ディスクユニオン ジャズスタッフ 6月度レコメンド・ディスク

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2022.06.30

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ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!





FREDDIE HUBBARD / Breaking Point(LP/180g/STEREO) / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 金子

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008463037

フレディ・ハバードのリーダー作の中でも若干地味な印象のある1枚になるだろうか。私はBLUE NOTE4100番台を代表する時代を反映した名盤の一つだと思う。さらにジャズ・メッセンジャーズを離れフレディ・ハバード自身の音楽を追求する方向に舵を切った重要作でもある。その緊張感、集中力が漲る大傑作だ。






PATTY WATERS / You Loved Me (LP/45RPM) / 新宿ジャズ館 木村
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008482732

ESPレーベルの歌姫PATTY WATERSの1970年/1974年録音音源の初レコード化。
至宝の名盤「PATTY WATERS SINGS」ファンならきっと満足する内容。
PATTY WATERの妖艶美の要は彼女のピアノ。
勿論、ヴォーカリゼーションの妖しい魅力は言うまでもない。
B1は完全ピアノソロ。
逆にA7はアカペラ。
他は全てピアノ弾き語り。
A6~7「My One And Onely Love」「My Man's Gone Now」は1974年未発表に終わったシングル「PATTY WATERS PLAYS」(1970年録音)から。
B2~3「Moon Don't Come Up Tonight」「I Love You Honey」のみ1974ライブ音源なのだけど、超絶生々しい音に脳味噌溶けた。
歌声が聴こえ過ぎるくらい耳に迫る中、アップライトピアノの残響音が広がり、キーアクションやペダルの作動音がカタカタゴトゴトと混じり合い独特な雰囲気を醸し出す。
録音のセッティングの悪さが転じて、お好きな方には堪らない涎ジュルジュルの音響を産んでいて凄く良い。





ARMEN DONELIAN / FRESH START / JazzTOKYO 逆瀬川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008470530

ジャズでアルメニアといえばいまやティグラン・ハマシアンなわけで、最近も新譜が出て話題にもなり売れていたのですが、このアーメン・ドネリアンもアルメニア・ルーツを持つ御方。しかもNY生まれの御歳72歳、かつてはビリー・ハーパーなどと共演し、長年Sunnysideでリーダー作をリリースしてきた大が付くベテラン。寡聞にして知らなかったのですが、ジャズの世界は恐ろしく広いとまた改めて思わされるのであります。
ティグランやアヴィシャイ・コーエン、ジャン=フィリップ・ヴィレなど、4月から5月の一時期に入荷が相次いだピアノトリオ作品の中にあっては、言っちゃ悪いがちょっと地味め。凄まじく活きがいい上述のそれらに比べると、強烈なテクニックとか、ヒリヒリのインプロとかはありません。でもだからというか、そういうギンギンのやつに疲れたときに聴きたい、アルメニア・ルーツのほんのりエキゾチック風味な美しい楽曲と、NYのピアノトリオのエレガンスが混ざった、高い表現力を感じさせる演奏。曰くコロナ禍に練習をしすぎて肩を痛め、休養の間は作曲に専念、演奏を再開してからはタッチやストーリーテリングに重きを置くようになったのだとか。長年のキャリアを持ちながらも、コロナ禍での経験を糧に新たな境地を目指す姿勢が『Fresh Start』というタイトルにも表れていて、その飽くなき向上心に敬服するばかりです。





GEORGE GRYDKOVETS / RISE / JazzTOKYO 逆瀬川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008434414

冒頭からウォームで柔らかな音色が印象的なギタートリオ作である。BandCampでの解説にあるように、メセニーやフリゼール、ヘクセルマンの影響、流れを感じさせる、テクニックやフレージングというよりサウンド主体のプレイ。3曲で入るトランペットと、その際のバッキングもいい味を出しており、メセニー以降、カート以前、みたいなコンテンポラリー・ギター好きにお勧めしたい好盤だ。
これを取り上げるのには理由があって、レーベルはアメリカ、本人はNY拠点だがウクライナ・キーウ出身なのだ。ベースとドラム、トランペットもキーウのミュージシャン。本作をオーダーリストで見た翌週くらいにロシアの侵攻が始まったこともあり、直接は関係ないものの、頭の片隅で気にし続けていた。だからこれが少しでも多くの人に聴かれ、その反響がアーティストにも伝わったら、ウクライナの文化や人々に寄せる思いが少しは届くのかな、なんて思うのである。





NDUDUZO MAKHATHINI / IN THE SPIRIT OF NTU / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008477254

南アフリカはここ数年の間に注目を浴びるようになったジャズの新興地域。Brownswoodの南ア・コンピ『Indaba Is』にこそ入らなかったが、ンドゥドゥーゾ・マカティニは南アのジャズ・シーンの旗手と言っていいだろう。2020年、南アのミュージシャンとして初めてブルーノートと契約し『Modes Of Communication』をリリース。ブルーノートは2作目のリリースにあたって、ユニバーサルのアフリカ部門とインプリントレーベル「ブルーノート・アフリカ」を新設する、というほどの力の入れようである。「ジャズを私たちの文脈に位置付ける」と言うマカティニの作品は、スピリチュアリティとジャズのエレガンスが共存。本作もゴリゴリのアフロ・スピリチュアルと思いきや、コルトレーン的なスピリチュアル・ジャズの延長としても聴ける仕上がりに。聴き心地はアフリカよりもむしろジャズの方が近い。





JAN DOMENECH / MAGICAL FOREST TOUR / JazzTOKYO 逆瀬川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008495234

ジャン・ドメネクはジョアン・チャモロに見出されたピアニスト。2020年にはチャモロの若手紹介シリーズでピックアップされたので、ご記憶にある方もいるかもしれない。リーダー・デビューとなる本作は地元スペインのフレッシュ・サウンドから。全曲オリジナルで、メンバーもスペインの若手たち。ゲストにDani Perez(g)、同時期にチャモロによって紹介されたJoan Martiがフルートで、そしてモティスも1曲ヴォーカルを披露している。肝心の演奏であるが、フロント陣がいることもあってか本人はバックに回っていることが多い。ソロをガンガン弾くというよりは作曲、アンサンブル志向の人なのだろう。たまに弾くソロは嫌味なく素直な音使い。一聴してハードバップ系とも括れるかもしれないが、作曲には現代的なセンスが、後半に進むにつれ色濃く聴こえてくる。いや、この人は本当は「ジャズ作曲家」志向なのかもしれない。メンバーの実力も勿論だが、彼らをいかに動かしてドラマチックに物語や景色を描けるか、というあたりは作曲者、アレンジャーの手腕。そのあたりの抜き差しのセンスがイイ。優しげなピアノを聴けばソロ作、トリオ作なども楽しみにはなるが、個人的にはラージ・アンサンブル作品など期待したいものだ。現在24歳の若手も若手。まだまだこれからに注目したい。






RYAN KEBERLE / SONHOS DA ESQUINA / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008485890

とてもいい。何がいいってその瑞々しさである。ブラジル音楽という要素はサンバやボサノヴァのリズムで表現されがち。まぁそれも間違いではないが、本作が素晴らしいのは、ミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタへのオマージュを、彼らの音楽が持つ瑞々しさ、切なさ、いわばサウダージ、を感じさせる演奏で伝えていることだ。マリア・シュナイダーのもとで長年演奏するトロンボーン奏者と、トニーニョと長年共演しているブラジルのミュージシャン、とくればその表現力は言わずもがな、なわけで。ミルトンやトニーニョの曲をやっているということ以上に、「ブラジル音楽」のアイコン的な表現なしでブラジル音楽の空気感が感じられる、実に美しい傑作。ボントロのワンホーン、というだけで敬遠するのはもったいない、と改めて思うのですよ。





MELODY GARDOT / ENTRE EUX DEUX / JazzTOKYO 丸山
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008466144

スティングとの共演も話題をさらったヒット作『Sunset in the Blue』(2020)以来となる待望の新作が登場しました。ピアノやギターなどを操るメロディ・ガルドー(vo) が本作ではヴォーカルに専念し、全編フィリップ・バーデン・パウエル(p) とのデュオによるインティメイトな作品となっています。新曲中心に、映画『男と女』でピエール・バルーが歌った「あらがえないもの」や、フィリップの父でブラジル音楽を代表するギタリスト/作曲家だったバーデン・パウエルの名曲「プレリュードのサンバ」なども収録。ビリー・アイリッシュもファンを公言するなど、多くのアーティストをインスパイアし続けているメロディの揺蕩うような芸術的歌声に浸れる傑作です。パリのロダン美術館にて撮影された #1 "This Foolish Heart Could Love You" の MV もぜひご覧になっていただきたい、うっとりとするような仕上がりになっています。






OLIVIA TRUMMER / FOR YOU / JazzTOKYO 丸山
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008462771

1985年独シュトゥットガルトで音楽家一家のもとに生まれたオリヴィア・トルンマー(p, vo) による 2022年作品がこちら。ファブリツィオ・ボッソ(tp) と カート・ローゼンウィンケル(g, baritone-g) がゲスト参加しているという注目盤です。光る才知を感じさせる歌声でオリジナル 11曲をしっとりと、時に爽やかに歌い上げる好内容の一枚。流石のバッキングも聴きどころ。






ROB VAN BAVEL / TIME FOR BALLADS / JazzTOKYO 丸山
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008472692

チック・コリアに強い影響を受けた、蘭を代表するピアノの詩人ロブ・ヴァン・バヴェル率いるピアノトリオが儚くも美しく綴ったバラード集。本作では、歴史的ピアノの修復でも世界的に有名なベルギーのピアノ製作者、クリス・マーネ(1953-) 製作の平行弦ピアノ (Chris Maene Straight Strung Concert Piano) を使用、さらにピアノにしっかりと寄ったミックスを施しており、通常は交差させる響板の木目と弦が平行に配された、この特徴的なピアノの混じりけなくクリアで潔い高音を堪能できます。ハイエンドなオーディオ設備で聴いてみたい逸品。






TIERNEY SUTTON / PARIS SESSIONS 2 / JazzTOKYO 丸山、新宿ジャズ館 有馬
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008459222

米ロサンジェルスを拠点とする、9度グラミー賞にノミネートされた経験を持つベテランのティエニー・サットン(vo) による仏パリでのライブ録音盤が登場! 全編アコースティックな雰囲気で織り成されるリラックスしたムードの好盤です。"白と黒のポートレート" のタイトルでも知られる #3 "Zingalo (ジンガロ)" や #12 "You'd Be So Nice to Come Home to" など、どこか哀愁漂う懐かしい選曲の全13曲を余力たっぷりに、そして気だるげに歌い上げた通好みの一枚。(JazzTOKYO 丸山)


Grechen ParlatoやSara Gazarekなどが師事していたことでも知られ、教職者でもあるTierney Suttonはグラミーノミネート9回の本格派です。
そこはかとなく深淵さを伴った声の強弱と演技力。安定したブレスと共鳴。レベルの違いを今も見せつける、今や大御所。
20年近く彼女の作品を聴いていますが、選曲に大衆性がある代わりに、こだわりのあるアレンジをよくします。既存のアレンジを嫌うのでしょうか。そのこだわりも、前述したヴォイス・コントロールが曲構造自体に影響しているように感じて面白いです。スキャットのテクスチャーもギターのように変容させることもできます。おススメは一曲目の『Triste』。(新宿ジャズ館 有馬)






OK:KO / LIESU / JazzTOKYO 荒川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008455305

フィンランドはヘルシンキに拠点を置くWE JAZZ RECORDS。ハードバップからアヴァン~エクスペリメンタルまで扱う幅広いレーベルカラーを持ち、ティモ・ラッシーもここからリリースをしている。去年から今年にかけてはDAN NICHOLS、JOONA TOIVANEN、KOMO SAXOと決定打ともいえるリリースが続いているのだ。OK:KOはヘルシンキ若手のメンバーによるワンホーンカルテットであり、ドラマーOKKO SAASTAMOINENを中心とするグループだ。この『LIESU』はWE JAZZの中でもストレートアヘッドなアルバムである。特にキャッチ-な1曲目の"Anima"をまずは聴いてほしいが、"Rieju"や"Vanhatie"なんかも最高である。リズムセクションを中心に組み立てているのだろう、グルーヴをキープしたままサックスのメロディーもちゃんと聴かせてくれるし、また静~動のダイナミックな演出も上手い。未体験の人はここを入口にぜひ注目してほしい。






RONAN PERRETT / WHO OWNS THE SKY? / JazzTOKYO 荒川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008495236

2021年に本作のリズム隊のFerg Ireland(b)、James Maddren(ds)らによる『FERG IRELAND TRIO』が出ているが、Ronan Perrettがリーダーの『WHO OWNS THE SKY?』はあちらと同じくサックス・トリオであり、躍動するベース&ドラムに歌うアルトと、地続きになっている節がある。ところで私がコードレス・トリオに望むことは、音数が少ない故に浮き彫りになるリズムとメロディーだ。その点、本作はバッチリで最高~。ドラムのJamesはキット・ダウンズの新作でも素晴らしい仕事ぶりだったが、ここでは聴き手の腰と首と脳を揺らすようにグルーヴを作っている。サウス・ロンドン周りのプレーヤーの中でもすごくいいドラマーだと思うが、もっと注目されていいだろう。オーネットら、先人達のトリオの伝統に根ざしているとはRonan本人の談だが、間違いなく2022年現在の音。カッコいいぞ!




JOEY ALEXANDER / ORIGIN / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008478086


“新世代ジャズピアニストの神童”と言われデビューアルバムをリリースしたのが確か彼が15歳の頃....。15歳とはおもえないピアノテクニックを聴かせてくれた少年はもう19歳の青年になりました。ジャケット写真を見てうぉー、大きくなったなあーっていうのが初見の感想です。とはいえまだまだ若くてそのエネルギーは健在で。今作ではピアノトリオ編成だけじゃなくサックスも交えて、更にオリジナル曲を多数盛り込んでピアニストだけじゃなくコンポーザーとしての才能を発揮した一枚に仕上げてきてくれました!ミステリアスさとクールさを兼ね備えたコンテンポラリージャズのアルバムに仕上がっています。リズムセクションのメンバーも精鋭ばかりですがサックスにはクリス・ポッターを迎え(コンテンポラリーの名手ですね…!)傑作です。





アンドレア・モティス / ループホールズ / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245757548


可愛らしい歌声とラテンルーツの音楽性が注目&大人気のアンドレア・モティスの新しい可能性!情報が解禁された当初の感想は“!?!?”なものでして、サウンドに想像ができませんでした。参加ミュージシャンにBIG YUKIいるし…。どうなっちまうんだよお、って。でも聴いてしまったら納得でした。なんだろう、ロイ・ハーグローヴRHファクターの毛色がかなり強いです。リズムセクションのメンバーもファンクやネオソウルの路線上で活躍しているメンバーで固めていて安定したバックグラウンドになっています。やっぱりモティスちゃんなので、ボーカルはチャーミング感が強いのですがこれはこれでアリ!多分彼女自身この方向性で貫いていうわけでもなさそうだけど、ネオソウル路線だってできるんだぜ!と可能性を見せつけられる一枚です。





MAJAMISTY TRIO / WIND ROSE / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008470578


セルビア人ピアニストによる、マヤミスティ・トリオの作品が初めて(?)当店に到着したのは2年前ぐらいでしょうか。「Misty Land」「Organic」の2タイトルが入荷してきていて、ジャケデザインがジャズボーカリストっぽい感じなのもあり内容がこうあんまりイメージしづらい印象でしたが、聴いてみるとかなりエモーショナルなメロディセンスで。驚きでした。セルビアってあまりなじみがないですよね。お隣はルーマニアやブルガリア、クロアチアに囲まれバルカン半島の南東に位置する国でヨーロッパの中ではローマ系に近いところ。この辺の系譜のジャズって数が少ないし自身も結構見かけないので、でもイタリア系ジャズのサウンドには近いのではないでしょうかね。セルビア民族音楽的要素や少しクラシックの要素が入っているあたり美メロ系ピアノトリオ、という認識で間違いなさそうです。これまでの旧作では全曲シッカリピアノトリオ!というプログラムでしたが今作「WindRose」では一部ボーカルやクラリネット(!)が入っていたり更に音楽表現に奥行きが出た作品になっています。





JULIUS RODRIGUEZ / LET SOUND TELL ALL / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008482935


Verveレーベルって言わずもがなアツいアルバムをジャンジャン輩出してくれるのですが、今回のこのアルバムでメジャーデビューを果たすマルチ奏者ジュリアス・ロドリゲス。彼はピアノ、ドラム、トラックメイク等できるようで、どうやらジャズのみならずゴスペルやHipHopの知識も豊富そう。 ゴス、ジャズ、ヒップホップ、RnBの味を大鍋でかき回したような一枚。 生演奏だけどDTMのようにバンドアレンジしたサウンドが新感触でめちゃくちゃ面白いです。 彼自身が23歳と若いので参加ミュージシャンも同年代つながり。ギブトン・ジェリン(tp)やサマラ・ジョイ(vo)など若手注目勢がいますよ。





ウェンデル・ハリソン / メッセージ・フロム・ザ・トライブ・サード・ヴァージョン / JazzTOKYO 板橋

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008451334


Tribe Recordsを象徴する作品である「A Message From The Tribe」の「顔ジャケ」盤が久しぶりのCD再発。おそらく国内盤CDとしては初リリースではないだろうか。本作のオリジナル盤は曲順や収録曲変更、テイク違い収録、マスタリングなどを経てジャケも変えながら3回リリースされている。その3回目がこの「顔ジャケ」盤である。1回目「磯ジャケ」、2回目「地球ジャケ」に収録された同楽曲を聴き比べてみると、マスタリングが際立ち、より迫力を増しているのが、はっきりと感じることができる。こちらの再発に伴い、1回目、2回目もそれぞれのヴァージョンでリリースされているので、ぜひとも聴き比べしていただきたい。この「顔ジャケ」の素晴らしさを感じることができるはずだ。





AMANDA WHITING / LOST IN ABSTRACTION / JazzTOKYO 板橋

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008482231


英国JAZZMANレーベルからハープ奏者の新録リーダーアルバムがリリースされた。こちらのレーベルといえば、スピリチュアル・ジャズやレア・グルーヴをメインにリリースしているレーベルだが今作は趣きが少々違う。コンテンポラリー要素も取り入れたストレートなジャズ・ハープ作品となっている。まず、冒頭1曲目の「Abstraction」で美しさに心奪われ、バッキングとの調和が素晴らしい「Too Much」など、全編通してジャズにおける現代的なハープの魅力を思う存分に堪能できる。クラシックからジャズの世界に転向したというだけあって確かな演奏、また、ハープ独特の旋律が織りなす独特の世界観が昨今のジャズとは一線を画す作品の誕生である。





MATHIEU ROBERTO & MARIO GANAU / Callada: Around Mompou / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008434412


ベルギーのサックス奏者Mathieu Robertと、サルデーニャのピアニストMario Ganauによる、スペイン・カタルーニャの偉大な作曲家フェデリコ・モンポウの楽曲を取り上げた2022年作。タイトルの通り、モンポウの後期の傑作といわれるピアノ曲集「Musica Callada」を取り上げ、ピアノとサックスのデュオという形で新たに生まれ変わらせている。ピアノ1本ももちろん素敵なのだけれど、サックスが加わることで立体感が生まれ、さらに結成7年というデュオの会話は阿吽の呼吸。そして、珍しい singing bowl という楽器や、シンセに加えてフィールドレコーディングで録音された環境音が重なり、サウンドトラックのような広がりや空間が感じられる音になっていて、自然の中にいるように心地よい。全体を通して神秘的で、でもそれだけでは言い切れないような面白さや深みがある作品。





JAKOB MANZ / GALLERY CONCERTS I / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008463740


またまた、個性的な作品を見つけました!ACTの創設者シギ・ロッホが所有するギャラリーで行われた、ドイツの最注目の若手プレイヤー2人のアルトサックスとピアノによるプライベート・コンサートの模様をとらえたライブ・アルバム。美しくエネルギーに溢れたデュオで、オープニングから素敵なのですが、なんと、アルトサックス奏者のJakob Manz、 #5 では、リコーダーに持ち替えて演奏しており、一気に雰囲気が変わります。リコーダーと言えば、私は小学校の音楽の授業でしか馴染みがなかったのですが、その音色にこんなに表情があったとは。丸く親近感のあるあたたかな音色だけでなく、尺八のような渋くかっこいい音色やノイズのような音もぴったりはまっていて、さすが、サックス奏者がリコーダーを吹くとこうなるのか...!と衝撃を受けました。リコーダーの可能性を最大限に引き出し、どこか異国情緒も漂う、美しく、そしてワクワクさせられる、くせになるナンバーです。





GILAD HEKSELMAN / FAR STAR / JazzTOKYO 岸本

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008481576


好奇心旺盛な子供だった私は昔から宇宙やら深海といった人の手が未だ届ききっていない領域に心を奪われた。宇宙の図鑑はお気に入りで暗黒の空間と様々な星や星雲はどんなものより色鮮やかに見えた。far starというタイトルがつけられた本作、正しく遠い星に想いを馳せるような作品に感じられる。宇宙的な浮遊感あるサウンド、最新のジャズシーンを体現しているGiladならではの未知への好奇を思い出させてくれる楽曲や、輝く星のような鮮やかなギター。いささかタイトル先行でアルバムを聴きすぎか?とは思うが、M4の「Far Star」は穏やかさの中に遠くから届く星の光の眩さを感じた。メンバーもShai Maestro,Eric Harlandなどスタープレイヤーが参加している。今やイスラエル、ジャズギター界の巨星たるGilad Hekselmanのニューアルバム、聴かないという手はないだろう。





EGO ELLA MAY / THEON CROSS / Morning Side Of Love/Epistrophy (7") / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 小谷

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008517009


前作が大好評だった、Blue Note Re:Imaginedの2作目より先行シングルが発売。ロンドン・ネオ・ソウルの代表格、イゴ・エラ・メイの''The Morning Side Of Love''はチコ・ハミルトンのカバー。オーガニックなサウンドでありながら、言うまでもなく今っぽい!9月発売のBlue Note Re:Imagined II にも期待が高まります。





CHRIS ROTTMAYER / SUNDAY AT PILARS  / 吉祥寺ジャズ館 中村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008489695


フロリダを拠点に活動するピアニスト、クリス・ロットマイヤーの前半でテナーサックスを迎えたワンホーン・カルテット、後半でピアノトリオと2種の編成での演奏を収録したアルバムです。ジャズ・スタンダード中心の選曲で、メロディアスかつエレガンスなプレイでリスナーを魅了します。ウォルト・ハバード(ds)とジャック・ウィルキンス(ts)で始まるM1、チャーリー・シルヴァの落ち着いたベースラインと洗練されたピアノのキーがマッチしたM2、遊び心に溢れたM8など、聴いているうちにだんだんと心地よい気分になってくる作品です。





LEILA DUCLOS / FILLE DU FEU / 吉祥寺ジャズ館 中村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008477700



ジャンゴ・ラインハルトを敬愛し2011年にキャリアをスタートさせたフランスのヴォーカリスト/ギタリストのレイラ・デュクロ。エラ・フィッツジェラルドばりのスキャットと柔らかく深みのある歌声が魅力的なミュージシャンです。本作に収録されているほとんどの楽曲はデュクロのオリジナル曲で、フランス語歌唱によるどこか懐かしい雰囲気に包まれた、ご機嫌なジプシー・スウィングを堪能できる作品です。ゲストにマヌーシュ・ジャズ界の大物ギタリスト、ニニン・ガルシアが参加、本国フランスをはじめヨーロッパ各国で高い評価を得ているヴォーカル作品です。





板橋文夫 / 濤(SHM-CD) / 吉祥寺ジャズ館 立石

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245756420


1976年3月1日に東京、第一生命ホールにて行われたトリオでのライブ音源になります。岡田勉(b)、楠本卓司(ds)が参加。3曲の録音でどれも長尺ではありますが、最後までリリカルに曲が展開されていて、壮大な構成がたまらない作品となっています。2曲目の「Good Bye」は浅川マキが82年に詩をつけて歌っていて、浅川マキのヴァージョンももちろん良いのですが、やはりオリジナルには別格のキレと美しさがあると思います。ここ最近の茹だる暑さの中で聴きたい1曲です。3曲目のタイトルにもなっている楽曲「濤(とう)」ですが、この曲は19分56秒と大作になっています。序盤は各々フリーの演奏が続き、それから岡田と楠本の掛け合いの後、板橋がバチっ!と参加してきます。その入りがとてもカッコよく聴き惚れてしまいます。その後の展開も言わずもがなデビュー作とは思えないクオリティーの演奏が繰り広げられています。「渡良瀬」や「Nature」なども必聴作品ではありますが、それに優る名演となっております。その他JAPAN JAZZ REVISITEDでは熱いタイトルが数多くリリースされていますので、そちらも是非チェックしてみてください。





ENRICO PIERANUNZI  / Something Tomorrow / 新宿ジャズ館 久保田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008492840


エンリコ・ピエラヌンツィのピアノトリオ最新作です。近年共演の多いトマス・フォネスベックとお馴染みの名手アンドレ・チェッカレリを迎えた、全10曲中8曲をピエラヌンツィのオリジナルが占めるスタジオ録音のアルバムです。ピエラヌンツィの端正なタッチはもちろんのこと、ソロの背後でチェッカレリが入れる合の手にもぜひ耳を傾けてみてください。暖かみと哀愁を感じられる内容で、3人が会話を楽しむように生き生きと演奏します。橙と黄色を基調としたデジパックのパッケージもしっくりきますね。






JAN GUNNAR HOFF / Home(Blu-ray Disc Audio+SACD Hybrid) / 新宿ジャズ館 西川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008485096


「静かな冬の夜」がオーディオファンの間で高く評価されたヤン・グンナル・ホフ。最新作は2016年「STORIES」以来のソロ・ピアノ作。1曲目は過去に共演のあるマイク・スターンの曲で美しいバラードだ。北欧色豊かな内容に相応しいテイスト。2曲目から5曲目まではインプロや叙情性豊かな演奏が続く。6のスタンダーズ、7の映画曲はホフのアレンジも見事だが曲調からかアルバムの雰囲気が変化する。8曲目からラストの13曲目は伝統的な北欧フォークサウンドを彷彿させるメロディ、情景が浮かんでくる美しい演奏が楽しめる。SACD、Blu-rayに収録されたステレオ、5.1、7.1.4音源どれも教会で収録されたピアノの響きを再現するのは、やはりそれなりの腕が試される。





ジャズ・イズ・デッド 011 / ADRIAN YOUNGE & ALI SHAHEED MUHAMMAD / エイドリアン・ヤング & アリ・シャヒード・ムハンマド / 新宿ジャズ館 田中
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008447373


リリースの度にSpiritual、Modal Jazz好事家を唸らせてきたシリーズ、第二章!!
今作は今後リリース予定の良質音源からのコンピレーション。
Blackjazzを代表するHenry Franklinや2020年に惜しくも亡くなったTony Allenに加えて、LAシーンを代表するコレクティブ Katalystによる作品も収録。
今まさに旬なトレンドをおさえながらも深いところを突き進むJazz Is Deadをお見逃しなく!





CHES SMITH / Interpret It Well / 新宿ジャズ館 有馬

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008493522



なにかと動向が注目されるピアニストKris Davisが運営する非営利レーベルPYROCLASTICから、Ches Smithのカルテットが登場。
このレーベルからリリースされる共通点といえば、そのアーティストがいずれ辿り着きそうな未来を、予め引き出しているように感じる点でしょうか。
Tim Berneが現在寵愛するドラマーとして名を馳せるChes Smithは、表現力の高いドラマーが出力先に選ぶことの多いヴィブラフォニストでもあります。
そのヴィブラフォンでの不穏なミニマルリフから始まり、ドラムを併用しながら幅のある表現力で展開していく様は、ECMでのTim Berneのデビュー作に起用され見事なアジャストを果たしたChes Smithを思い出します。
あと本人も語っていますが、初共演?となるBill Frisellがあらゆる引き出しを用いつつ、終始高い洞察力で溶け込んでいく様が一番驚きのレベル。もちろんFrisellなんだからそんなことは今までにやってきたと、解っていたつもりでした。





SAM GENDEL / Recorded Live at Sound City Dec 20th 2020 (12") / 新宿ジャズ館 有賀

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008497943


曲数は少ないですが、1曲じっくりと堪能させてくれる聴きごたえのある一枚となっています。サム・ゲンデルの独特な音色メロディー、じわじわくるブレイク・ミルズのギター、ピノ・パラディーノの安定感かつ渋クールなグルーヴが合わさった魔法の音楽は朝昼晩いつでもしびれさせる内容です。リピート再生間違いなし!是非一度聴いてみてください。





DANIEL VILLARREAL / Panama77 / 営業部 三橋

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008459410


灼熱のリズムに踊り狂うも良し、幻想的でドリーミーな音像に酔うも良し、立体的な音の定位に耳を澄ますも良しな1作が国内CD盤化。自身が参加するバンド、ドス・サントスの直近の作品では民俗学的な研究を作品に反映させたという興味深い背景がありましたが、抗えないルーツというある種の過去と現在が交差したときの熱や深みが本作にも滲み出ている気がします。
海外の楽器サイトReverbのチャンネルにアップされた彼のリズム解説動画を見てから聴くとまた違った視点で聴けるので、パナマ史や現代シカゴ史を知ってから本作を聴くのも面白そう。