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D-DAY時代の楽曲を今の川喜多美子がセルフリメイクするとどうなるか、
をテーマにスタートした『SEED CAKES』シリーズも、早いもので今作が3作目となる。
今までは、昔の楽曲を今に甦らせることに重点が置かれていた本シリーズだが、
今回は「RETRO」というサブタイトルが物語っているように、
表面上は“懐古趣味”を全面に押し出したかのような作品となっている。
しかし聴き進めていくうちに、我々はこれが
“終わってしまったことを懐かしむだけ”の作品ではないことに気付くはずだ。
今回取り上げられた4曲のうち「わたしの昼と夜」「Yacht Harbour」は、
もともとD-DAYでも“パステル調の爽やかさなポップ・センス”が際立っていたナンバーである。
そして成田忍のサウンド・プロデュースのもとに今回生まれ変わったヴァージョンもまた、オリジナルが持っていた
“パンクの喧騒通過以降の、それこそYMGやジスト、ウィークエンドなどに通じるシンプルで静かな過激さ”
を音空間の中に大切に息づかせることに成功している。
しかしそれは、机の中にしまってあった大切な写真を取り出して眺めた時に生じる
“パーソナルなレトロ感”とは明らかに異なるものだ。
D-DAYの場合は、“普遍的なレトロ感” とでも言おうか。
川喜多美子が本作で試みているのは、そうした“D-DAYの曲に内在されていた普遍的な懐かしい甘酸っぱさと痛み”をという
データを抽出して現在のハードウェアに移植する行為、なのである。
例えば3曲目に収録されている未発表曲「HAPPY CHILDREN」のセルフリメイク・ヴァージョンを聴いた時、
多くの人は“懐かしい”という感情を抱くことであろう。
だがこの曲自体は、D-DAY後期にライヴで演奏されていたものの、今まで作品化されてはいない。
そのような曲を今回あらためて聴いた時にすら、
多くの人がそこに“初めて聴くのに懐かしい”という感情を抱いてしまうのは、そういう理由からなのだ。
4曲目には、“ポスト・パンク期の内省感” に満ちた初期の名曲「DUST」(の「SEED CAKES」ヴァージョン)を、
4-D mode1の小西健司のサイド・プロジェクト、馬騎尚寺(BAKI-SHO-JI)がリミックスしたヴァージョンも収録。
小西健司のトレードマークとも言うべき無国籍インダストリアル・テクノ・サウンドで、
自身をアンドロイドの歌姫に変身させてしまう過激なことも
堂々とやってのけている(このサイバーパンクなサウンドもまた、ある種レトロフューチャーなものだ)。
価値観の細分化/断絶に拍車がかかる今、本作は世代を越えて“胸がキュ~ンとなる、
甘酸っぱいレトロ感”が共有しあえる貴重な作品となった。
これは、今の川喜多美子だからこそ作り出すことができた素敵なミラクルである。
文責:小暮秀夫
●CDextra仕様
Nostalgia with Tadahiko Yokogawa(Electric violin)
(月見ル君想フ 22nd Sept. 2007)
Wall paper
Pola by Kenji Wakairo 1987
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