――あなたの音楽活動を振り返ってみると、活動当初からすでに目指すべき方向やイメージが見えていて、その後もぶれることなく作りたいものを作り続けてきたようにみえます。そこには、英米のアーティストよりドイツのアーティスト――喩えば、MANUELL GOTTSCHING、DIETER MOEBIUS、CONRAD SCHNITZLERといったクラウト・ロック / ジャーマン・エレクトロ――に近いものを感じるのですが、ご自身ではどうお考えですか?
S: 僕はずっとKRAFTWERKのファンだったんだ。13歳のときに “Neon Lights” の蛍光の12インチを買って、彼らのヴァイブやサウンド、そしてイメージにすぐに恋をしたんだ。彼らのミニマルでマキシマルなアプローチは本当に魅力的だし、彼らの正確さや暗さはJOY DIVISIONやSUICIDEの先駆けとなっていると思う。僕はCLUSTERやHARMONIA、NEU! などは90年代まであまり詳しくは知らなかったんだけど、彼らも同じようなスピリットを持っているとわかったよ。
――ギターとアナログ・シンセサイザー、あなたにとって、この二つの楽器に違いはあるのでしょうか?あるとすれば、それをどのように使い分けているのでしょうか?
S: もちろん独特な面やすばらしい点はそれぞれの楽器でまったく違うものだけど、僕はそれぞれの曲で最も良く伝えられるようにさまざまな楽器を使うんだ。ギターでは、同じオクターヴの2、3箇所でいくつかの音色が出せるけど、キーボードでは何か部品を変えたりしないと不可能だよね。どの楽器も特別な強みを持っている。ギターとキーボードはどちらも僕にとってはとても役立つツールだよ。
S: 僕にとっては変化はないよ。でも、レコーディングのプロセスや機材、可能性は劇的に変化した。80年代には使用できる通常のエフェクターは12種類かそれ以下ぐらいしかなかった。トレモロ、リヴァーブ、エコー、フェージング / フランジング、ピッチシフト、フィルター / ワウ、ヴィブラート / コーラス、ディストーション、そしてリピート・パーカッションやフリーケンシー・シフターズなどレアなもの。今は限られた手段の中で使用できるたくさんの 独特なアルゴリズムがあるからね。
82年にデビュー、MY BLOODY VALENTINE、JESUS & MARY CHAINをはじめとするシューゲイザー / ネオ・サイケからMOGWAIに代表されるポスト・ロック / ドローン・ロック、さらには現今のネオ・シューゲイザーにまで影響を与え91年に解散したSPACEMEN 3 (片割れは現SPIRITUALIZEDのJASON) の中心メンバーでもあったSONIC BOOMが、ソロ・プロジェクトであるSPECTRUM名義で4月に初来日。メール・インタビューを試みた。
◎interview & text/千葉店 太田 ◎翻訳/営業部 岩渕
――今回、初来日ということになると思うのですが、日本を訪れてみての印象や感想は?
SONIC BOOM (以下、S): うん、そうだね。とてもよかったよ。日本に行くことはずっと楽しみにしていたし、遂に訪れることができてとても素晴らしいことだと思ってるよ。とても楽しくて、早く時間が過ぎ去ってしまった。1年ぐらいしたらフル・バンド編成でまた来たいと思う。今回のショウはソロのSPECTRUMという感じだからそのアレンジに合うような曲をやってるけど、バンドと一緒ならばさらに幅広いSPECTRUMの曲ができるからね。
――あなたの音楽活動を振り返ってみると、活動当初からすでに目指すべき方向やイメージが見えていて、その後もぶれることなく作りたいものを作り続けてきたようにみえます。そこには、英米のアーティストよりドイツのアーティスト――喩えば、MANUELL GOTTSCHING、DIETER MOEBIUS、CONRAD SCHNITZLERといったクラウト・ロック / ジャーマン・エレクトロ――に近いものを感じるのですが、ご自身ではどうお考えですか?
S: 僕はずっとKRAFTWERKのファンだったんだ。13歳のときに “Neon Lights” の蛍光の12インチを買って、彼らのヴァイブやサウンド、そしてイメージにすぐに恋をしたんだ。彼らのミニマルでマキシマルなアプローチは本当に魅力的だし、彼らの正確さや暗さはJOY DIVISIONやSUICIDEの先駆けとなっていると思う。僕はCLUSTERやHARMONIA、NEU! などは90年代まであまり詳しくは知らなかったんだけど、彼らも同じようなスピリットを持っているとわかったよ。
――ギターとアナログ・シンセサイザー、あなたにとって、この二つの楽器に違いはあるのでしょうか?あるとすれば、それをどのように使い分けているのでしょうか?
S: もちろん独特な面やすばらしい点はそれぞれの楽器でまったく違うものだけど、僕はそれぞれの曲で最も良く伝えられるようにさまざまな楽器を使うんだ。ギターでは、同じオクターヴの2、3箇所でいくつかの音色が出せるけど、キーボードでは何か部品を変えたりしないと不可能だよね。どの楽器も特別な強みを持っている。ギターとキーボードはどちらも僕にとってはとても役立つツールだよ。
S: 僕にとっては変化はないよ。でも、レコーディングのプロセスや機材、可能性は劇的に変化した。80年代には使用できる通常のエフェクターは12種類かそれ以下ぐらいしかなかった。トレモロ、リヴァーブ、エコー、フェージング / フランジング、ピッチシフト、フィルター / ワウ、ヴィブラート / コーラス、ディストーション、そしてリピート・パーカッションやフリーケンシー・シフターズなどレアなもの。今は限られた手段の中で使用できるたくさんの 独特なアルゴリズムがあるからね。
――20年以上にもわたって、音楽の何があなたをこれほど魅了し、また絶えず音楽 (制作) に向かわせているのでしょうか?
S: 僕は、音楽がもつ、みんなが一度にコミュニケートできる力が好きなんだ。そういう要求もあるし、僕のような人々とつながることはとても鮮明な感覚だよ。
――WEB上で見ることのできる05年のNYCでのライヴ映像が印象に残っています。赤黄黒の三色を放射状 (扇状) に塗り分けた (オフィシャル・サイトのトップ・ページのようなトリッピーなデザインの) 大きな回転する円盤の上で演奏するというのは、あなたのアイディアによるものなのでしょうか? また、それは、最近のアートワークにしてもそうですが、喩えば、MARCEL DUCHAMPのアネミック・シネマやBRIDGET RILEYのオプ・アートを連想させます。聴覚や視覚のみに、というより全体的な感覚に訴えるものだと思います。現代美術に興味はおありですか?
S: 興味はあるよ。アートはどのジャケットでも重要だと思っている。僕がMY SPACEのサイトであげているように、何人かの現代のアーティストが好きだよ。村上隆、JIM DRAIN & ARA PETERSON (筆者註: WEB上で見られる円盤は彼らの作品であることが判明、ライヴは彼らのインスタレーション・イベントの一環として行われていた模様) 、青島千穂、ANTHONY AUSGANG (筆者註: ロラパルーザのポスターやE.A.R.のジャケットも手がけるイラストレーター) や、もっと確立しているROBERT WILLIAMS (筆者註: 南カリフォルニア出身のロウ・ブロウ・アートの巨匠) なども好きだよ。
――休日の過ごし方は?
S: 友達に会ったり、新しい場所や人と出会うことだね。
――最近、よく聞いているアーティストやアルバムがあれば教えてください。
S: JIM DICKINSON / PANTHER BURNS / MUDBOY & THE NEUTRONS (筆者註: 後者の2つはJIM DICKISONが参加)、DEAN & BRITTA、PANDA BEAR、STOOGES / VELVETS / STONES / MC 5、STAPLE SINGERS、BO DIDDLEY、JESSAMINE、LABRADFORD、THE WHO、JOE MEEK PRODUCTIONS、BUDDY HOLLY、myspace.com/spectrumofficialpage を見てくれれば、もっと書いてるよ。
――JIM DICKINSON (筆者註: ROLLING STONESやRY COODER、BOB DYLAN、BIG STARなどを手がけたメンフィスの名プロデューサー / セッション・マン、自身の72年ソロ作 『Dixie Fried』 はスワンプ・ロックの名盤と評されている) との共演盤 『INDIAN GIVER』 はどのような経緯で実現したのですか?
S: BIRDMAN RECORDSのDAVID KATZNELSONがすべてまとめてくれたんだ。僕がJIMの90年代中期の作品をDAVIDに聞かせたら、彼がJIMを探して僕とコラボレートしないか聞いてくれた。とても興味深く、クールで特別な作品に仕上がったよ。‘Lonesome Death Of Johnny Ace’ がmyspace.com/spectrumofficialpage で聞けるよ。
S: SPACEAGEが権利を持っているから、本当にもうすぐにでもと思っているよ。
――今後の活動予定、もしくはリリース情報などありましたらお願いします。
S: 『INDIAN GIVER』で共演したJIM DICKINSONとSPECTRUMのツアーをする。それから、SPECTRUMの新しいアルバムもこの秋には出る予定だよ。
ライヴを観ていてすぐに気付いたことがある。それはSONIC BOOM / SPECTRUMの 「サイケデリア」 は音の強度とは無縁である、ということ。むしろ幽かで穏やかな音との交歓を促すということ。受動的で静かな逸脱、あるいはまどろみの中のめくるめく螺旋。アナログ・シンセの丸みのある音色はチープでありながらどこか蟲惑めいており、現今のテクノ / エレクトロニカとは一線を画すと同時に、ハウス~ディスコ・ダブのトラッシュな音圧が刻む 「瞬間の強度」 や 「リズム」 の齎す眩暈や狂熱とも相容れないものであることがわかる。むしろ音のテクスチャーの純理に細心し、それが持つ無機的 / 有機的な快楽を延長 / 持続 / 反復することにより単純化 / 抽象化 / 異化し、響きの効果を最大限に変成させる (手法に特化したその) 手法はその裏面に否応なく虚無をひきよせてしまうことも含めて、70年代ドイツの電子音楽 / クラウト・ロックにかなり近い印象を与える (彼の実験音響プロジェクトE.A.R.に到ってはTERRY RILEY、DELIA DERBYSHIREなどの呪術的 / 悪夢的な実験音楽 / サイケ・ドローンにすら踵を接している) 。KRAFTWERK、SUICIDE、LAURIE ANDERSONと、SONICがライヴでカヴァーしてみせた楽曲はそのアレンジも含めてSPACEMEN 3の頃から通底し続けるそのような彼の狙いを忠実に翻訳 / 代弁していたように思われる。
彼は実に淡々と (まったく狂った様子もなく、途中の機材トラブルにも微塵も動揺することなく) 一人アナログ・シンセとサンプラーを演奏する (アンコールではRED KLAYORAの ‘Transparent Radiation’ をギターで披露)。無心に? 決して上手くはないその演奏と低く呟かれる声は深いディレイの霧 / 肌理にくるまれて声自身の裡、音自身の裡に身を屈めそこに幻惑され眠り込もうとするかのように幾重にも幾幾重にも遅れてやってくる。会場が一つの巨大なディレイ (遅延の反復) 装置であるかのように? 嬉々として音と戯れ、徹底して感覚的であること、それ以外のすべてに信を置かないことによって比類なき音の快楽 / 悦楽を紡ぎ展開する一方で、その当然の帰結としてか、今回の来日公演 (SPACEMEN 3時代から含めて初! ) における注目度の低さ (と事前告知情報の少なさ) に顕著なように、(みずから) 辺境に追い込まれてしまったかにみえる現在のSONIC BOOM。しかし、翻って言えば、それゆえに、このどこまでも空虚な冥暗に撒き散らされた電子音の放列が描く銀砂のさざなみ、夢想と虚無の痕跡、純正された完璧な夢遊者の幻覚を人々はまざまざと現実より現実的に追体験する。音響機器の見る夢を、その蒸留された幻暈を、効果としてムードとしてアトモスフェアとして最大限に引き出すための 「ミニマルでマキシマルなアプローチ」 に他ならない 「接続とパッチングというアルゴリズムの錬金術」。そして、それはまさに、 「内に外を穿つこと」、つまり、意識を別のレベルにスライドさせる <サイケデリア>=<脳内麻薬> (と) の戯れ=賭けそのものに他ならないのではないだろうか?
【参照作品】
Soul Kiss (Glide Divie)
CD / 04IA14610 / 2,090円(税込)
SPECTRUMの最新リリースはJIM DICKINSONとの共作。ここでSONICはR&R /R&Bを基調とした音に向けて、反復する電子音の脈拍で叙情性を排した呪術的な感覚の眩暈のみを抽出し逆流させる。