【コラム】葛谷葉子 セルフライナーノーツ《BEST ALBUM FRONTIERS番外地》 ライター&ミュージシャン コラム 第二回

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2022.05.02

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ベストアルバム「MIDNIGHT DRIVIN' -KUZUYA YOKO MUSIC GREETINGS 1999~2021-」を昨年2021年にリリースしたと同時にアーティストとしての活動を再開した葛谷葉子。当作品はキャリア初のアナログもリリースされ、突然の活動再開の報に驚きと喜びを隠せなかったファンも多かったと記憶します。

今回のベストアルバムコラムはなんと葛谷葉子さんご自身によるリリースされたベストアルバムのセルフライナーノーツ企画が実現。アルバム「MUSIC GREETINGS VOLUME ONE('99)」「MUSIC GREETINGS VOLUME TWO('01)」のリリース後は小田急ロマンスカーCMソング「ロマンスをもう一度」ほかCM楽曲の制作、BoAや中島美嘉、ケミストリーをはじめとした著名ミュージシャンへの楽曲提供などを中心に作家としての活動が中心だったため、今回の企画はご本人の言葉で楽曲が綴られる大変貴重な機会となりました。

世界的にシティ・ポップ・シーンへ注目が集まる中、その文脈とも親和性の高いソウル~R&Bテイストの楽曲など新しい世代のリスナーに向けてもアプローチできる楽曲の数々、改めてご本人の解説とともに辿っていきたいと思います。



「MIDNIGHT DRIVIN' -KUZUYA YOKO MUSIC GREETINGS 1999~2021-」 セルフライナーノーツ by YOKO KUZUYA

01. midnight drivin’


  この曲があったからこそベストアルバムリリースに繋がった、そんな再始動のきっかけとなった曲。人生いろんなことがあるけれど、今までのすべてが報われるような恋をした、女性の切なく甘い思いを乗せてどこまでも。今回参加していただいたインドネシアのCITY POPバンド”IKKUBARU”の”Muhammad Iqbal”さんの素敵なギターも必聴。



02. Honey


  6~7年前に書いた曲で、もう一度歌いたいと思うようになって少しずつ書き溜めていた楽曲の一つ。自分のために書く曲たちはいつものびのびしていて、私らしくいてくれる。90’s R&Bを愛した日々が、今もなお曲作りに影響を与え続けているし、いつになっても恋する気持ちは忘れないでいたいもの。



03. TRUE LIES


  私の記念すべきデビュー曲で、失恋した翌日に「Shinin’ Day」とともに生まれたという思い出深い曲。本当は全部わかっているけど、最後まで嘘を突き通してほしい。そんな悲痛な願いと揺れる心情を歌ったもの。



04. my book


  「Du~e Du~e Oh Yeah~」このフレーズをレコーディング終盤に思いつきで入れたことで、一気に曲の雰囲気が変わった、いわゆる”マジック”が起きた曲。”本当の愛”を探す女の子の苦い恋の1ページ。



05. Natural


  「自分を好きになれる もっともっと~」当時この曲は自分のために歌っていたように思う。相手に認めてもらえないと自信が持てない。きっと多くの人がそんな厄介なものと日々闘っている。でも、まず自分が自分を認めて愛してあげない限りはそのループから抜け出せない。シンプルにそのことを思い出させてくれる曲。



06. ヒトリ


  1人でいる時間も私らしくいよう、そして彼への思いもちゃんとこの手で温めておこう。会いたいのに会えない...そんな遠距離恋愛の心の葛藤を切々と歌った曲。harpの音が心の奥まで沁み入る。



07. All Night


  この曲も含め、私の2枚のオリジナルアルバムに収録されている曲は、だいたい19、20歳に書いたものがほとんど。そのストレートな言い回しと真っ直ぐさは、今になってみれば、逆に学ぶべきものがあったりする。鷺巣ワールド全開の贅沢な音たちに、いつまでも包まれていたい。



08. Shinin’ Day


  私の楽曲の中では数少ないHappyな恋を歌った、太陽の似合う曲。失恋した直後に書いた曲には思えないけれど、1つの恋のページを閉じる時には、決して悲しい寂しい感情だけではなく、楽しかったことも記しておきたい、そんなことを直感(メロディ)を通して教えてくれたような気がする。



09. さよなら言えたなら


結末を知っていても、なかなか切り出せない。振り回される恋ほど、のめり込んでしまうもの。レコーディングの時、なんとか私の中のその強い感情を引き出そうと、YANAGIMANさんに熱のこもったヴォーカルディレクションをしていただけたことで、その後の歌い方も少しずつ変わっていったように思う。



10. Sweet Rhythm


  この歌詞の中に出てくるBABY FACEやJODECIは、当時本当によく聴いていた。スタッフに連れて行ってもらったクラブで、偶然にもJODECIのカバーを歌っていたFull Of Harmonyの3人と出会えたことは感謝しかない。



11. Replay on ~過ぎてゆく時の中で、満ちてゆく光の粒で~


  初めてCMの依頼をいただいて書き下ろした曲。まさかの3日後〆切で、初めての試みにワクワクしながらも緊張と焦りを抱いたことを思い出す。恋の終わりはいつだって苦しいけれど、見失っていた自分を見つけるチャンスになるかもしれない。新しい一歩を踏みだすきっかけになってもらえたら...。



12. 恋


  曲作りは中学3年の頃から初めて、その頃に「恋」のサビメロはできていた。そして同時期に作った「恋」の双子とも言える曲が松下奈緒さんに提供させていただいた「最後の恋」。2曲ともが後にリリースされることになるなんて知ったら、当時の私は何て驚くだろう。



13. サイドシート


デビュー当時から応援してくださっていた、大好きな北海道の初夏のドライブをイメージして作った曲。リリースから20年以上経ち、CITY POPを愛す若い世代の方たちにまた聴かれているなんて、なんて幸運な曲だろう。



14. 最後の夜


  Music Greetings Vol.1、2両方に収録されているという「最後の夜」の最初のバージョン。この曲がCHEMISTRYの仮デビュー曲となって多くの方に知っていただけたのと同時に、作家として楽曲提供を始めるきっかけとなった、まさに転機ともなった曲。




 


葛谷 葉子 (くずや ようこ)

1999年8月エピックレコードよりシンガーソングライターとしてシングル「True Lies」でデビュー。全国各地のFMステーションで、ヘビーローテーションに選出され、R&Bシンガーとして多くのリスナーからの支持を獲得。
その後、他のアーティストへの楽曲提供をスタートさせ、CHEMISTRYの仮デビュー曲として話題になった「最後の夜」をはじめ、倖田來未「you」、BoA「DO THE MOTION」など数多くのヒット曲を手がけている。
長い間作家をメインに活動していたが、2000 年にリリースしたシングル「サイドシート」が近年のシティポップ・ブームで再評価されている背景もあり、久しぶりにアーティスト活動を再開し、2021年に新曲2曲を収録した11年ぶりになるベストアルバム「MIDNIGHT DRIVIN'-KUZUYA YOKO MUSIC GREETINGS 1999~2021-」を発表した。

葛谷葉子 Official Website
https://yokokuzuya.amebaownd.com/

葛谷葉子Official youtube
https://www.youtube.com/channel/UCMcIbAzDZXIOgZZgbeE8WCg