1,430円(税込)
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ライブ会場と限られたディストロでしか手に入らず、各方面からの問い合わせが後を絶たないastheniaの10インチレコード。
突然「コメントを書いて欲しい」と依頼されてしまい、どうしたものか、と…。astheniaのスタイルをあえて一つのジャンルに絞るなら所謂「90年代の激情ハードコア」なのだろう。それは本人達も否定すまい。そして私は90年代の激情にとても疎い。90年代に絞った音楽の聞き方もしていない。そんな私にコメントを頼んできたわけだから当然の如く90年代当時の激情バンドに例えて語ることもできない。果たしてそれでも大丈夫なのか、と思いつつターンテーブルに10インチを乗せ全曲を聴いてみた…。
聴き終えてみてまず思ったことは、この作品にはきちんと今の自分達を刻み込もうとした痕跡が見えた。このサウンドそのものは懐かしいのだろうか?90年当時の人が聴けばそう感じる面もあるだろうが、曲中で震える空気の感じはやはり「今」のような気がしてならない。憧れもあるだろう。90年代当時、その場所に居れなかった悔しさもあるだろう。だけど今、この時代にこの音楽を嘘偽りなく、心の底から鳴らせる自分達が誇らしくもあるだろう。果たしてそれが正解なのかどうかも分からないし、そもそも正解なんてあるのか。
決して過去に戻りたいわけでは無い。だけど今がとても心地よいわけでもない。どこに行けばいいのか分からない。だけどここにずっと居たいわけでもない。
彼らは数ある音楽スタイルの中からこのスタイルをチョイスしたわけではない。彼らはそこまで器用ではない。それは初ライブから何度も見てきた私だから断言できる。彼らにはこの音しかなかった。今の時代に対する一つの答えとして、この音を「やらざるを得なかった」。その切迫した気持ちこそが彼らのもっとも90年代的な要素であり、信頼できるところだと感じる。そう思えば90年代激情ハードコアに疎い私にコメントを頼んできたこともあながち間違ってはいないのかな、と1人で納得してしまった。
どこまで手を伸ばしても届かない…それはどの時代にだって当たり前にある焦燥感であり、彼らと当時のバンドを繋ぐ大事な感情。過去と現在を繋ぐものはマニアックな知識やレアな音源だけではない。それは音を聴いてもらえれば分かると思う。ぜひ聴いてほしい。
asthenia