ザ・クロマニヨンズ 甲本ヒロトさんと真島昌利さんへスペシャルインタビュー | レコードがある暮らし Vol.7

  • 日本のロック
  • ニュース(日本のロック)

2019.10.30

  • LINE

  • メール

スペシャルインタビュー第1弾は、10/9に13枚目のアルバム『PUNCH』をリリースして間もない、 ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトさんと真島昌利さん。レコードへの熱い思いを語っていただきました。

【インタビュー】赤堀長太郎(レコ暮ら編集部)
【ライター】伊藤真奈
【写真】菊池茂夫




甲本&真島 ディスクユニオン! お世話になっております!


(赤堀) おふたりもよく店頭でレコード、掘ってるそうですね

甲本 最近は渋谷店の方によく行ってるね。新宿もお店の配置、変わりましたよね。

真島 時間があったらほぼ毎週行ってますよ。新宿も渋谷も。

甲本 俺、昔新宿の地下のソウル館で、ロイくんにあったな。THE BAWDIESの。ソウルのシングルを見てたら隣にいて、「おい俺がそこあとから見るんだから掘るなよ」って思ってたら、ロイくんだった(笑)。

(赤堀) いつもご来店ありがとうございます! おふたりの最初のレコードの思い出を教えてください。

真島 ぼくは兄貴がいたから、うちにあったソノシートとか漫画とか色々見てた。でも自分の意志で親に買ってもらったのは、ピンキーとキラーズ『恋の季節』かな。

甲本 そういや幼稚園くらいの時かな、映画館に「チキチキバンバン」を見に連れて行ってもらって。それがあまりにも楽しくて、あそこで流れてた愉快な音楽を家でも聴きたい!って親に頼んで買ってもらったんですよ。そしたらね、親は英語なんて分かるわけないと思ったのか、日本語のバージョンだったんですよ! 俺はあの時流れた「あれ」が聴きたかったのに、違うじゃないかー!って。

(赤堀) 山本リンダさんが歌っているんですよね。

甲本 「チリチリバンバン チリチリバンバン私達はチリチリバンバンだいすきよ~ どこへいく~も お前がた~よ~り~♪」ってね。今となってはすごく好きなレコードだけど、当時はほんとがっかりしたなぁ。



最終的にはスピーカーが空気を振動させて僕らに伝えてくるんだから、元に空気がなかったら伝わってこないよ。

(赤堀) ザ・クロマニヨンズの最新アルバム『PUNCH』がリリースになりました。過去作品同様に、アナログでもリリースされます。


【CD】BVCL995 定価¥2,913+税 ※初回限定紙ジャケット仕様
【完全生産限定アナログ盤】 BVJL34 定価¥2,913+税 ※‘60年代フリップバックE式盤/180g重量盤

甲本 ザ・クロマニヨンズの音楽はレコードのために作っているからね。

(赤堀) モノラルでのレコーディングには何か意図があるのですか?

真島 いや、音がちゃんと録れていればいいの。でもこういう小編成なバンドだと、いちいちステレオで音を分離するより、バンド感というか、“どん! " って音が出てる方がかっこいいじゃん。

(赤堀) レコードジャケットもこだわりがあるんですよね。

甲本 紙の貼りつけ方からコーティング、折り返しの長さまで全部こだわってね。レコード会社の人には手間かけてるけど、だってこれがかっこいいんだもん。

(赤堀) アルバムも、3分間の直球的なロックンロールがメインで、スカや2トーン的な要素も感じました。どんな思いでアルバムを作っていたんでしょうか?

甲本 あんまり意識的にはやってない。マーシーもそうだと思う。普段いろんな音楽を聴いているじゃないですか。だから、自分たちで曲を作るときにも、自然なかたちでそこに出てくるんですよ。あのビートここに合うんじゃない、って。


(赤堀) みんなで同じ部屋で録るんですか?

甲本 同じ部屋で録りますよ。ブースないですから。全員のマイクに全員の音が入る。

(赤堀) 最近はプラグインやコンピューターで音楽を作る人も増えていますが、今回のアルバムには特に、生感というか、ライヴ感を感じました。

甲本 結局最終的にはスピーカーが空気を振動させて僕らに伝えてくるんだから、元に空気がなかったら伝わってこないよ。音楽って、グッとくる、オォウってなる、急に涙が止まらなくなるとか、そういうのがすごく大事だと思うんです。そういうときって歌詞なんかどうでもいいんです。歌詞の内容とか物語のあらすじで感動したんじゃないんです。


音楽からくる「うぉお」って感じがあればいいんだよ。

(赤堀) このフリーペーパーは、これからレコードを始めたいって人に向けてなんですけど……
甲本 逆に聞きたいんだけど、今そういう人たちに対して、これがいいぞ、っていうオーディオは出揃っていますか?

(赤堀) かなり揃ってきています。一番安いのでは1万円以下でスピーカーもステレオで、というのもあります。5万円以内で買えるものも各社増えてきましたね。

甲本 そしてそこからグレードアップしていこう、というものもある?

(赤堀) あります。

甲本 それはいいなぁ。一時期、そういうのが全然なくなっちゃった時代があったからね。

(赤堀) 今おふたりはレコードはどういうシステムで聴いていますか?

甲本 僕ら2人とも真空管使っているかな。プレーヤー、僕はガラードとトーレンス。50年代のヴィンテージものです。当時の機械で当時の音を聴く!っていうのがね、そういう贅沢ができる身分になって良かった。大人になって良かった!

(赤堀) 真島さんはどんな機材をお使いですか?

真島 僕はプレーヤーはデノン。アンプはイタリアの、なんだったっけな。

甲本 ちょっと変わったの使ってるよね?スーパーカーみたいなやつ。

真島 ユニゾンリサーチだ。ぶっとい真空管で、ルックスが大事、かっこいい! スピーカーはJBLですね。荒々しいロックな音がします。

甲本 カートリッジも、MCを掘り始めると大変なことになるから。MMのいいのに出会えれば、それでいいと思うよ。ロックンロール聴くならさ。音楽からくる「うぉお」って感じがあればいいんだよ。



レコードって凶暴なものなんですよ。生きた生身のゴリラが檻なしでそこにいる感じ。



(赤堀) 今の若い世代って、親の世代もレコード聴いてないんですよ。音楽は色々聴いてライヴも行っているけど、レコードは聴いてない。そういう子に向けてレコードって面白いよ、ってことを伝えたいと思っています。

甲本 正直に言って、その状況が想像できないんですよ。レコードは僕らが当たり前に聴いてきたものだから。でも結局は“感動"だと思うんです。今レコードを聴くのがかっこいい! って思って聴く人もいるかもしれない。おしゃれだなっていう人もいるかもしれない。どんな入り口があってもいい。でもどこかで真の“感動"に出会えたら、何者にも代えがたい経験です。

(赤堀) 最近は店頭でも積極的にレコードで聴かせるようにしています。

甲本 とにかく、レコードって独り占め感がすごいの。みんなで聴くんじゃなくて、没頭できる。自分の全人格を音の中に埋没させられる。当時はスピーカーのなかに頭突っ込むようにして聴いてたな、いや、今でもそうだけど(笑)

真島 CDで聴くより、レコードで聴いた方がちゃんと体に入ってくるんだよね。CD っていまいち入ってこない感じがする。80年代にCDが出てきた最初から、その感覚があって。レコードで聴くと、細胞にしみこんでくるみたいな感覚がありますよね。

甲本 レコードって凶暴なものなんですよ。生きた生身のゴリラが檻なしでそこにいる感じ。ザ・フーのレコードとか、部屋の中でゴリラが暴れまわるじゃない。ピート・タウンゼントがギターで家中ぶっ壊すんじゃないかって。

(赤堀) レコードって温かい音がする、なんて言われることもありますけど、そういう悪さや凶暴な感じも、まさにレコードの醍醐味ですよね! 本日はありがとうございました!

 



ザ・クロマニヨンズ
甲本ヒロト(Vo)
真島昌利(G)
小林勝(B)
桐田勝治(Dr)

2006 年7月の出現以来、毎年精力的に活動を続けている。今年8月に18枚目のシングル「クレーンゲーム」、10月9日に13枚目のアルバム「PUNCH」を発売。また、10月30日(水)秋田 Club SWINDLE を皮切りに、2020年4月11日(土)北海道名寄市民文化センターまでの約半年に及ぶ、「ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020」(全58公演)が決定している。

https://www.cro-magnons.net/