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レコード芸術特選
イリーナ・メジューエワがいよいよブラームス後期作品に挑戦! メジューエワによるブラームスには、まとまった作品としては「4つのバラードop.10」(2007年録音)があった程度で、今回はop.118-2を除く全曲が初録音となります。
枯淡の境地を反映したといわれるブラームスの「晩年スタイル」ですが、メジューエワは、「孤独」や「絶望」、「諦念」の裏側で静かに燃えている作曲家の心の裡に迫ることにより、それが、いかに豊穣な世界であったかということを再認識させてくれます。ロマン主義芸術の放った最後の光芒、そしてその先に広がる果てしない闇を、これほどまで見事に描いた演奏はほかにあまり例を見ません。ネイガウスやユーディナ、そしてリヒテル、ギレリス、ヴェデルニコフ、アファナシエフといった巨匠たちの偉大な伝統を継承しつつ独自のブラームス像を確立している点において、この演奏はロシア・ピアニズムのブラームス演奏史に新たな一章を付け加える、記念碑的なものといっても過言ではないでしょう。ppからff まで透明感に溢れる変幻自在のタッチ、色彩感豊かな音色。とどまることのないファンタジーの広がりと堅固な造形、巨大なスケール感。ポリフォニーの卓抜な処理。すべてが斬新であると同時にどこか懐かしい、新しいブラームスをお聞きください。
【録音】
2013年7月、9月 新川文化ホール(富山県魚津市)
IRINA MEJOUEVA / イリーナ・メジューエワ
ロシア出身のピアニスト