" 歴史的傑作をリリースする直前に録音された未発表音源集には、噴出する直前のマグマの蠢きにも似たクリエイティヴィティとエナジーに満ちた、むしろその歴史的転換点となったマスターピースをも上回るインパクトを放つような奇跡的な作品が稀にある。例えば、エレクトリック・マイルスの本格的な幕開けを告げたマイルス・デイヴィス『ビッチェズ・ブリュー』発表直前の“ロスト・クインテット”による鮮烈な演奏を記録した傑作『1969マイルス』や、ウルグアイが誇る巨匠ウーゴ・ファトルーソが率いたOPAが76年に米国のマイルストーンからデビューする前の時期に初のデモ・テープ音源として録音し、90年代以降にオフィシャルに発表されて彼らの最高傑作として親しまれるようになった『Back Home : Lost 1975 Sessions』など。レア・グルーヴ以降の耳にはむしろ求心力が高い生々しくヒップな音の質感とグルーヴ、アグレッシヴな演奏、一定のスタイルを確立する前のカオス状態にあるがゆえに自由奔放な音楽性を伴い、後に発表されたアルバムの聴こえ方すら変えてしまうレベルの音源集は、マニア向けのお蔵出しテイク集みたいなシロモノとは別格の強度と歴史的意義を孕んでいる。前置きが長くなってしまったが、今回に40年以上の時を経て発表されることになったアジムス『デモ・トラックス1973-75 VOL. 1&2』もそのような歴史認識を変えるレベルの作品だ "
―― 吉本秀純 氏 ライナーノーツより一部抜粋
驚愕...!! ブラジリアン・レアグルーヴ~フュージョンを代表するバンド、アジムスの未発表音源が UK Far Out Recordings からリリース決定。アジムスの 1st アルバムがリリースされた 1975年。その直前となる 1973-75年の間に、ベルトラミのホームスタジオで録音されたというこれらのトラック達は、当時世界でもあまり例をみない実験的かつサイケデリックな録音だったため、ブラジルでは理解されず、レコード会社からも「間違っている」と言われてしまったのだとか。ベルトラミのスタジオに長年埋もれていたこれらの音源を発掘したのは、Far Out の面々だった。彼らがアジムスのアルバムを録音するためにブラジルを訪れた際にこのデモ音源を発見する。Far Out のオーナーのジョー・デイヴィスは「自由かつ力強い音楽性、そしてその音楽的なアイデアの豊富さにブッ飛んだ」と当時の衝撃を語っている。
コレクター垂涎の一枚として知られるアジムスの 1st EP に収録された名曲 "MELÔ DA CUICA"、1st アルバムで録音されることになる "MANHÃ" 、Far Out から 1996年にリリースされたアルバム『CARNIVAL』に収録された "PREFACIO" ...。どのトラックからも感じられる熱狂的なエネルギー、メンバーそれぞれの強烈な個性、驚くほどにクリエイティビティにあふれたビジョンは、これまで誰にも聴かれていなかったのが信じられないほどに生々しく強烈である。
Credits: Keyboards: José Roberto Bertrami (Mini Moog Series One, Arp Omni, Arp 2600, Arp Solina Strings, Fender Rhodes 88, Hammond B3 with box speaker, Clavinet with Wah Wah) Drums: Ivan ‘Mamão’ Conti Bass: Alex Malheiros Percussion: Ariovaldo Contesini Produced by Azymuth and Jose Roberto Bertrami Recorded at José Roberto Bertrami’s home studio in Laranjeiras, Rio De Janeiro, Brazil between 1973–1975. Issue and project co-ordinator: Joe Davis Tape transfers by Roc Hunter (thanks to Simon Hitner) Mastered by Daniel Maunick at the Sugar Shack, Lanark, Scotland Mastered by Frank at Carvery Cuts All tracks published by Far Out Music Publishing/Westbury Music LTD