2024.10.17
スコット・グルーヴスは90年代初期から活動しているベテラン・プロデューサーである。カール・クレイグやURといったデトロイトテクノ第2世代の少し下の世代で、ドライヴトレインが主宰するSoiree RecordsからDJスコット名義でリリースした「Solid Grooves」でデビュー。彼の名前が一気に知られることになったのは、スコットランド・グラスゴーのSOMAレーベルからリリースされた「A New Day」や「Mothership Reconnection」、「Expansions」の各EP、それらを収録したアルバム「Pieces Of A Dream」だろう。
「Expansions」はロイ・エアーズをフィーチャーしたロニー・リストン・スミスのカバー曲、「Mothership Reconnection」はデトロイトの先達Pファンクとコラボを行い、さらに「Mothership Reconnection」のリミックスは既に「Homework」を発表していたダフト・パンクが担当するなど、語るべき焦点がいくつもある華々しいデビューアルバムとして知られている。
「Pieces Of A Dream」発表以降は、ジョー・クラウゼルのSpiritual LifeからのEPをリリースし、徐々に自身のセルフ・レーベルからの作品に移行、デトロイトらしいディープハウスを量産していくこととなる。
近年はマニュエル・ゲッチング「E2-E4」のカバーやデトロイトファンク重鎮アル・ハドソンとのコラボなど、幅広い作品を発表している。
今回ニューアルバム「AFTER THE DANCE PHONE HOME: A SONIC RETREAT」発売のタイミングでインタビューを敢行。アルバムの内容がアンビエントであったこと、最近の制作環境、デトロイトのシーンについてなど、スコットの貴重な声を聞くことができた。

■diskunion (以下du)
こんにちは。インタビューを受けてくれてありがとうございます。
最近はどのような活動を行っていますか?
■Scott Grooves (以下SG)
ここ数か月、私は新しいアートや音楽の創作に熱心に取り組んできたんだ。また、ニューヨークでいくつかパフォーマンスを行って、素晴らしい時間を過ごすことができた。オーディエンスと親密な距離感でつながり、私の新しいプロジェクトが進化する過程を共有できたことは貴重な体験だったよ。
■du
本作がアンビエントミュージックであることに非常に驚きました。
なぜ、本作を作ろうと考えたのでしょうか?
■SG
「After The Dance Phone Home」は、自分自身と深く再接続を果たしたいという欲求から始まった。私の音楽は、色々な表現スタイルやヴァイブスを代表する惑星群を伴った銀河のようなもので、このアルバムは、ダンスミュージックに力点を置いた作品が持っている拳を突き上げるエネルギー、それを超える新たな惑星を発見して生まれたんだ。より個人的でリラックスできる音の隠れ家を提供できるようなものとしてね。
■du
自身の感覚をリフレッシュするために制作したとのことですが、あなたの環境に変化はあったのでしょうか?
■SG
特に劇的な変化があったわけではないんだけれど、環境に対しての視点は変化したといえるよ。このプロジェクトを制作したのは、外部の変化に対応するというより、自らの内なる感覚をリフレッシュすることが目的だった。何年も熱量ある音楽を作ってきた後に行うリセット方法が必要だったんだ。
「After The Dance Phone Home」で、自身の別の側面と再びつながることができた。自分が求めていた穏やかさは内側から湧き出るもので、環境は同じだとしても、リフレッシュできる空間を作る手助けしてくれた。もちろん、パンデミックの影響もあり、ダンスミュージックにフォーカスしない作品を探すことにつながったといえるんじゃないかな。
■du
作品を聴いて感じたのは、これまでのあなたの作品とは違った世界観です。
このような作品は、発表していないだけで、これまでも作ってきたのですか?
■SG
うん、そうだね。実際5年前にチルな作品をいくつか手掛けていて、"Sun Dots"はそのときの作品なんだ。
■du
本作を作るに当たってインスパイアされたアーティストや作品はありますか?
個人的には、KRAUT ROCKやIASOSなどのニューエイジ・ミュージックからの影響を感じました。
■SG
そのとおり。吉村弘の「Surround」からインスパイアされたんだ。彼の没入感を生むサウンドスケープを作り出す繊細な才能にとても共鳴したよ。あと、毎日自転車に乗っているのも影響したと思う。自転車に乗り、頭がクリアになり周りのリズムとコネクトする時間ができた。加えて、とても素晴らしいビンテージマシンを手に入れてリラックスする音楽のアイデアがたくさん湧き出てきたことも本作には繋がっているね。
■du
それぞれの曲名も印象的なキーワードが用いられています。
アルバムで表現されているストーリーなどあれば教えて下さい。
■SG
このアルバムは具体的なナラティヴに沿った作品ではないんだ。でも、様々なムードや雰囲気を捉えていて、それらが組み合わさることによってダンスミュージックのエネルギーが落ち着いた後の安らぎを見つけ再接続する感覚、それを作った。トラック・タイトルのいくつかは、2023年10月に行ったエキシビジョン「After The Dance」から取られたものなんだ。このプロジェクトは二部構成の取り組みで、エキシビジョンではこの新しい世界観を視覚的に紹介したもので、音楽で表現したものとして2024年の今年アルバムを発表したんだよ。
アートと音楽で世界を創造し、視覚的な探求から音へ至る旅を表現しているのがこのプロジェクトなんだ。
※当時のエキシビジョンについてはこちら (外部リンク)
■du
制作はどのような環境で行われたのでしょうか?
差し支えなければ、用いた楽器などについて教えて下さい。
■SG
いい質問だね! 「After the Dance Phone Home」のレコーディング環境はとてもリラックスできて内省的でもあって、音楽にもそれがよく現れていると思う。大半の曲は自宅スタジオで制作していて、チルなムードを掴まえることが重要だった。天気が重要な要素でもあったのでそこも活かした、リラックスしてストレスなく作業ができる落ち着いた空間なんだ。
楽器は、意図的にミニマルな構成にし、アナログシンセサイザー、ハンドメイドの小さい楽器、そこにエフェクトをミックスして制作していて、ソフトウェアは使っていないよ。温かみのあるパッド、ピアノの柔らかいテクスチャー、繊細なフィールド・レコーディングのサンプルを用いて、没入感がありながら穏やかな雰囲気を込めたんだ。空間とテクスチャーに重点を置いて、まるで音の息遣いを感じることができるように作ることがとても大事だった。
■du
あなたについてディープハウスのプロデューサーという印象をもっているのですが、ここ数年はソウル、ファンクのカバーからE2-E4のカバーなど、新しい側面が表現されてきました。
こういったスタイルが変化することについて、きっかけはありましたか?
■SG
成長に気づいてくれて嬉しいよ! 私のルーツは間違いなくエレクトロニック・ミュージックとジャズだけど、時が経つにつれて、音楽的な自分の色々な側面を探求して表現する必要性を感じるようになってきた。急な変化ではなくて、自然な流れでそうなったんだ。私は、音楽は人生と同じように、成長と実験である、そう信念をもってきた。この変化は、あるきっかけによるものではなくて、徐々にジャンルの境界なく作りたいと思うようになっていったんだ。ソウルやファンクのカバー、あるいはE2-E4のような作品へのオマージュなど、長年に渡って私に影響を与えてきた音楽を自分のレンズを通して新しい絵を描くことが重要だと考えているよ。
例えるなら、深い根を張った樹木が新たな枝を生やしているようなものかな。土台である基礎は常にそこに在るけど、枝は光と空間を求めて予想だにしない方へ伸びていく。私の音楽も同じように新しいサウンドやアイデアを常に求めているけれど、全ては私のルーツに繋がっているんだ。
■du
現在もデトロイトに住んでいますか? 近年のデトロイトの音楽シーンはどのような状況でしょうか?
■SG
イエス。私はデトロイトに住んでいて、シーンは変化を続けているよ。最近、私のカバー曲の多くで演奏してくれたミュージシャンと一緒にライヴ活動も始めたんだ。いつか日本に訪れて、私のバージョンのE2-E4のような曲をライヴで演ってみたいと願っているよ。でも、絵を描いたり街でアートショーを行うことに時間を割いているんだけれど。
■du
いまあなたが注目しているアーティストやDJがいれば教えて下さい。
■SG
Max Watts と Sugar はいいね。あと、Jnn April はクールだし、Deon Jamar、Julion De'angelo、Meftah、Shigetoもね。Salaka Star は素晴らしいシンガー!
■du
最後の質問です。次のリリース予定は決まっていますか?
■SG
Sadeのライヴカバーをリリースする予定。できれば近いうちに。
■du
それはとても楽しみです! インタビューに答えてくれてありがとうございました。
(質問:Kyoya Inomata)
AFTER THE DANCE PHONE HOME: A SONIC RETREAT (CD)
デトロイトのベテランプロデューサーによるニューエイジ・アンビエント作品
AFTER THE DANCE / JPN / CD / ATD1 / 1008841030 / 2024年07月31日
デトロイトのベテランハウスDJ/プロデューサーがまさかのニューエイジ・アンビエント・アルバムを発表疲弊しきった身体を回復させるチルアウトとリフレッシュを兼ね備えた実用型作品ロイ・エアーズやPファンクとのコラボ、ジョー・クラウゼルの伝説...
4,070円(税込)
※ 5,000円(税込)以上買うと送料無料!新品でも中古品でもOK!
デトロイトのベテランハウスDJ/プロデューサーがまさかのニューエイジ・アンビエント・アルバムを発表疲弊しきった身体を回復させるチルアウトとリフレッシュを兼ね備えた実用型作品ロイ・エアーズやPファンクとのコラボ、ジョー・クラウゼルの伝説...
デトロイトのベテランハウスDJ/プロデューサーがまさかのニューエイジ・アンビエント・アルバムを発表
疲弊しきった身体を回復させるチルアウトとリフレッシュを兼ね備えた実用型作品
ロイ・エアーズやPファンクとのコラボ、ジョー・クラウゼルの伝説的レーベル Spiritual Life MusicからのEPで知られ、近年はMANUEL GOTTSCHING"E2-E4"のカバーやファンク・ナンバーで幅広い音楽性を示してきたデトロイトのベテラン、スコット・グルーヴス。
DJやスタジオでダンスミュージックに集中してきた彼が、自らをリフレッシュするために作り上げた作品が本作「After The Dance Phone Home: A Sonic Retreat」。
8つのセクションに分かれており、様々なチルアウト・フォームを展開する内容となり、抑えた出力であっても強いヴォリュームであっても聴き手に作用する、自由な視聴環境を想定されたアルバムである。
また、アートワークもスコット自身が手掛けており、自らを回復させるために描かれた作品でもある。
E2-E4 REFRAMED (BLACK&WHITE JACKET)
2024再発ハンドプリント・アートワーク:マニュエル・ゲッチングの永久不腐マスターピースE2-E4のカバー!
2024年07月01日 / 12"(レコード) / US
5,170円(税込)
2008年DETROIT DEEP HOUSEがリイシュー!!
2022年01月30日 / 12"(レコード) / US
2,090円(税込)
DETOROIT HOUSE / VOCAL
2019年02月08日 / 12"(レコード) / US
DECADE OF NATURAL MIDI 2007-2017 MIXED
SCOTT GROOVESレーベル10周年記念ミックス
2017年07月21日 / CD-R / US
2,860円(税込)
2014年11月25日 / 12"(レコード) / US
FUNK GEAR / LIBERIAN GIRL (7"+45 ADAPTER)
Michael Jackson"リベリアン・ガール"バンドカバー / デトロイト・ファンク
2020年02月02日 / 7"(レコード) / US
2,200円(税込)
SO GLAD/OCEANS OF THOUGHTS AND DREAMS + 7INCH ADAPTER
デトロイトのAL HUDSON & ONE WAYをフィーチャー!
2017年12月07日 / 7"(レコード) / US
2,640円(税込)
DETROIT HOUSE
2010年11月29日 / 12"(レコード) / UK
DETROIT
2005年12月07日 / LP(レコード) / UK
ROY AYERS参加/LONNIE LISTON SMITHの名曲カバー
1998年05月07日 / 12"(レコード) / UK
1,265円(税込)
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