【連載】 ★ 山本隆のJAZZ IN THE WORLD ★ 2014 June

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2014.06.16

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6/24(tue)
『JAZZを聴きたくて』シリーズ

V.A.(ジャズを聴きたくて)

ジャズを聴きたくて~午前0時、ジャズ・ピアノに恋して (2CD)

ユニバーサルミュージック / JPN / CD / UCCQ1001 / 1006154736 / 2014年06月25日 / 組数 2 / 1,944円(税込)

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V.A.(ジャズを聴きたくて)

ジャズを聴きたくて~金曜日のジャズ・バラッドはエクスタシー(2CD)

ユニバーサルミュージック / JPN / CD / UCCQ1003 / 1006154737 / 2014年06月25日 / 組数 2 / 1,944円(税込)

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V.A.(ジャズを聴きたくて)

ジャズを聴きたくて~ボサノヴァはお好き?(2CD)

ユニバーサルミュージック / JPN / CD / UCCQ1005 / 1006154738 / 2014年06月25日 / 組数 2 / 1,944円(税込)

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『JAZZを聴きたくて』シリーズが3枚出た。ひさしぶりだ、懐かしい。かつて1980年代後半に一世を風靡したベストセラー・コンピレーションだ。このジャケも当時のまま、というか鶴田一郎さんの手によるイラストだ。20数年の時の経過を感じさせない、新しい感じもするではないか。知っているボクらでもそうだから、それを知らない20代、30代の方には、ますます新鮮な気持ちで接することのできるコンピ作品なのではないだろうか。とにかくユニバーサルグループが抱える膨大な音源から、それぞれのテーマに沿って厳選に厳選されたツワモノたちが勢ぞろいしているので、悪いハズがない。イイに決まっている。そんな贅沢なマスターピースを心地良く、お洒落な気分で聴くことができるのが、このシリーズの魅力だ。ボクは、今朝8:15に会社に到着したのだが、「さあ、何を聴こうかな」と思いコレを手にした。まず聴こえてきたのが、スタン・ゲッツ~チック・コリアの「オ・グランジ・アモール」だった。これは、『スィート・レイン』という作品の2曲目に収録されている。1曲目がボクの大好きな「リザ」でその次の曲だ。昔はそんなにいいとも悪いとも思わなかったけど、こうして聴くと「いいじゃないか」とその評価が上昇した。「ボサ・ノヴァはお好き?」というテーマにぴったりだ。それから聴き進んでいると、またまた懐かしいサウンド。アート・ファーマーの「ハウ・インセンシティヴ」だ。これはジャケがいい。珈琲カップが倒れて中のコーヒーがこぼれちゃっているという、有名な『イエスタディズ・ソウツ』に収録されているものだ。かつてボクがアルバイトをしていた明大前のジャズ茶房「マイルス」のママはこれが大好きだった。毎日の締めのレコードがこれだった。何百回も聴いた。ふくよかなファーマーの音色が胸に沁みる。と収録曲の思い出なども発表してみたが、別段そんな思い出がなくても楽しめると思うな。他のタイトルは『午前0時、ジャズ・ピアノに恋して』、『金曜日のジャズ・バラッドはエクスタシー』とタイトルもステキではないか。(山本隆)

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6/23(mon)
MAX IONATA / 
INSPIRATION LIVE

MAX IONATA マックス・イオナータ

INSPIRATION LIVE / インスピレーション・ライヴ

ALBORE JAZZ / JPN / CD / ALBCD024 / 1006198298 / 2014年05月28日 / 2,160円(税込)

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マックス・イオナータの魅力さく裂じゃないか。ワンホーンのカルテットで彼の魅力があらゆるところで出ているのではないか。これはライブ音源でリラックスしている感がひしひしと伝わってくる。ルーカ・マンヌッツアも相変わらずのノリノリのソロで気分は最高ということになる。1、4、7あたりが個人的なオススメ。こんな軽めな「シャイニー・ストッキング」も悪くないな。そうそう、6月9日の夜、近所のイタリア文化会館でマックス・イオナータとダド・モロー二のデュオ演奏を観てきた。素晴らしかった。(山本隆)

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6/20(fri)
ヤン・ガルバレク
/ ウィッチ・タイ・ト

JAN GARBAREK ヤン・ガルバレク

WITCHI-TAI-TO / ウィッチ・タイ・ト

ユニバーサルミュージック / JPN / SHM-CD / UCCE9272 / XAT-1245594506 / 2014年04月23日 / 1,728円(税込)

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この名盤、今年4月、ECM創立45周年ということで、久しぶりにCDが再発売されましたね。ところで、4月にその45周年を迎えたECMオフィスに行ってきましたよ。今までミュンヘンには8回行っていて、一度もECMのオフィスを訪問したいという衝動にもかられなかったんだけど、45ということでマンフレッドにお願いしてみた。今言うところのマンフレッドとは、マンフレッド・チャフナー氏のことであり、アイヒャー氏とECMを作った盟友だ。世間的にはマンフレッド・アイヒャー氏のことしか言われないので、混同する人がいるのも無理はない。そのチャフナー氏は、ちゃんとアイヒャーに電話を入れてボクのアポイントを取っておいてくれたのだった。ミュンヘン中央駅から4つめのパージング駅からタクシーで10分の近さで、ここが世界に名だたるECMのオフィスがある所か、と思うような意外な場所にあった。アイヒャー氏は気さくな人で密度の濃い会話を30分ほどした、というか質問攻めにあい、ボクはアタマをフル回転させ、言うべき専門用語とか流通用語とかの英単語をアタマのどこかの倉庫から引っ張り出すのに必死だった。(このあたりのこと今日発売になったJAZZPERSPECTIVE VOL8のコレクター訪問の箇所でも少し書いている。アイヒャー氏の写真も掲載した。)質問された中でECMの好きな作品を5枚挙げよ、というのがあったので、このレコードのことを言った。
最初に聴いたECMはビロンギングとかケルン・コンサートとかだったけど、ちゃんとECMのカラーを認知したのはこれであった。もうすごい感銘を受けて、その当時の「三大すごいレコード」の1枚を形成した。因みに他の2枚は、『モンタレイ・ジャズフェスティヴァルのジョン・ハンディ』と『クリフォード・ジョーダン・イン・ザ・ワールド』であった。最後の曲「デザイアレス」が圧巻で、すべてがここを最高潮に迎える為の序奏曲のような面持ちだ。20分を超す、ドン・チェリーの名曲。盛り上がり感がこの世のものとは思えない。このタイトル「ウィッチ・タイ・ト」はジム・ペッパーの曲で、『Pepper's Pow Wow』( Embryo Records)に入っているのがいいよ、とチャフナー氏に教えられたのが4年前。早速聴いてみるとまるで雰囲気が違うんだけど妙にクセになる曲だった。それを聴いたあとにコレ聴くとますます理解を深めることができた。
ボクは昔タイプの人間で、ジャズ喫茶でコウベを垂れて音に没頭するほうだった。これを聴くときはまさにその姿勢を崩せない。最高のエクスタシーを迎えるための準備ということだ。ガルバレクの咆哮する狂気のサックスを体験しよう。(山本隆)


左 マンフレッド・チャフナー氏
真ん中 マンフレッド・アイヒャー氏
右 山本隆
首から下げているグリーンの箱は何かとアイヒャー氏に質問されたので「アッシュトレイです」と答えると、「まだ煙草などを吸っているのか君は」と驚かれた。



ECMの入り口

ECMの入り口


マンフレッド・アイヒャー氏と面談中


オーガニック食品の生産で有名なLaSeLva とECMは親戚関係のようなもの。


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6/19(thu)
ケニー・バレル / K.B.ブルース

KENNY BURRELL ケニー・バレル

K.B. BLUES / K.B.ブルース(SHM-CD)

ユニバーサルミュージック / JPN / SHM-CD / UCCQ5012 / 1006195195 / 2014年06月25日 / 1,620円(税込)

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1曲目は「ニカの夢」だ。ホレス・シルヴァーの曲で昔よく捜して聴いた。『アート・ブレーキー・アンド・ザ・ジャズメッセンジャーズ』(Columbia / 1956)はハンク・モブレーのソロに痺れた。『カーティス・カウンス / カールス・ブルース』(Contemporary / 1960)もよくて、ハロルド・ランドのソロが絶品だ。シルヴァー自体の『ホレス・スコープ』は忙しすぎて、結局好きにはなれなかった。意外にはまったのはストリングス入りのアート・ファーマー『ニカの夢』(デンオン / 1980年代?)で、今聴いても満足感がある。最近は「おおっとニカの夢を演奏しているなっ」て嬉しい気分になることはなくなったけど、それでもどんな感じでやっているのかというのは気になる。ここでの演奏は1957年ということでコロムビア盤の翌年の演奏でハンク・モブレーのソロ、シルヴァーのソロの違いなどが聴けるが、そもそもケニー・バレルの指揮下の演奏だからかなり違う。興味ある人はどうぞ。

※これを書いた時間が早かったので文中には記載できませんでしたが、明け方ホレス・シルバーの訃報が入ってきました。ひたすら合掌。(山本隆)

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6/18(wed)
ボビー・ハッチャーソン / オブリーク(SHM-CD)

BOBBY HUTCHERSON ボビー・ハッチャーソン

OBLIQUE / オブリーク(SHM-CD)

ユニバーサルミュージック / JPN / SHM-CD / UCCQ5016 / 1006195199 / 2014年06月25日 / 1,620円(税込)

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1曲目「Til Then」という曲が素晴らしい。ジャズ・ミュージシャンが作った曲でその後「名曲だ」と語り継がれる<ミュージシャンズ・スタンダード>というのは結構あるけど、この曲もその一つではないか。実は最初に出会ったのは、このヴァージョンではなかった。1977年の作品『Knucklebean』だった。そのB面の2曲目に「’Til Then」が収録されていた。このレコードは今でもたぶん600円とか800円とかで買える。当時結構売れたようだ。昨年ユニヴァーサルからCD化もされた。初めて聴いた時の感動は今でも忘れることができない。ボクにとってのジャズ名曲の上位に位置するものだ。その初録音というのがこの盤に収録されているもので堂々1曲目に収録されている。ボクはこの一曲を聴くだけの為にこの盤を所有している。4分が短く感じられる、いとおしい究極曲のひとつ。(山本隆)

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6/17(tue)
カトリーヌ・マッドセン /
カトリーヌ

KATRINE MADSEN カトリーヌ・マッドセン

Katrine / カトリーヌ

DISKUNION JAZZ / JPN / CD / DUJ117 / 1006252909 / 2014年06月25日 / 2,700円(税込)

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カトリーヌ・マッドセン(ボクは、マッヅセンと本人から聞いたけど)の新作は、自身の自主レーベルからだ。彼女の作品の多くはMusicMeccaから出ており既に10枚を超す。デンマークの女性歌手として日本でもそれなりにファンの多いベテランだ。ピアノとベースというシンプルな編成だから彼女の歌がより直接沁みてくる。この編成は成功だ。しかもピアノは、Jacob Christoffersenで、日本でも深い理解者の多いステキなピアノを弾く。この作品の中でも随所でナイスなソロを披露している。最近発売されたシーネ・エイの作品でも弾いているね。カトリーヌの声というか発声は独特なものがあり、一旦虜となるとそれから抜け出せない。これを聴いてその思いをまた新たにした。なんかずっとこの音に包まれて生活をしたいという気持ちになる。(山本隆)

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6/16(mon)
グラント・グリーン  / マタドール

GRANT GREEN グラント・グリーン

MATADOR / マタドール(SHM-CD)

ユニバーサルミュージック / JPN / SHM-CD / UCCQ5013 / 1006195196 / 2014年06月25日 / 1,620円(税込)

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ブルーノート・ザ・マスターワークス第三期 世紀の発掘コレクション全30タイトル
6月25日に発売ですね。何枚かその中から紹介してゆこうと思う。JazzPerspective Vol8(6月20日発売)関連の仕事もひと段落したので、また再開。
今日の一枚は、グラント・グリーンの『マタドール』。ライナーを見るとこれがキングレコードから発売されたのは、1979年6月21日とある。いつごろ買ったかは覚えていないけど、その頃にこのレコードを買っている。17歳から18歳にかけての頃だ。スウィングジャーナル誌のディスクレヴューを参考にして新譜レコードを購入していた頃だ。一刻も早くジャズにのめり込みたくて毎日レコード店に通い数時間を「どれを買うべきか」で悩んでいた。おそらくそんな時に「未発表音源どうのこうの」といううたい文句に惹かれて買ったのだろう。高校生だから買ったレコードは貴重だ。色々やりくりしてレコードを買うのだから、一生懸命聴く、隅から隅まで聴く。後年にジャズ喫茶で一日中ジャズの洪水に溺れる身とはわけが違う。そうするとこのレコードの良さがぐぐーんと身近になってきて好きになった。実は「マイ・フェイバリット・シングス」という曲は知らなくて、これがジャズ版の初体験であった。ジョン・コルトレーンのアルバムを聴く何年も前にこれがボクのスタンダードとなった。おそらく、『セレフレスネス』収録のこの曲と双璧をなす名演だというのがボクの気持ち。「マタドール」のキャッチーなメロディに痺れた。それがジャズの世界なのだと憧れた。それでそのメロディに続いて出てくるグラント・グリーンのソロというかアドリブがステキだ。そう1分11秒くらいから3分くらいの独壇場は圧巻に思える。マッコイ・タイナーのソロも素晴らしい。このレコードを聴く前に高校生的には難解極まる『至上の愛』の彼の洗礼を受けていたので、ここでもそのソロに痺れたというわけだ。あの当時はまだジャズのレコード200枚も持っていなかった(ある人はその頃で200枚も持っていたのか、という人もいるけど)から、いい演奏、すごくいい演奏、そうでもない演奏などの区別もよくわからなかった。あれから35年経過してきてそれなりに、いいジャズ、すごくいいジャズ、そうでもないジャズなど色々聴いてきたけど、これはまったく色褪せることなくボクの体内に存在しつづけている。(山本隆)