没年である2006年以降も各所から様々な音源がリリースされ、もはやとどまるところを知らないJ Dilla未発表音源。ラップ・アルバムである『The Diary』や『Rebirth Of Detroit』のほか、『Dillatronic』をはじめとするビート集、『Jay Love Japan』のオフィシャル復刻、更に限定のアナログ・リリースの数々を含めればまさに膨大な数量に及ぶが、それら作品と今回の『Motor City』の大きな相違点は、母 Ma Dukesが主導して音源を発掘、コンパイルしたという点だろう。
各音源の制作年やエピソードは一切明らかにされていないものの、お馴染みのサイレン音然り、名盤『Donuts』を想起させる手法がそこかしこに見られ、更にA.T.C.Q.のQ-TipやAliとのコレクティブ Ummahとしての活動期や、初期Slum Villageでのプロダクションにも似通った硬質なキック、地を這うがごとく籠ったベースラインなど、その音源の制作背景や時間軸など我々聴く者の想像を否応なく掻き立ててくれる。そんな19の至宝ビーツに加えて、ボーナスとして盟友J. RoccによるDJミックス音源と、本作の舵取り役である母 Ma Dukesが息子J Dillaに綴った「手紙」(国内盤仕様CDには日本語対訳付き)が付属。封書型の特殊パッケージという非常に凝った仕様も感涙ものだ。
