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ポール・モチアンと12 年もの間、演奏及び、親交をもった鬼才ピアニスト、Russ Lossi ng のトリオによるポール・モチアン曲集。
Lossing は、古くはDouble Time でのレコーディングを始め、Sunnyside や、hatology、またSteeple Chaseでリーダー作をリリースするピアニストである一方、モチアンと演奏を重ね、そのアパートを訪ねたこともしばしば。まだ題名もなく、ハーモナイズもされていない、シンプルにメロディだけが書かれたポール・モチアンの新しい楽曲を演奏する機会もあったとのこと。そして、モチアンは、そのLossi ng が弾いたメロディに対して、“どんなコードを付けたいと思う?”という質問をしてきたのだそうです。言うまでもなく、そこには可能性も方向性も多様にあり、難問ともいう問いかけ。
しかし、年月を重ね、交流をもち続けることで、Lossi ng は、ハーモナイズをしていくときに、ポール・モチアンというアーティストがダイレクトなアプローチを好むという感覚を覚えていったのだそうです。そして、あれこれと考えめぐらすことなく、“ピュア”で“シンプル”であることをモチアンが志向していると体感したとのことです。本作は、そんな志向を、Lossing がスポンテニアスに表現した作品。レコーディングは、スタジオで行われていますが、3 人のメンバーは隔離した環境でなくひとつの部屋のスペースで、すべてワンテイクで収録したもの。メンバーは、20 年以上の共演歴というMasa Kamaguchi、Billy Mintz。楽曲も自らがフェイヴァリットであり、実際モチアンと共演したことのある楽曲を選んだ演奏には、モチアン・ミュージックの本質的な自由さや美しさはもちろん、、即興だからこそ生まれる、そぎ落とされたシンプルなしなやかさと、自由なテンポや、アブストラクトな音の流れの中にも、終始、ピュアな響きが息づきます。
同Sunnysideでリリースしたソロ・ピアノ作『Drum Music~Music of Paul Motian』に続く作品。初期ECM作品、『Dance』に収録された楽曲“Asi a”を筆頭に、アルバムタイトルとしても有名な“Psal m”まで全10 曲。曲順も演奏された順番にそのまま収録しています。ポール・モチアンとさまざまなユニットで共演し、敬愛していた菊地雅章氏は、“ポール・モチアンはどんなものでも音楽にしてしまう素晴らしいアーティスト”と親しいアーティストに語っていたそうですが、そのモチアンに信頼されていたピアニストによる注目の作品です。
Russ Lossing(p), Masa Kamaguchi(b), Billy Mintz(ds)
RUSS LOSSING / ラス・ロッシング