《連載コラム》 幸枝の『惑星円盤探査録』Vol.26

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2022.03.10

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「惑星円盤探査録 Vol.26」

iri
『2016-2020』




このエッセイを書いている今日、引っ越して丸一年になった。
「もう」と「まだ」の気持ちは半々であるものの、振り返ると割と頑張った2021だっだように思う。
慣れない場所や暮らしにアタフタすることから始まり(電車の乗り換えとかゴミ出しの方法とか、そういうすごい細かいことでも、慣れてないと結構しんどいものなのだなと痛感した。)、進んでるのかどうなのかもよく分からないままにとにかく過ごした一年だった。
最初の頃は海を見る度に泣いていたし(今思うと相当恥ずかしい。一応誰もいない朝の時とかです。笑)、体調とメンタルの管理を怠り2週間以上寝込んだこともあったし、しょっちゅう物を失くしたし(お財布、Bluetoothイヤフォン、メガネに至っては2回失くした。)、冷静に考えるとどうなのこんな34歳!?って感じなのだが。困ったときにいつも誰かがさりげなく手を貸してくれて、ホント人の優しさに生かされてんなぁと感謝しても仕切れない。
特にiriちゃんには本当に助けられた。そもそも彼女が住んでいなかったらこの未開拓地に住む勇気も持てなかったし、引越しして間もない時は「大丈夫ですか?」とよく連絡をくれ、さりげない優しさに救われていた。
家が近くなってからは会う回数も増えて、いろんな時間を彼女と共に過ごした。
コーヒー片手に海を眺めたり、おうちで一緒にアニメを観たり、ひたすら何時間も話し込んだり。
淋しさや焦燥が顔を出しても、彼女に会って何気ない時間を過ごせばなんのその、どうにかなるさと思えのだ。

それにしてもここ1,2年のiriちゃんの進化は凄まじい。
元々ずば抜けていた才能とセンスに”覚悟”が上乗せされると人はこうも変わるものなのか。去年久しぶりにお邪魔したライブで見たiriちゃんは私の知っているiriちゃんではもうなかった。歌もパフォーマンスも縦横無尽、蝶のように美しくステージを舞っていた。

「2016-2020」には彼女の5年間の歩みで生まれた曲たちがギュッとつまったベスト盤。
いつも「どんな新曲かなぁ」と楽しみにし、そしていつもその期待を軽々と超えていく。
敬愛する石岡瑛子氏の「血が、汗が、涙がデザインできるか。」ということばが私はとても好きなのだけど、iriちゃんの音楽って正にそんな感じ、と私は思っている。
彼女の心血が注がれた楽曲に私たちは身体だけでなく心までも揺られ踊らされてしまうのだ。
iriちゃんの曲を聴くたびに、彼女が音楽の道を選んでくれたことに感謝の気持ちが溢れて、もうめためたにありがとう!と叫びたくなる。
iriちゃんの曲で私は元気になるし強くなれる。そして同じような気持ちになる人がどんどん増えていくのが嬉しくてたまらないし、彼女の曲で沢山の人が救われて彼女自身がより幸せになってくれてたらいいな、なんてお節介な願望を抱いているのだ。

新しいALBUM「Neon」も最高だった。彼女の進化は天井知らず。サクラダファミリアかよ!ってな具合に止まる気配がない。

今年もたくさんの何気ない時間を一緒に過ごそうね。お花見しよう。





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著者プロフィール

楓 幸枝
バンド活動を経て、現在はドラマー、作詞家、文筆業、MCなど活動の幅を広げている。
ミステリーハンターとしてフィンランドを取材するのが密かな夢。

Instagram
楓 幸枝(@yukie_kaede)