<連載> ★山本隆のJAZZ IN THE WORLD★ 2015 Dec.

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2015.12.01

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AL HAIG / アル・ヘイグ / On Period / オン・ピリオド
これはもともとアンリ・ルノーのオーガナイズで、フランスSwing(ヴォーグ)がオリジナル盤の音源、その後アメリカPeriodからの発売となった。日本では、先ほども触れた東宝レコードの『A Day In Paris』の片面で最初発売となった。もう片面は、ジョージ・ウォリントンで当時は売れたのかどうかは知らないけど、とんでもない名演奏のピアノトリオがダブルで聴けちゃうわけだから、お買い得であったと思う。ボクも最初に聴いた時激しい衝撃を受けて随分と貪り聴いたものだ。ジョージ・ウォリントンも好きだったし。でやっぱり、アル・ヘイグの「Just One Of Those Things」が圧巻であった。この曲は当時としては、アート・テイタムの演奏を聴くべし、みたいなことをジャズ喫茶の怖いお兄さんに言われたものだが、ボクはだんぜんこちらだった。垢抜けた感じがした。(山本隆)



AL HAIG / アル・ヘイグ / JAZZ WILL O THE WISP / ジャズ・ウィル・オー・ザ・ウィスプ

アル・ヘイグの『ジャズ・ウィル・オー・ザ・ウィスプ』だ。もう何回か出てはいるが、今回はヴィーナスのハイパーマグナム・サウンドによるアナログ盤180g重量盤。迫力あるサウンドで体感してみるのもいいだろう。ボクはアル・ヘイグが好きで、ことあるごとに騒いでいる。最近騒いだのは『チェルシー・ブリッジ』が再発された時だったな。ジャズ聴き始めのころよりアル・ヘイグは好きだ。スタン・ゲッツのルースト盤に参加しているアル・ヘイグを聴いて、「ウォーっ」となった。その3年後、今度は当時国内東宝から出ていたジョージ・ウォリントンとのカップリング盤『A Day In Paris』というヴォーグ(スウィング)音源。「ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス」が絶品だった。そしてジャズファンの大体の人が感銘を受ける『Invitation』に夢中になってゆくわけだ。で他になんかないかなぁ、と当時バイトしていたジャズ喫茶のレコード棚をサクサク捜していたら、コロムビアからの再発盤『ジャズ・ウィル・オー・ザ・ウィスプ』(HR102)を見つけた。草むら風(?)のジャケのほうだ。「風と共に去りぬ」とか「マイ・オールド・フレイム」などの軽妙洒脱な雰囲気にノックアウトされたのだ。当時はそのレコードが「お気に入り」となって1年間に100回以上は聴いただろうか。これは1954年の録音で、最初は、エソテリック・レーベルから10インチ盤として発売された。その後カウンターポイント・レーベルから曲も増やして12インチLPとして発売、それがコロムビアからの再発盤だ。しかしその後、「いやいや、これはエソテリック盤という10インチがあってね」なんていう話が一般的になり、またそちらのジャケのほうが断然いいじゃないか、ということでいつの頃からか、『ジャズ・ウィル・オー・ザ・ウィスプ』、日本ではエソテリックのジャケで出るようになったのだ。心に沁みる絶対的ピアノトリオの傑作だね。(山本隆)



ENRICO PIERANUNZI / エンリコ・ピエラヌンツィ / Tales from the Unexpected (Live at Theater Gütersloh)


なんかボクの好きなタイプの演奏に終始したエンリコを久しぶりに聴いた気分。かつて朝、昼、晩、そして朝と徹頭徹尾徹夜でエンリコ・ピエラヌンチ鑑賞を敢行していた2000年頃を思い出した。数々の名作があったけど、『Seaward』は忘れない一作。アンドレ・チェカレリ、へイン・ヴァン・ダーガインでのトリオだった。この作品のドラムもアンドレなので、そういう気持ちが高まったのかもしれない。よく見ると全編ライヴ。ドイツのギュータースローという地方都市にあるいい感じのホールでのライヴ。この街は、ペルテルスマン(BMG)の本社があるということで有名で、オペラコンクールなども開催しているようだ。また、今作品は、ドイツのジャズ雑誌「JazzThing」の企画European Jazz Legendsを体現したステージ、それをIntutionがリリースしたということ。長年のCam Jazz体制からの作品からは趣を異にするようだ。(山本隆)




BARBRA LICA / バーブラ・リカ / Christmas Present



今日から12月、早いもので今年もあと30日だ。今年2015年大活躍だった、と個人的に思っているバーブラ・リカのクリスマスソング集だ。丁度これボクがトロントに行っていた8月の下旬にレコーディングをしていたもので、いい感じのタイミングで入荷してくる。ジャケもいいじゃないか。曲もベタベタなクリスマスって感じでもなくさりげない。そうそう、「さりげない」って単語が好きで、昔地元高岡に「さりげなく」という喫茶店があって、「ああ、いい店名だなぁ」と思ったことがある。まだあるのか知らないけど。というわけで、さりげない雰囲気はバーブラ・リカにぴったりとくるイメージ。昔のジョニー・ソマーズのような聡明さを感じるね。今年は、バーブラさん、東京ジャズの地上広場で歌ったり、各種媒体に出たりといっぺんで大きな存在の一角に躍り出てきた感じでこれからも楽しみな存在。JAZZPERSPECTIVE vol.11の表紙にも登場してもらったし。今年のクリスマスはこれで、というか12月には、こんなさりげないクリスマス集なぞを聴きながら、安らかに過ごしたいものだ。(山本隆)



JUDY BAILEY / ジュディ・ベイリー / You & The Night & The Music(LP)
JUDY BAILEY ジュディ・ベイリー

ドイツのBe!JazzRecordsがまたレア盤の復刻。15年ほど前だったかに大騒ぎをしていたジュディー・ベイリーのピアノトリオ作品。オーストラリアのコロンビアには、もう一枚『My Favourite Things』というレコードがあってそちらは、クィンテットの演奏も収録されている。ジャケはそちらのほうが清楚で魅力的だと個人的には思っている。ま、とにかく彼女の初期作品の復刻は初めてなのでジャズファンには朗報だろう。昔は15万円とかしていたのでおいそれとは鑑賞できなかった。今あらためて聴いてみると、当時影響をもろに受けていたというビル・エヴァンスの影を随所にみることができる。それが結構さわやかな気持ちで心地よい。知らなかったが、アメリカでも活躍したというベースのLyn Christieの技が効いているいるような気がする。CDとLPで発売だ。尚、この作品は盤おこしと思われ、音的はには良いものではありません。(山本隆)



3 OUT(MIKE NOCK) / Move(LP)
3 OUT(MIKE NOCK)

はじめてこのレコードを見た時はビックリした。マイク・ノックにこのようなレコードがあっただなんて驚愕だ。ジャケの雰囲気が似ているので、ジャック・ヴァン・ポールの『For The Love Of Jazz』を知った時と同等の衝撃を受けた。ま、どうでもいいけど。マイクは最近もオーストラリアの若手ミュージシャンとのレコーディング活動も激しく、11月にリリースされたロジャー・マニンスとのデュオ『Two-Out』も素晴らしかった。あらゆる時代の局面(トランジション)でその第一線のジャズを主導してきたマイク・ノック。初期段階で魅せるこのスタンダードな路線、はやり早い段階から只者ではなかったと思わせるに十分な風格だ。おお、今大好きなメロディが流れてきたぞ。7曲目、ランディ・ウェストンの名作「リトル・ナイルス」、ニクい選曲だ。2002年以来、マイクさんのご自宅には3回お邪魔したことがある。最初に訪問した際に、不躾にもこのレコードをお持ちではないですか、と訊いてはみたが、はやりお持ちではなかった。日本のジャズファンが欲しがっています、と言うと、遠くを見つめるような目で、「ああ、そうなの」的な返事。それは彼にとっては過去の通過点のひとつにすぎないのだろう。恰好いいなぁマイクさん。(山本隆)