<ジャズ・オーディオファイル 紹介> -2020年7月-

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2020.07.31

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ONJQ(OTOMO YOSHIHIDE'S NEW JAZZ QUINTET) / ONJQ(大友良英ニュー・ジャズ・クインテット) / HAT AND BEARD

ONJQ(大友良英ニュー・ジャズ・クインテット) / Hat And Beard
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008097087

新進気鋭のメンバーを加えたライブ音源は、相変わらずの轟音カオスの世界観で、生ぬるい情緒ジャズを踏みつぶしているが、タイトな新宿ピット・インのマッドな音響とよくマッチしていて、この爆音は端正なオーディオ・マニアへの強烈なカウンターパンチでもある。久々に腰が抜けるようなラウドを体験したくて、「ドルフィーにかつて夢中だったぜ」、という向きにのみおすすめしたい。(営業部 生島昇)
 



RYO KAWASAKI / 川崎燎 / Mirror Of Mind / ミラー・オブ・マイ・マインド


川崎燎 / Mirror Of Mind
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1006535477

オリジナルのアナログ・レコードは、当時のCBS/SONYが総力を結集したアナログ技術で製作した「マスターサウンド」シリーズであった。当時のトレンドだった芳醇で切れのよい爽快なクロスオーバー・サウンドの傑作。成熟したアナログのマルチ録音テクニックと機材が揃っていた最後の時代でもあった。

トラックダウン・マスターは1/4インチの76cm/sec.が使われている。
ニューヨークのパワー・ステーションでレコーディングしたマルチトラックのマスター(当然アナログ)を、今は無きCBS/SONY信濃町スタジオでトラックダウンしたと思われる。トム・ヒドレー設計の当時最新鋭の設備を誇った信濃町スタジオは、コンピューター・フェーダー・コントロール(NECAM)を搭載したNEVEの特注コンソールが配備され、マスタリング・ルームにはノイマンのカッティング・レースとSONYオリジナルのクリスタル・ロック・ターンテーブルが巨大な大理石の基礎に設置されていた。スタジオと直結すれば、現代では不可能なダイレクト・ディスクの製作も可能だった。

世界有数の規模と最新の設備を誇ったアナログ・スタジオは、今やそのテクノロジーも機材も含めてすべて失われてしまった。
アナログ・レコードによるかつてのマスターサウンド・シリーズはもう作れないが、そのサウンドを伝える貴重な音源がブルースペックCDでまたひとつ蘇る。(ジャズ部門 生島昇)



内沼映二 / 内沼映二が語るレコーディング・エンジニア史


内沼映二 / 内沼映二が語るレコーディング・エンジニア史
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/DUBK244

日本が世界に誇るレジェンド現役エンジニア、内沼映二が50年のキャリアととともに、エンジニアが行ってきた仕事の変遷と歴史を総括。

レコーディング・エンジニア集団「ミキサーズラボ」設立40周年記念企画!
巻末のリストを眺めるだけで、この伝説のエンジニアが生み出してた昭和ポップスのサウンドがよみがえる。技術的な興味だけでなくあの頃確かにあった時代の音とは何だか、好奇心を満たすには充実すぎる内容だ。レコードを聴いて機材や音を語る前に歴史を基礎知識として知っておくと楽しみが倍増するだろう。近年はやりといわれる昭和サウンドの演出が、当時の内沼さんたちのノウハウを直伝してきたエンジニアたちによって再現されていることをききのがしているようではオーディオマニアとはいえない。とあえて断言しよう。(ジャズ部門 生島昇)



SATOKO FUJII / 藤井郷子 / INVISIBLE HAND  / インビジブル・ハンド


藤井郷子 / INVISIBLE HAND
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245658658

藤井郷子さんは、日本に限らず、広く欧米で活動し、どちらかといえばアヴァンギャルドなスタイルのピアニストだが、長年にわたる田村夏樹氏との共同制でオ―ケストラも含む多彩なコンポジションでジャズの自由な創造性を体現できる稀有なアーティストとして知られる。自らのレーベル(libla records)も持ち制約のない作品つくりを精力的に行ってきた。
そのあまりにものピュアーな姿勢とセンス故に既存のインディ・レーベルの環境では彼女の音楽のフルスケールを捉え切れなかったが作品の力で多くの支持を得て、昨今の厳しい音楽市場の中でも特に敬遠されがちな日本のジャズシーンにおいても、流されることなく、日本ジャズシーンのジャンヌダルクとして先頭を走る誇り高き表現者だ。

楽曲やアレンジのみならず、ピアニストとしても、発っする音そのものに宿っているエネルギーにがたぐいまれなことにおいては、キース・ジャレットのようなトップ・アーティストと比べても遜色のない存在感を発揮しているのは驚くべきことだ。

そのサウンド力にほれ込んだコルテスサウンドが全力を傾けて収録したのがこの音源だ。考えうるあらゆる環境をアーティストのために捧げ、音楽の奇跡が生まれることを信じて疑わないコルテス・スピリットが、磨き上げられた音粒の一つ一つに息づいている。このような魂の入った音源を再生できるシステムとリスナーは幸せだ。(ジャズ部門 生島昇)



SHIGEO HENDRIX NAKANO TOKYO EXPERIENCE / 中野重夫 東京エクスペリエンス / ライヴ・アット・ジャズ・ルーム・コルテス

中野重夫 東京エクスペリエンス / ライヴ・アット・ジャズ・ルーム・コルテス
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245684502

これはギターの中野重尾夫氏率いるTOKYOEXPERIENCEが、コルテスで繰り広げる中野ライブパフォーマンスを余すところなく捉えたトラックだ。

編成はオルガントリオとの共演という形をとっているが、一聴して分かる通りジミ・ヘンドリクスそのものである。シンプルでアコースティックなサウンドを期待する向きには厳しいかもしれないが、かつて高柳昌行らが成し遂げた日本のフリージャズの極北を踏襲するような凶暴なサウンドは、は俗な情緒や安易な調和に対する憎悪と怒りに満ちたな凶暴なイメージを届ける。

メッセージなどではなく、もっと感情的なパッセージに乗って発生している。いるこの怒涛のような叫びを、コルテスサウンドは牙を抜くことなくありのままに運んでくる。こういうむき出しの音響への普遍的な渇望に痺れる肉体を持つ人なら、このサウンドは砂漠のオアシスのような命の水となるだろう。

コルテスサウンドはこのこの沸騰する轟音を薄めることも溶かすこともなく現場のラウドネスのまま見事なミックスで、ワイルドなライブ感たっぷりに収録している。まるでお上品なハイエンドサウンドをあざわらうかのように。好みは分かれるとしても、今回のディスクの中でも、サウンド的にも音楽的にも最大の見せ場がこのトラックであると断言したい。4これは久々に腰に響く本物のロックサウンドだ。オーディオマニアたるものこういう濃い音源を全力で鳴らしてウーファーの一つも飛ばすくらいの豪快さがあってよいのではないだろうかとすら思わせる。音楽もオーディオもまず音響ありきという真実をコルテスサウンド何よりもは熱く伝えてくる。(ジャズ部門 生島昇)



STEVE KUHN / スティーヴ・キューン / Wisteria

Steve Kuhn / wisteria
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/JZ120326-42

スティーブ・キューンにスティーブ・スワロウのベース、ジョーイ・バロンという細密画のようなトリオで、悪いわけはないのだが 、数多あるECMのキューン作品の中でも特に聴きどころが多い傑作と思う。サウンド的にも、バロンの繊細な音粒が数えられるくらい鮮明に捉えられていて、実物大のピアノとともに刺激的なアクセントの連続だ。耳を澄ますに値するウルトラクリアサウンドだ。(ジャズ部門 生島昇)


SUMIRE KURIBAYASHI / 栗林すみれ / NAMELESS PIANO
栗林すみれ / Nameless Piano
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008066177

トリオやビッグバンドもこなす多才なピアニスト栗林すみれさんの新作は、なんとjazzオーディオファンに絶大な人気を誇るステファノ・アメリオ録音による初のソロピアノによるオリジナル作品だ。相変わらず美メロ満載のナイーブな曲想が光る名曲揃いだ。それにキース・ジャレットの新作といわれてもわからないほど。自宅のピアノによるプライベート録音だが、隅々まで透き通りクリアなサウンドはピアノと話しができる栗林さんだけの世界だ。しかも、こだわりのオーディオファンのために、マスタリング違いのCDまで付属している。アナログとの比較でわずかに響きを抑えたより深みの増したボディ感があじわえる。その向こうに、人懐こいすみれさんのキュートな笑顔が見えるようなサウンドだ。(ジャズ部門 生島昇)