ディスクユニオン ジャズスタッフ 2月度レコメンド・ディスク

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2024.02.29

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ディスクユニオンのジャズ専門館スタッフが新譜の中で一押ししたいオススメ作品をご紹介!
今月リリースされた最新新譜はもちろん、改めて聴いたら良かった準新譜もコッソリと掲載。
最新新譜カタログ的にも、魅力ある作品の発掘的意味合いでも是非ご一読ください!





SUN RA (SUN RA ARKESTRA) / Paradiso Amsterdam 1970(2LP+BOOKLET) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008770304


1970年11月18日(実際は10月下旬か?)アムステルダム公演の未発表音源盤で、2つの傑作ライブ盤と同時期のパフォーマンスにあたる。1つは同年8月3&5日フランス録音の「Nuits De La Fondation Maeght」Vol.1&2、もう1つは同年10月17日+11月7日西ドイツ録音の「It's After The End Of The World(邦題:世界の終焉)」だ。
本格的にモーグ・シンセサイザーを導入した(時にはモーグで嵐の様なノイズを炸裂させた)時期で、ヨーロッパ・ツアー前にアーケストラを特訓したこともあり、アーケストラが進化し充実した狂演の饗宴を繰り広げている。
500枚限定盤なので購入はお早めに!





ギター・マガジン編集部 / ジャズギター名演選 / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008811295


ジャズギター名手達のコピー譜です。
チャーリー・クリスチャン、ジャンゴ・ラインハルト、タル・ファーロウ、バーニー・ケッセル、グラント・グリーン、ウェス・モンゴメリー、ジム・ホール、ジョン・スコフィールド、カート・ローゼンウィンケル、ジョナサン・クライスバーグ、ジュリアン・ラージ、ジョー・パス、テッド・グリーンのコピー譜がタブ譜と共に掲載されています。
個人的にはAll The Things You Areのコピー譜がタル・ファーロウ(←好き!!)、ジム・ホール、ジョー・パスの3人分掲載されているのが非常に興味深いです。
他のジャズ楽器学習者にも大いに参考になる内容ではないでしょうか?





BALLISTER / Smash and Grab(CD) / 新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008796327


LPでも発売
フリージャズ・トリオ

【Dave Rempis(as, ts,bs)
Fred Lonberg-Holm(cello,electronics)
Paal Nilssen-Love(ds,per)】。
ここではチェロはソリッドギター的な音になってる場面が大半なので、サックス/ギター/ドラムのフリージャズトリオとして聴いても違和感がない。個人的にはジャケットデザインと収録内容がとても一致していて、ジャケ買い成功率高いと思います(保証は出来ません)
快楽原則にのっとった肉体派の音の応酬が堪りません。





MASTER OOGWAY / A Lot of Music About Everything(CD) /新宿ジャズ館 木村

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008796602


LPでも発売
ノルウェーのフリージャズユニット

【Lauritz Lyster Skeidsvoll(ts,ss)/Hävard Nordberg Funderud(g)/Karl Erik E. Horndalsveen(b)/Martin Mellem(ds)】
まず1曲目の色彩豊かな圧巻のアンサンブルが凄い。Lauritz Lyster Skeidsvollのテナーとソプラノのオーバーダブによる疑似2管クインテットなのでこのユニットの本来の音ではないけれど凄いんだからしょうがない。2曲目以降はカルテットでインプロ強度の強い聞き応えのある比較的短めのテイクが続いていく。コルトレーン・フォロアー・フリージャズ・サックス×ラウド・ソリッド・ギター×インダストリアル・ノイズと言えばいいか… (説明力不足)ドラムが重いのもいいですね。





Kurt Rosenwinkel / A Lovesome Thing / JazzTOKYO 羽根、JazzTOKYO 逆瀬川
(輸入)https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008744287

(国内)https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008747210


故ジェリ・アレンとのデュオによる何気ないライブ音源をしみじみ聴きながら、カートの人気と評価についてぼんやり考えた。なにしろ”現代ジャズギターの皇帝”なのだ。他に皇帝と呼ばれた有名人といえば、ベッケンバウアーかシューマッハくらいなものだ。クラシックの帝王、ロックやポップスのキング、ロックンローラーのアヤトラなら知っているが、皇帝は寡聞にして知らない。マイルスだって帝王止まりなのに、ルックスや名前といった属性を加味しても、世間での知名度と比較すれば、尋常ではないジャズ・サークル内での持ち上げられ様だ。しかし私はこの厨二的愛称を断固支持する。むしろ90年代以降のジャズファンやメディアは内に篭らず、もっと外に向けて大袈裟に騒いでも良かったのだ。否、今からでもそうすべきなのだ。そのぐらい稀有な表現者だと世間一般に知らしめよう。恥ずかしがらずに皇帝と呼ぼう。我々は伯爵や侯爵や大統領が闊歩していたジャズの黄金時代を羨む必要は無いのだと。そのように言えるのはカートが数々のレジェンドと同様に一聴して彼と分かる個性を有しており、且つ多くのリスナーを魅了しているからだ。それは多重録音を駆使したスタジオ作でも、本作のようなオーソドックスなデュオ・ライブであっても同様で、パウエル的天才というより、モンク的天才だと再認識している。(JazzTOKYO 羽根)


NYのライブハウスで共演した、なんてことはあったかもしれないが、ジェリ・アレンとカート・ローゼンウィンケルが共演した公式な録音は、調べた限りこれを除いて存在しないようだ。2017年の死後も多くのミュージシャンからリスペクトされ存在感を増すジェリと、トップ・ギタリストの座に君臨し続ける現代ジャズ・ギターの皇帝カート、意外な組み合わせの二人は2012年9月のパリで邂逅。のちにジェリがスタジオ録音を熱望した(そして終ぞ叶うことはなかったのだが)という、そのたった一度の共演が記録されていたのは奇跡というほかない。ジェリのエレガンス、思慮深く調和的なカート。現代のマエストロと言うべき二人の歌心があふれ出す至高のインタープレイ。共演歴などなくとも、互いの音楽的な信頼のもとに築かれた演奏は、ジャズという即興を軸とした音楽のもっともピュアな部分を表現しているようにさえ思える。録音年の2012年は奇しくもビル・エヴァンス&ジム・ホール『Undercurrent』から50年という年。50年前とは技術もスタイルも何もかも違うから単純な比較など出来ようもないが、畏れ多くも「現代の"Undercurrent"」と言いたくなる。これからの50年聴き継がれていくべき、ジャズの歴史に残る名演。(JazzTOKYO 逆瀬川)





Kris Davis / Diatom Ribbons Live At The Village Vanguard / JazzTOKYO 久保田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008725352


2019年にリリースした『Diatom Ribbons』がNYタイムズ紙とNPRジャズ批評家投票で年間首位を獲るなど極めて高い評価を受けたカナダ出身ピアニストの最新作です。アルバム・タイトルだった"Diatom Ribbons"は今ではプロジェクト名になっていて、核となるクリス、テリ・リン・キャリントン、ヴァル・ジーンティーの女性3名に加え、ジュリアン・ラージ、トレヴァー・ダンが本作に参加しました。クリスの複雑な楽曲アレンジ、ヴァル・ジーンティーの怪しいターンテーブル、ジュリアン・ラージの卓抜なソロが交錯する秀逸なライブ盤です。入荷がすっかり遅れてしまいましたが、2023年のベストに本作を挙げる方も多かったですね。
お薦めはDisc1,2に跨って収録されている組曲「Bird Suite」。元々はパーカー生誕100周年を記念して作られた曲で、コロナ禍で流れたマハンサッパらとのライブで披露される予定でした。晴れ晴れとしたポスト・バップな楽曲にメシアンやポール・ブレイの声、鳥のさえずりが組み合わさった癖の強いPart2はこのライブのハイライトでしょう。クリスの難しい楽曲でソロを弾くジュリアン・ラージがまた新鮮で瞠目しました。ヴィレッジ・ヴァンガードという場所にふさわしいジャズの坩堝を体現したアルバムだと思います。





Laufey / Everything I Know About Love / JazzTOKYO 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008775802


ノラ・ジョーンズとのコラボでますます人気と知名度が加速するアイスランド出身の新世代SSWレイヴェイの1stがCDになりました。2ndが出た2023年10月の段階で「誰ですか」「なんて読むんですか」と尋ねられてばかりだったのが噓のようにその名は人口に膾炙しています。2020年代のジャズ・ヴォーカル界を席巻したのはサマラ・ジョイとレイヴェイだった、そう語られる未来も遠くないかもしれません。
推薦曲を挙げるのが野暮に思えるほど秀逸な楽曲が詰め込まれていますので、ぜひ頭から聴いてみてください。ただ、個人的には8が一番好きです。「完璧な世界にいたなら、私はあなたに会うことはなかったでしょう」という印象的な歌い出しで始まるこの曲は、彼女が愛するチェットをモチーフにしています。一栄一落の人生を歩んだチェットへの深い思い入れとレイヴェイのロマンチシズムが交錯する楽曲は何度聴いても素晴らしいです。
ジャズとポップスを融合させる卓抜なソングライティングが彼女の魅力である一方で、2ndに収録された「ミスティ」を聴いても明らかなように、純粋にジャズ・ヴォーカリストとしても彼女は稀有な存在です。願わくばいつかスタンダード集を出して古参のジャズ・ヴォーカル・ファンを唸らせ、虜にしてあげてほしいですね。






Mike LeDonne / Wonderful / JazzTOKYO 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008788180


アメリカでは毎年7月が障碍プライド月間と定められ各地で障碍者コミュニティのための祭典が催されます。NYでも2015年から毎年パレードが行われているのですが、その発起人がマイク・ルドーンです。パレードは彼の娘メアリーのように障碍を持つ多様な人びとの美しさを祝福し、彼らに楽しい一日を過ごしてもらうことを願って画策されました。その想いはゴスペル・コーラスをフィーチャーした高揚感のある本作にも投影されています。メアリーをジャケットに、家族への愛情に溢れる1枚です。
ヴィンセント・ハーリングがゲスト参加したリード曲の1が一番のお薦めです。しかし、エリック・アレキサンダー、ピーター・バーンスタインのソロを随所で楽しめる点がやはり大いに魅力ですね。





Gui Duvignau / Live In Red Hook / JazzTOKYO 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008773787


メロディアスな楽曲群とジェイコブ・サックス(P)の闊達なインプロが美しい現代ピアノトリオ秀作。レギュラー・トリオでないにも関わらず3人の阿吽の呼吸が素晴らしい、ブルックリンの実力派が集った完成度の高いライブです。フリーな展開をみせる(2)や空間に余白のある(3)も良いのですが、白眉は(1)(6)だと思います。ネイサン・エルマン・ベル(DS)も巧いですね。ブルックリン北西地区レッド・フックのアートスペースで録音されていて、ドラムの残響が心地良いです。
リーダーのギー・デュヴィノーは仏生まれブラジル育ちの国際色豊かなベーシスト。ビルフリや師ロン・カーターも参加したバーデン・パウエル・トリビュートの前作は話題作でした。





John Coltrane / Live In France July 27/28 1965 The Complete Concerts / JazzTOKYO 久保田
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008777843


前日に行った「至上の愛」のライブ演奏の出来に不満だったコルトレーンは十八番を中心にしつつ当時まだ未発表だった「アセンション」を演奏しました。このライブ盤のポイントがここです。「アセンション」のライブ演奏はこのフランスでの2日間しかありませんし、どフリーなスタジオ版とはうってかわった黄金カルテットによる演奏が聴けます。崩壊まで半年を切った4人による熱いパフォーマンスをご堪能ください。お薦めはDISC1の(2)(3)。音質もDISC1は中の上です。
なお、この2日間の音源は過去幾度とリリースされてきていますが、2009年にGambitからコンプリート盤が出ました。これはその再発に近しいCDです。お持ちでない方はぜひ。





Ethan Iverson / Technichally Acceptable / JazzTOKYO 逆瀬川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008775776


実はイーサン・アイヴァーソンはおろかバッド・プラスもまともに聴いてこなかったのだ。たった今聴きかじった程度での感想だが、彼の演奏はバッド・プラスの頃から一貫して、ソロやアドリブよりも、メロディとアレンジを探求するものだったのではないかと思う。それはこの新作が、自身より若い世代を迎えながらもクラシカルな雰囲気になっていることからも見て取れる。前作はグレナディア、ディジョネットという巨匠の味わいも楽しめるトリオだったが、今作はフラットな温度感で歴史を再訪。ラストにはブルーノートの歴史でも初というピアノソナタを収録。いいメロディをシンプルに伝える、彼のスタイルの到達点と言ってもいいだろう。後ろ向きなように見えて、オーセンティックなスタイルの探求、というこの数年のトレンドも押さえている。いやむしろトレンドがアイヴァーソンのスタイルに近づいてきたと言うべきか。





Ulysses Owens Jr. & Generation Y / A New Beat / JazzTOKYO 逆瀬川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008788186


ユリシス・オーウェンスJr.の新作は、彼よりも下の世代、20〜30代の若手が集結したプロジェクト。寺久保エレナやBenny Benack III、Anthony Harveyといくつか見覚えのある名前もあるが、そのほとんどは顔も名前も演奏も未知のミュージシャンばかり。とはいえすでに評価を受けシーンで頭角を表しつつある面々で、彼らのいずれ劣らぬイキのいい演奏を、ストレートアヘッドなセッションで活躍してきたユリシスのドラムが強力にバックアップ。ライヴ録音ということもあり、他の作品ではなかなか耳にできない若い勢いと、それを後押しするユリシスがダイナミックで素晴らしい。何よりみんなが伸び伸びと演奏しているのが嬉しいじゃないですか。ジャズの本質が未来にあるのなら、未来を予感させてくれるようなこういう作品こそ、ジャズファンに届いてほしいのである。





Zvonimir Sestak Groove Assembly / In The Pocket / JazzTOKYO 逆瀬川
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008777503


ド頭からイキのいいドラムと太いテナーに心を鷲掴みにされるこちらはクロアチアの若手ベーシストによる'21年デビュー作。オーストリアで音楽教育を受け、'14年には欧州放送連合のユーロラジオ・ジャズ・オーケストラにも参加、クロアチア国内の音楽賞も受賞するなど高い評価を受けてきたようだ。主だったメンバーもクロアチアの若手〜中堅世代、調べる限り国内での活動が多いようで、もっとシーンに出てきてもいいのにな、なんて思わされる演奏ばかり。その演奏を光らせるオリジナル曲やアレンジも秀逸だ。ピアノのJoe Kaplowitzのみ'06年からクロアチアを拠点に活動しているアメリカ人で、どこか"ユーロ・ジャズ"とひと口に括れないセンスが感じ取れるのは彼の存在あってのものかもしれない。クロアチア・ジャズ、どれだけ豊穣なシーンがあるのだろう。





Will Vinson / Trio Grande: Urban Myth / JazzTOKYO 菅原
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008747211


英国出身のウィル・ヴィンソン、イスラエル出身ギラッド・ヘクセルマン、そしてアントニオ・サンチェスに代わり、前作でマスタリングを担ったニーボディのネイト・ウッドが参加。当然単なるピンチ・ヒッターなどではなく、2022年からこの編成でのライヴを継続してきており(YouTubeでも全編視聴可能)、元からこうだったかと一瞬誤認するくらいにはすでにトリオとして充分に円熟している。なんといってもネイト・ウッドの存在感が凄まじい。冒頭20秒間の自己紹介的ドラムソロだけでガッチリ持っていかれ、姿は見えないのに、エレベを抱えたままスティックを振るうなんとも意味不明な光景が目に浮かぶようである。質の高いオリジナル曲はもちろんのこと、ロイ・ハーグローヴ作曲「Strasbourg St. Denis」の斬新なアレンジも披露。前作との聴き比べも捗り、聴きごたえたっぷりの高密度な作品に仕上がっている。





オースティン・ペラルタ / エンドレス・プラネッツ (Deluxe Edition) / JazzTOKYO 菅原
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245776942

AUSTIN PERALTA / Endless Planets (LP/Deluxe Edition Vinyl) / 新宿ジャズ館 荒川

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008756926


〈ブレインフィーダー〉設立15周年という節目にこの『エンドレス・プラネッツ』という作品が再び提示されたことは、特に若い世代にとっては喜ばしいサプライズである。私を含め、Z世代以降の現代ジャズ・リスナー(が実際どれだけいるのかは知らないが)は往々にして、ゼロ年代〜テン年代前半のシーンをリアルタイムで体験していないからだ(菅原調べ)。逆に10歳そこそこで現代ジャズを聴き漁っている子供がいたら、凄い。怖い。おれなんてボカロしか聴いてなかったのに……。そんなわけで若い世代、あるいは怠惰で不勉強で言い訳がましい私のような人間にとってこうしたリイシューは、聴き損じていた傑作をしれっと発見する契機としてめちゃくちゃ有難いのである。(JazzTOKYO 菅原)


改めて聴いても、いま現在このレコードのフォロワーが存在しない、特異な作品であることに驚く。ただわかるのは、当時これがBRAINFEEDERからリリースされる必然があった作品だということだ。打点の多いリズムセクション、ローエンドを前に押し出したプロダクションは確かに『LOS ANGELS』~『COSMOGRAMMA』期のフライング・ロータスに連なるものである(ミックスはオースティン・ペラルタ自身も行っている)。まだ今ほどスピリチュアル・ジャズがクローズアップされていない時期、オリエンタルなムードも取り入れているし、本盤のデモを聴いてリリースを提案したスティーヴ・エリソンの気持ちもよくわかるというものだ。事実上リード曲の"Capricornus"、5で拍をとっているが、表と裏がひっくり返り続けるようなピアノのリフの強烈さといったらない。テーマのメロディーも非常に奇妙だ。たらればの話もついつい浮かんでしまうが、とかく、「やべー」ピアニストのアルバムである。タイトル通り、膨張する宇宙の果てのようだ。(新宿ジャズ館 荒川)





Peter Erskine / Bernstein In Vienna / JazzTOKYO 東舘
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008756782


ピーター・アースキン。雄弁なスティーヴ・ガッドとも、軽快なオマー・ハキムとも、奔放なジャック・ディジョネットとも違う彼のプレイスタイルを一言で表すならば、それは「堅実」ではないだろうか。無数の(それこそスウィングからフュージョン、フリーまでをも包摂する)プレイの引き出しを、共演者に合わせて上品に開け閉めしながら、常に手堅く最適なドラミングを繰り広げ、着実に演奏を高い水準に導いていく…理想的なジャズ・ドラマーの一つの完成形といえる。彼の美学は、例えばM7“Some Other Time”で、ダニー・グリセットのピアノにぴったり張り付き、多彩な音色で曲を飾り付けながら、あくまで脇役に徹しているところからも窺えよう。グリセットを音楽監督に迎え、ウィーンのジャズ・ミュージシャンと共演したこのアルバム、アースキンはダントツでベテランなのだが、やはりジャズ・ドラマーとしての矜持を失うことなく、背後から堅実に、全体をよく聴きながら、素晴らしきジャズの造形に励んでいる。





Sebastian Haugen / Fremtidsfabler / JazzTOKYO 東舘
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008778311


ウッドベースのピツィカートほど、樹木そのものを感じさせる音はない。そこには潤いがあり、生命の深い呼吸がある。ノルウェーのベーシスト、セバスチャン・ホーガンは、この2ndアルバムにて、全8曲中6曲でウッドベースを演奏している。その豊かな響きを存分に聴くことができるのが、ストリングスを背景に美しいメロディーが奏されるM3〈Takksom(感謝)〉だ。同じく暖かな雰囲気をもつM8〈William〉では、冒頭に子どもの声が聞こえる。スムース・ジャズ風のM2〈Jeff〉も同じく人の名前だろうか。これらのことから、私は、このアルバムがホーガンの子どもたち、もしくは家族に捧げられているのではないかと推測する。それすなわち、自身を形作ったこれまでの命、そしてこれからの命への賛歌——生命、自然への雅歌だ。『未来の寓話』という名前を持ったこのアルバムには、そんな大いなる自然への感興、「感謝」が詰まっている。





Vijay Iyer / Compassion / JazzTOKYO 廣井
(輸入)https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008788111

(国内)https://diskunion.net/jazz/ct/detail/XAT-1245777957



ヴィジェイ・アイヤー(p)の〈ECM〉からは2作目となるアルバム。パーソネルは『Uneasy』の時と同じリンダ・メイ・ハン・オー(double-b)とタイショーン・ソーリー(ds)。彼はニューヨーク生まれのインド系アメリカ人だ。大学で教鞭をとっている側面も持ち合わせている。さて、本作はタイトル通り"compassion (思いやり)"という大きなテーマが根底にある。『Uneasy』のテーマ(不安)とも通底している気がする。日本語でも英語でも、「思いやり」の類義語はいくつかある(共感・同情・慈悲・哀れみ)が、特に「感情移入(エンパシー)」と「思いやり(シンパシー)」は似て非なるものである。ここには、当事者意識の有無が境界線に存在するものと思われる。もう一つ大きな要素として、"本当の"コミュニケーションをとるということが挙げられる。音楽を制作したり消費したりする手段は時代とともに大きな変化を遂げている。アーティストの本意とリスナーの心・耳をつなぐ距離は近くなったが、混乱を極める現代のため、解釈の余地は狭まり。扱うべき事象が多くなった。ヴィジェイは・アイヤーは、その中でも、音楽を通じて、私たちに内面から変わるよう促している。最後に、TV番組『映像の世紀』でヴェルヴェット・アンダーグラウンドが取り上げられていた回で、チェコスロバキア大統領のヴァーツラフ・ハヴェル氏が言っていた言葉を引用して終わりたいと思う。「音楽だけでは世界は変わりません。しかし人々の魂を呼び覚ますものとして、音楽は世界を変えることに大きく貢献できるのです。」





Flash Pig / The Mood For Love / JazzTOKYO 廣井
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008785620


パリを拠点に活動するカルテット、フラッシュ・ピッグによる5thアルバム。今回はタイトルにもある通り、ウォン・カーウァイ監督の映画『花様年華(英題:In the Mood for Love)』のサウンドトラックを大胆にカバーしている。本作にはテーマ曲の他に、梅林茂の「夢二のテーマ」やナット・キング・コールによる「キサス・キサス・キサス」などのカバーが収録されている。フレンチ・ジャズの歴史に関しては、ぜひ宇田川悟氏の著書『パリの空の下ジャズは流れる』をご覧いただきたい。フランスのシネジャズという観点から見ても、ルイ・マル監督の映画『死刑台のエレベーター』(1958)を筆頭に、映画とジャズは一時期密接な関係にあった。ほとんど映画の話になってしまったが、フラッシュ・ピッグによる最新作は、そんな映画好きから音楽好きまで、十分に楽しめる作品に仕上がっている。





デヴィッド・ブライアント / コート・オブ・アームズ(紋章) / JazzTOKYO 赤尾
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008769934


日本を拠点に活動する多国籍ジャズメンによる最先端ジャズと呼ぶしかない音楽。アメリカ発祥のジャズは世界各地で異種交配の100年を経て無国籍音楽となったが、ひときわ熱くエモーショナルなのは日本ジャズと感じるのは地元民の贔屓だろうか。黄金時代のモダンジャズレコードを収集する層には今ひとつアピールしない日本発作品だが、斬新で刺激的な音楽を求めるライブ愛好者にはぜひ聴いてほしい。クラブジャズ、ドラムンベース、アンビエント、エレクトロニカなどを通過したポスト00年代スタイルで、浮遊感がありながら切れ味鋭いアドリブはスリリングで退屈しない。2曲参加のermhoiのヴォーカルがすばらしい。Answer To Rememberや"竜とそばかすの姫"OSTで耳にしていたようだ。近年のジャズディスクは1回聴いた後は忘れてしまうものが多いが、これは繰り返し聴きたくなる、ライブでも観たくなる1枚だ。





AROOJ AFTAB & VIJAY IYER & SHAHZAD ISMAILY / LOVE IN EXILE / 新宿ジャズ館 四浦
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008624750


先日に発表されたグラミー賞にて、ベスト・オルタナティヴ・ジャズ・アルバムにノミネートされた本作、さらにベスト・グローバル・ミュージック・パフォーマンス部門にノミネートされていたのが、3曲目「Shadow Forces」だった。惜しくも受賞は逃したものの、このグループがいかに注目を集めているかがお分かりだろう。ヴォーカルのアルージ・アフタブがパキスタン人として初めてグラミー賞を受賞しており、彼女への注目が第一要因ではあるが、マーク・リボーのセラミックドッグでの活躍も話題のベーシスト、シャザード・イズマイリーとピアニスト、ヴィジェイ・アイヤーを従えて、ワールド・ミュージックの新たなステージのサウンドを聴かせている。





Peter Brötzmann / Chicken Shit Bingo / 吉祥寺ジャズ館 立石
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008773513


2015年にPeter Brötzmann(ペーター・ブロッツマン)、Paal Nilssen-Love(ポール・ニルセン・ラヴ)が残していた未発表スタジオ録音が遂に解禁です!アルトクラリネットを使用したブロッツマンの徹底的なブロウと、ニルセン・ラヴの韓国打楽器を使用した浮遊感溢れる演奏が楽しめる作品です。韓国農学とブロッツマンの共演のようにも感じられ、これはまたいい録音を残してくれたな、と演奏が進むにつれて作品への愛着がどんどんわいてきます。ポール・ニルセン・ラヴは今年の1月に来日し、Ken Vandermark(ケン・ヴァンダーマーク)、坂田明、佐藤允彦と渋谷公演通りクラシックスや、稲毛のJazz Spot Candyで演奏をしていたので、聴きに行った方もいらっしゃるのではないでしょうか。私は行けなかったので、今作を聴いてニルセン・ラヴを存分に浴びることにします。来日の記憶にも新しい"ホット"なポール・ニルセン・ラヴと昨年惜しくも亡くなったペーター・ブロッツマンの熱量ある究極デュオ作品、「Chicken Shit Bingo」全力で推薦します!





GERD DUDEK / With You / 吉祥寺ジャズ館 吉良
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008785339


活動初期にはフリー系人脈との共演も多かったドイツのテナー奏者GERD DUDEKの最新作。
昨年鬼籍に入られていたとのこと、遅ればせながらご冥福をお祈りいたします。

コルトレーンの「Naima」「With You」など、ワンホーンで太く力強い演奏を聴かせてくれます。






divr / Is This Water / 新宿ジャズ館 有馬
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008784144

スイスといえばINTAKTやUNIT RECORDSですが、この度、数年前から本国でも注目されていたであろう即興系ドラマーJonas Rutherを含むピアノトリオ『divr』がフィンランドのWE JAZZ RECORDSからデビューしました。
経緯は分かりませんが、このトリオが即興性に描画的なベクトルを持っていることが抜け目ないファウンダーのMatti Nivesに見出されたことは確かです。
実際、ピアノ弦を弾いたり、エフェクターも使用するPhilipp Edenや、民族打楽器を組み合わせるJonas Rutherらの拡張性がもたらすミニマルな即興は実に耳当たり良く交差します。
さらにはロンドン出身で同レーベルでもリリースがあり、凄まじい最新作を『Y-OTIS TRE』名義で発表したエレクトロニカ〜アンビエント系のプロデューサー、Dan Nichollsによるフィールドレコーディングなどのポスプロを経て、より洗練されたレーベルイメージが反映されました。
WE JAZZを定点観測すると、あえて描画性に振り切るアートパッケージでジャズ界に挑戦するMatti Nivesの全盛期を毎月目撃することができます。





PAAL NILSSEN-LOVE & KEN VANDERMARK/JAPAN 2019 / 商品部 川村
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008798476


先月来日ツアーをしていたフリージャズ界の重鎮2人のコンビですが、こちらは2019年来日時のライブ盤。7枚組CD(!)という超ド級のボリュームで、収録時間も演奏の質もボリューミーに加え、さらにゲストに日本のフリージャズ、現代音楽の重鎮、坂田明、佐藤允彦、高橋悠治が迎え撃っております。圧巻は佐藤允彦、高橋悠治の2台のピアノ(!)が加わるトラック。雑なフリージャズにありがちな、ただただ音がぶつかり合うのではなく、時に寄り添い、時に離れ、時に咆哮し、時に静寂さを感じる、終始緊張感ある至高のアンサンブルを聴かせてくれます。限定盤BOX、お早めにお買い求めくださいませ。





黒田卓也 / Rising Son / 商品部 池田

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008798956


”絶対にレコードで手に入れたいランキング”を作ったら確実に上位だったであろう本作が待望のアナログ再発です。2014年にリリースされたオリジナルは発売から10年経ちレア盤と化しているためまさにDon't miss it!!!!!!と叫びたい1枚。エズラ・コレクティヴのジョー・アーモン・ジョーンズ渾身の「Everybody Loves The Sunshine」リミックスも収録!