<限定生産>エソテリックからマスターサウンドで鮮烈に蘇る。ジャズ・ヴォーカルの礎を築いた女王達、絶頂期の名盤「6クイーンズ・オブ・ジャズ・ボーカル 」

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  • 2016.06.10

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    ジャズ・ボーカルの礎を築いた女王達、絶頂期の名盤。

    仕様: Super Audio CDハイブリッド
    レーベル: ヴァーヴ、米デッカ、エマーシー、フィリップス
    音源提供: ユニバーサルミュージック合同会社
    ジャンル: ジャズ
    DSD MASTERING/
    Super Audio CD層: 2チャンネル・ステレオ(ESSO-900143、48)
    モノラル(ESSO-900144、45、46、47)
    美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ仕様
    透明ロゴステッカーシート付
    6枚組ボックスセット
    “Super Audio CD“と“DSD”は登録商標です。

    V.A.(ESOTERIC) / 6 QUEENS OF JAZZ VOCAL / 6クイーンズ・オブ・ジャズ・ボーカル

    1950年代5タイトル、1964年1タイトルというアナログ全盛期に生み出された録音による歴史的名盤6タイトルの復刻です。登場するジャズ・ヴォーカリストは、エラ・フィッツジェラルド、アニタ・オデイ、カーメン・マクレエ、ペギー・リー、ヘレン・メリル、モニカ・ゼタールンドの6名。彼女たちの全盛期の最も輝いていた時代に発表した20世紀の遺産ともいわれる作品ばかりです。
    名歌手と豪華伴奏陣による不朽の名盤の数々
    5作品が50年代中期の録音。その中で4作がモノラル収録ではありますが、ディスクとしての完成度、価値などを考えても、絶対に外すことのできない内容を持っていると判断し、20世紀の貴重な収録を最良の状態でお届けすることにしました。
    レーベルも4つあり、そこからのピックアップとなっています。『ライク・サムワン・イン・ラヴ/エラ・フィッツジェラルド』と『アニタ・シングス・ザ・モスト』はジャズ専門レーベルの中で最大のカタログ数を誇るヴァーヴ、『アフター・グロウ/カーメン・マクレエ』と『ブラック・コーヒー/ペギー・リー』はRCA、CBSとも肩を並べていた大手レーベルであった米デッカ、『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』は新興ながら大手に迫る勢いであったマーキュリー・レコードのジャズ専門レーベル、エマーシー、60年代の『ワルツ・フォー・デビィ/モニカ・ゼタールンド・ウィズ・ビル・エヴァンス』はヨーロッパ録音でフィリップス・レーベルです。
    これら6つの作品に共通しているのは伴奏者、間奏を担当するソロ・ミュージシャンが大変に優れていることです。エラ・フィッツジェラルドには当時白人テナー・サックス奏者として人気ナンバーワンだったスタン・ゲッツが、アニタ・オデイの伴奏は飛ぶ鳥を落とす勢いだったオスカー・ピーターソン・トリオが協演しています。カーメン・マクレエはニューヨークに出てきて注目されていた若手ピアニスト、レイ・ブライアントのトリオが、ペギー・リーのバックにはウェスト・コーストで洒落たジャズを演奏していたトランペッターのピート・カンドリとこれまた小粋な演奏が魅力的だったジミー・ロウルズが彼女たちをサポートしています。そしてヘレン・メリルにはクリフォード・ブラウンが輝く音色のトランペットで華を添えます。モニカ・ゼタールンドのバックはビル・エヴァンス・トリオです。どのディスクもジャズとして最高峰の演奏が残されているのです。
    最高の状態でのSuper Audio CD ハイブリッド化が実現
    ジャズでステレオ化が主流になったのは50年代の後半からということもあり、ここではモノラル録音のマスタリングも4作ありますが、ジャズ特有の熱気や力強さはモノラルでも全く失われてはいませんし、それ以上にレコード音楽でしか体感できない生々しさ、Hi-fi感覚、これを念頭に意識しながら6作品それぞれの歌手が持つ声や歌い回しなど、本来備えていた音楽的な魅力を浮き彫りにするような、ESOTERIC特有の丁寧なマスタリング、製盤作業を行いました。
    各レーベルでその音創りは違っていますが、ここでは通常のESOTERICの志向と同様に"マスターに残された音、そのものを再現する"ように心がけました。今回のSuper Audio CD ハイブリッド化に当たっては、これまでのESOTERIC企画同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われています。特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、入念に調整されたESOTERICブランドの最高級機材を投入、またMEXCEL ケーブルを惜しげもなく使用することで、貴重な音楽情報を余すところなくディスク化することができました。(メーカーサイトより)


      LIKE SOMEONE IN LOVE
    Ella Fitzgerald
    ライク・サムワン・イン・ラヴ / エラ・フィッツジェラルド
    [ESSO-90143]

    ジャズ・コンボからフル・オーケストラやストリングスを従えた大編成まで、バラードから急速調の4ビートまで、どんな状況・曲調でも最高のパフォーマンスを演じられるジャズ・シンガーの頂点、そこに君臨するのがエラ・フィッツジェラルド(1917-96)です。エラにはライヴ録音盤などで彼女の見事なスウィング感たっぷりの演奏も多く残されていますが、ここは彼女の歌をしっとりと堪能することが出来る作品を選択しました。じっくりと曲の魅力を引き出した、エラの数多いレコーディングの中でも特筆されるバラードの名作が『ライク・サムワン・イン・ラヴ』です。
    1956年、米デッカからヴァーヴへ移行したエラ・フィッツジェラルドは精力的にレコーディングを行いました。ヴァーヴ・レーベルは、超一流ミュージシャンを集め、J.A.T.P.として40年代から興業を行っていた敏腕プロデューサー、ノーマン・グランツが50年代半ばに興したレーベル(前身は"クレフ""ノーグラン")です。J.A.T.P.=ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック、は超一流ミュージシャンを集めて、フィルハーモニー・ホールで大規模なジョイント・コンサートを開催することを目的に行われた興行です。50年代になるとオスカー・ピーターソンをハウス・ピアニスト的存在にして、ディジー・ガレスピー、スタン・ゲッツ、ファッツ・ナヴァロなど当時のスーパースターの数々が出演していました。その興行主ノーマン・グランツが興したレーベルがヴァーヴです。専属にはエラはもちろん、ビリー・ホリデイ、アニタ・オデイといった歌手に加え、チャーリー・パーカー、カウント・ベイシー、オスカー・ピーターソンなどスーパースターがひしめき、カタログ数はジャズ史上最大を誇るレーベルです。
    エラ・フィッツジェラルドはヴァーヴへ移ると数多くの意欲作をレコーディングしました。ジャズ・スピリット満載のライヴ録音やルイ・アームストロングとのデュエット、名作曲家のソングブックなどの作品がある中で、本作は、彼女のまた一面である「歌の上手さ」が最高に引き出された名作であり、エラのエモーショナルなバラードの歌い方とその魅力が満喫できるヴァーヴ時代の代表作の一つといえるでしょう。
    当時のエラは40歳。シンガーとして最高潮の時期にさしかかっていました。洗練されたセンスと艶っぽい色気がブレンドした歌声はロマンティックなバラードにデリケートで繊細な表情をあたえ、情感豊かに曲に色を添えています。さらに嬉しいのはスタン・ゲッツの参加です。ストレートなエラの声とふくよかなゲッツのサキソフォンが見事な対照をみせ、バラードに深み、滋味、ゆとりをもたらしています。

    収録曲
    1.心やすまる頃 2.モア・ザン・ユー・ノウ 3.偽れぬ心 4.アイ・ネヴァー・ハド・ア・チャンス 5.クローズ・ユア・アイズ 6.また逢う日まで 7.あなたに飽きて 8.ライク・サムワン・イン・ラヴ 9.ミッドナイト・サン 10.思いはあなただけ 11.冷たいお方 12.夜の風 13.ホワッツ・ニュー 14.ハリー・ホーム 15.いつからこんなに
    エラ・フィッツジェラルド(vo)/スタン・ゲッツ(ts)/テッド・ナッシュ(as)/フランク・デヴォール編曲・指揮 オーケストラ

    [録音]
    1957年10月15日、28日 ステレオ ロサンジェルス
    [プロデューサー]
    ノーマン・グランツ


    ANITA SINGS THE MOST
    ANITA O'DAY
    アニタ・シングス・ザ・モスト/アニタ・オデイ
    [ESSO-90144]

    絶頂期にあったヴァーヴ時代のアニタ・オデイ
    アニタ・オデイとオスカー・ピーターソンという最高の組合せによるヴォーカル・アルバムで、彼女のベスト・レコーディングの1つに数えられる名作です。
    ピアノ、ギター、ベースという、オスカー・ピーターソン・トリオにドラムスを加えた編成とアニタのヴォーカルが織りなす即興性を含んだ世界が生む、目を奪われるような展開、これこそが、まさにジャズといえる歌唱・演奏です。小粋で、潔く、負けん気の強そうなアニタの姉御的魅力満載。本作が吹き込まれた翌58年夏、映画(『真夏の夜のジャズ』)にもなったニューポート・ジャズ・フェスティヴァルに彼女は登場、大きな帽子と派手な衣裳で会場を席巻、まさにヴォーカル界の女王として見事なパフォーマンスを演じています。アニタ・オデイ絶好調時の記録、それがこの『アニタ・シングス・ザ・モスト』なのです。
    アニタとオスカー・ピーターソンを協演させる、これこそプロデューサー、ノーマン・グランツの企画力、実行力。カナダ生まれ(1925年)のオスカー・ピーターソンは49年にノーマン・グランツの紹介でニューヨーク、カーネギーホールで演奏、以来超技巧派ピアニストとしてJ.A.T.P.の専属ピアニストとなりジャズ界に君臨、そのピーターソンが旬の真っ只中(彼は生涯常に「旬」なのですが…)にあった時の演奏が楽しめます。ここではアニタのスウィンギーな歌唱を盛り上げるために、彼女の専属ドラマーだったジョン・プールが参加(一部ミルト・ホランド)、最高の歌唱・演奏が展開されています。
    オスカー・ピーターソンは50年代初頭まで歌手としてもクラブに出演していた、歌の魅力を知り尽くした人。ヴォーカル・レコードも2作あり、ナット・キング・コール風なテナーが魅力的でした。そうした背景もあり、歌詞やその内容、細かいニュアンスにも精通していたピーターソンの伴奏は曲の持ち味を尊重した見事な演奏を呈示しています。

    収録曲
    1.スワンダフル~誰も奪えぬこの想い 2.テンダリー 3.オールド・デヴィル・ムーン 4.ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー 5.また会う日まで 6.星影のステラ 7.恋のチャンス 8.ゼム・ゼア・アイズ 9.思いのまま 10.私に頼むわ 11.魅惑されて
    アニタ・オデイ(vo)/オスカー・ピーターソン(p)/ハーブ・エリス(g)/レイ・ブラウン(b)/ジョン・プール(ds)/ミルト・ホランド(ds)

    [録音]
    1957年1月31日 モノラル ロサンジェルス
    [プロデューサー]
    ノーマン・グランツ


    AFTER GLOW
    CARMEN McRAE
    アフター・グロウ/カーメン・マクレエ
    [ESSO-90145]

    20代の時はピアニストとして活躍していたカーメン・マクレエ、本格的な歌手デビューは30歳を過ぎてからと言う遅咲きの歌手でした。54年に吹き込んだ「ア・フォギー・デイ」のヒットを契機に歌手としても注目され、54年末に大手レーベル米デッカと契約、ここから彼女の歌手黄金期が始まりました。英デッカの子会社として1934年アメリカに設立された米デッカは、ビング・クロスビー、パッツィ・クラインといったポピュラー音楽界の大物を擁し、第2次大戦後は親会社との資本関係もなくなり、独立したレコード会社としてアメリカに君臨した大手。50年代にはジャズのみならずバディ・ホリーやジャッキー・ウィルソンとも契約をするなど多方面に音楽ジャンルを拡げていきました。ジャズ関係では主にヴォーカリストを中心に契約をしていて、エラ・フィッツジェラルド、ルイ・アームストロング、ジミー・ランスフォード、ナット・キング・コールなど錚々たる面々が顔を揃えていました。カーメンはこのレーベルで58年までレコーディングを行い、30代の円熟し始めた魅力の多くを刻み込みました。
    歌手としてはエラ・フィッツジェラルドのようにスキャットによるアドリブを重視した器楽的な歌唱にはそれほど拘らず、歌詞をじっくりと噛みしめながら曲を紡ぎ出す、正統的なヴォーカリストで、歌詞カードを読むことなく、聴くだけで歌詞を読みとれるディクションの素晴らしさは彼女ならではのものです。
    本作は米デッカ5作目。彼女に愚作はほとんどありませんが、これはまさに最初の絶頂期を極めた名唱です。バックは頭角を現し始めたレイ・ブライアント率いるピアノ・トリオ。当時、新進気鋭のピアニストとして活躍中で、ピアニストでもあったカーメンも認める歌の伴奏の素晴らしさも、この作品の魅力になっています。ちなみにカーメン・マクレエ自身、4曲でピアノを弾いているのも聴きどころの一つになっています。

    収録曲
    1.アイ・キャント・エスケープ・フロム・ユー 2.今日会った人 3.マイ・ファニー・ヴァレンタイン 4.リトル・シングス・ザット・ミーン・ソー・マッチ 5.アイム・スルー・ウィズ・ラヴ 6.うまくやれよ 7.イースト・イブ・ザ・サン 8.エグザクトリー・ライク・ユー 9.オール・マイ・ライフ 10.絶体絶命 11.ドリーム・オブ・ライフ 12.パーディド
    カーメン・マクレエ(vo、p)/レイ・ブライアント(p)/アイク・アイザックス(b)/スペックス・ライト(ds)

    [録音]
    1957年3月6日、4月18日 モノラル


    BLACK COFFEE
    PEGGY LEE
    ブラック・コーヒー/ペギー・リー
    [ESSO-90146]

    ペギー・リーの最高傑作です。ペギー・リーといえばタイトル曲「ブラック・コーヒー」が頭に浮かぶほど、この曲はペギー・リーの代名詞にもなっていて、その歌唱はまさに彼女にピッタリといえるでしょう。しかし、この作品にはそれ以外にも素晴らしい曲、その解釈と見事な歌声を聴くことができるのです。2曲目の「貴方はしっかり私のもの」もフランク・シナトラやジュリー・ロンドンの方が人気なのかも知れませんが、白人シンガーの持つ独特なリズム感がとてもインティメイトで可愛らしくも感じられるし、ヴァースから丁寧に歌ってくれる「時さえ忘れて」、そして最後に優しげに添えられた「ゼアーズ・ア・スモール・ホテル」の3拍子と4ビートが入り混じる編曲・歌唱も曲の魅力を見事に伝えてくれています。
    ペギー・リー(1920-2002)がホテルのラウンジで歌っているところをベニー・グッドマンに見出されたのが21歳の時。その後、ヒット曲をいくつか生みだし人気美人シンガーの地位を獲得しました。さらに彼女の名を世界的にしたのは55年の映画『大砂塵』の主題歌「ジャニー・ギター」を自作の詞で歌い大ヒットさせた頃から。その後は56年に映画『皆殺しのトランペット』でアカデミー助演女優賞にノミネートされるなどジャズ・ヴォーカリストの枠を超えた活動も目立っていきましたが、本作は54年の制作。まだまだ映画やポピュラー音楽以上にジャズに力を注いでいた時の記録です。52年に離婚を経験、心機一転、米デッカと専属契約を結びレコーディングしたのがこの『ブラック・コーヒー』、この時32歳(もう一つのセッションでは35歳)、円熟と少し残った若さが同居した最高潮期の歌声がここに記録されています。
    伴奏陣も豪華。ピート・カンドリはベニー・グッドマン、トミー・ドーシー、ウディ・ハーマンといった名門オーケストラで活躍したトランペッター。奥様も歌手で歌の伴奏は得意中の得意。もう一人、注目したいのがピアニストのジミー・ロウルズです。彼自身のアルバムでは時としてその喉を披露しているだけあって、彼も歌の伴奏は得意中の得意、バラードからアップテンポまでじつに巧みに歌手をドライヴさせています。こうした名手が脇を固めて名盤『ブラック・コーヒー』は誕生しました。

    収録曲
    1.ブラック・コーヒー 2.貴方はしっかり私のもの 3.イージー・リヴィング 4.私の心はパパのもの 5.イット・エイント・ネセサリー・ソー 6.ジー・ベイビー・エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー 7.ア・ウーマン・アローン・ウィズ・ザ・ブルース 8.時さえ忘れて 9.ホエン・ザ・ワールド・ウォズ・ヤング 10.ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー 11.ユー・アー・マイ・スリル 12.ゼアーズ・ア・スモール・ホテル
    ペギー・リー(vo)/ピート・カンドリ(tp)/ジミー・ロウルズ(p)/マックス・ウェイン(b)/エド・ショーネシー(ds)

    [録音]
    1953年4月、5月、56年4月 モノラル


    HELEN MERRILL WITH CLIFFORD BROWN
    ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン
    [ESSO-90147]

    ヘレン・メリルの最高傑作であるとともにジャズ・ヴォーカル・レコード界に刻まれた20世紀の代表的名盤です。54年、エマーシー・レーベルに録音したこの作品はヘレン・メリルにとって初めてのリーダー・アルバムでした。エマーシー・レーベルは新興ながら台頭著しいマーキュリー・レコードのジャズ部門として50年代に創設されました。創立と同時に、経済的には不可能とされていた編曲を伴う実力アーティストが集う特別セッションなどを企画、ブルーノートやプレスティッジといったジャズ専門レーベルとの差別化を積極的に行いました。『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』もそうしたエマーシー初期の作品です。協演に24歳になったばかりのクリフォード・ブラウンを起用、54年2月にニューヨークのジャズ・クラブ「バードランド」でハードバップ誕生を意味するような歴史的セッションにアート・ブレイキー、ホレス・シルヴァーらと参加、そして3月にはマック・ローチと歴史的な双頭コンボ、ブラウン~ローチ・クインテットを結成するなど最高に「旬」の時を過ごした1年を送っていた彼はここでもジャズ史に残る素晴らしいソロを吹き、ヘレン・メリルの人生最高パフォーマンスの記録をサポートしています。編曲を担当はクインシー・ジョーンズが担当。当時21歳、新進気鋭、まだその実力が広く知れ渡っている存在ではなかったのですが、既成概念を打ち破るような素晴らしいアレンジが所々に示されていて、それは今日の彼を物語るようです。
    そうした見事なコラボレーションが、いまだに聴き続けられている名目「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」を誕生させました。クリフォード・ブラウンのトランペット・ソロは後生にまで語り継がれる名演として残されています。中心人物3人はそれぞれ20代前半でしたが、この円熟味!50年代ジャズ・シーンのエネルギー、創造性の源がここにあるように思えます。「ユード・ビー・ソー・ナイス…」だけが注目されてはいますが、ここでのヘレン・メリルはどのトラックも素晴らしく、選曲も抜群です。まず「ドント・エクスプレイン」で軽く肩慣らしをしているうちに2曲目で真打ちが登場。次のバラード「ホワッツ・ニュー」は彼女以上にピッタリした歌声はなく、「イエスタデイズ」もしっとりとした表情が声と相乗効果をあげ、そして「スワンダフル」の躍動感。同じくBOXに入っているアニタ・オデイの「スワンダフル」と聴き比べて見るのも楽しいでしょう。

    収録曲
    1.ドント・エクスプレイン 2.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ 3.ホワッツ・ニュー 4.恋に恋して 5.イエスタデイズ 6.ボーン・トゥ・ビー・ブルー 7.スワンダフル
    ヘレン・メリル(vo)/クリフォード・ブラウン(tp)/ダニー・バンクス(bs、fl)/ジミー・ジョーンズ(p)/バリー・ガルブレイス(g)/ミルト・ヒントン(b)/オスカー・ペティフォード(b)/オシー・ジョンソン(ds)/ボビー・ドナルドソン(ds)/クインシー・ジョーンズ(arr、cond)

    [録音]
    1954年12月22日、24日 モノラル ニューヨーク


    WALTZ FOR DEBBY
    MONICA ZETTERLUND WITH BILL EVANS
    ワルツ・フォー・デビィ/モニカ・ゼタールンド・ウィズ・ビル・エヴァンス
    [ESSO-90148]

    今回のボックスセット6枚中5枚はLP黎明期ともいえる50年代中期の録音ですが、本作だけ少し時代が進んで1964年8月、ジャズが新たな激動の時期に入っていた頃のヨーロッパからの1枚です。1ヶ月前には日本でもマイルス・デイヴィスが公演し、モード手法を駆使した新しいサウンドを披露、年末のニューヨークではジョン・コルトレーンがそれまでの集大成ともいえる作品『至上の愛』をレコーディングしています。一方、その前年の63年末にはリー・モーガンが『サイドワインダー』を、翌年の65年にはラムゼイ・ルイスが大ヒット曲『ジ・イン・クラウド』を発表、ジャズ・ロックという世界が確立し、誰もが楽しめるサウンドが流行しはじめたのもこの頃でした。
    ここで協演しているビル・エヴァンスも60年代前半に転換期をむかえていました。朋友、ベーシスト、スコット・ラファロが交通事故でこの世を去り、絶妙のインタープレイによるトリオが必然的に解散に追い込まれたのが61年。それからは、自己のトリオによるレコーディングが行われない時を過ごしていたのです。63年になり、チャック・イスラエル(b)、ラリー・バンカー(ds)によるトリオを結成し、やっと自己のトリオでレコーディングを行うなど活動を再開、そしてヴァーヴ・レーベルに移籍、久々にトリオによるジャズに専心できる足固めができたのが64年だったのです。そして軌道に乗りだしたその年の夏、ストックホルムに出向いたビル・エヴァンス・トリオはスウェーデンの美しい歌手と邂逅したのです。
    モニカ・ゼタールンド(1937-2005)はスウェーデン、ハーゲフォルス生まれ。父親がサックス奏者、母がベーシストの両親を持つ歌手、女優です。50年代からヨーロッパで歌い、ニューヨークを中心としたアグレッシヴなスタイルやジャズ・ロックのようなポピュラーに特化したサウンドに興味を惹かれるというよりは、オーソドックスなジャズをベースに表現を深めることに専心するタイプでした。その姿勢がビル・エヴァンスの方向性と一致したのでしょうか、ここでは素晴らしいバランス感覚で両者が向かい合い、実にインティメイトな音楽が展開されています。
    モニカはビル・エヴァンスのモダンで洒落てはいるものの、多少難解さも含むバッキングもどこ吹く風。自らのペースを崩すことなく、淡々と、かつクールに情緒、情感を巧みに織り込んでいきます。新感覚のピアノ・トリオ演奏を背景に、自由に楽しく、そして少し主張も交えて対峙している彼女のジャズ感覚をベースにして、北欧らしいクリーンでクールなジャズ・ヴォーカル・アルバムに仕上がっています。スウェーデン語で歌われるビル・エヴァンス作の「ワルツ・フォー・デビィ」は実に魅力的です。

    収録曲
    1.降っても晴れても 2.ビューティフル・ローズ 3.ワンス・アポン・ア・サマータイム 4.ソー・ロング・ビッグ・タイム 5.ワルツ・フォー・デビィ 6.ラッキー・トゥ・ビー・ミー 7.悲しい風 8.イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー 9.サム・アザー・タイム 10.イン・ザ・ナイト
    ニカ・ゼタールンド(vo)/ビル・エヴァンス(p)/チャック・イスラエル(b)/ラリー・バンカー(ds)

    [録音]
    1964年8月29日 ステレオ ストックホルム
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