【インタビュー】中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン) 6/22新作発売記念!! ★★★ディスクユニオン・オリジナル・インタビュー★★★

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2011.06.01

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中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)

初のアコースティック・ソロ・アルバム

2011年6月22日発売!!!!!!   『街道筋の着地しないブルース』


中川敬 『街道筋の着地しないブルース』発売記念!!!
★★★ディスクユニオン・オリジナル・インタビュー★★★


<インタビュー:南(diskunion渋谷中古センター) 森崎(diskunion営業部)>



―今回の作品ですが、
ソウルシャリスト・エスケイプではなくて、中川敬名義で作ろうと思った経緯?

中川:今回は、まったく一人で作ってみよう、というところで始まったし、ソウルシャリスト・エスケイプ『ロスト・ホームランド』(1998年2月リリース)はソロ・プロジェクトといいながらも、多くの仲間達と作った作品やったからね。
 
―今回収録されたソロ・ヴァージョンの<満月の夕>(ラフ・ミックス)を震災から4日後にアップされてましたね。
 
中川:311震災直後は全く思いつかなかったことやけどね。15日に、たまたまYouTubeで95年頃のTV番組出演時の<満月の夕>の動画を見て、そのコメント欄に、今回の被災した人の「これを観て、震災後、初めて泣けました」っていうコメントがあって…。「そういや、今ちょうど新ヴァージョンの<満月の夕>があるなあ」って思い立って、制作途中段階やったけど、聴きたい人がいるのであれば公開しようと。
 
―当初ソロの名義で、<満月の夕>を入れるかどうかは迷ったりはしなかったんですか?
 
中川:初めから入れるつもりで録ったよ。阪神淡路大震災から16年目の、この1月、「さ、次は<満月の夕>を録ろう」って。
 
―今回聴かせて頂いた印象として、セルフ・カヴァーやカヴァーも含めて全てに“うた”がどんっと出ている印象があって、そういう曲をセレクトされたんですか?
 
中川:今回、制作当初からこれといったコンセプトはなくて、ひとつあるとすれば「その日に録りたいと思った曲を録る」。日常の気まぐれな波動をおさえていくというか。その日の気分で、カヴァーであろうがセルフ・カヴァーであろうが新曲であろうが、とにかく思いついた曲を録っていく。それだけがコンセプトといえばコンセプト。新曲が出来たら、誰にも聴かさずに、すぐにそのまま録る。<街道筋の着地しないブルース>や<いちばんぼし>、<日高見(ひたかみ)>あたりがそう。セルフ・カヴァーも、自分が初めて作曲した時に脳裡にあったアレンジや、ハナからあったメロディが入り込んでると思う。オリジナルの音源をあえて聴き返さなかったから、その曲が誕生したときの原風景に近いものが詰まってると思う。
 
―最初に録ろうと思った曲はセルフ・カヴァーが多かったんですか?
 
中川:いや、そういうこともあんまり考えてなかった。セルフ・カヴァーが多くなってもいいかな、ぐらいの感じやったね。実は、制作を始めた11月、最初に録った曲は、チューリップの<しっぽの丸い小犬>(笑)。
 
―ソロ・アルバムを作ると伺って、<アイ・ラヴ・ユー>は以前にカヴァーされていたので、今回もチューリップは絶対入るのではないかな?と思っていたんですよ。
 
中川:流石(笑)。いやいや。『ラヴ・プラスマイナス・ゼロ』(2002年8月リリース)は、3分の1くらいソロっぽいところがあって。2001年頃、リリース形態を考えずに、曲をとにかく録り始めてね。それがチューリップの<アイ・ラヴ・ユー>とか、アイリッシュ・トラッドの<ラグラン・ロード>、グラム・パーソンズの<シー>。あのへん実は、中川敬ソロとして録り始めてたんよね。結果メンバーにも参加してもらって、ソウル・フラワー・ユニオン名義で『ラヴ・プラスマイナス・ゼロ』に収録したんやけど。そういう時は大抵、カヴァーから始める。とりあえず、「いちミュージシャン」になるために、まずカヴァー。今回もそうやったね。カヴァー、まず何を録ろうかな、から始まった。「そういや、ここ数年、ヒデ坊の娘と俺の息子のための子守唄ソングみたいなのが何曲かあったなぁ」と。たいがいは童謡やねんけど、この<しっぽの丸い小犬>もよく赤ん坊に唄っててね。だから、チューリップが絶対に必要っていうわけではないんよ(笑)。
 
―逆に根本的な質問なんですが、ソロ名義でアコースティックでは無い、と言う選択肢は無かったんですか?
 
中川:それは今回、無かったね。とにかく始まりから終わりまで自力でやろうっていうテーマがあったから。制作の最中、「この曲にアコーディオンとかフィドルを入れたいな」って頭をよぎりもしたけど、それって結局ソウル・フラワー・ユニオンでも出来ることやし。“中川敬”として出すからには、やっぱりバンドではできないことをやらないと。だから、とりあえず第1作目の方向性として、1人で、アコギ数本、ブズーキ、三線、ベース、あとこのノド、それに、魂花神社(ソウル・フラワーのプライヴェート・スタジオ)に転がってるパーカッション類…、「そこにある物」を使って、とにかく自力でやろうっていうこと。だから今回は結果的に、自分の肉体に近い、背伸びしない等身大の中川敬っていう感じになった。正直セルフ・カヴァーを3~4曲立て続けに録って気分的に停滞した時期も一瞬あったけど、年が明けて、浅川マキさんの<少年>を録って、その時にまた盛り上がってきてね。「これはすごく面白いことをやってるな」っていう気分になってきて。<少年>は単に自分がリスナーとしてずっと好きやった曲やから、録ってる時は楽しくてしょうがなかったわけ(笑)。
 
―浅川マキさんと言えば、ソウル・フラワー・ユニオンで<ちっちゃな時から>とか<かもめ>もあって、今回で3曲目ですね。
 
中川:結局、俺が好きやねんね。俺は何といっても<少年>が昔から好きやったから、人には唄わせない、俺が唄う!みたいな(笑)。
 
―書き下ろしの新曲は、あくまでソウル・フラワー・ユニオンではなく、ソロでやると言うことで書き上げたものですか?
 
中川:今のところ、そういう曲の使い分けはしたことない。ピート・タウンゼント曰く「この曲はええ曲やからソロの方に入れよう」とか思い始めて、その段階でTHE WHOを解散させようと思ったらしいね。俺はそういう悩みに陥ったことはない(笑)。
 
―良かったです(笑)。
 
中川:(笑)ソウル・フラワー・ユニオンはライヴ・バンドやから、別にソウルシャリスト・エスケイプの曲をやろうが、ニューエスト・モデルやメスカリン・ドライヴの曲をやろうが、何をやってもいいんよ。だから、今回のアルバムに入っている曲も、今後ソウル・フラワー・ユニオンでやるかもしれないよ。
 
―今回のアルバム・タイトルにもなってる<街道筋の着地しないブルース>については?
 
中川:去年の11月の段階で、アルバム・タイトルはこれにしようかなっていう感じで、心に留め置いてた言葉。曲よりも先にあって。
 
―最初にタイトルが決まってたんですね。
 
中川:そう。ソウル・フラワー・ユニオンのライヴのコンセプト、イメージ、祝祭的空間を居合わせた皆と一緒に作り上げるというようなコンセプトがずっとあるから、中川敬名義で作品を一人で作るにあたって、それとはまったく違うことをやりたいっていう思いがあった。アナザー・サイド・オブ・ナカガワ・タカシ。だから、共同作業ではなかなか俺自身が出そうとしなかった部分を素直に出したらいいんじゃないかなって。そこから、なんとなく「街道筋の着地しないブルース」っていうフレーズが降りてきてね。ただ、このタイトルを3.11以降のものと思っている人が結構多くてね。実際、日本列島に住む者は、“着地しないブルース”を抱えることになった…。

 

―3.11(東日本大震災)の影響で発売日は変わりましたか?
 
中川:いや、6月リリースっていうのは、去年の秋からあって。そのつもりで制作に入ってたし。3.11以降、3月末までは一切の作業が止まった。まず、3月の『闇鍋音楽祭』のツアー。それと、自分達にできる後方支援は何かを探ること。日に日に変化していく被災地や原発事故の状況、それらを自分の中でちゃんと咀嚼して胸の内に落とし込まないと、なかなか次の一歩を踏み出せない、みたいな。初めの10日間くらいはナーヴァスな気分にもなったし。『闇鍋音楽祭』が終わって、4月に入って作業再開。「よし、まずアイリッシュ・トラッドから録ろう!」って。
 
―その1曲目になったアルタンのをカヴァーして、邦題を<風来恋歌(ふうらいれんか)>としたのが、すごく中川さんらしいな、と思いました。
 
中川:原曲は、旅をする男の恋歌。震災前からこの曲の歌詞を探り始めてて、トラッドではあるけれども、このアレンジの形にしたのはアルタンやったからアルタン側にも打診して。4月に、自分が書いた詞をもう一度見直したけど、少し変わらざるをえなかった。もっといろんな情景が曲に入りこんできた。
 
―曲順については練られましたか?
 
中川:いろいろ試したけど、いい感じでこの流れに決まったよ。<ひかり><満月の夕><日高見><いちばんぼし>の流れあたりは、自分の中でストンと胸に落ちる感じがあった。
 
―<満月の夕>にはライヴ・テイクも含めてたくさんのヴァージョンがあり、やはり最初に聴いたテイクがリスナー側としては思い入れが強いと思いますが、今回の<満月の夕>はそれを凌駕して、僕は1番好きです。
 
中川:スパシーバ、メルシーボクー、カムサハムニダ、ニヘーデービル(笑)。太文字で書いといて、それ(笑)。
 
―(笑)<野づらは星あかり>や<夜に感謝を>も元々好きな曲だったんですけど、アコースティックであるせいかもしれないですが、すごくグッと来る感じがしました。
 
中川:元々の曲作りが、アコギなり三線なりを手に持って、スキャットで始まることが多いからね。ピアノに向かって、いきなり音符に向き合ったりするタイプじゃないし。曲が丸裸にされた感じやね。
 
―<死んだあのコ>が入ってますが、最新アルバムで出したばかりの曲だったのでちょっと意外でした。
 
中川:各アルバムからとにかく1曲ずつ選んでみよう、みたいに思ってた時期があって。それなら『キャンプ・パンゲア』からは<死んだあのコ>かな、みたいな。Twitterで途中経過をつぶやくと、「あの曲録って欲しい!」みたいなリクエストが来たりして。その時は<寝顔を見せて>(『カンテ・ディアスポラ』収録)が多かったな。結果的に、『スクリューボール・コメディ』から<野づらは星あかり>、『エレクトロ・アジール・バップ』からは<満月の夕>。『ロスト・ホームランド』からは<夜に感謝を>を録ろうかなって。ホントそんな感じで、そんなに深く考えずに録っていった。
 
―<日高見>はインストですね。ラストの<男はつらいよのテーマ>もインストで、『キャンプ・パンゲア』もそうでしたが、真ん中と最後にインストが収録されていて、どこかサントラ的な作品に感じられますね?
 
中川:俺は元々普段からインストものをよく聴いてる人間やからね。ヴォーカリストではあるけれども、自分にとっては自然な世界。昔から旋律自体が好きでね。十数曲収録のアルバムなら2曲ぐらいインストが欲しいなって。<日高見>は、4月に初めて被災地に入った時、帰りの高速の車中でずっと反芻してたメロディで、関西に帰ってすぐに録った。
 
―アルバム全体の印象として、ソロということもありますが、土着的な部分と異国情緒的な部分があって、ソロ作品としては珍しいのではないかな?と思うのですが。
 
中川:ニューエスト・モデル、ソウル・フラワー・ユニオン、ソウル・フラワー・モノノケ・サミット、中川敬、ソウルシャリスト・エスケイプ……どんな名義で出そうが、結局プロデュースしているのは俺やから、俺っぽい作品にはなるよね。ある種、大雑把やねんけど実は緻密、みたいな、中川敬イズム満載の世界でいいんじゃないかっていう感じで制作してた。俺自身がリスナーとして大好きな世界、いつもこれがコンセプト。
 
―改めてメロディ・メーカーなんだなっていうのを再確認出来る作品でもありますよね。
 
中川:メロディにこだわって、ずっとやってきてるんやけど、どうしてもソウル・フラワー・ユニオンやニューエスト・モデルって、他の際立った部分でのみ語られてしまう。だから今作では、紡ぎ出すメロディがストレートに響くような気はしてた。
 
―それでは被災地でのライヴのことについて。初めは4月に行かれてますけど、それは物資を届けるためだけだったんですか?
 
中川:一応、楽器は持って行ってたけどね。4月の段階は支援物資を持って行って、まず人の繋がりを作るっていうことに心を砕いた。長期戦になるやろうし、いつか避難所で唄う時期も来るやろうなって思いながらも、まずはちゃんと現地の多くの人の話を聞いて、見るべきところを見て。で、5月に石巻、女川、南三陸の避難所に演奏しに行った。
 
―ライヴのMCでも、早い段階で「これは長期戦になる」っておっしゃってましたよね?
 
中川:長期戦になんかなってほしくないけど。ほんま、原発事故が復興の邪魔をしてる。
 
―ライヴのMCでは他にも「皆の出番は必ず来るよ」ともおっしゃられていましたが、個人的に印象深いのは「頑張れって言うんやなくて、一緒に頑張ろうや」という言葉でした。
 
中川:神戸の時、皆、言ってたよ。遠い所からやって来て「がんばってください」ばっかり言いよるけど、これ以上どう頑張れっていうんや!って。
 
―Twitterで見た、かまぼこ屋さんの話が感動的でした。
 
中川:4月に初めて女川に行って……女川はほんと津波の被害が酷くて、息を呑む光景、そこに立っても現実感がなかなか持てないような状況で。ひたすら「瓦礫」が続く光景…。当時は、工事車両の音以外、まったく無音で。そんな「瓦礫」の下に、たまたまターンテーブルがあったのを見つけてね。音楽関係の物はやっぱり気になるから、写真に撮って、たまたまTwitterにアップしたんよ。そしたら、Twitterで繋がった、女川のソウル・フラワー・ファンの「かまぼこ本舗高政」さんとDMでやり取りが始まって、「あのターンテーブル、もしかしたら俺のかもしれません」って。それで、撮影した場所を知らせたら「やっぱり俺のです…」って。
 
―うわ、すごいですね。
 
中川:そのターンテーブルが彼のだとわかって、電話でもやりとりが始まって、それで女川の避難所でのライヴが実現して。それも「かまぼこ付きライヴにしたい」って(笑)。対バンはかまぼこ(笑)。
 
―そういう繋がり方もあるんですね。
 
中川:現地の人たちと具体的に繋がっていかないと見えてこないことがある。「ソウルフラワー震災基金」は大きな団体がやってるようなものとは違って、個人個人の繋がりでやってるから、これからも出会いを大事にして続けていかないとね。ピンポイントの支援活動がどんどん増えて、それが広がれば広がるほど「復興」も前進していく。みんなで、無数の「ピンポイント」を作っていきたいね。



【 Release Information 】

1998年発売したソウルシャリスト・エスケイプ『ロスト・ホームランド』以来となるソロ・プロジェクト!!!
新曲、セルフカバー、浅川マキやチューリップのカバー等、中川敬氏がひとりで作り上げた
全14曲の解放歌集!!!

2011年6月22日発売
中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)
街道筋の着地しないブルース
XBCD-6004 2,800円(税込)
■見開き・紙ジャケット仕様


ディスクユニオン限定!!Tシャツ付き完全限定セット同時発売!!!!
通常盤2,800円(税込)のところ、Tシャツ付きセットで3,600円(税込)で販売いたします。
サイズ展開はXS~Lの4種類。TシャツボディはUnitedAthleの5.6オンスを使用。
※ご好評につき、ご予約分で予定枚数終了の場合がございます。ご了承くださいませ。


OFFICIAL RELEASE特設ページ▼▼▼
http://www.breast.co.jp/soulflower/special/nakagawa_solo/

ソウルフラワー震災基金からの報告とお願い▼▼▼
http://www.breast.co.jp/soulflower/sfu20110328.html


【 Live Information 】

◎ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン(中川敬/リクオ/高木克)
中川敬アコースティック・ソロ・アルバム「街道筋の着地しないブルース」
発売記念/地方巡業~アコースティック編~
7/11(月) <大阪>心斎橋JANUS
7/13(水) <愛知>名古屋TOKUZO
7/14(木) <長野>ネオンホール
7/16(土) <宮城>白石・カフェ ミルトン
7/18(月・祝) <東京>渋谷CHELSEA HOTEL

◎ソウル・フラワー・モノノケ・サミット
「もののけ盆ダンスツアー2011」
8/17(水)<京都>磔磔
8/19(金)<東京>吉祥寺STAR PINE'S CAFE
8/21(日)<東京>代々木Zher the Zoo

■EVENT
8/11(木) 「第33回横浜寿町フリーコンサート ー鎮魂と共生のまつりー」 <横浜>寿町職安前広場


◎ソウル・フラワー・ユニオン
「ホモサピエンスはつらいよ」ツアー
9/18(日)<大阪>心斎橋 CLUB QUATRO
9/21(水)<横浜>F.A.D YOKOHAMA
9/23(金・祝)<東京>渋谷duo Music Exchange
9/27(火)<宮城>仙台 LIVE HOUSE enn 2nd

■EVENT
7/29(金)「フジロックフェスティバル」 <新潟>湯沢町苗場スキー場
8/27(土)「ARABAKI ROCK FEST.11」 <宮城>みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく



MORE INFO
OFFICIAL WEB SITE▼▼▼
http://www.breast.co.jp/soulflower/