「ポール・マッカートニー/ヴァラエティ 連載No.43」 宮崎貴士

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2021.04.09

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【ポール・マッカートニー流、作曲のしくみ Vol.1】 


さてさて、ここまで「ポール流とはなんぞや? 」と、彼の特異な音楽性とその魅力について、ひとつひとつ外堀を埋めるような気分で書いてきました。連載も40回を超え、ここからは、いざ! とばかりに本題の「で、結局ポールってどうやって曲を作っているの? 」という内容に突入いたします。
 

以後、言ってしまえば「ポールは○○○○と考えている、みたいな」のような、私的な妄想話にもなってしまう気配が濃厚でして(今までの話もすべて妄想! と言われたら、たしかにその通りではあるのですが) …… それもそのはず、ポール御大がそれについて語っているインタビューがほとんど存在しないからなんですね。
 

少なくとも自分は、ポールが具体的に〝曲の作り方〟をメソッドとして語っているインタビューを目にしたことがありません。 曲作りに必要な知識や方法論については、ほぼ語られてないのです。彼が自身の楽曲について語るとき、内容のほとんどは「過去の思い出と楽曲がどう結びついているのか? 」という記憶と感情的な背景なんですね。「あの頃はロンドンに住んでいて、その当時に付き合っていたジェーン・アッシャーに向けて書いた曲だ」とか。 それはそれで興味深い内容ではありますが、これでは語られてない部分が多すぎるのではないでしょうか?


「世界一成功した作曲家である彼が、何もわかっていないわけではないはずなのに(※注1)」

 
連載第1章【ビューティフル・ドリーマー『イエスタディ』編】で書いた「メロディは夢のなかで思いついた」というポール自身の逸話からも想像できるように、彼にとっての音楽作りは〝魔法みたいなもの〟という位置づけであり、それゆえに言語化する必要もないと考えているのかもしれません。「自分は優れた曲を作ることができる」という確信こそがすべてであり、それを可能にしている事実こそが〝才能がある〟ということなのでしょう。


そして、その〝才能〟つまり能力については、他者に贈与や伝承ができないものであると考えているのかもしれません。 もしくは、他者の能力を自身のそれより劣っているように捉えていて、「自分がやっていることを一般的な理論で言語化しても、誰もそれを再現できない」と見切っている可能性もなきにしもあらず。またポールがもっている才能の基準が、あの類比なき存在『ジョン・レノン』であることも理由のひとつになるでしょう。「(説明したところで)誰もジョンのようになれないしさ」と。


さて、そんなイケズな天才、ポール・マッカートニーの影響で、自分は音楽を作りはじめました。彼の楽曲をほぼ残らず(いわゆる耳コピで)体得して、その延長で作曲の真似事をはじめたのが13歳の頃でした。つまりポールの楽曲の在り方こそが自分にとって《作曲の方法論であり技術論の原点》なんですね。自分にとって〝曲を作る〟こと、その目的は当初から明確で、「彼が作っているような音楽を作りたい」それだけだったのです。


ポール自身が楽曲の記譜法や専門的な楽理に頼らずに〝大好きな音楽〟を作っているならば、それを目指す自分が楽理を学ぶ必要があるのか? ―― その必要云々以前に、まずは彼と同じようにギターを持ち「自分にもできるかもしれない」とやってみる、ただそれだけでした。そんな真似事から曲を作りはじめてすでに40年以上、いまだに音楽は作り続けています。(楽理を遠ざけてきたがゆえの問題点と限界値については、別項で書く予定です。)


これから書き進める本題、「どうやって曲をつくっているの? 」―― ポール・マッカートニーの楽曲は(もちろん歌唱力やリズム感も含め)すべてが稀有な才能をもつミュージシャンゆえの産物かつ結果であるとしても、〝曲の作り方〟については理解、解析可能な領域があり、それを会得できれば、ポールにはなれずとも「オリジナリティを備えた音楽は作れるようになる」と経験則から考えています。


次回から、具体的に曲作りの流れを説明していきます。


※注1) https://www.udiscovermusic.jp/news/paul-mccartney-autobiography
 
今年11月にポール自身による自伝が刊行されるそうで、自身の楽曲歴を辿りながら人生を振り返る内容になっているらしい。そこでは〝曲の作り方〟も詳細に語られることを期待しています。ちなみに翻訳本の刊行についてはまだアナウンスされていません。
 

[宮崎貴士]1965年、東京生まれ。 作、編曲家。ソロ名義で2枚(Out One Disc)、2つのバンド「図書館」「グレンスミス」(ともにdiskunion/MY BEST!RECORDS)で共にアルバム2枚リリース。2020年よりポニーのヒサミツ氏との2人ユニット「Flozen Japs」活動開始。岸野雄一氏のバンド「ワッツタワーズ」にも在籍中。 2015年、第19回文化庁メディア芸術祭エンターティメント部門大賞受賞作(岸野雄一氏)「正しい数の数え方」作曲。
他、曲提供、編曲、など多数。ライター活動としては「レコード・コレクターズ」(ミュージック・マガジン社)を中心に執筆。直近では2020年9月号のレコード・コレクターズ「ポール・マッカートニー・ベスト・ソングス100」特集号にて執筆。
宮崎貴士[mail : m-taka-m@da3.so-net.ne.jp]


 

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