【インタビュー】ソウル・フラワー・ユニオン最新作『ハビタブル・ゾーン』リリース記念インタビュー!!

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2020.12.16

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SOUL FLOWER UNION(以下、SFU)の最新作『ハビタブル・ゾーン』リリース発売を記念して、中川敬にインタビュー。
コロナ以降の世の中で、中川敬は何か考え行動しているのか!?
新作について、ライヴの在り方について、中古レコードと最新作が結びつく?貴重なインタビューをどうぞ!


 
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-前作から2年ぶり、現メンバーになってから2作目となるNewアルバムですが制作期間は?

中川:2019年11月に6曲ベーシック・トラックを録り始めたから、ちょうど1年くらい。『バタフライ・アフェクツ』も同じくらいの制作期間やったから、前作と同じ感じやね。

-実際コロナ影響で変更せざるを得なかった部分もありましたか?

中川:もちろん。頻繁にメンバーと集まってアレンジを煮詰めてゆくやり方は、しにくくなった。まず、6曲はすでにベーシック・トラックを録っていて、それの歌入れやエディット、ギターのダビング、奥野(Key)のキーボード類のダビング等を、今年の1~2月にやってたんよね。そんな中、俺はコロナ禍直前の3月頭まで、自分のソロ・ライヴのツアーが続いてたから、週末は各地でライヴをやって、平日はレコーディング作業をやっている日々が続いてた。
ただ、みんなが人混みを避ける感じ、コロナの影響は、2月頭くらいからあって、2月中は「なんか集客悪いな~」とか思いながらツアーを続けてた。で、2月末に大阪のライヴハウスでクラスターが発生して、そこからやね、大々的なライヴハウスの「悪魔化」が始まったのは。
2月末~3月頭に俺のソロ・ライヴで出雲・広島・博多の3daysがあったんやけど、連日ハコの店長と話しながら、日に日に世間の雰囲気が変わっていく感じがあって、その3日間は忘れがたいね。
3月7日に徳島のライヴが入ってたんやけど、直前のキャンセルが相次いで急遽中止にせざるを得なかったし、3月9・10日は“闇鍋音楽祭”のリハーサルで東京に来るねんけど、そこでも中止が決定して。その2日間はライヴ・リハをやめて、代わりに新曲(<川のない橋><ロックダウン・ブルース>)のアレンジ・リハをやって。
3月28日に加古川でライヴをやった時も、事前の予約が減ったり増えたりして、その2週間ぐらいの間にお客さんも悩んでるのが数字に明確に出てて。実際にはコロナ禍の真っ只中ではあってんけど、翌日が誕生日やから『中川敬・生誕祭』と銘打ったそのライヴがコロナ禍前の最後のライヴという感じやね。そこからコロナ禍の日常に入っていき、夏までソロ・ライヴのブッキングを入れてたから、連日各地のハコの人とやり取りをして、ほぼ中止になっていく。

-やはり多くの影響を受けたのですね。

中川:受けまくり! 日々鬱々とした気分になるのは、自分のことというよりは、SNSを通して、ライヴハウスや音楽業界自体が「悪魔化」されていく空気、それに対する、音楽関係者の絶望的な嘆きの声によるものでもあった。アイルランドの友人ミュージシャン始め、ヨーロッパの方からは、国の音楽文化への手厚い補償の話が聞こえてくるというのに。
ただ俺個人としては、「良い時期」にせなあかんという想いはあった。やれる範囲で、なんとかポジティヴな方に転化しようと。家族とべったりと過ごして、子どもと毎日いろんなことをしたなーと、後から「いい時期」として振り返えられるようにしようとか、曲作り・歌詞作りに関してもいつもより深く入り込んで、コロナ禍のおかげでレコーディングに集中できたなーとか。実際そういう風に持っていったしね。
で、その次の話として、4月18日に京都一条寺オブリで初めて無観客の配信ライヴをやるんやけど、音質 ・画質はどうかとか、お客さんがいない中で俺特有の芸風はどうなっていくんやろうかとか(笑)、当初は一抹の不安を抱えながらやったけど、たくさんの人に観てもらえて、かなりいい手応えがあった。
まさにその1回目の時に、「うちの旦那はニューエスト・モデルの時から中川さんの大ファンなのですが、大きい病気にかかりずっと闘病中で25年以上ライヴに行けてなかったけど、ようやくライヴを観せてあげることができます」というような声が届いて、俄然モチベーションが上がったし、配信ライヴも力を入れてやっていこうと思った。誰もかれもがライヴハウスに来れるわけじゃないし、音楽を演る側の人間もライヴハウスというのがあって当たり前やと思ってた感覚を、もう一度しっかりと考え直すことができたよね。自分はいったいどこからやってきたのか、何をやってきたのか、どこへ向かっているのか、ライヴをするとはいったい何なのか、とか。
1995年(阪神淡路大震災)、2011年(東日本大震災)同様、2020年も、今一度自分の足元を見つめ直す1年になったかな。

-いまのお話を聞いて、SFUのライヴでは必ず<満月の夕>を演奏するという話を思い出しました。

中川:例えばソロ・ライヴの時でも、初めて観るという人が必ず1~2人はいるし。<満月の夕>は、俺にとって何回やっても飽きない曲でね。すぐ飽きるタイプの曲やったら苦痛やったやろうなー(笑)。また今日も(ローリング・ストーンズの)<Satisfaction>を演らなあかんのかー、とか(笑)

-観る側としても配信ライヴのチャット機能は楽しいですよ。

中川:隣の人が何を考えてるかとか、普段のライヴやったらほぼ分からないもんね。あと、ミュージシャンでも音楽関係者でも「やっぱりライヴは生だよね」って、当たり前のことを簡単に言いすぎや(笑)。これは新しい文化。俺はさっきの闘病生活の人の話とかを出来るかぎりライヴハウスの人にするようにしてて、誰もかれもがライヴハウスに来れて当たり前というところから、ライヴ文化が次のステージに向かう良い時期にしていきたい。健常者も障害者も、病気の人も、高齢者も若者も、みんなが楽しめるライヴのあり方。もちろん配信ライヴがメインになるとかいう話ではなく、基本的に生でライヴをやる中で、配信でも観ることもできる、という中での話やけどね。

-先ほどのお話で6曲ほどベーシック・トラックがあったとのことですが、コロナ禍に入ってから作られたのは?

中川:順に言うと<川のない橋><ロックダウン・ブルース><夜を使い果たそう><ダンスは抵抗>。アルバムの中でも特に<夜を使い果たそう>はキーになる曲かも。3~5月、ウチの子ども二人が幼稚園から小学校に、小学校から中学校に上がるという時期にロックダウンになって、休校になってどこにも出歩けないし、どうしても家でダラダラしてしまう。で、4年前から自分の腰のリハビリで毎日夜中にウォーキングをしてるから、その散歩に子どもらも参加させたのね。最初は晩飯後に歩き始めたのが、どんどん時間が後ろにズレていく(笑)。5月半ば、一番ひどい時期は、朝の7時頃に家族で散歩してるわけ。近所のおじいちゃん・おばあちゃんが朝の散歩をしてるけど、こっちは寝る前や(笑)。ロックダウンの時期は、とにかく子どもたちと笑って過ごそうと思って、実際毎日子どもたちに笑いが絶えなかった。家族全員で生活が逆転して、夜を使い果たしてる感じがあって。それとライヴハウス。音楽を軸に人々が集まる場所で、もっとみんなで夜を使い果たそうやないかと。それらが絡み合った形で浮上してきた曲やから、今後も自分の中で強い印象として残る曲になるやろうね。
その後、アルバム制作の最後の1曲に、ソウルっぽいスローな曲を書こうとしてたんやけど、5月末、大阪で“BLACK LIVES MATTER”のデモがあって、行ってみたら素晴らしいデモで、関西にこんなにたくさんの在日外国人がいてんなと。しかも出自がどこか分からないような、まさにインターナショナルな光景がそこにあって。家帰ったらスローな曲を書く気分にまったくならなくて(笑)、今日のこの高揚を曲に詰め込まなあかんと思って書いたのが<ダンスは抵抗>。明快にみんなの怒りと、未来に向かっていくためのポジティヴィティを描きたいと思った。アルバムの曲作りの最後の時期に“BLACK LIVES MATTER”のデモがあって、<ダンスは抵抗>で、俺の2019年2020年が全部出揃った感じやね。

-<ダンスは抵抗>は既に代表曲のようなイメージがあります。

中川:ずっとライヴで演りそうやね。



-アルバム・タイトルの<ハピダブル・ゾーン>は生存可能領域という意味合いなんですよね?

中川:いつか使うやろうと思って俺のメモ帳にずっとあった言葉やねんけどね。この曲を書くきっかけは『戦果アギヤー(※1)』。小さい島が焦土と化して県民の三分の一が亡くなってしまう、唯一の地上戦、凄惨な沖縄戦で、戦後、俺の身近なところでいうと、登川誠仁さんが戦果アギヤーやったんよね。戦後は仕事がなくてみんな米軍基地で働くしかないから、なんとか自分たちでバラックを作って、少しずつ村ができ町ができという過酷な道のりの中で、命がけで米軍基地から物資を盗み出す。その話を登川さんから聞いていた。去年ヒットした『宝島』(※2)は戦果アギヤーのことを描いた小説で、読み終わった後に、自分の尊厳のために立ち上がった者たちが、路地裏を疾走するイメージから曲を書き始めよう、と。香港のデモにしても“BLACK LIVES MATTER”のデモにしても、取り上げ方によっては抗議している側が暴れている部分だけを拡大して、暴力的だ、どっちもどっちだ、という形で見せようとする。自分の尊厳を取り返そうとしている者たちが、血まみれになりながら、怒号の中を笑いながら走り抜けていくようなシチュエーションの曲が書きたかった。その時に<ハピダブル・ゾーン>という言葉をフッと思い出して、生命が生きていくためにはH2Oと光だけでは足りない、自尊心が必要やと。尊厳に満ち溢れたロックンロールがやりたかった。

-イントロがいきなりヴェルヴェット・アンダーグラウンドの<I’m Waiting For The Man>ですよね(笑)

中川:曲をスタジオに持っていって、モーリン・タッカー(Dr.)のあのパターンでやってみようかと。そしたら「ええやん!」(笑)、いきなり決まり。「これや!」と思ったね。ロックンロールの素晴らしいリズム・パターンやけど、みんな不思議なぐらいやらないし。

-M-5<団地のエコー>とM-6<ダンスは抵抗>の流れが最高ですね。しかも、曲タイトルで韻を踏んでいるという。

中川:ホンマや!そんなこと全く考えたことなかった(笑)。前作の『バタフライ・アフェクツ』の曲順はかなり迷ったけど、今回は全く悩まなかった。歌入れとかしてる段階で曲順は決まってたね。まるでコンセプト・アルバムかのように。

-私が今作の中で一番好きな曲は<オオイヌフグリ>で、<荒れ地にて>的なメロディ・ラインもありますし、トーキング・ブルースっぽい歌い方が新鮮でした。

中川:八分の六のリズム&ブルース。ソロの弾き語りでやると「ボブ・ディランみたいですね」とか言われる。当初は、中川五郎さんとか友部正人さんのような、もっと字余りの感じやったけど、だんだん疲れていって、結果的に言葉数が整理されていくという(笑)。始めは、単純に、キャプテン・ビーフハートの<I'm Glad>とか、ローリング・ストーンズの<Pain In My Heart>みたいな、ガレージ・バンドが粗暴にR&Bを演る、あの感じの曲を書こうとしたんやけどね。

-<オオイヌフグリ>は雑草なんですか?

中川:そう。意味は「犬のキンタマ」やね。俺より下の世代の人は知らんねんな。マスタリングの時に、70代後半の小鐵(徹)さんから「中川さん、すごいタイトルを付けますね」って言われた(笑)

一同:(笑)



-ここ数年の作品の中でも今作が一番聴きやすい印象でした。

中川:シンプル化してる。それはサウンドやアレンジ以前に、俺の曲作がそうなってる。それにはいろんな要因があるけど、ダメ押しは「コロナ禍」で、メンバーとリモートでデモを作るようになったことも関係してる。俺が一人で作った、簡単な打ち込みとベースにギターと仮歌を入れたデモ音源を、奥野に投げて、そこに奥野が簡単なキーボートを入れてメンバー全員に投げる。それに対して各メンバーが答える、というような作業があって、それがコロナ禍の中で結果的に濃厚なやり取りになったことで、シンプルな作りに収斂されていった。昔の俺やったら「もうちょっと捻ろう」って考えたかもしれないけど、このシンプルさは良いことやなと思ったし、新たなSFUの世界観になってるよね。

-その中でも<ハピダブル・ゾーン>のヴェルヴェッツのくだりや、<ストレンジャー・イン・ワンダーランド>の間奏キーボードのメロディ・ラインなど、要所にルーツ・ミュージックも垣間見せつつ、SFUがロックの王道的な部分を提示して且つシンプルに落とした作品なのかと思います。

中川:俺自身のアナログ盤回帰も関係してる。中古レコード屋でレコードを掘るという行為は、何物にも代えがたい、多幸で崇高な儀式(笑)。10代の頃に擦り切れるほど聴いてたソウル・ミュージックや60年代ガレージものや、いわゆるモッズ・ミュージック的なものと、ここ近年再会するような感じがあって。狙ったわけではないけど、その影響が自分の曲作に出てるとは思うね。ガレージ・バンドがノーザン・ソウルをどう料理するかみたいな、そういう感覚のバンドがいまの日本にいないなぁと思って。若い時の自分が「こんなバンドがあって欲しい」と思うような、そんな感じのアルバムを作りたいという感覚は漠然とあったな。

-確かに今作を聴いてニューエスト・モデルを思い浮かべました。

中川:ソウル・サバイバー』『クロスブリード・パーク』あたりの、ファンクやトラッド的な要素が入る前のニューエスト・モデルのセンスに近いかも。まあ、同じ人間がやってる訳やし(笑)。

-いま現在はバンドとソロで曲を分けて作っていないですか?

中川:最近は分かれてないね。SFUに曲を書いてるって自分が感じてる瞬間は、ドラム・パターン、ベース・ライン、キーボードが脳内で鳴ってるんよね。ただ、ソロの弾き語りがライフワークと化してるから、できた曲をすぐに歌ってみたいということがまずある。まぁ、分ける分けないはどうでもいいかな。ソロ・アルバムを4枚出して、いまはSFUの作品をどんどん作ろう、という感じ。

-現在は多種多様な情報がSNSを通じて入ってくる世の中ですが、どのようにして取捨選択されていますか?

中川:「SNSは疲れる」という人がいるけど、俺は全くそういうことはない。単に、疲れたら見る回数を減らすだけやし(笑)。悪い要素があるのは分かるけれども、俺にとっては良い要素の方が大きくてね。ネット社会始まって以降、これは逃れられない。人が集まる場所という意味において、「銭湯」みたいなもんやね(笑)。社交場。確かにデマが飛び交う場所ではあるし、ネット社会というのは「編集」という行程を経ないから、当然ヤバイ側面もある。でもそれぞれがリテラシーを高めていって、デマはちゃんと叩く、陰謀論やレイシズムは毅然と否定する、ということを怠らないこと。言ってみたらそれが社会でもある。極端化した、社会の縮図。うまく付き合っていくしかないし、ネット社会を嘆く段階はもう終わってる。香港の摩天楼の中で尊厳と自由のために疾走してる若者たち、ベラルーシで立ち上がっている女性たち、そういった人たちを身近に感じてる。遠い星の出来事ではなく、身近なところで、みんな、尊厳を守るために生き抜いてる。闘ってる。俺は、SNSを通して、いつも、世界中の人たちから力をもらっているよ。

(※1)アメリカ統治下時代の沖縄において、米軍基地からの窃盗行為を行う者たちを意味する言葉。 「戦果を挙げる者」という意味である。

(※2)真藤順丈(著)第9回山田風太郎賞&160回直木賞受賞!&第5回沖縄書店大賞受賞作品。

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