|
『半分人間』 で名声を極めたアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンが、87年に発表した4枚目のアルバム 『上向地震波上五』。ボイド・ライス (Non) やSRLと決行した砂漠コンサートやICA破壊ライヴ、そして伝説の来日コンサートなど、デビュー・アルバム 『コラプス (崩壊)』 (81年) 以降、暴虎馮河の活動を続けたノイバウテンだが、このアルバムで急激なペース・ダウンを余儀なくされる。英配給元サム・ビザーのギャランティ未払いやドラッグの使用停止など、色々あったらしい (ライナー・ノーツに記載がある)。
前作 『半分人間』 同様プロデューサーにガレス・ジョーンズ (デペッシュ・モードなど) を起用するも、イケイケだった 『半分人間』 とはうって変わって、内省的なサウンドが全面に出た作品となっている。覚醒から醒めたノイバウテンに魅力はないのか? アンダーグラウンドのカルト王から一気に引きずり降ろされ、まったく地味な扱いとなってしまった本アルバム。しかし、サウンド、ヴォーカル全てが深みと凄みを増し、現在のノイバウテンに通じるアーティスティックな感性を取り入れたスタイルは、現在の活動に繋がる転換期的作品であり、重要な位置にあるアルバムであると断言できる。
冒頭の 「崩れた細房」 は石井聰亙監督のヴィデオにも収録されている。ここではフル・ヴァージョンで収録しており、後半に挿入されるシンセサイザーのオーケストレーション、コーラスなど、これまでにはない重厚なアレンジを試みている点が興味深い。枯れたギターを奏でるノイバウテン流ジャンク・ブルース 「モーニング・デュー」 を挟んで、「ユーグン」 や 「Z.N.S.」 の流れを汲むスリリングなリズム・アレンジとヴォーカル・ワークが刺激的な 「僕だ」 からノイバウテン流一週間の歌 「月火水木金土日」 へと続く。ヒーロー全滅 - ハッピーエンド、俺の頭はラビリンスなど、歌詞も最高。リズミックで勢いのある前半に比べ、後半はしっとりとした曲が続く。中でも 「美しいものには棘がある」 の美しさと言ったら!! アンビエント調のシンセサイザーとブリクサの呟きは柔らかく暖かい。ボーナス・トラックには、同時期にコンピレーション参加曲 「Adler Kommt Spater」 を収録。
とにかく内容が素晴らしいアルバムなので、初期一徹愛好家にも聞いて頂きたいと切に思う。
|