ディスクユニオン ジャズスタッフ4月度レコメンド・ディスク

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2023.04.28

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ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!




JOE HENDERSON / Complete An Evening With / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008636098


3曲追加(All The Things...とBlues2曲)でのコンプリート盤だけど、追加曲の方が熱い演奏で断然お薦めです!!
特にRue Chaptalのソロ1コーラス目から奔放なフレーズをかっ飛ばしていて、このアルバムのイメージが一変します。
こんなカッコいいソロのジョーヘンを何で今まで収録しなかったのか!!
JOE HENDERSONもCHARLIE HADENも両方とも大好きなんですが相性は今ひとつと思っていました。でも追加曲を聴いて認識が変わりました、素晴らしいじゃないか君ら!それにも増して認識を新たにしたのはJOE HENDERSONとAL FOSTERの相性の良さです。というかAL FOSTERこんなに良かったんだなぁ、今までちゃんと聴いてなくてごめんよ





SAM RIVERS / THE QUEST / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008636097


SAM RIVERS, DAVE HOLLAND, BARRY ALTSCHULによる鉄壁のワンホーン・フリートリオ。期待を裏切りません。SAM RIVERSのピアノによるフリー・ピアノトリオの場面もあるんですが、SAM RIVERSのピアノって良いんですよね、構築美が展開されるフリーピアノで。 SAM RIVERSとDAVE HOLLANDの組み合わせは外れがないですね、素晴らしい





Pan Afrikan Peoples Arkestra / Live at I.U.C.C 11/26/78(2CD) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008641458


ホレス・タプコット率いるPan Afrikan Peoples Arkestraの78年のLIVE音源。「Live at I.U.C.C」コンプリートシリーズ6作のリリース第一弾となります。
既存の「Live at I.U.C.C」は79年2〜6月のライブ音源が元となっていますが、「Live at I.U.C.C」コンプリートシリーズは78〜80年に行われたLIVE音源6日分をそれぞれ各日一作品として順次リリース予定とのことです。
Pan Afrikan Peoples Arkestraのファーストアルバム「FLIGHT 17」と同年の録音とあって、得も言われぬ熱さと初々しさが素晴らしいです。
250枚限定少数プレスですので早めの購入がおすすめです。





クリスチャン・マクブライド / プライム / JazzTOKYO 羽根

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008613730


マクブライドを一言で言い表すなら、豪放磊落、軽妙洒脱という相反する性質を併せ持ったオールラウンド・プレイヤーである。故にベーシストの理想形たるレイ・ブラウンと比較されたりもする訳だが、リスナーとしての程度の低さを白状してしまうと、個人的には引っ掛かりを覚えにくいタイプでもある。まさにレイ・ブラウンがそうであるように、正直言うと何となく苦手なのである。何も完璧超人が苦手という話でもない(ブラウニーとか好き過ぎ)のだが、この印象はジョシュア・レッドマンのアルバムで初めてマクブライドを知った頃から数年前に至るまで大きな変化はなく、自分の駄耳を嘆く日々であった。それが少しづつ変化し始めたのが、この"NEW JAWN”の活動であり、本作でそれを改めて実感している次第だ。単純にセレクトする楽曲が好み、ピアノレスのフォーマットによるソリッドな感触が好き、リチャード・デイヴィスみたいで好き、ジミー・ギャリソンみたいで好き、など好きが一杯詰まったアルバムで、これでマクブライドを理解したなど大口を叩くつもりは無いのだが、こんな格好良い"EAST BROADWAY RUNDOWN”を聴けて幸せ。





Billy Childs / The Winds Of Change / JazzTOKYO 逆瀬川、新宿ジャズ館 四浦

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008609564


前作はヴォーカリストを迎えたプロジェクトだったが、新作はブライアン・ブレイドにスコット・コリー、フロントにアンブローズ・アキンムシーレを配したワンホーンカルテット。強すぎる。何が強いかって、ニュアンス、表現力という点において現代最高峰と言って過言ではない。リズムの2人は先般ウォルフガング・ムースピール・トリオでも来日していた鉄壁のタッグだし、アキンムシーレはブルーノートの今を代表するトランペッター。自作は少々前衛的な印象こそあるが、現代のジャズにおいて彼ほどあらゆる音を表現するトランペッターは他にいない。そして何より驚きは「Crystal Silence」。チック・コリアのあまりに美しいコンポジションを奏でるのに、アキンムシーレ以上のトランペッターがいるはずがない。
本作もチャイルズのコンポジションの美しさが際立っており、作編曲家としての印象も強いのだが、この強力メンツを束ねるチャイルズのピアノも当然素晴らしい。記憶を掘り返してみたら、もう何年も前の東京ジャズ、渡辺貞夫のバンドでのプレイが、ソロもバッキングもバツグンによかった、という感想を当時SNSに書いていた。そんなことも忘れてしまっていたが、つまりチャイルズのプレイのセンスのよさは、僕の中では数年前に保証済みなのだった。(JazzTOKYO 逆瀬川)


ビリー・チャイルズを語る上で、故フレディ・ハバードのバンドでの活躍が、彼の初期のキャリアの中で最も重要であることは間違いない。本作に投影された、ジャズへの衝動の原点の数々が、より多くの共感を呼んでいる。ブライアン・ブレイドとスコット・コリー(先日のウォルフガング・ムースピール公演は語り草)の最高のリズムセクションに、アンブローズ・アキンムシーレのトランペットを迎えたワンホーン・バンドで、自身のキャリアが産んだオリジナルの楽曲群(故ロイ・ハーグローブへ捧げた曲も)に、敬愛するチック・コリアやケニー・バロンが作曲した曲も取り上げて、よく練られたオーダー(ラストはトリオでの演奏で閉められる)のもと、アルバムという芸術表現を実に上手に見せてくれている快作である。(新宿ジャズ館 四浦)





Buster Williams / Unalome / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008625246


バスター・ウィリアムズは御年80の巨匠ベーシストであるが、ウェイン・ショーターとハービー・ハンコックという、ともに仏教徒である現代ジャズ界の2大巨匠に先駆けて仏教に帰依し、2人の思想に影響を与えた人物でもある。ショーターが亡くなったのと同時期に、蓮の花のシンボルをタイトルとジャケットにあしらったバスターの新作が出るというのも、なかなか不思議な巡り合わせだ。本作に集ったのはブルース・ウィリアムズ、ステフォン・ハリス、ジョージ・コリガン、レニー・ホワイト、ジーン・ベイラーといった何れ劣らぬ手練ればかり。特にベイラーの歌声が入ると全員の演奏がより一層艶っぽさを増す。しかも半分以上をヴォーカル曲が占めるのは、数々のヴォーカリストと共演してきたバスターらしいところ。上質の極みのような演奏には、"ひたる"という表現こそふさわしい。





GoGo Penguin / Everything Is Going To Be OK / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008618162


レーベル移籍、ドラマー交替、シンセやシンベも使用、と色々変化のあるゴーゴー・ペンギン新作。とはいえ間違いなくいつものゴーゴー・ペンギンの音だな…と思って改めて過去作を聴き直したら随分印象が違った。過去作はストイックな人力テクノ、人力ドラムンベースといった感じで、超タイトなロブ・ターナーのドラムと共に強力なグルーヴでグングン進み、ガンガン躍らせる生演奏のクラブミュージックだった。一方の新作、もちろんグルーヴも健在だが、リズムはよりクッション深めになり、どちらかといえばサウンド重視。だから音の印象はこれまで通り。それで魅力が削られているわけではなく、ダブっぽいことをやっているのは新しいし、音楽性を拡張し新たな魅力を創造している。ゴーペンちゃんは進化しているのである。





ジョシュ・ジョンソン / フリーダム・エクササイズ / JazzTOKYO 逆瀬川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008610719


未だ自分の中でしっかりと捉えられずにいるのがシカゴ・シーンである。シカゴからLAまで顔を出すシーンの重要人物、ジョシュ・ジョンソンのデビュー作を改めて聴いて気づいたのは、ああこれはポストロックなんだ、ということだ。激しいソロでアツく盛り上がるような展開はないし、ソロよりもメロディ、アンサンブル重視で一定の温度感を保っている感覚、時にエフェクトやポスプロを使っていたり、ドラムがテンションの上下を担っていたり。このアルバムはそういう、どこかロックバンドっぽい印象を抱かせる。本作に参加こそしていないが、そもそもシカゴの中心人物ジェフ・パーカーは"トータス"のメンバーなのであって、つまりシカゴのシーンはポストロックに直結しているのだ。そのことを思い出させられたのはもう何度目だろうか。ジャズとは違う筋肉を使わされるが、そう思って聴けばクールで超カッコいい。





Walter Smith III / Return To Casual / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008626776


ウォルター・スミスIIIのテナー・プレイサウンドには底知れぬ熱意がある。学生の頃丸の内コットンクラブで来日した時に生で、目の前で音圧を浴びたとき圧倒されたものでした。2023年のニューリリースである本作は2014年に自主製作でリリースした『still casual』の続編とも言える作品だそうで、当時のリズム隊はそのままに、今回はゲストでアンブローズ・アキンムシーレ(tp)と超絶技巧ピアノが話題のジェイムズ・フランシーズがイン!もともと超絶バンドがさらにグレードアップするんですね…。
オリジナル作と、カヴァー1曲で構成。すべてのオリジナル作はたった数週間に作曲されたフレッシュな楽曲たち。ですが新鮮感というよりかメンバーのおかげか、何度もライブなどで演奏してきたような安定感。ウォルターがもう一方で参加している「イン・コモン」とはまた違ったサウンドの毛色があって非常にクールです。そんで何よりもウォルター・スミスの熱烈ブロウがすごい!これに関してはアルバムを聴いてぜひ体感してみて。





Yotam Silberstein(Yotam) / Universos / JazzTOKYO 関口

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008570797


2021年作のヨタム×カルロスアギーレの双頭『エン・エル・ハルディン』以来久しぶりにヨタムの最新作を聴いてピーンときた作品。あれは春の陽だまりみたいにまったりした作品でした。最高でした。今回はゲストですが、カルロスアギーレ、いらっしゃるじゃないですか~。南米サウンド満開のギター作品です。爽やかなサンバジャズサウンドがTHE・春!という感じで好きです。なんだかヨタムは春のイメージが強いんですよね。オープンテラスのカフェでカフェオレをゆっくり味わうようなシチュエーションが浮かびます。





Eddie Lockjaw Davis / Cookin’ with Jaws and the Queen: The Legendary Prestige Cookbook Albums (4CD) / JazzTOKYO 西川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008585087


エディ・ロックジョウ・デイビス生誕100周年を記念してCONCORDが企画した4枚組のCOOKBOOK集。LPに収録されていないボーナス音源、別テイクも含めて新たにリマスターされている。現在OJCが廃盤の為、4作品まとめて聴けるのは貴重だ。シャーリー・スコットとの演奏はスタンリー・タレンタインとのコンビとはまた一味違ったアーシーでパワフル、コッテリ感がたっぷりと味わえる。リズム&ブルース、ソウルジャズ作品として、偶に聴きたくなる作品です。





ルネ・トーマ / トーマス・ペルツァー・リミテッド / JazzTOKYO 西川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245766953


TIMELESS関連の音源を中心としたレーベル作品の復刻を続けるウルトラヴァイブ/ソリッドレコードからルネ・トーマ・ファンには嬉しいTPLがCD化(恐らく世界初)。トーマと同じくベルギー出身のサックス・レジェンド、ジャック・ペルツァーとハード・バップを繰り広げる。1曲目、バリー・ハリスの「ロリータ」はコチコチの固いピッキングが特徴的でペルツァーの奏でる音色、曲と演奏の良さも相まってこの作品の中でも特に印象的なナンバーだ。オランダのピアニスト、レイン・デ・グラフ、ハン・ベニンク他を迎えフリーやジャズロックが席捲した時代にあって正統的な演奏が楽しめるユーロ作品の一枚だ。





Keith Jarrett / Book Of Ways / JazzTOKYO 西川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008613214


キース・ジャレットの作品はどの作品もよく聴きますが特にソロ作品で「Dark Interval」と並んで好きな作品が「Book Of Ways」です。再発にあたりペーパースリーヴ仕様でタイトル文字はゴールド・エンボス加工されてます。音は新たにリマスターされたような感じには聴こえませんでした。この作品はハープシコードでのインプロヴィゼーションですがリュートにも近い響きもあり、またテーマとなるメロディーは中東からギリシャあたりまでの民族音楽、また中世の音楽のようにも聴こえます。瞑想的な曲や、中には「トランス状態に陥るような」といったら大袈裟かもしれませんが、キースらしいグルービーな演奏にも惚れ惚れ聴き入ってしまうのです。





Love Cry Want / Love Cry Want (LP/GREEN CLEAR VINYL) / JazzTOKYO 西川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008643568


ラリー・ヤング(org)の参加作品で「えぇーー、こんなの有ったのぉー!!!」と驚いた「LOVE CRY WANT」CD発売から20数年が経ち、今この時代に相応しい嬉しいLPの再発です。(2010年ひっそりとWEB限定で発売されていたようですが)ジャケットのデザインもCDと変わり内容はスペーシーな雰囲気とノイズ・アヴァン、フリー、サイケとごった煮感がなんとも70年代らしい時代の雰囲気を表しています。エレクトリック・マイルスやサン・ラあたりが好みな方なら受け入れられるはず。8ページのブックレット付、ブラック・ヴァイナル4,950円とカラーヴァイナル6,160円の2種限定発売となります。





Francesca Bertazzo Hart / Playing With Jimmy / JazzTOKYO 丸山

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008619776


名ギタリストにして歌手でもある、伊のフランチェスカ・ベルタッツォ・ハート(vo, g) によるカリゴラからの3作目はジミー・ヴァン・ヒューゼンへのトリビュート!  以前から制作を構想していたという本ソングブックですが「ジミーと遊ぶ」とのタイトル通りと言うべきか、全編に渡って単なるスタンダード曲集に終わらない、意表を突くような展開やアレンジ、創意工夫の凝らされた仕上がりとなっています。名曲群に紛れてフランチェスカ自身が捧げたオリジナル楽曲も2曲収録。ヴォーカルの巧みさがしみじみと伝わってくる一枚です。





Black Artists Group / In Paris, Aries 1973 (LP) / JazzTOKYO 山本

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008630643


そういえば再発もそんなに見なくなったタイミングでの再プレス。ジャケ、内容ともに最高、そしてレア。Charles Bobo Shaw(Drums,Percussion)の参加が効いておりグループとして音楽の密度を高めている印象で、フリー・ジャズと一口には言い難い音楽になっています。言わずもがなですが、この人は他のリーダー作、参加作も含めて内容良いタイトル多いですよね。





Emil Brandqvist / Layers Of Life / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245768572


スウェーデンのドラマー、エミル・ブランクヴィスト率いるコンテンポラリー・トリオ作品。'20年の『Entering The Woods』と同様、ラーシュ・ヤンソンと、ECMから作品をリリースするアンデルシュ・ヨルミンに学んだという北欧を代表するフィンランドのピアニスト、トゥーマス・トゥルーネンが参加。北欧作品らしいナチュラルで美しいメロディにベースとドラムが優しく寄り添っているが、時折登場するキーボードはその世界観に馴染みつつもいいスパイスになっていて面白い。彼らの生み出す音はとても映像・絵画的で、トゥルーネンのピアノはちいさな桜の花びらや光の粒がちらちらと舞っているような美しさがあり、#7「Above The Stars」では、パーカッションの音は瞬く星をイメージして鳴らされているんだなと感じる。冬のさみしさを纏いつつも訪れたちいさな春を音にして閉じ込めたような作品。





Bara Gisladottir / Silva / JazzTOKYO 松本

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245768411


最近自分の中でアイスランドの音楽がブーム。そんな時に出会ったアイスランドの作曲家、コントラバス奏者Bára Gísladóttir。下向きに成長する森をイメージして作られた加工コントラバスのための作品だそうで、始まった瞬間、地響きのようなコントラバスの深くて重い低音が響き、まるで生き物のように動く音に心臓がどきどきする。多重録音で、コントラバスのハーモニーにノイズや空気の音のようなものが重なってくる。そして、それらがすべてコントラバスから生まれた音だということにびっくりする。様々な加工を施すことで、一つの楽器から広がりがある空間が生み出されていて感動。暗く陰湿で何かが迫ってくるようなサウンドは、映画『ジョーカー』の劇伴でゴールデン・グローブ賞を受賞した、同じくアイスランドの女性作曲家でチェリストのヒドゥル・グドナドッティルと重なり合うよう。





高柳昌行 / Guitar Expression~Profile of Jojo / 吉祥寺ジャズ館 立石
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008609684


ビクター<日本のジャズ>シリーズより高柳昌行の激レア盤が待望のレコード再発です。オリジナルを完全再現したこだわりのジャケ&帯が嬉しい。トリスターノ一派の高柳が強力なバックを従えて聞かす極上のモダンは、「解体的交感」などで知られる強烈なフリー演奏とは違う極上の空気感を味わえます。高柳のモダンジャズアルバムだと他に代表的なものはThree Blind Miceから発売されている「銀巴里セッション(TBM-9)」、「Cool Jojo(TBM5018)」などがありますが、「Guitar Expression~Profile of Jojo」は前2つの作品とはまた異なった手法の演奏に聴こえ、全体を通して感じる不気味な音の強弱や、シンコペーション、ミュート("愚かなり我が心"の1分過ぎの弾き始めが個人的にツボです)等が洗練された格好良さを生み出していて、何度も聴き直してしまう魅力が詰まりに詰まっています。メンバーは原田政長(b)、山崎弘(ds)、渋谷毅(p, arr)が参加。なんとなく硬い雰囲気の演奏が緊張感を持たせていて、細かいところまで聴き込みたくなる高柳昌行の大名盤です。





HIJAZ / HIJAZ + STRINGS  / 吉祥寺ジャズ館 中村
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008634656


今年の1月にカンパニー社から発売された『岡島豊樹著 / 地中海ジャズの歴史と音盤浴案内』が非常に面白かったです。母親の仕事の影響で幼い頃から世界中の民俗音楽に囲まれて育ったということもあり、ページのあちこちから聴こえてくる様々な楽器の音色や不思議なリズムを懐かしさ半分驚き半分で読んでいました。そんな折にアラビア音楽の音階や馴染みのない楽器編成、そしてギリシャの歌謡曲とも演歌とも言われるレンベティカの影響を色濃く感じる、何ともスパイシーなアルバムがベルギーから届きました。オリエンタルのメロディーと即興ジャズを融合させた6人組のグループ、HIJAZ(ヒジャズ)の3枚目となるアルバムです。ルーツもジャンルも異なる環境で活動してきたミュージシャンたちが、自分のアイデンティティーに誇りを持ちながら異国の地ベルギーで一つの音楽を作り上げた姿勢がそのまんま音楽になったというか、人の移動=文化の移動ということを改めて認識させられました。コンテンポラリー・ジャズ・ファンはもちろん、ワールド・ミュージック・ファンにも聴いて頂きたい美しい作品です。





横田年昭 / 原始共同体(LP)/ 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 板橋
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245767607


オリジナル盤は非常に稀少で、10年ほど前にThink!からリリースされた再発盤も今やプレミア化しており、今回のリリースは非常に嬉しい限りです。
内容は既に周知の方も多いと思われますが、帯に記載があるとおり、ニュー・ロックとアフリカン・リズムが結合した強烈な作品。
呪術的なイントロから一転して怒涛のリズムが繰り出される1曲目から、その迫力に打ちのめされ、初めてこの作品を聴いたときの衝撃を今でも忘れられません。
ジャズの範疇だけでは言い尽くせない唯一無二の音楽がここにあります。





MICHEL PETRUCCIANI / Michel Petrucciani: The Montreux Years / 新宿ジャズ館 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008639434


チック、マクラフリン、モンティ・アレキサンダーらの音源をリリースしてきた『MONTREUX YEARS』の最新作はペトルチアーニです。昨年リリースされた教会でのソロ・ピアノに続く発掘音源で、90,93,96,98年のモントルー音源を収録しています。M3以外は公式では初出でしょう。バラエティ豊かな編成でペトルチアーニの快演を大いに楽しんでいただけます。ミロスラフ・ヴィトウスとのデュオあたりはファンの目を引く組み合わせではないでしょうか。なお、商品案内にありませんが『MONTREUX YEARS』のCDはすべてMQA-CDです。高音質派の方にもぜひ目を向けていただきたいですね。





DIETRICHS / Catch The Leaves / 新宿ジャズ館 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008663205


70年代末から活動するNYのノイズ/フリー・ジャズの即興トリオBorbetomagus(ボルビトマグース)、そのサックス奏者ドン・ディートリックと娘のチェロ奏者カミール・ディートリックのデュオによるライブ盤です。2人は2017年にラッセ・マーハウグのPica Diskから最初のアルバムをリリース。2021年にも25枚限定のレコードをリリースしており、本作は3枚目にあたります。歪んでザラザラとした轟音が容赦なく耳をつんざきます。過激でアナーキーな即興演奏は一部の好事家の方の胸を射止めるでしょう。





Season 2(LP) / WILDFLOWER(UK JAZZ) ワイルド・フラワー / 渋谷ジャズ/レアグルーヴ館 小谷
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008089679


UK発スピリチュアル・ジャズバンドの良作が再入荷。オリジナル盤は入手困難となっており、高騰化していたところの嬉しい再入荷。The SmileやSons of Kemetでも活躍するTom Skinnerの緩急自在なドラムを下地に、土着的なグルーヴが心地よい作品。





BILL EVANS / Treasures- Solo, Trio and Orchestra Recordings from Denmark (1965-1969) / 新宿ジャズ館 有馬
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008628333


まず、公式音源としてはほとんど残されていないぺデルセンとの共演。
ぺデルセン特有の水流のような旋律の導線が、オルタナティブにエヴァンスの名曲たちを彩っています。
そしてオーケストラではそれまでのクラウス・オガーマン指揮の作品や、その後のジョージ・ラッセルとのコラボレートとは違い、構成にエヴァンス主導によるアプローチを感じます。世界観の混線がないオーケストラとしてはファンにとって貴重。
どちらもレアな巡り合わせで、本当の意味で貴重音源と言える素晴らしいパッケージです。





RALPH TOWNER / At First Light (LP) / 横浜関内ジャズ館 山田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008626775


ラルフ・タウナーの音楽は完璧すぎて、いやECM然としすぎてと形容したほうがいいだろうか、少々近寄りがたいイメージがあった。しかし今作は少し試聴しただけですんなり入ってきた。半世紀もの間ECMから作品を発表し続けていたにも関わらず、50周年記念作品でようやくハマったのはなぜだろう。御年83歳という年齢のせいか(もっと音数が多くテクニカルな側面もあるプレイヤーと思っていた)、透明感抜群のトーン、録音のせいか、あるいは選曲の妙か。「出会った時が新譜」だと思うので、改めて過去作も聴きなおそうと強く思った。





PHAROAH SANDERS / Live At Fabrik, Hamburg, 1980 (2LP) / 横浜関内ジャズ館 山田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245769027



ファラオ・サンダースの未発表音源である。1980年の名盤『Journey To The One』のリリースと同年6月に録音された音源ということもあって、82年リリースの『Live...』と比較すると、かなりアルバムの世界観に忠実な構成と温度感で演奏されており、非常に好ましい。改めてあのライヴ盤は躁状態というか、ノリに乗ってたのだなということにも気付けるだろう。"Greetings To Idris"のメロウネスとスピリチュアリティにあふれた美しさ、バラード"It's Easy To Remember"も極上の仕上がりだ。





SVEN-AKE JOHANSSON  / Das Marschorchester / 商品部 三橋

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008624764


シャッグスも青ざめるであろう激ユル・ドラムソロアルバムやトラクターのエンジン音だけ、海洋天気予報だけを収録した作品など恐るべし怪作を多数発表するスヴェン=アケ・ヨハンソンが自身の誕生パーティーに結成させたマーチングバンドの演奏を収録した謎な1枚。しかもアナログ盤2枚組。
特別盛り上がりもしないホームパーティーのド緩い雰囲気が立ち込めていますが、アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハも参加という本気のメンバーが集結しています。
ご本人曰く「リズムを刻む」ことが重要なようで、大人数が同じリズムを共有/演奏することで浮かび上がる社会性やある種の暴力性など、音が鳴ることでその場でどのようなことが起こる/起きているのかを実験しているようにも聴こえます。無意識のうちに形作ってしまう"らしさ"や"形"といったものに対して常に懐疑的であるようにも感じ、彼の視点の鋭さは今の日本の空気感にも切り込んでくるのではないでしょうか。

なんて言ってみたもののただの勘違いかもしれません。





Legacy (LP) / EMILE LONDONIEN / 商品部 池田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008624121


名前に"LONDON"と入っているし、UKジャズ括りかなと聴いていたらフランス発のバンドで驚いたストラスブール音楽院出身の3名で結成されたエミール・ロンドニアン。音もめちゃくちゃぽいな~と思っていたら、やはり影響を受けているらしく”ご意見番”ジャイルズ・ピーターソンも「彼らはUKジャズシーンの過去10~15年を祝うような存在」と語るのも納得。バンド名の由来になっているサックス奏者エミール・パリジャンやアントワーヌ・ベルジューが参加しており、このメンツでUKジャズを踏襲した作品が出来たと考えると、UKジャズも新たなフェーズに突入した感があってアツいです。フランスのデュオNikitch&Kuna Mazeの片割れKuna Mazeがフィーチャリングで参加している「House Party」や「Make It Easy」はクラブ・ミュージック好きにもおすすめ。体感では1年の1/3が夏のようになりつつある近年、これからの季節に合う清涼感もあり長く聴き続けられそうなアルバムです。ヴェイパーウェイヴ感あるジャケットも良◎