【連載コラム】The Conscious of R&B - aimi:Vol.9『Ari Lennox』

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2021.09.24

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毎月第4金曜更新の連載コラムを担当しています、R&Bシンガーソングライターのaimiです!

『The Conscious of R&B』と題して、2021年注目すべきR&Bアーティストを紹介しています。今ホットなR&Bアーティストが何を考え、何を感じ音楽を作っているのか、作品に隠された “意識”に注目して、勝手な私の解釈も交えながらお伝えするコラムです。




この記事で紹介するのはJ. ColeのレーベルDreamville所属、ワシントンD.C.出身30歳のシンガーソングライター『Ari Lennox(アリ・レノックス)』です。


引用:https://news-primer.com/ari-lennox-takes-us-through-the-decades-in-a-new-pressure-video/

Ariと言えば、Jazmine SullivanやQueen Naijaの最新アルバムでフィーチャーされていて、このコラムでも参加曲を紹介しましたね。(まだ読んでない方はぜひバックナンバーも読んでみてください)ソロの作品は前作から期間が空きましたが、今月9月10日に約1年ぶりのニューシングル『Pressure』がリリースされました!

実は2020年3月に来日公演を予定していましたが、アジア数カ国への渡航制限によりアジアツアー自体を中止していまいした。今後の状況次第では、来日公演の日も近いかもしれません。そんな注目の彼女のこれまでと魅力を紐解いていきます。最後に最新曲を紹介します。

UberドライバーからDreamville初の女性アーティストに
Ari Lennox(本名はCourtney Shanade Salter)は1991年に北バージニアに生まれ、ワシントンD.C.(DMV)育ち、7人兄弟の三女。Ari Lennoxは1993年公開のファンタジードラマ映画「The Secret Garden」に登場する “Mary Lennox” に影響を受けてつけたアーティスト名です。

Ariは両親の趣味でBillie HolidayやJackson5、Eric Benet、Lauryn HillなどソウルやR&Bが流れている家庭で育ちました。Ariが人前で歌うきっかけは教会のクワイヤー。学生時代は父親の仕事の関係で転校を繰り返していて、学校はサボりがちだったようですが、歌だけはずっと続けていました。高校を卒業する頃、同級生が一人残らず大学進学する一方で、Ariはアルバイトを転々としながらYouTubeにカバー動画をアップするようになりました。物事が長く続くかないタイプでしたが、YouTubeとUber(Taxi)のドライバーだけは続けられたのだとか。笑
鳴かず飛ばずの時期を経て、Frank Oceanの“Thinkin Bout You” とBeyoncéの “Drunk In Love”がバズり、カバーではなくオリジナルで勝負することを決めます。





2013年にデビューミックステープ『Five Finger Discount』、デビューEP『Ariography』をリリースし、翌年にインディペンデントでシングル「Bound」をリリース。2015年にDreamville所属のラッパーOmenのアルバム『Elephant Eyes』に収録された「Sweat it Out」でフィーチャーされます。DreamvilleでもAriの音楽が出回るようになり、初の女性アーティストとして契約が決まったというのが経緯。レーベルコンピレーション『Revenge of the Dreamers II』への参加(「Backseat」)を経て、デビューEP『Pho』を発表。
J.Coleの楽曲「Change」にもフィーチャリング参加し、2017年にオープニングアクトとしてJ.Coleのツアーでピックアップされたことが大きなマイルストーンになりました。
Uberドライバーで終わるような才能ではなかったわけですね。


引用:https://pitchfork.com/news/listen-to-j-coles-dreamvilles-new-album-ft-kendrick-lamar-vince-staples-and-more/

“リアルシット”を歌い、コミュニティの心を掴む
ソウルフルな歌声の印象が強いかもしれませんが、Ariの最大の魅力はスウィートで飾らない人柄と等身大な歌詞。セクシーでユーモアがあってキュートで大胆なAriは特に女性のリスナーから共感を集めています。

2018年にリリースされたデビューアルバム『Shea Butter Baby』は “これが最後のアルバムだったとしてもいい”とTwitterで呟いてしまったほどの自信作。収録曲にはレーベルヘッドのJ.Cole、レーベルメイトの EarthGangやBasがフィーチャリングで参加しています。
楽曲のイントロやアウトロにAriの会話が収録されています。『The Miseducation of Lauryn Hill』でも同じように会話が収録されていますよね。それにインスパイアされたのかな?と思いました。





アルバムには失恋を乗り越えようとする話やお金がない二人が恋に落ちる話、マッチングアプリが最低だった話、自分のアパートを初めて借りられた話などを歌った楽曲が収録されています。例えば「Whipped Cream」は甘いもの(シュガー)中毒と元彼への未練を重ねて書いている曲で、体に悪いとわかっていても手放せない元恋人への気持ちを歌っています。
人生で起きている本当のこと “リアルシット” をただ歌っているだけですが、隣のお姉さん感というか、そういう親しみやすさがリスナーを掴んでいる理由かもしれません。

I've been eatin' whipped cream, havin' vivid dreams
(ずっとホイップクリームを食べて、鮮明な夢をみてる)
Of your face and through people on TV screens
(あなたの顔が出てきて、テレビの画面の人たちを見てても)
You've been everywhere
(あなたはそこら中にいる)
And I wish I didn't care
(もう気にならなければいいのに)
Oh, you've been everywhere
(あなたはそこら中にいる)
I wish, wish I didn't care, yeah, mmm
(気にならなければ…)
Wish I didn't
(よかったのに)
….
I've been in my feels, I've been stackin' bills
(私はずっと感情に溺れてて、請求書を積み重ねてる)
Online shoppin' and robbin' my chance of survivin'
(オンラインショッピングして、生き抜くチャンスを奪って)
I'm late on rent, what was I thinkin'?
(家賃も滞納してるし、何を考えたんだろう?)
I'm gon' go to the gym, squat real low for a man
(ジムへ行って、気をひくためにめっちゃ深くスクワットするわ)
'Round you it revolves, I can't shake it off
(あなたのことがぐるぐる回って、降り落とせない)
Unrequited, admit it, you were never mine at all
(片想いだった、認めるわ、あなたは私のものじゃなかった)
Never mine, never mine
Never mine at all (No, at all)
Ayy, yeah, never mine
Never mine at all
(一度も私のものなんかじゃ)




デビューアルバムリリース後は、6LACKのツアーでサポーティングアクトに抜擢されるなどヒップホップ界とR&Bシーンを行き来しながら、さらにリスナー層を広げていきました。
2020年にはBETが選ぶ “Future 40” というリストで最も影響力のある若き才能ある黒人アーティストとして選ばれています。

Erykah Baduと比べないで…
これまでのインタビューや記事でEryka Baduの歌声を引き合いに出されることが多かったようです。本人としてはちょっと不本意。
“彼女はレジェンドだけど、Erykah はErykah。もちろん影響は受けているけど、色々なアーティストにインスパイアされている” と語っています。
例えば、Missy Elliott, Tweet, SWV, 702, En Vogue, Anita Baker, Oleta Adams, Billy Ocean, D'Angelo, Bilal, Chaka Khan, Aretha Franklin, Omarion, Ciara, Ashanti, Petey Pablo, Kanye West, Common, Jazmine Sullivan, Chrisette Michele, Floetry… とリストは続きます。

「どんなアーティストに影響を受けていますか?」という質問、アーティストなら必ずと言っていいほど聞かれますが、個人的には何を聴いてきたかになぜそんなに興味あるのだろうと思ってしまいます。
他のアーティストとカテゴライズすると音楽ってそんなに聴きやすいですかね(笑)ルーツを軽視したいわけではないですが、私はアーティストの人生経験やそこから生まれる感情、人間性が音楽に投影されると思っているので、音楽遍歴よりもパーソナルな部分に興味が湧いてしまいます…。

Ariはソロ作品も良いですが、客演作品も最高です。最近の客演のライブ映像を置いておくので、ぜひ観てみてください!涼しい顔をしてボーカルパフォーマンスが完璧です。




引用: https://kysdc.com/4222598/ari-lennox-jazmine-sullivan-bet-awards-performance/

最後に、ドロップされたばかりのニューシングルを紹介します。

Pressure / Ari Lennox


Ocean Boysと呼ばれるJermaine Dupri、Bryan-Michael Cox、Johnta Austinの3人によるプロデュース作品。
Usherの『Confessions』やMariah Careyの『The Emancipation of Mimi』なども手がけるヒットメイカーチームです。キャッチーでバウンシーな楽曲に仕上がっていますが、リリックはかなりセクシャルなので和訳は割愛。
今回の見所は何と言ってもミュージックビデオとビジュアル。振付を踊っているAri をミュージックビデオで観るのは初めてじゃないですかね。

ビジュアルは70〜00年代のアイコニックなルックをオマージュいます。
冒頭の3人で並んで踊っているシーンは70sバイブス全開で、Diana Rossへのトリビュートになっています。シルバーを背景にサングラスをかけてミニスカートで踊っているシーンはTLCやDisney’s Childを連想させる00年代バイブス。ミラーボールの下で踊っているシーンは80’sのDonna Summerをイメージしています。
どれも着こなしてしまうAriの七変化に惚れ惚れでした。

H.E.R.が主催する “Lights On Festival 2021” にAriも出演しますが、この曲も間違いなくやっているでしょうね。
日本でもR&Bフェスやりたいですね。誰か一緒にやりませんか?!

ちょっと話が逸れましたが、今月はAri Lennoxを深掘ってみました。久々のリリースだったこともあり、まとまった作品がそのうちリリースされるかもと期待が高まりますね。この記事が気に入ったら、ぜひシェアしてね!

2021/9/24


< INFO>

ここ最近はリリースに向けて準備を進めながら楽曲制作の日々。曲作り以外にもやることが山積みでそのうちヒーヒー言い出しそうですが、とにかくヤバい作品を作りたいです。楽しみに待っていてくれたら嬉しいです!



『Fight No More』
  発売日:2021年6月2日
  ▼オリジナルバージョンの配信音源はこちら
  
https://orcd.co/bxjvddj
   <収録曲>
   1. Fight No More
   2. Fight No More (grooveman Spot Remix)






『Changed 4 Good』
  発売日:2021年2月24日
 ▼配信音源はこちら
  https://orcd.co/changed4good

 < 収録曲 >
 1. Fight No More
 2. On You
 3. The Wave feat. Furui Riho
 4. Back In Luv
 5. KMHH





<Profile>



aimi

コンテンポラリー R&B シンガーソングライター。千葉県成田市出身。幼少期にソウルやディスコミュージックを聴き始め、90's, 00's R&B に影響を受ける。
学生時代に留学先のイギリスマンチェスターでライブオーディションに出場し、アジア人として初優勝。歌手の道に進むことを決意する。
長年のライブ活動と自主制作を経て、2020 年『aimi』として新たなプロジェ クトを始動。
2019 年、音楽プロデューサー Shingo.S との出会いをきっかけに、楽曲制作をスタート。
2020 年5 月にリリースしたデビュー EP「Water Me」が iTunes R&B / ソウルチャートで初登場 1 位を獲得。リード曲「Sorry」が J-WAVE の SONAR TRAX に選ばれ、パワープレイされる。
楽曲は 英語と日本語両方で制作しており、国境を越えた音楽活動を目指し、精力的に活動している。
2021年1月より block.fm にて DaBook と DJ AKITO (Chilly Source)と R&Bプログラム『Vibe-In Radio』のパーソナリティを務める。
また disk union 公式サイトにてR&B楽曲を紹介する連載コラムも担当。
2月に2nd EP「Changed 4 Good」をリリース。6月に初のフィジカル作品となる「Fight No More」7インチレコードを発売。
7月にVibe-In Radioとして初主催したR&Bパーティー "VIBEY" では江ノ島OPPA-LAにて250名を動員し、リリースライブを大成功させた。


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〈Back Number〉


















  • ARI LENNOX / PHO
    • HIPHOP/R&B

    PHO

    ARI LENNOX

    2021年11月14日 / LP(レコード) / IMPORT

    8,910円(税込)

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  • ARI LENNOX / SHEA BUTTER BABY "2LP"
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    SHEA BUTTER BABY "2LP"

    ARI LENNOX

    2019年09月27日 / LP(レコード) / IMPORT

    5,720円(税込)

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  • aimi / Fight No More / Fight No More (grooveman Spot Remix)  (7")
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    Fight No More / Fight No More (grooveman Spot Remix) (7")

    aimi

    2021年06月02日 / 7"(レコード) / JPN

    2,000円(税込)

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