・ジョアンとのデュオ活動はVerve等より10枚以上のアルバムリリースを数え、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルなど国際音楽祭への招聘も多い、ポルトガル音楽におけるワールドワイドな成功例のひとつ。本作『Terra Seca』は一曲を除きすべて本人の作曲を収録した作品。ポルトガル・ギターのミゲル・アマラル、ベースのベルナルド・モレイラを迎えた変則トリオによる作品で、ジャズとポルトガル音楽のまったく新しいサウンドを作り上げた金字塔的傑作。ジャズやクラシックのみならず、これまでにもポル
トガル伝統音楽やブラジル、アフリカ、ロック等の要素を度々取り入れてきたマリオ・ラジーニャが、自身のルーツに向き合い作り上げたここでのサウンドは、この先も多くのミュージシャンによって参照されていくに違いない。


MARIO LAGINHA
ESPACO

ジャズ・ピアニストとしての数十カ国に渡る演奏歴と、数々のオーケストラやビッグバンドに委嘱作品を提供する作曲家としてのキャリアを20年以上に渡って展開する、まさに同国を代表する音楽家のひとり。女性歌手マリア・ジョアンとのデュオ作品はVerve等より10枚以上のアルバムリリースを数え、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルなど国際音楽祭への招聘も多い、ポルトガル音楽におけるワールドワイドな成功例のひとつ。本作『Espa〓o』(2007年)は、ベルナルド・モレイラ(bass)、アレシャンドリ・フラザォン(drums)とのレギュラー・トリオによる作品。収録されたオリジナル楽曲はいずれも広義の「建築」をコンセプトにしたもので、フーガの技法をもとにした作曲作品や、オーケストラへの委嘱提供を行ってきたラジーニャの、構
築的な作風にマッチしたコンセプトであるといえる。



 
◆ヴェネズエラ◆


CARMELA RAMIREZ & GABRIEL CHAKARJI
VIDA

ヴェネズエラのタチアーナ・パーハ! ヴェネズエラ出身、NYで活動する女性ヴォーカリスト/作曲家 カルメラ・ラミレスが、同じくヴェネズエラ出身のピアニスト/作曲家 ガブリエル・チャカルヒとの双頭名義でレコーディングした2016年作品。本国ではアンサンブル・グルフィーオらとも近しい存在で伝統音楽にも明るいカルメラ・ラミレス。一方でアカ・セカ・トリオやハファエル・マルチニといった近年ジャンルを超えた音楽ファンを騒がせるブラジルやアルゼンチンの才人たちとも親交があるのだとか。また現在拠点とするNYでは、ラテン圏のミュージシャンだけでなくイスラエル系のジャズ・ミュージシャン、さらにはチック・コリアやハービー・ハンコックら巨匠とも交流がある。演奏能力が異常に高いことで知られるヴェネズエラ
の音楽家らしく、リズミカルな曲でもヴォーカルのピッチ、ピアノのタッチは実に端正。よどみなく流れるようなアンサンブルは絶品の一言で、ブラジルの女性歌手タチアーナ・パーハを連想させる。 
 




フランス


ACHILLE
IRIS

クラシカルかつ新しい。フランスの女性シンガーソングライター「アシル」のデビュー作。アシルという名はギリシャ神話のアキレスからと思いきや、敬愛する音楽家クロード・ドビュッシーの本名Achille-Claude Debussy からいただいたものだそう。ピアノ、キーボード、スピネットを弾き、耳に沁み入るややかすれた声でかなでるメロディはクラシックの素養を感じさせるものですが、音のテクスチャア自体は非常に現代的。インディー・クラシックとよばれるジャンルの作品にも通ずる、クラシカルかつ新しい一枚です。1曲でNosfell がデュエットで参加。ディジブック装。
 




◆スペイン◆


SILVIA PEREZ CRUZ
DOMUS

2000年代に頭角を現し、ハヴィエル・コリーナとの共演でも好評を博す。情感溢れる歌声でスペインの民衆を魅了する女性ヴォーカリスト Slivia Perez Cruz (シルビア・ペレス・クルース 1983年カタルーニャ、パラフルジェル生まれ)の2016年新作。彼女が主演した映画Cerca de tu casaのサントラに当たるアルバム。劇中歌いだしたりと、ミュージカル的な演出のある映画のようでもある。すべての作曲、アレンジを彼女が手がけ、自身がいくつもの楽器を演奏している。
 




◆キューバ◆

  

ALFREDO RODRIGUEZ
Tocororo

2011年、クインシー・ジョーンズの多大なるバックアップも受け、世界にデビューしたアルフレッド・ロドリゲスのMack Avenue第3弾!
キューバが生んだ新星としてその存在をフレッシュに知らしめた『Sounds of Space』、キューバの様々な音楽的な要素を融合し、クラーヴェの進化形なども見せた2014 年の第2 作『Invasi on Parede』に続き、本作では、いよいよ、世界とつながるロドリゲスの姿が打ち出されました。メンバーには、ザヴィヌル・シンジケートを経て世界にはばたいたカメルーンの才能、リチャード・ボナ、このほどImpulse からメジャー・デビューを果たした、レバノン出身の微分音を操る鬼才トランペッター、イブラヒム・マーロフを始め、他、フランス、スペイン、インドと世界各地からミュージシャンが集合。キューバからアメリカ合衆国にわたって、幾年。自らが生まれた土地を離れたからこその、ルーツへの真摯なまなざしと、世界の文化、音楽を融合する試みが作品に結実。


MICHAEL OLIVERA GROUP
ASHE

アルフレッド・ロドリゲス・バンドの一員としても注目を集める未来のラテン・ジャズを担う天才コンポーザー/ドラマー、マイケル・オリヴェイラの初となるリーダー作品! キューバン・ジャズらしい非常にハイレベルなアンサンブルと、ブラジルのミナスやアルゼンチンの新世代ミュージシャンに見られるような透明感が同居した、新世代ラテン・ジャズの大傑作! キューバ~スペイン~ジャズの文脈において、間違いなく最重要人物となる逸材です。キューバ出身でありながら、Quincy Jones, Alfredo Rodriguez , Rick Wakeman, Javier Colina, Sting, Tomatico, Sintesis, Perico Sambeat, Miryam Latreceらと共演。現在スペインを拠点に活動する現代キューバン・ジャズの最重要人物として俄かに注目を集めるマイケル・オリヴェイラ。ドラマーとしてだけでなく、本作に収
められた10曲のほとんどは自らのオリジナル。新たなフェーズに突入しつつあるラテン・ジャズの潮流に迎合するような美しい楽曲も本作の聴きどころ。


CURTIS BROTHERS
SYZYGY

ラテン・ジャズ最前線! N.Y. ジャズ・シーンの若手No.1ベーシストに成長したルケス・カーティス(Luques Curtis)。その兄でピアニストのサッカイ・カーティス(Zaccai Curtis)兄弟のプロジェクト・バンド第4弾!!度重なる来日や、パルミエリ・バンドへの参加、映画「キュー・バップ」への出演などを通じ、日本でもすっかりお馴染みとなりつつあるルケス・カーティスと、その兄サッカイを核としたカーティス・ブラザーズ。その最新作はこれまで以上に王道ジャズ、そしてブラック・ミュージックへと接近。モンゴ#1、バド・パウエル#2、ショーター#5をはじめ、スタイリスティックスでお馴染みの#4、マーヴィン・ゲイの名曲#10まで。多彩なルーツを内包するアメリカ音楽と自身のルーツであるラテン音楽の接点を探りつつ昇華するような意欲作へ
と仕上がっています。もちろん醍醐味であるスリル溢れるラテン・ジャズも収録。とりわけガレスピーの#3、ホレス・シルヴァーの#12あたりは理屈抜きの楽しさ満天です!
 




◆イスラエル◆


BUTTERING TRIO
THREESOME (LP)

まるでイスラエルのハイエータス・カイヨーテ! 今注目を集めるイスラエルのブレイン・フィーダーこと"RAW TAPES"のNEW RELEASEはバターリング・トリオ。自身たちで演奏するサックス、シンセ、ベース、そしてヴォーカルをループさせたビートと組み合わせた、ジャズ×ビート・ミュージックの最先端をいく注目のトリオ。彼らのサイケデリックな音の旅はすでに各所で高い評価を獲得しているとのことで、ヨーロッパ各地でのフェスティバル常連なのだとか。Snoop Doggや Peanut Butter Wolf, Gilles Petersonも絶賛している。
 




◆ウルグアイ◆


SANTIAGO BEIS
Univer-som

ウルグアイ出身、ブラジルのクリチーバ在住の若きピアニスト/作編曲家サンティアゴ・ベイスが、2009年から7年間に渡って南米諸国を旅し、現地の音楽家と録音し続けた15曲を収めたアルバム。ピアノ、アコーディオン、シンセ、ギター、フルート、ビブラフォンなどを自ら演奏し、南米各地のシンガーや伝統楽器の演奏者を起用して吹き込まれた作品の数々は、例えば70年代のジスモンチの諸作を思わせる、場所と時間の感覚が麻痺するような、非現実的な美しさを帯びています。それぞれの曲のテーマにあるのは、旅の途中で出会い別れてきた人々への愛情、遠く離れた場所へのサウダーヂ、さまざまな旅の記憶…。このスリリングな傑作は、彼の「内的な世界の音」でもあります。 
 




◆チリ◆

 

CAMILA MEZA
Traces
 
チリ、サンティアゴ出身、現在NY を拠点に活躍する注目シンガーのSunnyside第一弾、通算4作目にしてキャリアハイを示す傑作。マット・ペンマンをプロデューサーに迎え、キーボードにシャイ・マエストロ、ドラムにケンドリック・スコットを迎えるという豪華な布陣。パット・メセニー、カート・ローゼンウィンケルを彷彿とさせるギターのイマジネーション。そしてソングライティングのセンス。アーロン・ゴールドバーグやNYタイムスも絶賛の次世代アーティストです。プロデュースはなんと、マット・ペンマンシャイ・マエストロ、ケンドリック・スコットという豪華布陣。 個人的にはキュートな前髪のセンスだけで好きになりました。


HABITANTE

チリの中規模都市バルパライソでにわかに盛り上がる伝統音楽とジャズの混淆。今回はその中心の一人となるファビアン・ヴィジャロボスとその周辺。こちらはそのファビアンが現在もっとも力を入れているグループ、アビタンテ。グレッチェン・パーラトやクリスチャン・スコット、アントニオ・ロウレイロや隣国アルゼンチンのジャズ・シーンからも強い影響を受けると同時に、チリのフォークロアにもベースがあるそのスタイルは、チリの偉大なるプログレッシブ・ジャズロック・バンド、コングレッソらの系譜を継ぐ存在と言えるだろう。


FRANSSIA VILLALOBOS
FRANSSIA VILLALOBOS

チリの中規模都市バルパライソでにわかに盛り上がる伝統音楽とジャズの混淆。今回はその中心の一人となるファビアン・ヴィジャロボスとその周辺人物。こちらはそのファビアンの姉妹であるというフランシア・ヴィジャロボスによるソロ・アルバム。たとえばミナス新世代の作品、レオポルヂーナやレオノラ・ヴァイスマンあたりにも通ずる洗練されたフォークロア・ジャズといった趣は、今回のバルパライソ周辺音楽においても目玉といえる内容。


AJAYU
AJAYU

チリの中規模都市バルパライソでにわかに盛り上がる伝統音楽とジャズの混淆。今回はその中心の一人となるファビアン・ヴィジャロボスとその周辺人物。こちらはそのファビアンも在籍するグループ、アハジュ。コングレッソなど連綿と受け継がれるチリにおけるフォークロア×ジャズのスタイルを "Fusi〓n Latinoamericana" と呼んでいるのだとか。こちらもいまで言うならミナス新世代派に通ずるテクニカルでありながら洗練されたアンサンブルを聴かせてくれるが、展開はより複雑、ケーナやシクなどを交えた編成はより民俗音楽色が強い。
 




◆コロンビア◆


ISIS GIRALDO POETRY PROJECT
PADRE

コロンビア生まれ、カナダで活動をしている気鋭の作曲家/ヴォーカリスト/ピアニスト、イシス・ヒラルドのDL音源のみで発売されていたアルバムを初CD化!


NICOLAS OSPINA
GIRANDO PARA ATRAS

メリーナ・モギレフスキーとの共演でも知られるコロンビアのジャズ・ピアニスト、ニコラス・オスピナのリーダー作。アカ・セカ・トリオを思わせる歌心溢れる#1や#3から、アフリカ色の強いパーカッションも印象的な#2、フアン・ルイス・オルティスの詩を取り上げたアラブ風の#5、ソプラノサックスの音色も印象的な#7、弦楽アンサンブルを入れたラストの#11まで。南米各地のフォークロアの詩情とリズム・フィギュア、コンテンポラリー・ジャズの手法が融合した、近代の南米ジャズのお手本のような好内容作品。ソフィア・リベイロ、マルタ・ゴメス、アドリアーナ・オスピナがゲスト参加。



 
◆アルゼンチン◆


NAHUEL CARFI
PIANOS

アンサンブル・チャンチョ・ア・クエルダのピアノ/キーボード奏者ナウエル・カルフィのソロ・アルバム。革新的な試みを常に行ってきた人物らしく、その音楽性は実に幅広く、フォークロアの香りからジャズの知性までを感じさせる楽曲の幅広さは圧巻の一言。なによりも#1で聴けるような曲のよさは、現代アルゼンチンのなかでも際立っている。フェデリコ・アレセイゴールに比肩する才能として今後も注目すべき人物だ。ブラジルからはベンジャミン・タウブキン、ナー・オゼッチというサンパウロの重要人物、そしてウルグアイからレオ・マスリアも参加。


MARCO SANGUINETTI
MARCO SANGUINETTI

2000年代初頭からコンスタントに良作をリリースし続けている注目ピアニスト、マルコ・サンギネッティによる世界的オルタナティブ・ロックバンド、レディオヘッドのジャズ・カバー・アルバム。ミキシングのダブ処理やシンセの音響的アプローチなど、単なるジャズ・アルバムとは一線を画す叙情的な好作です。