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1954年録音、初の全曲収録
昔、19歳の時、山下達郎とかティンパン・アレー好きの高岡の友達と初めて「コレクターズ」に行った。新宿にあった廃盤専門店、その日田舎の友達と行動をともにしており、西新宿のレコード店めぐりなんかをしていた、「おぃS田、廃盤専門店という処へ行ってみようぜ」と提案し、行ったのであった。その時は、まだオリジナル盤のなんたるを知らない頃で、店側としても、ここは君らみたいな若造が来るところじゃないから、という視線がアカラサマなんであった。「すみません、スミマセン、すぐに退散しますから少し見させてください」と視線で懇願。居心地の悪さ満点であったが、壁掛けの十万円単位のレコードを眺める、眺める。ブルーノート、リバーサイド、ヴァーブ、PRESTIGEあたりに知っているレコードが見受けられたけど、大半はちんぷんかんぷんだった。何でこの価格がついているのかなという興味は一気にここで掻き立てられた。さて、そこの店内で流れていたジャズ(そのときはヴォーカル)にしても、ボクが知っているような、エラとかサラとかカーメンとかではなくて、ジャズ歴を十年ほど積み、更に十年ほど積み込んだ人間のみが理解できる、というかできそうな、淡い雰囲気のアンニュイな女性のヴォーカルであった。凄くいいなと思った。アーティストもタイトルも覚えていないけど、その十年とまた十年を重ねて、未来には味わってみたいなと、というような野望も抱いた。というかそんな非日常の世界に圧倒されたボクは酒を飲んでもいないのに、その雰囲気に酔ってしまったのだった。フラッときて店を退出。ある種、未知の世界に直面するとそういう症状が出た10代だったのだ(因みに高校時代、初めて喫茶店に誘われたときは、レスカで酔った)。さて、このピンキー・ウィンターズ盤。長々と昔話をしてしまったけど、この最初の曲なんかを聴くと、その約30年前の情景が脳裏を掠めるのだ。おそらくあの時聴いたのはコレではないはずだけど。10年に更に10年を要するに相応しい雰囲気と味わいを持ったヴォーカル作品と認識しているから、そんなことも思うのかもしれない。しかし傑作ですよ、これ。オリジナル盤はVANTAGEの10吋。結構レアでボクは一度しか扱ったことがない。別のセッションから持ってきたおまけも素晴らしくて、そちらにはズート・シムズが参加しており、なんとも云えない。オススメだ。
山本隆
PINKY WINTERS / ピンキー・ウィンターズ
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PINKY / ピンキー+12
1,500円(税込)
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