<ジャズ・オーディオファイル 紹介> -2020年12月-

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2020.12.24

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PATTI AUSTIN / パティ・オースティン / LIVE AT THE BOTTOM LINE / ライブ・アット・ザ・ボトム・ライン

PATTI AUSTIN  / LIVE AT THE BOTTOM LINE
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/DF171113-1308

クインシーファミリーのフュージョンサウンドを支えたソウルシンガーの78年のライブ盤。ごくポピュラーな内容だが、聴きどころは、名匠ルディ・ヴァン・ゲルダーによる抜群のプレゼンスをとらえたステレオライブ録音だ。モダンジャズのモノラル録音を極めたRVGは、CTI時代に多くのステレオ名録音を生み出すが、ライブ録音で腕を振るった成功作がこれだ。マイケル・ブレッカーとウィル・リーの参加も見逃せない。(ジャズ部門生島昇)



灰田高鴻 / スインギンドラゴンタイガーブギ1

灰田高鴻 / スインギンドラゴンタイガーブギ1
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008189427

灰田高鴻 / スインギンドラゴンタイガーブギ2

灰田高鴻 / スインギンドラゴンタイガーブギ2
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008226318

第74回ちばてつや賞一般部門入選(受賞作『しろい花』)の灰田高鴻が描く本格ジャズコミック。大ヒットしたBLUEGIANTに続く話題のジャズコミックは、戦後間もない日本を舞台に、その後の日本ジャズ黎明期の激動をヴィヴィッドに描く。
キャラクターも演奏描写も臨場感抜群で、まるで優れたオーディオのように世界に引き込まれる。フィクションならではのステージ感にあっという間に読み切ってしまう。
これから生まれてくるスリリングな音楽への期待と興奮のリアリティは、コミックならではの演出が満載だ。 (ジャズ部門生島昇)



田中伊佐資 / 大判 音の見える部屋 私のオーディオ人生譚

田中伊佐資 / 大判 音の見える部屋 私のオーディオ人生譚
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008225754

月刊Stereo誌で連載されている「音の見える部屋 オーディオと在る人」のムック化。今回は大判化され、写真が見やすく日本中のオーディオマニアたちの生態がより細部まで隈なくアップされている。

田中伊佐資氏による軽妙な視点で、金をかけるだけが趣味ではなく、熱中するあまり底なし沼にハマっていく愛すべき趣味人たちの禁断の惑星が活写されていく。

そんな人間味あふれる光景に共感できればもうあなたも仲間だ。田中伊佐資氏が全国のマニアのお宅を訪ね、そのマニアのオーディオ遍歴、オーディオへの思い、求めているサウンドに迫る秀逸なドキュメンタリーだ。(ジャズ部門生島昇)



EARL KLUGH / アール・クルー / SOLO GUITAR / ソロ・ギター

アール・クルー / SOLO GUITAR
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245636408

いわずと知れたフュージョン・ブームの立役者。リー・リトナーやジョージ・ベンソンと同時代に活躍するも、徹底的にアコースティック・ギターに拘った唯一無二の存在だ。リリカルなスタンダードのカバーも多く、そのデリケートなタッチを、クリーンでシルキーなサウンドでとらえた名録音。ギター1本の音像も肥大化することなくナチュラルで、何より響きが美しい。テクニックを披露するよりも音色への拘りが音楽になっている。(ジャズ部門生島昇)

 

SEIKO MATSUDA / 松田聖子 / SEIKO JAZZ 2

松田聖子 / SEIKO JAZZ 2
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245707107

これは、ベテランのジャズファンには敬遠されるかもしれない。メジャーレーベルならではの企画物と誤解されそうな作品だが、聴いてびっくりの上質なボーカルアルバムで、コレを先入観で聴かず嫌いに終わるかどうかでセンスが問われる踏み絵のようなアルバムだ。
前作と同じく、デヴィッド・マシューズのコンダクトによるエレガントでゴージャスなサウンドは音響的にも超ハイクオリティだし、ボサノバテイストのスタンダード選曲も洗練されているし、何よりも問答無用のポップスターである聖子さんの、エンタテイメントな解釈と表現力が絶品で、ジャズの王道に寄せすぎない溌溂としたボーカルの魅力には抗えない。
往年のバンドシンガーのような風格まで漂う。アレンジとサウンドのすべてが一流で、細かなニュアンスの際限に注力するジャズオーディオマニアなら決して避けては通れない盤だ。(ジャズ部門 生島昇)
 

 


PETER BROTZMANN / ペーター・ブロッツマン / PHILOSOPHY OF SOUND / フィロソフィー・オブ・サウンド

ペーター・ブロッツマン / PHILOSOPHY OF SOUND
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245712561

専修大学文学部哲学科主催・公開講座「パフォーミング・アーツと哲学」の第3回として、専修大学生田キャンパス新2号館アクティブ・スタジオにて開催されたライブパフォーマンスのライブ録音。出演は、フリージャズの世界的なプレーヤー、テナーサックスのペーター・ブロッツマン氏(ドイツ)、ドラムスのポール・ニールセンラヴ氏(ノルウェー)、日本の代表的な即興演奏家であるエレクトリック・トランぺッターの近藤等則氏からなるブロッツマン・トリオで内容は現代を代表する伝説的なインプロヴァイザーによる完全なる即興セッションで、いまだ衰えを感じさせない火の出るような即興セッションであり、まさにパフォーミングアートそのものである。デッドなスタジオ空間ではなく、おそらくフィールドに近い講堂のようなライブ環境で放たれた音響は、自由奔放に空間を駆け巡る。その音の自由運動が見えるような サウンドもアートの一つに表現されたかのようだ。フリージャズとしか言いようのないスタイルだが、投げられた音の波紋は果てしない。体験を享受するサウンドといえるだろう。(ジャズ部門生島昇)


PHAROAH SANDERS / ファラオ・サンダース / Pharoah(LP)

ファラオ・サンダース / Pharoah
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008115258

ファラオの作品の中でも、近年高い評価と人気があるアルバムで、クロスオーバー路線直前、india navigationからリリースされた76年作。収録曲は全3曲。フュージョンとフリージャズの間で、時代に翻弄された感もある内容だが、インプロバイザーとしてのファラオのプレイには外連がなく、“Harvest Time”は、シンプルなリフを刻むギターをバックに、ファラオのテナーが深く響き渡り、20分超の長尺を飽きさせず聴かせる。そのソウルフルなプレイはブラックミュージックとしても広く名演として知られ、レコードでのリイシューは待望だった。かつて国内で一度CD化されたが、今やコレクターズアイテムになってしまった。こうしたレコード原盤の復刻は当時のサウンドを表現することが難しいことが多いが、今作はサウンド面でも鮮度の高い復刻がされていて、オリジナルの音を聴き慣れた人にも違和感なく聴けるクオリティになっているのが嬉しい。
“Love Will Find A Way”は、軽快なパーカッションと鍵盤に導かれ、ファラオがなかなか味わい深い歌声を披露している。(ジャズ部門 生島昇)