《連載コラム》 幸枝の『惑星円盤探査録』Vol.13

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2021.02.11

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「惑星円盤探査録 Vol.13」

Arlo Parks
「Collapsed in Sunbeams」




20歳の頃、あなたは何をしてどんなことを考えて生きていただろうか。

コラム連載初期でも書き綴らせていただいた通り、私の20歳の頃はいわゆる「うだつのあがらない」時期だった。
背後に不安と恐怖が迫り来るのをひしひしと感じながら、そこに飲み込まれないように、後ろを振り向かないように必死に走り続けていた。
先日部屋の整理をしていたら、その時期に働いていたカフェで「あなたをイメージして思いついた言葉です」と常連さんから手渡されたポストカードが出てきた。
常連さんは中国出身のデザイナーさんで新しいブランドの立ち上げのために日本に滞在されていた。そのブランドのファーストシーズンのポストカードを手渡してくれたのだ。
片面はブランドのイメージ写真、そしてもう片面には小さく「太陽はひとりぼっち」と印刷されていた。
ハッとした。
この常連さんとは軽い世間話をすることはあっても、自分の現状や心情を吐露するような深い話をすることはなかったのに。私の瞳の奥にあるきもちにバッチリ気づいていらしたのだ。

20歳前後の女性が放つ独特の危うさと色気はとても魅力的に思う。
「もうすぐ大人ぶらずに子供の武器も使える 一番旬なとき」とは名曲『Sweet 19 Blues』 の一節。正に言い得て妙。
そのグラグラとしたマインドがアンニュイな表情や立ち振る舞いを生み出しているのだろう。
そんな旬な魅力を存分に詰め込んだアルバムがリリースされた。
サウスロンドン出身の20歳、Arlo Parksの1st album「Collapsed in Sunbeams 」。

私が彼女を知ったきっかけはデビュー曲の「Cola」。
UKらしいメランコリーでスモーキーな楽曲を耳にした瞬間に彼女の虜になった。シンプルで簡素な音の中に立体的な世界が閉じ込められていて、すっと映像が立ち込めてくる。当時彼女はまだ18歳。素晴らしい才能だなぁと何度もリピートしながら感心してしまった。そこから2年、待望のalbumである。
本国ではすでにかなり話題の人物らしく、気づけばSpotifyのフォロワーが300万人を越えていた。
自らを「アンドロジナスでコーディネートされてて、流動的。」と語る彼女の、陰鬱でみずみずしい世界にうっとりと溶け込んでいける見事な一枚。
最近はalbum一枚丸ごと聴くことが減ってきただけに、album単位で世界を楽しみたいと思うアーティストに出会えるのは貴重な関係性かもしれない。
この彼女がここからどう変化し進化していくのだろうか。スタート地点からのファンとして、こっそり楽しませてもらうつもり。





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著者プロフィール

楓 幸枝

バンド活動を経て、現在はドラマー、作詞家、文筆業、MCなど活動の幅を広げている。
ミステリーハンターとしてフィンランドを取材するのが密かな夢。

Instagram
楓 幸枝(@yukie_kaede)