■その彼女がボブ・ディランの楽曲をカヴァーしたソロ・アルバムをリリースする。『STANDING IN THE DOORWAY: CHRISSIE HYNDE SINGS BOB DYLAN』は、彼女がプリテンダーズのバンドメイトであるジェイムズ・ウォルボーンとともに昨年レコーディングしたボブ・ディラン・ナンバーを収録したアルバムである。きっかけとなったのは、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンの中、ジェイムズがクリッシーにディランが2020年に発表した17分にも亘る傑作「Murder Most Foul」を送ったことから。「この曲を聴いて、私の中で何もかもが大きく変わった」そうクリッシーは語り、さらに続ける。「自分の中に渦巻いていた気難しいムードから抜け出すことができたの」
■ロックダウンの最中ということもあり、レコーディングはリモートで行われた。アルバムはほぼ、テキスト・メッセージのやりとりで進み、例えばジェイムズがアイディアをiphoneにとって送り、そこにクリッシーがヴォーカルを足して返し、そのやりとりをプロデューサーのチャド・ブレイクへ送って1つの楽曲にミックスダウンしていったという。そうして「You’re a Big Girl Now」、「Love Minus Zero/No Limit」、「Don’t Fall Apart On Me Tonight」や「Every Grain of Sand」などのディランの楽曲がクリッシー・ハインドによって新たな解釈とサウンドとともにファンの元へと届けられた。
本アルバムの制作過程は映像にも収められており、ディランの80歳の誕生日に合わせてUKのSky Artsで放映されるドキュメンタリー番組「Tomorrow IS A Long Time」にフィーチャーされているという。クリッシー・ハインドによるボブ・ディランのカヴァー・アルバム。時代の風を映したインスピレーションに溢れたアルバムの登場だ。