2007.10.25
2006年、シカゴハウスのオリジネーターChip E.が監督を務めたシカゴハウスのドキュメンタリーDVD「UnUsual Suspects」がシカゴでリリース。そして日本でも日本語字幕付となって10/26にリリース。同日にはChip E.(以下C)が85年に製作した傑作EP "JACK TRAX"が待望のCD化を迎える。今回のDVDとCDについて、また当時の様子についてもインタビューしてみました。
■まずDVDについて伺いたいのですが、なぜこの時期にこのようなハウスミュージックのドキュメンタリーを製作されようと思ったのですか?
C:2000年くらいにイギリスの製作会社が「Pump Up The Volume」というドキュメンタリー映像を製作していたんだけど、その製作過程で僕自身もインタビューを受けたんだ。実際出来上がった映像を見てみたら何か違うんじゃないかと思ってね。
■それはハウスミュージックのドキュメンタリーですか?
C:そうだよ、それはハウスミュージックそのもののドキュメンタリーなんだ。だけどそれは重要なハウスミュージックをテーマにしているのに大事なポイントが何も伝わっていなかったんだ。このインタビューを受けた当時、既に自分自身で映像関係の仕事に携わっていて、「そうであれば自分で伝えていかなくはいけない」って思ったんだ。
■映像製作元がチキンランチプロダクションと書かれていますが、これはあなたのプロダクションですか?
C:そう、僕と幼なじみティミーD.の二人でやっているプロダクションなんだ。ティミーとは小学校からの友人で、一緒に会うときはチキンのレストランであっていて...名前はそこに由来している。もう25年くらいそんな付き合いが続いているよ。この「UnUsual Suspects」はこのプロダクションの初の作品になるんだ。
■「UnUsual Suspects」を製作してみて、シカゴでの反応はいかがでしたか?
C:シカゴでは大きな反響があってみんな気に入ってくれたよ。驚いたのはアメリカ以外の人たちも知っていてくれたし、中には「人生を変える衝撃だった」っていう人もいたし。映画を見ているうちに、みんな自分自身がシカゴにいたような感覚に思えて、当時の様子がよくわかったって言ってくれたよ。
■私が見たときも当時の様子は色々と想像できましたよ。そういった反応があった国のひとつが日本だったと思うんですが、日本でDVDがリリースされるされることについてどう思いますか?
C:とてもエキサイティングだって思うよ!やっぱり英語だけでは聞き取れなくて理解するのが大変だと思うんだ。字幕があることで詳細が伝わることは素晴らしいと思うよ。
■この映像の中で、あなたは様々な場所でたくさんの人たちにインタビューしていましたね。製作にはどれくらい時間がかかったのでしょうか?
C:約5年間くらいかかったかな。「Usual People=ありきたりな人々」にインタビューをしても面白いとは思わないし、「UnUsual=ありきたりではない人」たちにインタビューをしなくては意味がないって思っていたからね。
■インタビューや製作で苦労したことはありますか?
C:そうだね、2つあったかな。1つはFRANKIE KNUCKLES(フランキー・ナックルズ)のアポイントを取るのが大変だった。僕も彼も忙しくて移動することが多いからお互いのスケジュールを合わせるのが大変だったんだ。それからもう1つは、とある女性へインタビューした時のことなんだけど、彼女のインタビューの中で「昔はみんなフランキーのことが好きだったけど、今はみんなANDRE HATCHETT(アンドレ・ハチェット)の方が好きなんじゃない?」って一言があってね。フランキーはもちろんこの作品を見るだろうし、僕としてはそういった言葉で彼を傷つけることは望まなかった。悩んだけど、このドキュメンタリーは正直に真実を伝える必要があったから、その言葉も収録することに決めたんだ。
■今、アンドレ・ハチェットという名前が出てきました、彼はどういう人物なのですか?
C:彼はDJで、シカゴの生ける伝説なんだ。80年代にはWarehouse(フランキーナックルズがレジデントを務めたクラブ)やMusic BoxでDJをしていた数少ない一人で、今も現役なんだ。シカゴにおいてハウスのトップDJが誰かって言うと3人の名前がいつも挙がるんだけど、一人はロン・ハーディー、もう一人がフランキー・ナックルズ、そしてもう一人がアンドレ・ハチェットなんだ。フランキーと違って彼はシカゴ以外ではプレイもしないしレコードもリリースしていないから、あまり他の国では知られていないんだ。
■この作品では多くの証言がありますが、あなた自身の言葉がありませんよね。もしあなたが言葉で伝えられるとしたら、もしくは質問される側だったらどのようなことを言葉で伝えたと思いますか?
C:僕はこの作品を作るとき、「自分自身の言葉を入れないようにしよう」って決めていたんだ。なぜならば、これは僕自身のストーリーではないしね。映画全般から伝わるメッセージが僕のメッセージや意見なんだよ。
■私自身がDVDをみて面白い話がありました。1つは偽造IDについて触れていましたが、あなた自身もそうやってクラブへ通っていたんですか?
C:もちろん(笑)
■それはどうやって作っていたんですか?
C:当時、文房具屋でそういった偽造IDを作ってくれるサービスがあったんだ。
■費用はどれくらいしたんですか?
C:うーん、確か$10くらいだったかな。アメリカは21歳からお酒が飲めるようになるんだけど、当時のクラブではアルコールを提供していなかったから、クラブに入れる年齢(17歳)以上のIDがあれば中に入ることが出来たんだ。
■何歳の時、何歳のIDを使っていたんですか?
C:確か14歳の時に、「17歳」のIDを作って通っていたよ。
■あなたの回りもそうしていたんですか?
C:そうだね、"Cool Kids" はみんなそうしていたよ。
■私が知っているような人で、あなたと当時一緒に通っていた人はいますか?
C:アンドレ・ハチェットやジェイミー3:26、CORDELL JOHNSON(コーデル・ジョンソン)なんかがそうだよ。
■もうひとつユニークだったのがアシッド・パンチについての話が出ていましたが。そういったものがアシッド・ハウスへ影響を及ぼしていたと思いますか?
C:うーん。。。意外かもしれないが、当時のDJは誰もそういったものを取っていたりはしなかったんだ。TB-303の音そのものが、そういったものをとっている人たちへフィーリングを与えたんだろうね。実際はドラムマシンを使った音楽そのものでみんなハイになっていたと思うよ。
■じゃあ、それは当時の一部の出来事だったんですか?
C:そうかもしれないね。80年代当時はエクスタシーの方が容易に入手できたし。。。まぁ、これは私が聞いた限りの話だけどね。
C:今度リリースされるJACK TRAXという作品は1985年にレコードのみでリリースされたんだ。いわゆるダンスミュージックの基礎となるような作品だったし、そろそろCDとしてもう一度伝えたいって考えていたんだ。
■この作品を作った頃、(リリースから20年後に)再発に至るであろうことを想像していましたか?
C:ある意味、想像はしていたよ。なぜならばこれは「重要な音楽」であったし、当時からここに収められた音はシカゴの多くのアーチストがサンプリングしていたし、そこから派生して今でも世界中のアーチストが同じ手法を用いていたりサンプリングをしていたからね。
■現在ではPCでの製作が主流になりつつありますが、この作品を作った当時はどのように製作作業をされていましたか?
C:MIDIシステムというのを使っていたんだ。YAMAHA TX-7(キーボード) 、RX-7(ドラムマシン) 、ROLAND TR-909(ドラムマシン)、TR-808(ドラムマシン)といった機材を使っていたんだ。それからSDKというMIDI以前のタイムシンキングシステムというのを使っていたよ。これはインターフェイスの一種でMIDIシステムとROLANDの機材を同期させていたんだ。
■当時は今と比べ、こういった機材はとても高価だったと思うのですが。
C:ほとんどは機材を扱っていたショップからレンタルしていたんだ。この「JACK TRAX」を製作するときはスタジオを使用する資金を工面するのに、2台のターンテーブルを手放さなくてはならなかったんだ。当時DJであった自分にとってそれはとても辛かったよ。17歳の時に本当に長い間、貯金をして買ったTECHNICSの SL1200 MK2を手放すことになったからね。
■JACK TRAXを製作することはあなたにとってそれほど重要なことだったんですね。
C:そうだよ。
■このJACK TRAXに収められている多くの楽曲をロン・ハーディー(Ron Hardy)がとても愛用していましたよね。当時あなたはそれをどのように思っていましたか?
C:MUSIC BOX(ロン・ハーディーがレジデントを務めていたクラブ。オーナーはRobert Williams)もロン・ハーディーも自分にとって、とても大切なものだったんだ。ロンは持っていったトラックをすぐにかけてくれて「これはいい、これは悪い」というオーディエンスのフィードバックを示して、その場で僕に知らせてくれたんだ。
■あなたが初めて自分のトラックをロン・ハーディーに持っていったことを覚えていますか?
C:レコードを渡した時のことは覚えていないんだけど、オープンリールテープを持っていったことを覚えているよ。スタジオで作った音源のテープをそのままロンに届けに行ったんだ。 当時のMUSIC BOXにあったPIONIERのオープンリールデッキにはピッチコントロールが付いていたんだ。そして彼はターンテーブルのように使っていたよ!MUSIC BOXのブースには2台のターンテーブル、PIONIER製のオープンリールデッキ、そして同じくピッチコントロール付きのカセットテープデッキもあったんだ。
■当時のシカゴのDJはみな同じようにターンテーブルとカセットやオープンリールテープを使ってDJをしていたのですか?
C:CHIP E, RON HARDY, FRANKIE KNUCKLES, FARLEY JACK MASTER FUNK, STEVE HURLEY...ここにあげた彼等はそうやってDJしていたよ。
■あなたがそのリールテープを持って行き、ロンがプレイしたときの人々の反応を覚えていますか?
C:それはLOST MIND...人々は無心になって踊り狂っていたんだ。 ロンもその反応をみて一晩に3度、同じトラックをプレイしたんだ。プレイすればするほど人々はダンスに熱狂していったんだ。
■では最初にJACK TRAXをプレイしたのはロンですか?
C:そうだよ。JACK TRAXに収められている「It's House」と「It's Dub」の2曲をロンはいつもプレイしてくれたんだ。そしてFarley(ジャック・マスター・ファンク)は「Time to Jack」を最初にかけてくれたDJだ。
■では最初にJACK TRAXをプレイしたのはロンですか?
C:そうだよ。
C:うーん、そうだね。当時僕は多くのアーチストと音楽的なことを共有したいって考えていたんだ。そして僕はある日、ロン・ハーディー、ラリー・ハード(LARRY HEARD)、ロバート・オウエンズ(ROBERT OWENS)、ハリーデニスといったアーチストをスタジオに集め、スタジオでの楽曲製作におけるミックス作業という教えてあげたんだ。その時はまだ誰もミキシングボードの使い方を誰も知らなかったからね。そして、フランキーの"You Can't Hyde"(フランキー・ナックルスの最初に作った作品)の12インチの製作も僕は同じく彼にスタジオでのミキシング作業を教えてあげたんだ。
■あなた自身はそういったスキルをどこで身に付けたのですか?
C:JACK TRAXを製作しているときなんだけど、その時のエンジニアがまったく当てにならないダメなヤツだったんだ。彼は僕が本当に音楽を製作しようとは信じてくれなかったんだ。そこにドラムセットやギターがある訳でもないし、スタジオにあるのはエレクトロニクスマシンだけだったからね。結局全てを自分で独学で学んだんだ。
■今回再発されるCDにオリジナル盤には含まれない新たなリミックスが収録されていますよね。2人のアーチスト(リミキサー)JAMIE 3:26と、JULIUSについて教えてくれますか?
C:ジェイミー(JAMIE 3:26)のDJは目を閉じて聞いているとロン・ハーディーのようなんだ、とてもリスペクトしているよ。ある日、彼自身が作った「It's House」のリミックスを僕のところへ持参してね。彼は「直すところはない?」とか「この作品をリリースできないかな」って相談を持ちかけてくれたんだ。ジュリアス(JULIUS THE MAD THINKER)はシカゴの新しい世代の代表格で音楽に対してとてもいい情熱を持っているアーチストなんだ。ジュリアスも同じく僕の曲をリミックスをしたいという相談を持ちかけてくれたんだ。彼は新たなテクノロジーを使って素晴らしいリミックスをしてくれたし、僕は彼にチャンスを与えたいって思ったんだ。
■彼等とは昔からの知り合いですか?
C:7年位前、この映画を作ろうという風に考えていた頃に2人と知り合ったんだ。
■JACK TRAXのCDが出来上がってみていかがですか?
C:とても気に入っているよ!製作してくれたNOW ON MEDIAのスタッフは最高のものを作ろうとしてくれて、マスタリングにもとてもこだわってくれてベストな状態に仕上げてくれたんだ。だからこのCDで聴くと最近レコーディングされたように感じるよ!
■このCDにはオリジナルJACK TRAXには含まれていない"LIKE THIS"という曲が収録されていますよね。
C:この曲はヴォーカルを使った初期のハウスなんだ。当時はヴォーカルを使った曲はほとんど存在しなかったからね、このCDに収録しなくてはならない大事な曲だと思ったんだ。それから"Feel The Vibe"というトラックという曲は、自分がまだ音楽製作していることを多くの人に知って欲しかったんだ。この曲は愛する人の為に作った新しい曲なんだ。
■最後にメッセージをいただけますか?
C:いつもベストな状態で音楽も楽しんで、そしてこの映画も楽しんで欲しい。音楽は誰の中にでもあるものなんだよ。
■ご協力ありがとうございました。
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