ディスクユニオン ジャズスタッフ 12月度レコメンド・ディスク

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2022.12.28

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ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!




ロブ・ヴァン・バヴェル / タイム・フォー・バラッズ~ザ・スタジオ・セッションズ / 吉祥寺ジャズ館 中村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008579568


小学生の頃、ピアノの先生から「聴いている人が、演奏者や音楽が表現したがっている風景を頭の中に浮かべられるように弾きましましょうね」とよく言われていました。おそらくですが「何はさておき歌心」ということを先生は言いたかったのでしょう。今更ながら小学生相手になかなか難しいことを言っているな、と思います。おかげで三つ子の魂何とやらで今では「演奏者や音楽が表現したがっている風景が頭に浮かぶか否か」が好みの判断になりました。本作はオランダのピアニスト、ロヴ・ヴァン・バヴェルがリリースしたバラード集の第2弾で、行ったことがないけれど「ロンドン郊外にある小さな公園」や「大勢の人の悲喜こもごもが渦巻いている大都会」などの風景が曲にこめられたストーリーと一緒になり頭の中で妄想となって膨らんでくる、景色が広がる絶品ピアノトリオ作品。聞き手の想像力で楽曲の魅力が何倍にもなる、これが抒情的と言われるヨーロピアン・ジャズが持つ力だと思います。





富樫雅彦 / アイソレーション(LP) / 吉祥寺ジャズ館 立石

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008544159


富樫雅彦、高木元輝による究極のサントラ「Isolation」が再発です。映画『略称・連続射殺魔』のために録音された本作は全面即興で行われ、富樫雅彦が下半身付随になる前の最後の録音としても知られています。1969年12月、真冬真っ只中の演奏は今時期に聴くのにおすすめ。両者は日本的即興最重要作「We Now Create」などで共演しており、我が国のフリージャズ黎明期の中心人物でもあります。富樫の猛烈なドラミングと高木のフリークトーンの掛け合いは一聴の価値あり。年明けの休みに、ぐったりとして聴きたい一枚です。





ERICH KLEINSCHUSTER / 6TET/ORF/1968-69 Clifford Jordan & Charles Tolliver (2LP/180g) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008591287


STRATA-EASTのチャールズ・トリヴァーやクリフォード・ジョーダンが好きな方におすすめの内容のアルバムです。
クラーク・ボラン・ビッグバンドのメンバーでもあるERICH KLEINSCHUSTER(tb)やJIMMY WOODE(b)によるコンボをバックに、チャールズ・トリヴァー(sideC/D)とクリフォード・ジョーダン(sideA/B)をフィーチャーした演奏を収録した発掘音源です。
この内容・音質で今までリリースされずに眠っていたのが不思議な位の良い内容です。
またSTRATA-EASTに関するミッシングリンクを見るようで、その意味でも興味深いアルバムです。
1000枚限定プレスなのでご購入はお早めに。





AHMAD JAMAL / Emerald City Nights Live at The Penthouse 1963-1964 (Vol.1) (2CD)

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008573603


AHMAD JAMAL / Emerald City Nights Live at The Penthouse 1965-1966 (Vol.2) (2CD) / 新宿ジャズ館 木村
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008573606


Emerald City Nights「Vol.1」「Vol.2」としてリリースされた発掘音源は初期アーマッド・ジャマルのダイナミックな側面を堪能出来るアルバムです。
有名盤「But Not For Me」の最初期ピアノトリオ黄金期では、最高の相棒イスラエル・クロスビー(b)に演奏スペースを空ける為と思われますが「間を使った」「控えめな」演奏が好評を得ました。
この「控えめ」なタッチは、ダイナミックな演奏の前振りとしても効果的に使われました。
1962年にジョージ・シアリングがリズム隊ごとイスラエル・クロスビーを引き抜き、その直後にイスラエル・クロスビーは夭折したことでアーマッド・ジャマルとイスラエル・クロスビーのコンビネーションは完全に終わってしまいました。
「Vol.1」はその翌年の録音です。ベーシストとの阿吽の呼吸のコール・レスポンスを聴くことはもう叶いませんが、ベーシストに空けていたスペースをアーマッド・ジャマル自身で埋めることとなり、結果的にトリオはドライヴ感が増したダイナミックな演奏になっていきます。
「Vol.2」ではその路線が完全に定着し更にスタイルが変わっていこうとしています。
「Vol.1」「Vol.2」ともに初期アーマッド・ジャマル・トリオの名演に加えてもいいのではないでしょうか。





ELVIN JONES / REVIVAL: LIVE AT POOKIE'S PUB (LP) / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 金子
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008555140


改めて「発売してくれてありがとう」の思いが込み上げてきた。それがBLUE NOTEからというのが何ともまた良い。「小さなクラブ」と言われているニューヨークのプーキーズ・パブ。1967年当時のJAZZ LIVEの空気がパンパンに詰まった素晴らしい作品であり、こういうサイズの空間で演奏するエルヴィン・ジョーンズのライヴ盤は過去作どれも最高で、もちろん本作も同様である。メンバー、曲目も大満足。ブックレットもフランシス・ウルフの写真やエッセイなど載っており豪華です。完全未発表音源。やはりエルヴィンのウネるドラムはオンリーワンだ。





ART BLAKEY / In Concert / 新宿ジャズ館 四浦
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008582959


漫才師ミルクボーイの掴みのネタに、「こんなん、なんぼあってもいいですからね!」というのがあるが、フレディ・ハバード、ウェイン・ショーター、カーティス・フラーの3管編成のメッセンジャーズの録音がまさにそれである。スタジオでもライブでも、この時期のアート・ブレーキーのジャズ・メッセンジャーズは楽しく聴けるのである。これぞジャズである。だからか、この時期の録音がたくさんリリースされているのだ。「Ugetsu」(Riverside)や「3 Blind Mice」(United Artists)をはじめ、「Mosaic」(Blue Note)、「Buhaina's Delight」(Blue Note)、「Caravan」(Riverside)、「Kyoto」(Riverside)などなどある。本作は1962年の春のヨーロッパのツアーからのものである。シダー・ウォルトンのピアノも素晴らしい。





KETIL BJORNSTAD / SEVENTIES / JazzTOKYO 西川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008581149


ECMでもおなじみのピアニスト、ケティル・ビョルンスタの70歳記念ボックスが発売。デビューから1979年の「SVART PIANO」までPHILIPS、POLYDORの12作品と1977年のモルデ・コンサートやスタジオ音源など5枚のボーナス・ディスクに100ページほどのブックレットも付いた豪華収録作品。「70歳で70年代」と掛けたボックスとのことです。1枚目の「デビュー」はプロコフィエフ、ベートーヴェンのソナタ、ショパン、ドビュッシー、グリーグの曲で構成されたレパートリー。2枚目以降の作品は自作曲をメインとしたフォーキーで印象的なピアノ曲もあればギターが参加した70年代テレビ番組のテーマソングのようなキャッチーな曲もあり、またヴィクトル・ハラの曲も演奏したりとユニバーサルな演奏が楽しめる。この時代特有のサウンドだがアコースティックもエレ・ピの音も大変心地が良かった。





スワヴェク・ヤスクーケ / ジャスミン / JazzTOKYO 西川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245763814


コアポートから8枚目でワルシャワのクラブでソロ・ライブを収録したものだ。幻想的でシネマティック、ポスト・クラシカルな雰囲気が美しい。初期の作品から演奏は微妙に変化しているように感じる。より色彩を帯び、音の広がり、深みが増している。連続した音の残響も心地よい。音に真剣に向き合え、同時に安らぎも与えてくれる作品だ。日本には2016年と2017年には「ピエノ・エラ」で来日、ピアノ好きにはお馴染みだが、まだまだ多くの方に聴いていただきたいピアニストの一人です。





DEZRON DOUGLAS / Atalaya(LP) / 新宿ジャズ館 田中、JazzTOKYO 荒川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008569324


Brandee YoungerのパートナーでUS Jazzシーンを代表するベーシストDEZRON DOUGLAS最新アルバム。NYシーンのフレッシュなメンバーが参加した今作。
INTERNATIONAL ANTHEMらしくトレンドを抑えたような "Rose"をはじめ、しっかりとしたアンサンブルや随所にツボを押さえたアドリブを聴くことができる楽曲が揃ったバランスの取れた内容となっている。
全体的にModalの雰囲気を纏いつつ、しっかりとしたコンテンポラリーを展開するアルバムで、INTERNATIONAL ANTHEMフォロワーはもちろん、これまでもモダン・コンテンポラリーシーンに長く親しんできたリスナーの方々にも是非、聴いて頂きたい一枚。(新宿ジャズ館 田中)


1曲目からこのレーベルのカラーとは少し異なる、ピュアなコンテンポラリー・ジャズで驚く。デズロン・ダグラスは同レーベルではブランディー・ヤンガーとのデュオや、マカヤ・マクレイヴンのアルバムなどで名前を見ることができるが、本作は全曲ダグラスのオリジナルで、堂々たるリーダー作だ。メディテイティヴなボーカル曲を経由しつつ、カルテットの演奏の美しさで最後まで突き抜ける46分。ジャズの外にヒントや、拡張を求める現行のジャズに少し不満を持っていた人達も、本作には顔が綻ぶだろう。ジャコパス・オマージュもご愛敬である。(JazzTOKYO 荒川)





日野元彦 / Flying Clouds / JazzTOKYO 羽根、新宿ジャズ館 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008576372


"5days in Jazz"とはTHREE BLIND MICEが70年代に主催した伝説的なコンサートで、その音源はTBMからいくつもリリースされている。1976年の同コンサート、日野元彦カルテット+2の録音が出るという本作のインフォを見て、反射的に震えが来るほど興奮してしまった。しかし待てよ、未発表音源にも色々あって、これが何でお蔵入りだったの?と感じる録音もあれば、あぁ、成程ねと思わざる得ないものもある。ここは冷静になって耳を傾けよう。日本ジャズ史上屈指の名盤”流氷”のメンバーの演奏がこれまで陽の目を見ていなかった訳については解説に詳しいが、(1)日野元彦が本調子では無かった、(2)録音上の不備があった、とのことである。この内(2)については、”本物”TBMエンジニア神成氏によるトラックダウンと最新のデジタル技術も駆使した処理で、全く分からないレベルなので、安心してお聴きいただきたい。さて問題(1)である。聴き手がそれぞれ判断する以外にないのだが、個人的にはこれが不調?いや凄いんですけど?というのが偽らざる感想だ。パーカッションの今村裕司のサポートの功績もあるのだろうが、日野元彦というドラマーが当時世界的レベルの存在だったことを再確認させられる。またバンド全体が生み出す独特のグルーヴがやはり他に代え難い。冒頭”流氷”で不穏なムードを醸し出すボウイングとパーカッションの絡み合いが続き、ベース、ドラム、ギターが徐々に合流しながら、7分過ぎからお馴染みの”流氷”のテーマが流れるあたりは、ライヴならではの興奮が否が応でも高まる演出だ。ここから正に火の出るような70年代ジャズが繰り広げられる。また天才・渡辺香津美の"OLIVE'S STEP"のストレート・アヘッドな鬼弾き、タイトル曲の"FLYING CLOUDS"の2テナーによる丁々発止のガチバトル、何から何まで最高だ。おまけにカバー・アートもカッコいい。雑に出される未発表音源も多い中、実に丁寧なリリースにレーベルの熱意と誠意を感じる。(JazzTOKYO 羽根)


70年に藤井武ら3名により設立されたTBMは、73年6月に神奈川県立音楽堂にて初のコンサート「第1回TBMジャズ・スペシャル」(=『横浜コンサート』(TBM-22))を開催します。翌74年にはSJ誌主催ジャズ・ディスク大賞の日本ジャズ賞1~3位を独占、この年から5日間に渡るジャズ・コンサート「5 Days In Jazz」が始まり、77年まで毎年開催されました。本作が録音されたのは銀座・ヤマハホールで開催された「5 Days In Jazz '76」の最終日です。
「5 Days In Jazz」は多くが録音されましたが音源化されたのは13タイトルに過ぎず、日の目を浴びていない録音がまだ存在しています。今回、2014年の中村誠一『ザ・ボス』以来となる発掘音源が2タイトル登場し、2022年を締めくくるにふさわしいビッグ・ニュースとなりました。さらに驚きだったのは、その内容が想像を越えるものであったということです。
年末のリリースのため「いますぐ聴いてほしい」からは漏れましたが、セールス的にも社内評判的にも首位を争うであろう1枚です。新品CDがドカドカと売れる時代ではなくなってしまいましたが、もう一度夢を見るに足るリリースでした。(新宿ジャズ館 久保田)





鈴木勲 / Blue Road / JazzTOKYO 羽根
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008576378


Days Of Delightによる驚異のTBM発掘音源シリーズ第二弾は、来ました本命”鈴木勲”!”ブロウ・アップ”や”オランウータン”など世界レベルで見ても名盤の数々を残した天才ベーシスト、チェリストの登場だ。TBMの人気はここ数年うなぎ上りで、再発されたCDのセールスも好調、オリジナルのアナログ盤は10年前からすると数倍、数十倍にまで高騰しており、しかも天井はまだ先にありそうな勢い。特徴的なのは、従来のジャズ・ファンやコレクターのみならず、若いリスナーや海外からの問い合わせも後を絶たない点である。一体TBMの何が”今”これほどジャズ・ファンを夢中にさせているのか?個人の勝手な考察だが、TBMの音は絶対に”ジャズ”の中心を外さずに、個性や表現として”尖っている”のが魅力なのではないかと考えている。ジャズの伝統から抜け出そう、特に日本においては、本場のジャズからの影響から脱することを指向するあまり出来た、とても良い感じの別の音楽をここで挙げるにはキリがないし、解き放たれた自由な筈の表現が非常に窮屈な結果を生んでしまう皮肉には、現代のジャズもまた苦しめられている。その点今回リリースされた"5days in Jazz"の鈴木勲の音源には、そんな屈折や窮屈さは微塵も感じられない。この"ジャズに頑張って踏みとどまっている感"が、今まさにスリリングだし、エバーグリーンなのだと思う。演奏技術や楽理の理解が70年代に入り急速に本場に追いついた事もあるだろうが、ごく自然と日本人らしさが演奏に込められている点も素晴らしいと思う。このシリーズどこまで続くのだろうか。今後も楽しみで仕方がない。





AXEL KUHN / LONELY POET / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008572639


ピアノトリオ作品が立て続けに入荷するタイミングというのがあるようで、前回に引き続き今回もピアノトリオをご紹介。ドイツのレーベルらしい音響のOddgeir Bergに対してこちら、ベースのAxel Kühnのトリオは、より現代的なコンテンポラリー・ピアノトリオと言えるだろう。特にこちらは聴いている者の心に訴えるような抒情的なメロディが実に印象的。そんなメロディに比して、各人のソロは結構饒舌なものがある。綺麗めの曲でガンガンに弾きまくってクライマックスへ…なんていう展開は個人的に大好物だし定番の展開だが、このトリオは単に綺麗な抒情派トリオということでは終わらず、アヴィシャイ・コーエン・トリオのようなアグレッシブな変拍子系トリオでもある。
ピアノのUll Möck、ドラムのEckhardt Stromerが音楽教育の過程でクラシックを学んでいるのはさすがドイツらしい。Möckの持つクラシカルなタッチがこのトリオに抒情性をもたらし、Kühnが変拍子やリズムを追求する。そのバランスによってこのトリオは完成している。
ところどころシンセがエフェクト的に重ねられていたり、ギターが入っていたりと、変化を付けているのもまたイマドキのトリオらしい。純アコースティック派には許せないかもしれないが…。





AXEL KUHN / TIME TO RETHINK / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008572640



純アコースティック派のトリオ・ファンのみなさまにはこちらを。上記の作品の前作にあたる、Axel Kühnの21年作。配信ライブ作品というだけあって、シンセなどが入らない、純粋なトリオの演奏になります。メンバーももちろん同じ。各曲コンパクトに収めてはいますが、やはりライブとなれば多少なりアツくなるようで、特にドラムが元気。それでも抒情的な響きは失ってません。ラストの「Cycle Of Life」は、頭3音がベートーヴェンの「悲壮」っぽく始まる美しいメロディに、リムショットで細かく刻むドラムが疾走感を演出、ベースソロも見事に歌っているし、ライル・メイズを彷彿とさせるピアノソロも素晴らしい。新作が完成された作品ならば、こちらはトリオの演奏が楽しめる一枚。ぜひ同時買いのほど。





BILL LAURANCE / AFFINITY / JazzTOKYO 逆瀬川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008535074


ビル・ローレンスは、スナーキー・パピーではピアノを演奏するほぼ唯一のメンバー。ファンクやアフロなビートの中で跳ね回るような彼の固い音色のソロは、ボビー・スパークスなどとはまた違った、スナーキーのハイライトのひとつだ。シンセやエフェクターを多用した前作『Cables』はもともとソロピアノ作品を想定していたそうで、今回はそのリベンジとしてピアノにフォーカス。リズムが強力なスナーキーやバンドセットの過去作ではあまり聴こえてこなかった、メランコリーなセンスが全編にわたって発揮されている。「Peace Piece」「A Child Is Born」といったスタンダードを、アレンジを凝らさずに弾いているのも好印象。また全編でプリペアド・ピアノを使用。弦楽器的な響きが強調された中低域の音色は少々独特だが、演奏は素直で美しい。





ケイティ・ジョージ / フィーチャリング / JazzTOKYO 丸山
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245764744


デビュー作『ポートレイト・オブ・ケイティ・ジョージ』(2022) で話題をさらった、ヴォーカル王国カナダの新星Caity Gyorgy(vo)による、カナディアン・グラミーとも言われるJuno Award 2022で"ジャズ・ヴォーカル・アルバム最優秀賞"を受賞した 2nd作品がこちら! 「新しいジャズ・スタンダードを生み出すこと」がコンセプトだという今作に収録された既存スタンダード曲は#3"It Might as Well Be Spring"、#8"'Tis Autumn"の2曲のみで、全13曲中11曲がオリジナル。ケイティ自身が作詞/作曲/編曲した楽曲を、カナダの実力派ミュージシャン達を曲ごとにフィーチャーし歌う"ドリーム・プロジェクト"にして、新世紀ヴォーカル・アルバムのニュー・スタンダードを示すものとなっています。ケイティのジャズ・ヴォーカルへの情熱が凝縮された逸品です。





AUBREY JOHNSON / PLAY FAVORITES / JazzTOKYO 丸山
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008573824


2022年に来日したことでも話題のオーブリー・ジョンソン(vo) とランディ・イングラム(p) によるデュオ作品がこちら。故ライル・メイズを叔父に持ち、ボストンのバークリー音楽大学で声楽、NY市立大学クイーンズ校でジャズ・マスタープログラムを教えるオーブリーが美しい歌唱を聴かせます。映画『ストックホルムでワルツを』で、ビル・エヴァンス役を演じたことで一躍注目を浴びたランディ・イングラムと共に、#4 "If I Should Lose You" や #10 "I’ll Remember April"、 #11 "Born To Be Blue"、 #13 "My Ideal" などの古典的スタンダード曲をはじめとする幅広い時代の定番曲を、創意工夫を凝らして満載した一枚となっています。





UUSI AIKA / UUSI AIKA / JazzTOKYO 丸山
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008561413


フィンランドの 5人組アンサンブル "ウウシ・アイカ" によるスピリチュアルかつエスニックなデビュー作が、同国の先鋭的なジャズを紹介する良質レーベル We Jazz より登場しました。レスター・ヤングやヤン・ガルバレクといったジャイアンツから、日本の音響美学の歴史やニューエイジからインスピレーションを得たという作品。「フリージャズに通じる面がありながらメロディックなアプローチで演奏するバンドを作りたいと考えていた。」と語っている通り、メロディを基調にゆっくりと展開していく面白いアプローチを試みている良作です。不穏さと哀愁を漂わせつつ尺八の音色を効果的に使っている #2 や、ツィターのエスニックな響きとベースが絶妙にマッチした #7 など、つい耳を傾けてしまうようなカッコいい曲を収録しています。





AMINA FIGAROVA / JOY / JazzTOKYO 関口
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008551623


アゼルバイジャン発のジャズって数は少ないですがなかなかダイナミクスの効いた作品が多くて、当店で見かけた中ではピアニストのアジザ・ムスタファ・ザデがかなりハイセンスなジャズでした。2022年は同じくアゼルバイジャン出身のピアニスト、アミナ・フィガラワによるジャズアンサンブル作品が入荷。前作では結構エレクトリックな雰囲気の作品を発表したみたいですが今作はアコースティックな方向にシフトした作風に。
アルバムタイトルが『Joy』ということで、パンデミック後の新たな始まりをイメージした内容。オープナー一曲目からワクワクするようなイントロに始まりフルートを筆頭にした木管セクションがワクワクを加速させていく感じ。フルート筆頭の管セクションというのが結構新鮮で、迫力の中に煌びやかな美しさのあるアンサンブルが耳に対してしつこさがないのもポイント。
昨今、マリア・シュナイダーや挾間美帆など、女性コンポーザーの活躍が目覚ましい中新たに発掘された逸材かもしれません。





MARCO FRATTINI / EMPTY MUSIC / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008567559


イタリアの実力派ドラマー、マルコ・フラッティーニが率いるピアノ・トリオ作品。「素晴らしい解釈力を持つピアニスト」とモントルー国際ジャズピアノコンクールの批評家に評され、クラシックにも深く精通するCLAUDIO VIGNALIが参加。フェードがかかっているような冒頭のピアノのタッチを聴いた瞬間、ぐっと引き込まれた。ドビュッシーやラヴェルの要素を思わせるような美しいけれどダークな雰囲気もあって、なんだか時間がとまってしまった寂しい街に迷い込んだみたい。8ビートを主体としたドラムも心地よくて、街を歩いているような感覚にさせてくれる。霧がかっていて寒いけれど凍えるような感じではなくて、ずっとそこに閉じ込められていたような懐かしいあたたかさにも出会える不思議な美しさに吸い込まれる作品。この世界に住みたいなあ。





CLARA BLAVET / NARCISI E CAMOMILLE / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245765292


イタリアのWorkin' Labelより今年リリースされた女性フルート奏者/ヴォーカリストのClara Blavetによる6曲入りのEP。基本的にはフルート同士のデュオという斬新な編成でありながら、アルト・フルートやバス・フルート、ピッコロなど様々な音域の違いが美しいハーモニーを生み出している。数曲はそこにヴォーカルが入ってきて、素朴で伸びやかな歌声は穏やかな風の吹く草原が広がる楽園のような場所を思わせる。そんな小鳥たちのさえずりを聴いているようなナチュラルで美しい作品なのだが、それだけでは終わらないのがこのアルバムの面白いところ...。#5では突然エレクトロ二クスがフィーチャーされ、今までののどかさが嘘のようにノイズやフルートたちの不協和音が鳴り響き始める。楽園だと思っていた世界が実は狂気だったという、アリ・アスター監督のサイコロジカルホラー映画『ミッドサマー』を彷彿とさせるような美しくも不気味な作品。





EABS (Electro Acoustic Beat Sessions)  / 2061 / JazzTOKYO 松本
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008502054


ポーランド発の前衛的なジャズバンド"EABS"。"Electro-Acoustic Beat Sessions"の略で、名前の通りアコースティック・ジャズと電子ジャズが絶妙なバランスで組み合わさり、細かいハイハットが印象的なヒップホップのサブジャンル"トラップ"サウンドをコラージュのように重ねることでジャンルを超えた混沌とした魅力が凝縮されている。トラップ・ミュージックといえば、近年ではラッパーのTravis Scottが思い浮かぶが、彼の代表作『ASTROWORLD』(2018)と、ジャズからも大きく影響を受けているというTyler, The Creatorの『Flower Boy』(2017)などのサウンド感が混ざったような(特に感じられるのは#3,5,7,8だと思います)奇抜で、なおかつアコースティックの演奏も劣ることが無く素晴らしい、すごくかっこいいハイブリットが実現した。アルバムタイトルを見ると、約40年後"2061年"に思いを馳せて作ったのかなあ。まさに新しい時代を思わせる、ニュー・チャプター・リスナーにぜひ聴いてほしい作品。





DON RENDELL & IAN CARR / Shades of Blue(LP) / JazzTOKYO 山本
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1007850098


再発当時購入したものの売ってしまったのですが、先日再入荷したのを見て買い直し。やはりこれと『Dusk Fire』は持っておかないと。オリジナルはずっと憧れで、自分用に入手はできなくともいつか揃いで仕入れて出品したいと熱望しています。そして既にみなさんご存じだと思いますが、音質も十分に良く、買っておいて損はないかと。余談ですが、オリジナルはモノラルのみのはずがこれはステレオということがずっと気になっていて、もしオリジナルでステレオが存在するなら超聴いてみたいですよね。深いダーク・ブルーのコーティング・ジャケットで、ちょっとシワがあってもそれはそれで渋みが増す?、奇跡のレコード。





サム・ゲンデル / ブルーブルー / JazzTOKYO 荒川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008552898


2022年もそのクリエイティビティの爆発は止まることを知らないサム・ゲンデル。ゲンデルというとポリ・サックスが浮かぶが、本作はぽろぽろと爪弾かれるギターがリードする。それはモジュレーションで揺らし、テープ・シュミレーターを通したような朧げな音であり…氷漬けにしたアシッド・フォークのようでもある。今風にいうとローファイなわけであるが、つまりフェイクなレトロなのだ。楽曲のタイトルはすべて刺繍の模様からの引用になっているが、楽曲のテクスチャーのレイヤリングに掛けた洒落であると同時に、今では知る人も失われつつある伝統への共感があるのだろう。かつてあったものの喪失を嘆く"Caroline, No"をカバーしていた人だし。ちょうど師走になるので、この一年を振り返るサウンドトラックとして聴きましょう。





SAM WILKES & JACOB MANN / Perform the Compositions of Sam Wilkes & Jacob Mann / 横浜関内ジャズ館 山田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008566321


サム・ゲンデルとのコラボレーションで『Music for Saxofone and Bass Guitar』などヒット作を生み出したベーシストのサム・ウィルクスと、今年ビッグ・バンド作のフィジカル・リリースもあったキーボードディストのジェイコブ・マン。この二人は学生時代からの旧知の仲で、数々のプロジェクトをともにしてきた間柄である。本作はまさに満を持してリリースされた連名作だ。サムのアンビエント・サウンドを軸に、ジェイコブの摩訶不思議かつユーモラスでかわいらしいシンセと打ち込みが混ざり合う、極上のアンビエント・ジャズに仕上がっている。今作を改めて聴くと、『Music for Saxofone and Bass Guitar』におけるサム・ウィルクスのプレゼンスにハッとさせられる。また、ジェイコブ・マンのソロ作である、アナログ・シンセの名機JUNO-106で制作された『106』で聴かれた、音数の少なさからくる小ざっぱりした雰囲気は解消され、全体を通してシリアスさは皆無で明るく聴きやすい作品になっている点も好印象だ。





宮之上貴昭 / EDGE / 横浜関内ジャズ館 山田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008574251


日本のジャズ・ギタリストの中でも屈指のプレイヤーであり、熱狂的なファンも多いレジェンド、宮之上貴昭の新譜である。そこまでリーダー作が多くない宮之上氏だが、ここ4年ほどで今作を入れて3枚、昨年に引き続きのリリースということで、活動もいい波に乗ってきているということであろう。前作『ザ・マスターズ』は吉岡秀晃、大坂昌彦ら日本のトップ・プレイヤーが結集した隙のないメインストリーム・ジャズ作品だったが、今作はある意味それと対をなす一枚になっている。高澤綾(tp)、中島朱葉(as)、柳沼佑育(dr)など気鋭の若手が中心となったバンド編成で、ブルーノート黄金期ライクな超王道ハード・バップを、フレッシュな感性と有り余る勢いで演奏した会心の作品である。しかも、50年代をただ真似ているのではなく、それぞれのプレイヤーの個性やテクニックが存分に発揮されている。コンポジションも含め、当時のアメリカの一流プレイヤーでもこのようには演奏できなかったであろう、現代日本のジャズの最高峰の演奏がここにある。





KEN VANDERMARK / Soundbridges / 新宿ジャズ館 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008573822


ヴァンダーマークがドイツのフェスで客演したライブ盤で、ヴァンダーマーク以外の3名はドイツ勢です(正確には本作はドラムのマーティン・ブルーメをリーダーとするカルテットでしょう)。
MADE TO BREAKとベースとトロンボーンが入れ替わったような編成をしていますが、サウンドは随分違います。かっちりと作曲された側面を持ち、ベースが強い役割を担うMADE TO BREAKに対し、このカルテットが展開するのはフリー・インプロヴィゼイションで、前面に出てくるのはトーマス・レーンのアナログ・シンセです。
かなり激しいM1に始まりますが変化に富み、腰を据えて聴くに良いアルバムです。4人による綿密なコミュニケーションに耳を傾けてみてください。





ARTO LINDSAY / Charivari (Black Cross Solo Sessions 7) / 営業部 三橋

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008586684


CORBETT VS DEMPSEYからリリースされたアート・リンゼイの最新ソロ作品。解像度を極端に下げたようなノイジーなギターとささやくような繊細なボーカルのコントラストが素晴らしく、本作で聴ける鋭さはDNAにも通じる流石はアート・リンゼイといった内容。解像度を上げることは大事でありながら、表現においては上げつつ下げるその運動で生じる想像の余地にようなものが改めて大切なのだと思わせてくれます。クリストファー・ウール(!!)のペインティングをジャケットに使用した視覚的にも楽しめる良盤。





Multiple Images / E. LUNDQUIST / 営業部 池田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245766235


何も知らずに試聴前にレーベル商品説明を読み始めたら知ってる名前…”キャプテン・スーパーノヴァの中の人”じゃん!とのんきに聴き始めたら予想以上に良かったです…お得意のスぺ―シーなサウンドは健在ながら、70年代のライブラリー・ミュージックを意識しているとのことで、ジャケも含め内容もKPMを現代にアップデートしたような1枚。