INFORMATION | HIDEO KOBAYASHI 渾身の2nd Album「a Drama」 リリース記念スペシャル・インタビュー!

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2010.04.21

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ここ何年かでハッキリと立ち現れてきた感のある“日本のハウス・シーン”という文脈。もちろんこれまでも幾多の地下活動が胎動しは潜り込み、といった循環がようやく実を結んだ結果であるのだが。そしてその“日本のハウス・シーン”に古くから並走し、同業からの信頼も高いクリエイターズ・クリエイターこそがこの度新作『a Drama』を上梓するプロデューサー、HIDEO KOBAYASHIである。90年代から活動を始め、00年頃からはUSやUK、日本など数々のレーベル(この中には筆者が国内初のテック・ハウス・レーベルなのでは、とにらむIng Recordingsからの作品も含んでいる)から楽曲をリリース。サンフランシスコでの生活を経て06年に帰国した時点では“知る人ぞ知る敏腕プロデューサー/DJ”として国内での期待値を高めている。その後、NY老舗レーベルIbadanのボスJerome SydenhamとのユニットNagano Kitchenを経て、08年、万を持しての個人名義フル・アルバム『ZERO』を発表。シーンが諸手を挙げて迎えたアルバム、そしてそれに伴うツアーを彼はこう回顧する。
 
「完成度に関しては満足していますね。作品として反省の生まれるようなものは残すべきではないと思うし、当時の思いやスキルを精一杯表現していると思います。ツアーを通して多くの同志達とも出会えたし、世界各国のレーベルからもライセンスされたので、その点でも良かったと思います。制作、販売に携わってくれたみんなの気持ちが、この作品を作り上げた。そう言っても過言ではなく、感謝しています。セールスに関してもほぼ予想通りで、的確な仕事が出来たんじゃないかな」



 
そして本人の話によれば、『ZERO』発表前には早くも今作『a Drama』の制作に取り掛かっており、DJツアーや他アーティストのリミックス作業と並行して作業は進んでいたようだ。今作は前作発表から現在までの一年間のドキュメントとして、長野の自宅スタジオにて編まれてゆく。
 
「『a Drama』というタイトルは一年間のドキュメントであると共に、自分自身を表す言葉としても気に入っているんです。またDJプレイもその一部ですので、同様にそう呼んでいいと思っています。そして、常に全てにおいて“ドラマティック”でいたい。制作は基本的にはすべて自宅スタジオで。プラグイン等は少しずつ増えていますが、前作とほとんど環境は変わっていません。ただしチャンネルストリッププラグインは一新して、それで基本的な音作りをしていますね。あとTokyo Black Starの熊野さん(a.k.a. PHONON)が開発した“PHONON LIQUID”という接点復活材をほぼ全ての接点に塗ってから、音の解像度がすばらしく生まれ変わったので、アルバム全ての曲をトラックダウンし直したりはしました」
 
 
今作にはタイトル通り作品をドラマティックに彩るゲスト陣が多数参加している。ここ日本でも大ヒットを飛ばす北欧ハウス・シーンの雄Rasmus Faberや、Naked MusicやOMからの楽曲で知られるシンガーLisa Shaw、日本が誇る轟音ジャズ・バンドSOIL & “PIMP” SESSIONSのサックス奏者である元晴、そしてHIDEO KOBAYASHIと多くの共演曲を残す歌姫Tomomi Ukumoriら豪華かつ個性的な面々が作品に助力しており、クレジットを眺めるだけで壮観である。これらゲスト陣の魅力を本人に訊くと、
 
「まず冒頭“beautiful moment”でボーカルに迎えたChrista。彼女はハウス・シンガーではなく、カントリーが主体のようで、詞の内容が本当に素敵で、とても美しいメロディーを書く。そしてカントリーをベースとしたハーモニクス・ラインが特徴で、そこに彼女のシンガーとしての魅力があると思っています。“Ase”でサックスを吹いてくれた元さん(元晴)とは幾つかの野外フェスですれ違ってはいるのですが、彼のプレイを見て、吹いて頂きたいとずっと思っていたんですよ。今回やっと友人の紹介でお願いすることができて。Lisa Shawは簡単に言うとディープ・ハウスのボーカリストとして最初に影響を受けたアーティスト。そして在米中のルームメートでもあるんです。いつか一緒にやろうとお互い言っていたので、それが遂に実現しましたね。Rasmus Faberとは尊敬するアーティストが完全に一致していて。坂本龍一、ビル・エヴァンス、ドビュッシー。彼の弾くピアノが、自分の弾くピアノに近いと感じるのも、おそらくそういった理由があるからでしょう。もちろん彼の方がうまいですが(笑)」
 
とのこと。こういった彩りは今作を形作る魅力のひとつであるが、それ以外にも彼のビートメイカーとしての本懐が垣間見えるインスト楽曲にも触れよう。なかでも、既にアナログでも発表されている楽曲“Made in Japan”は序盤の静謐さから高揚感溢れる後半までの流れ、またストリングスのニヤリとさせる使い方も含め、素晴らしい出来映えである。今楽曲は同時に配信のみで44.1Khz/16bitの高音質ヴァージョンも発表されている。話題は彼のデータ音源へのこだわりにも及ぶ。
 
「(“Made in Japan”は)日本に向けての応援歌です。この前の冬季オリンピックでぜひ使って欲しかったんだけど(笑)。聴いて元気になってもらえれば本望です。データ音源は可能な限り48kHz/24bitでの配信を望みます。こちらはそのフォーマットで制作しているので、その方が作家の真意は伝わりやすいと思います。もちろん再生の環境にもよるんですがね。そしてクオリティの低いレートは無くしていくべきでしょう。それはアーティストの表現をカットしてしまうのと同義だから」
 

 
  結果、『a Drama』はHIDEO KOBAYASHIにとっての一年間のダイジェストであると同時に、2010年の国産テック・ハウスの極みを捉えた作品集となっている。ここに収録された全11篇のドラマは私小説でありながら、冒頭で触れた“日本のハウス・シーン”という文脈に更なるページを付け加えているのだ。このシーンに携わる諸氏以外にも広く聴かれるべき今作。最後は氏のあくまで謙虚な姿勢が伺える言葉で締めよう。
 
NEW WORLD RECORDSの皆さん、カメラマンさん、デザイナーさんが一丸となって協力しながら、本当に一生懸命やってくれたからこその結果がこの作品だと思います。この場を借りてお礼を言わせて下さい。ありがとう。愛してます」
 
(取材・文/高橋圭太)

 


HIDEO KOBAYASHI 2nd Album - 『A DRAMA』
2010.04.25 ONSALE!!!