2009年9月度スタッフ推薦盤!! アバークロンビーを買うお客様が大好きです。スタッフの目で観察するに、昨今のアバークロンビー好き層は、すべからくジム・ホール好き層かと思います。もちろんジョンスコ、メセニーらを愛する人も大きく絡みますが、 アバークロンビー層は特に jim hall の楽しみ方に近いものがあると感じています。(ミック・グッドリック好きも、かなりアバークロンビー、ジム・ホール層に近いですね)ジム・ホール好きを代表とするその層が音楽に求めるものは、音楽が生まれる瞬間が好き、演奏中のその瞬間に新しいものを生み出してくれるプレイヤーが好き、それもわりと共演者の音に敏感に感応できる懐が宇宙並に広いプレイヤーが好き、というイメージをぼくは抱いています。なので、アバークロンビーを購入されるお客様には特に「この人は玄人に違いない。かっこいい耳を持っている人はかっこいい考え方をしているに違いない」と気になってしまいます。
さて、このアルバム自体をご紹介いたします。それはもう、すばらしい作品です。何度聴いても、もう一度聴こう、今日も聴こう、と思ってしまいます。このグループ(トーマス・モーガンのことは後ほどに触れます)での作品は、2002年作「Cat'n'Mouse」から数えて今回が4作目に当たります。全体を通した印象で言えば、「最もキャッチー、かつ、優しい」と思います。1、3曲目はECMから出している事を意識したかのよう、スローテンポの美しい曲が並びます。表題曲、ロジャース・ハートの「Wait Till You See Her」には心からニッコリしてしまいます。4曲目以降は普段のライブで演奏する雰囲気に近いものが多いです。4曲目その名も「Trio」はマーク・フェルドマン抜きのギター・トリオ演奏です。これは卑怯です。内容が良くないはずがない。逆にこれを褒めたら負けかなと思ってます。ぼくが個人的に大プッシュしたい曲は5曲目です。このグループが個々のレベルが高いだけでなく、グループとしてどれだけ尊い存在かを教えてくれます。このカルテット、今作は特に顕著ですが、ECMだと思って聴く必要は全くありません。万人に広く評価してもらいたい、すばらしいアルバムです。
最後に俯瞰した今作の情報を述べたいと思います。アバークロンビーのこのグループのベースは今までマーク・ジョンソンでした。今作は異例の大抜擢、トーマス・モーガンです。 まだ28才の若さにして、菊地雅章、Paul Motianらに愛され、David Binney 諸作を筆頭に結構な認知度を得ていると思いますが、トーマス・モーガンがポスト Gary Peacockだけでなく、ポストMarc Johnsonの可能性を明確に示唆したということはなかなかインパクトがあります。今、新宿ジャズ館では Thomas Morgan、David Binney周辺, Vijay Iyer周辺, Jon Ibaragon などなど ニューヨークの新しい波、その動向とサウンドに対しまして、特設ではなく常設のコーナーを設けました。彼らの参加作を追いかけたい方はぜひ、店頭でご確認くださいませ。 (新宿ジャズ館 渡辺)
JOHN ABERCROMBIE(g), MARK FELDMAN(vln), THOMAS MORGAN(b), JOEY BARON(ds)