今作でAbernathyは、経済や人種差別などの問題に対し、アメリカに生きる黒人の一人としての主張をフラットな視点から音楽にすることで、普遍的な愛や、家族などごく身近な人間関係をテーマとした前作『Monologue』とは全く異なる表現性、新たな魅力を開花させている。収録曲のすべてがAbernathyによる作曲・編曲、プロデュースとなっており、性格の異なるバラエティ豊かな全9曲が絶妙なバランスで呼応し、一貫した世界観を描き出している。多くの声が重なり、響き合う中躍動するヴォーカルとベースが楽曲を力強くリードする“Daily Prayer”にはじまり、アメリカンドリームの障壁となる経済問題に焦点を当てた“Restrictions”や、LGBTコミュニティと先住民族の権利を主張する“Generation”など、様々なメッセージが多彩なサウンドと共に展開される本作からは、Marvin Gayeの 『What's Going On』や、Sly & The Family Stoneの『There’s a Riot Goin On』、Curtis Mayfieldの『Curtis』といった名盤を彷彿とさせる社会的なメッセージを感じることができるだろう。70’sソウルのサウンドを現代的な感性で再解釈した痛快でドラマチックなサウンドは幅広い層のリスナーを魅了し、ソウルの新たな可能性を予感させるに違いない。