ハモンド B-3 オルガンのレジェンド、ドクター・ロニー・スミスのブルーノート復帰第3作目。創造の場所はスタジオではなく、ステージにあると言い切るロニースミス御代の、2017年にNYのマンハッタンにある有名ジャズ・クラブ、ジャズ・スタンダードで行ったライヴから6曲を収録。同ライヴからは2018年の気鋭アルバム『All In My Mind』がリリースされているが、本作には彼がどうしても作品として残したいと切望する楽曲を収録。 今やサンプリング音源でしか聴かれなくなってきた本物のハモンドB3の響きが見事に収められている迫力満点の作品だ。B-3の生音に触れたことがある人なら、地を這うような中低位域の太さを実感できるに違いない。ミッドバスから最低域までシームレスにつながる本物のマルチウェイだけが再生できるサウンドと、60年代のグルーヴを思わせる元祖ソウル・ジャズの時代の匂いがする熱い1枚だ。(ジャズ部門 生島昇)
現代屈指のピアニスト、イーサン・アイヴァーソンがラージ・アンサンブルで描くバド・パウエル・トリビュート作品。 Blue Noteの録音を完全収録したMosaicボックス、またVerveのセッションなどから、バド・パウエル(ゆかり)の楽曲を選曲して、アレンジ、演奏するとともに、パウエルのソロ・フレーズなどからインスパイアされた形跡もあちらこちらに見られる。ビッグバンドスタイルだが、往年のオリバー・ネルソンやギル・エヴァンスを思わせる洗練のサウンドは、コンセプトを埋没させることなく細部まで聴かせどころを保っている。バンドのサイズ感やサスティン感にも優れ、音に身を任せて楽しめるサウンドだ。(ジャズ部門 生島昇)